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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • (第32 阪神高速道路株式会社)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

料金収受業務におけるETC監視員の配置を通行量の実態に即したものとすることにより、労務費の積算を適切なものとするよう改善させたもの


料金収受業務におけるETC監視員の配置を通行量の実態に即したものとすることにより、労務費の積算を適切なものとするよう改善させたもの

科目
管理費用
部局等
阪神高速道路株式会社本社
契約名
平成18年度料金収受業務(1-大管)等8件
契約の概要
料金所において、通行料金の収受業務、ETCレーンの監視業務等を行わせるもの
契約金額
73億1661万余円(平成18年度)
契約の相手方
株式会社高速道路開発等7会社
契約
平成18年4月 公募型指名競争契約、随意契約
ETC監視員に係る積算額
6億4424万余円
(平成18年度)
低減できたETC監視員に係る積算額
3465万円
(平成18年度)

1 料金収受業務の概要

(1) 料金収受業務の概要

 阪神高速道路株式会社(以下「会社」という。)では、大阪、神戸両管理部管内に設置している各料金所の料金収受業務を、平成18年度に株式会社高速道路開発等7会社に請け負わせて実施しており、契約金額は計73億1661万余円となっている。
 会社では、高速道路における通行料金の収受については、料金収受員が現金等により料金を徴収するレーン(以下「一般レーン」という。)、有料道路自動料金収受システム(Electronic Toll Collection System。以下「ETC」という。)によりETC車載器を設置した車両との間の無線通信により車両を停止させることなく通行料金を徴収するレーン(以下「ETCレーン」という。)及び一般レーンとETCレーンの双方の機能を有したレーン(以下「混在レーン」という。また、混在レーンと一般レーンを合わせて「有人対応レーン」という。)において行っている。
 そして、本件契約では、有人対応レーンにおける通行料金の収受を料金収受員に行わせるほか、ETCレーンの監視等の業務をETC監視員を配置して行わせている。
 このうちETC監視員は、常時ETCレーンを監視し、同レーンを通過する車両が発進制御バー(注) に接触するなどのトラブルを発生させた場合には当該料金所に進入してくる後続車両を有人対応レーンに誘導し、同レーン上で停止している車両を速やかに通過させるなどの措置を行うこととしている。また、ETC監視員を配置しない料金所のETCレーンでトラブルが発生した場合には、料金収受員がこれらの業務を行うこととしている。

 発進制御バー  ETCレーンの通行を規制するバーで、ETC車とETC設備の間で無線通信をした結果、通行可能時に開放される。


(2) ETC監視員に係る労務費の積算

 ETC監視員に係る労務費の積算については、本社制定の「料金収受業務設計積算基準」及び「平成18年度料金収受業務設計積算実施要領」(以下、これらを合わせて「積算基準等」という。)に基づき、次のとおり算定することとされている。
 会社では、高速道路本線上にある料金所(以下「本線料金所」という。)に、終日(24時間)ETC監視員を1人ないし2人配置し、また、本線料金所以外の料金所には、平日、土曜日及び休日の別(以下「曜日別」という。)に1日当たり通行量が7,000台以上の料金所等に終日1人を配置している。
 そして、ETC監視員の配置時間を所定の労働時間である8時間で除して1日当たり必要人員数を算出するなどして年間必要人員数を算定し、これに1人当たり労務費を乗ずるなどして、ETC監視員に係る労務費を6億4424万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 13年11月のETCの本格運用から5年が経過し、ETC利用率も年々増加し、ETC監視員に係る労務費も多額となっている。
 そこで、本院は、本社及び大阪、神戸両管理部において、経済性等の観点から、料金所におけるETC監視員の人員配置が通行量の実態に即した合理的なものとなっているかに着眼して、18年度に契約した料金収受業務契約のうち、ETC監視員に係る労務費の積算額計6億4424万余円を対象として、会計実地検査を行った。そして、契約書、配置人員表等の書類により検査を行うとともに、ETC監視員を配置していた33料金所のうち、通行量が多く渋滞の原因となりやすいため、ETC監視員を終日配置することとしている本線料金所等計15料金所を除いた18料金所(平日18料金所、土曜日10料金所及び休日5料金所)について、19年3月における曜日別時間帯別通行量の報告を求め、その報告内容を分析するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、ETC監視員の労務費の積算について、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
 積算基準等では、有人対応レーンで1時間当たりの対応可能な通行量が400台とされていることから、これを基に曜日別時間帯別通行量を分析したところ、表1のとおり、平日、土曜日及び休日のいずれにおいても、0時から7時まで及び21時から24時までの間は、多数の料金所で1時間当たりの通行量が400台以下となっており、更に2時から6時までの間は100台以下と少なくなっている料金所も見受けられた。

