ページトップ
  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第34 国立大学法人北海道大学、第35 国立大学法人筑波大学、第36 国立大学法人東京大学、第37 国立大学法人東京農工大学、第38 国立大学法人静岡大学|
  • 不当事項|
  • 予算経理

教員等個人あて寄附金の経理が不当と認められるもの


(357)−(361) 教員等個人あて寄附金の経理が不当と認められるもの

科目
経常収益
部局等
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
国立大学法人北海道大学
国立大学法人筑波大学
国立大学法人東京大学
国立大学法人東京農工大学
国立大学法人静岡大学
教員等個人あて寄附金の概要
国立大学法人の教員等の職務上の教育・研究に対するものとして寄附者の意向によって教員等個人に対して寄附された寄附金
国立大学法人に寄附されていなかった教員等個人あて寄附金
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
5,200,000円
19,480,000円
21,300,000円
3,000,000円
3,499,000円
(平成17、18両年度)
(平成17、18両年度)
(平成17、18両年度)
(平成17年度)
(平成17、18両年度)

1 寄附金の概要

(1) 教員等個人あて寄附金

 国立大学法人に所属する教員等が職務上行う教育・研究については国立大学法人にその遂行に関する事務上の管理責任があることなどから、国立大学法人は、寄附者の意向によって国立大学法人の教員等の職務上の教育・研究に対するものとして教員等個人に対して寄附された寄附金(以下「教員等個人あて寄附金」という。)を適正に受け入れて経理する必要がある。

(2) 教員等個人あて寄附金に関する本院の指摘

 本院が、合規性等の観点から、平成16年に9国立大学法人(注1) において教員等個人あて寄附金を受け入れて適切に経理するための学内規程等を整備しているかなどに着眼して検査したところ、学内規程等が整備されていないなどの事態が見受けられたことから、16年10月にこれらの9国立大学法人に対して、教員等が当該寄附金を受けたときは、これを改めて国立大学法人に寄附しなければならない旨を明確にした学内規程等を整備すること、寄附者である財団法人等が開示している当該寄附金の開示情報(以下「寄附金開示情報」という。)等を活用するなどして、当該寄附金の調査・把握に努めることなどの改善の処置を要求した。

 9国立大学法人  北海道大学、群馬大学、東京大学、東京工業大学、新潟大学、浜松医科大学、京都大学、大阪大学、熊本大学の各国立大学法人


(3) 寄附金の取扱い

 上記の本院の指摘を受けた9国立大学法人は、17年3月までに寄附金の取扱いを定めた規則(以下「寄附金規則」という。)を制定するなどして、教員等が教員等個人あて寄附金を受け入れたときは、これを改めて各国立大学法人に寄附しなければならない旨を明確にした学内規程等を整備するなどの改善の処置を講じた。
 また、上記の9国立大学法人以外の本院の指摘を受けなかった国立大学法人に対しては、16年12月に文部科学省から本院が指摘した内容に関する情報が提供された。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、13国立大学法人(注2) において、合規性等の観点から、教員等個人あて寄附金が適正に受け入れられているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本院が収集した13国立大学法人に関する寄附金開示情報に係る17、18両年度の教員等個人あて寄附金を対象として、寄附金開示情報と教員等が国立大学法人に提出した寄附申込書等の書類とを突合することなどにより検査した。

 13国立大学法人  北海道大学、弘前大学、岩手大学、東北大学、山形大学、茨城大学、筑波大学、群馬大学、東京大学、東京医科歯科大学、東京農工大学、静岡大学、大阪大学の各国立大学法人


(2) 検査の結果

 検査したところ、5国立大学法人(注3) では、寄附金規則を制定するなどして、教員等個人あて寄附金を各国立大学法人に寄附させることとしていたが、教員等から改めて各国立大学法人に寄附されておらず、個人経理されている教員等個人あて寄附金計52,479,000円が見受けられた。このような事態は、寄附金規則に違反していて、適正を欠いており不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、教員等において、教員等個人あて寄附金を各国立大学法人へ改めて寄附することについての理解が十分でなかったこと、各国立大学法人において、寄附金開示情報を活用するなどしていたものの、当該寄附金の調査・把握が必ずしも十分でなかったことなどによると認められる。

