科目
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管理費用
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部局等
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首都高速道路株式会社東東京管理局
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契約名
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ETC設備維持18
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契約の概要
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ETC設備等を常時適切な運用ができる状態に保つため、維持管理業務等を行うもの
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契約金額
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14億5204万余円
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契約の相手方
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株式会社ハイメック
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契約
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平成18年4月 随意契約
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緊急対応業務に係る積算額
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2億8108万余円
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(平成18年度)
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低減できた緊急対応業務に係る積算額
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3822万円
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(平成18年度)
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首都高速道路株式会社(以下「会社」という。)東東京管理局では、有料道路自動料金収受システム(Electronic Toll Collection System。以下「ETC」という。)や料金収受設備(以下、これらを「ETC設備等」という。)を常時適切な運用ができる状態に保つため、これらに係る維持管理業務を、平成18年度に、随意契約により株式会社ハイメックに契約金額14億5204万余円で請け負わせて実施している。
そして、この維持管理業務は、会社管内の東東京管理局、西東京管理局(以下、これらを「東京地区」という。)及び神奈川管理局(以下「神奈川地区」という。)内に設置されているすべてのETC設備等を対象として行うこととしている。
維持管理業務は、ETC設備等を保守員室内で常時監視する運転監視業務、ETC設備等に故障等が発生した場合に速やかに出動して正常な状態に復旧する業務(以下「緊急対応業務」という。)、定期的に動作確認等を実施する維持点検業務等の業務である。
このうち、緊急対応業務は、ETC車載器を設置している車両(以下「ETC車」という。)等が発進制御バー(注1)
に接触して破損した発進制御バーの交換やETC設備等に通信異常等が発生した際の復旧作業を行うものである。
緊急対応業務を実施するための要員は、高度な専門的知識及び判断力並びに経験を有し、指導的役割をもって業務を実施できる技術者1名と専門的知識及び経験を有する技術員1名(以下、これらを合わせて「技術者等」という。)、計2名で班(以下「緊急対応班」という。)を構成している。
そして、東京地区においては、18年4月から11月までは4班が24時間体制で待機し、必要に応じて出動し対応していたが、同年12月以降は、距離別料金制の社会実験(注2)
を実施することから、出口ETC(注3)
に対しての出動回数が増加することが見込まれるとして、1班増の5班が待機し対応している。また、神奈川地区においては、同年4月から増班することなく、2班が24時間体制で待機し対応している。
距離別料金制の社会実験 平成20年度に利用距離に応じた通行料に変更する予定となっていることから、首都高速の一部の路線において、出口ETCを利用した車両の調査を行うもので、利用料金から一定額を減額する実験を18年12月から行っている。
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出口ETC ETC車の利用距離を把握するETC設備で、首都高速の出口等に設置している。
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緊急対応業務費の積算は、技術者等の1日24時間当たりの労務単価に所要日数及び所要班数を乗じて、18年度に係る緊急対応業務費を積算していた。
ETCの本格運用から5年が経過し、その間、ETC車は年々増加しており、19年3月の1日平均では88万台がETCを利用して料金所を通行している。そして、ETC車から確実に通行料金を徴収するためには、ETC設備等を常時適切な運用ができる状態に保つ必要があり、そのための緊急対応業務は、今後も引き続き実施されていく。
そこで、本院は、本社及び各管理局において、経済性等の観点から、ETC設備等の緊急対応業務の内容が実態に即したものとなっているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、ETC設備等維持管理業務のうち、18年度の緊急対応業務に係る積算額2億8108万余円を対象として、年間を通じての緊急対応班の出動状況について、出動実績が確認できる月間報告書等により検査した。
18年度の東京地区及び神奈川地区の出動実績等を検査したところ、次のような事態が見受けられた。
東京地区における緊急対応業務の1箇月当たりの平均出動時間については、4班体制で対応していた11月以前で703時間、増班して5班体制となった12月以降で706時間となっており、社会実験前後において大幅な変化はなかった。また、1班当たりの1箇月当たり平均出動回数は、11月以前で115回、12月以降で86回となっており、12月以降は1班当たりの出動回数が減少している状況であった。
そして、5班が同時に出動する必要があるかについて会社に実際の出動状況の調査を求めたところ、1箇月当たり3日から9日程度5班が同時に出動している状況があるとの報告があった。これらの出動の事例をみると次のとおり技術者等による緊急対応班を5班出動させる必要はないものと認められた。
〔1〕料金所内のシステムから必要なデータを収集する作業等の特段の緊急性があるとは認められない業務を行っており、これらの業務は計画的に、交通量が少なく故障等の発生率が低い時間帯に実施することが可能であった。
〔2〕交通規制が必要となる緊急対応業務に、交通規制の要員等が配置されていないことから、緊急対応班が2班同時に出動していたが、別途交通規制の要員等を配置することにより緊急対応班は1班の出動で対応が可能であった。
さらに、18年4月から19年3月までの東京、神奈川両地区の時間帯別の出動実績についてみると、比較的出動が多い9時から21時までは、東京地区で平均2.2班、最大3.7班、神奈川地区で平均0.6班、最大1.3班となっており、また、比較的出動が少ない21時から翌朝9時までは、東京地区で平均0.8班、最大1.5班、神奈川地区で平均0.3班、最大0.9班となっていた。
このように、東京、神奈川両地区ともに、9時から21時までと21時から翌朝9時までの時間帯を比較すると、21時から翌朝9時までの出動の実績は少ないものとなっており、9時から21時までに比べ班数を減らしても緊急対応業務を運用することが可能であった。
上記のことから、出動時間及び作業内容等の実績からみて、18年度の緊急対応業務の班体制は東京地区の12月以降については班数を増やすことなく、また、東京、神奈川両地区については比較的出動の少ない時間帯に班数を減らしたとしても、その運用上支障がなかったものと認められた。
このように、緊急対応業務に係る出動実績や時間帯別に応じての出動状況を十分に把握せずに緊急対応業務の班数を算定している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
本契約における緊急対応業務において、東京地区の12月以降の5班体制を11月以前と同様に4班体制にし、さらに、東京、神奈川両地区の21時から翌朝9時までの班数を1班ずつ減らしたとすれば、別途交通規制の要員等を配置するための費用を考慮しても、緊急対応業務に係る積算額2億8108万余円は2億4285万余円となり、3822万余円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、緊急対応業務に係る班数の算定に当たり、出動時間及び出動回数の実績や時間帯別の出動状況を十分に検討していなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、会社では、19年9月に関係部署へ通知を発し、20年度の契約より、緊急対応業務に係る班体制の決定においては過去の出動状況の把握を十分に行うとともに、時間帯別等の出動状況を的確に分析するなどして経済的な班数を決定することとする処置を講じた。また、東京、神奈川両地区での21時から翌朝9時までの時間帯についての緊急対応班については、19年7月から班数を減らす契約を締結した。