表1 曜日別時間帯別通行量別料金所数
(単位:箇所)
時間帯
通行量
0〜1
1〜2
2〜3
3〜4
4〜5
5〜6
6〜7
7〜8
8〜9
9〜10
10〜11
11〜12
12〜13
13〜14
14〜15
15〜16
16〜17
17〜18
18〜19
19〜20
20〜21
21〜22
22〜23
23〜24
平日
400台以下
18
18
18
18
18
18
15
7
5
3
4
6
6
3
2
2
2
0
6
8
9
13
16
17
 
100台以下
6
10
13
14
15
8
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
400台超
0
0
0
0
0
0
3
11
13
15
14
12
12
15
16
16
16
18
12
10
9
5
2
1
土曜日
400台以下
9
9
10
10
10
10
8
3
1
2
2
3
3
3
1
1
1
0
1
2
4
8
9
10
 
100台以下
0
0
2
5
6
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
400台超
1
1
0
0
0
0
2
7
9
8
8
7
7
7
9
9
9
10
9
8
6
2
1
0
休日
400台以下
5
5
5
5
5
5
5
2
1
1
1
1
1
1
1
0
0
0
0
1
2
4
5
5
 
100台以下
0
0
4
4
4
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
400台超
0
0
0
0
0
0
0
3
4
4
4
4
4
4
4
5
5
5
5
4
3
1
0
0

 したがって、ETC監視員については、通行量の実態に即して料金所ごとに、曜日別に1時間当たり通行量が400台を超える時間帯を中心にして、所定の労働時間である8時間単位で配置すれば足りると認められた。
 そして、平日及び土曜日の1料金所を除く料金所において、1時間当たり通行量が400台を超える時間帯等が、4時間から16時間となっていたことから、ETC監視員を8時間又は16時間配置すれば足り、終日配置する必要はなかったと認められた。
 これにより、年間必要人員数を算定すると、ETC監視員の数を削減できることとなる。

<事例>

 A料金所は、ETCレーン及び有人対応レーンがそれぞれ1レーンずつ運用されていた。そして、平成18年度の1日当たり予想通行量がそれぞれ、平日9,294台、土曜日5,632台、休日3,599台であることから、料金収受員2人のほかに、平日においてはETC監視員1人を終日配置(1日当たり必要人員数3人)していた。
 しかし、19年3月の平日の時間帯別平均通行量は、表2のとおり、1時間当たり400台を超えていた時間帯が8時から20時までの12時間となっていたことから、ETC監視員を8時間単位で16時間(延べ2人)配置すれば足りると認められた。

表2 A料金所における平日の時間帯別平均通行量
(単位:台)
時間帯
0〜1
1〜2
2〜3
3〜4
4〜5
5〜6
6〜7
7〜8
8〜9
9〜10
10〜11
11〜12
12〜13
13〜14
14〜15
15〜16
16〜17
17〜18
18〜19
19〜20
20〜21
21〜22
22〜23
23〜24
平日
140
87
58
37
34
45
126
242
476
696
730
684
618
705
639
597
564
650
716
536
393
330
277
234

 一方、ETC監視員を配置していなかった料金所における通行量についても調査を行ったところ、1時間当たり通行量が400台を超える時間帯等が見受けられた。
 このように、ETC監視員について、本線料金所以外の料金所において時間帯ごとの通行量を考慮しないで、曜日別に1日当たり通行量が7,000台以上の料金所について終日配置している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記のことから、本線料金所以外の料金所において1時間当たり通行量が400台を超える時間帯等に、ETC監視員を所定の労働時間である8時間単位で配置することとしてETC監視員に係る労務費を修正計算すると6億0958万余円となり、3465万余円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、ETC監視員の配置において、時間帯によって増減する通行量を反映した適切な人員配置とするための検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、会社では、「平成20年度料金収受業務設計積算実施要領」を制定し、本線料金所以外の料金所におけるETC監視員の配置について、1時間当たり通行量が400台を超える時間帯等を中心に、8時間単位を基準として配置することとし、20年度の契約から適用する処置を講じた。