 5国立大学法人  北海道大学、筑波大学、東京大学、東京農工大学、静岡大学の各国立大学法人


 これを各国立大学法人別に示すと次のとおりである。

 
国立大学法人名
年度
本院が突合した寄附金開示情報
左に係る各国立大学法人に寄附されていなかった教員等個人あて寄附金の件数
左の教員等個人あて寄附金
 
 
 
(357)
北海道大学
17、18
186
5
5,200,000

 国立大学法人北海道大学は、前記の本院の指摘により、平成16年10月に「国立大学法人北海道大学寄附金規則」(平成16年海大達第126号)を改正して、教員等が、〔1〕学術研究に要する経費、〔2〕教育研究の奨励を目的とする経費、〔3〕その他同大学の業務遂行に要する経費に充てる寄附金を受け入れたときは、当該寄附金を同大学に寄附するものとする旨を明確にした学内規程等を整備するなどしていた。
 しかし、本院が収集した寄附金開示情報(17年度153件、18年度33件、計186件)により教員等個人あて寄附金について検査したところ、寄附金17年度4件4,200,000円、18年度1件1,000,000円、計5件(教員等数5人)5,200,000円が、教員等から改めて同大学に寄附されておらず、教員等により個人経理されていた。

(358)
筑波大学
17、18
113
12
19,480,000

 国立大学法人筑波大学は、前記の本院指摘の趣旨を踏まえ、平成18年3月に「国立大学法人筑波大学寄附金等取扱規程」(平成18年法人規程第32号)を制定して、教員等が、職務上の教育研究に対する寄附金等を受け入れたときは、当該寄附金等を速やかに同大学に寄附しなければならないとする旨を明確にした学内規程等を整備するなどしていた。
 しかし、本院が収集した寄附金開示情報(17年度79件、18年度34件、計113件)により教員等個人あて寄附金について検査したところ、寄附金17年度8件16,680,000円、18年度4件2,800,000円、計12件(教員等数10人)19,480,000円が、教員等から改めて同大学に寄附されておらず、教員等により個人経理されていた。

(359)
東京大学
17、18
492
17
21,300,000

 国立大学法人東京大学は、前記の本院の指摘により、平成16年9月に「研究助成金に係る寄附金の取扱いについて」(平成16年東大研研発第94号総長通知)等を発するとともに、同月に「東京大学寄附取扱規則」(平成16年東大規則第234号)を制定して、教員等が、同大学に対する寄附を受け入れたときは、直ちに同大学に寄附手続を行うものとし、私的に経理してはならないとする旨を明確にした学内規程等を整備するなどしていた。
 しかし、本院が収集した寄附金開示情報(17年度308件、18年度184件、計492件)により教員等個人あて寄附金について検査したところ、寄附金17年度12件14,300,000円、18年度5件7,000,000円、計17件(教員等数13人)21,300,000円が、教員等から改めて同大学に寄附されておらず、教員等により個人経理されていた。

(360)
東京農工大学
17
27
1
3,000,000

 国立大学法人東京農工大学は、平成16年4月に「国立大学法人東京農工大学寄附金受入規程」(平成16年16経教規程第60号)を制定して、教員等が、〔1〕当該教員等の職務上の教育研究に対するもの、〔2〕当該寄附金に係る教育研究を同大学の施設又は設備等を使用して実施するものに該当する寄附金を受け入れたときは、当該寄附金を同大学に寄附しなければならないとする旨を明確にした学内規程等を整備するなどしていた。
 しかし、本院が収集した寄附金開示情報(17年度27件、18年度7件、計34件)により教員等個人あて寄附金について検査したところ、寄附金17年度1件3,000,000円が、教員等から改めて同大学に寄附されておらず、教員等により個人経理されていた。

(361)
静岡大学
17、18
41
4
3,499,000

 国立大学法人静岡大学は、前記の本院指摘の趣旨を踏まえ、平成16年12月に「国立大学法人静岡大学寄附金等受入規則」を改正して、教員等が、同大学に対する寄附を受け入れたときは、直ちに同大学に寄附手続を行うものとし、私的に経理してはならないとする旨を明確にした学内規程等を整備するなどしていた。
 しかし、本院が収集した寄附金開示情報(17年度18件、18年度23件、計41件)により教員等個人あて寄附金について検査したところ、寄附金17年度2件1,499,000円、18年度2件2,000,000円、計4件(教員等数3人)3,499,000円が、教員等から改めて同大学に寄附されておらず、教員等により個人経理されていた。