科目
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経常収益 雑益
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部局等
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国立大学法人東京大学
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貸付けの概要
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所有する土地又は建物を業者等に貸し付けるもの
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貸付料の額
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2億3978万余円
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(平成16年10月〜19年3月)
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一時的な緩和措置を講じていた契約に係る貸付料の額
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1億1867万余円
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(平成16年10月〜19年3月)
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徴収できた貸付料
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2590万円
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(平成16年10月〜19年3月)
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国立大学法人東京大学(以下「東京大学」という。)は、国立大学法人法(平成15年法律第112号)に基づき、平成16年4月に設立された法人であり、文部科学省の施設等機関として設置されていた東京大学に係る権利及び義務を承継している。
東京大学では、店舗、鉄塔等を設置する者と不動産賃貸借契約(以下「貸付契約」という。)を締結し、所有する土地又は建物を有償で貸し付けている。これらの貸付けには、15年度以前に国有財産の使用許可を受けていた者に対する貸付け(以下「継続貸付け」という。)が含まれている。
そして、東京大学では、継続貸付けの16事業年度上期の貸付料を15年度の国有財産台帳価格を基に算定した国有財産使用料相当額としていた。
一方、東京大学では、法人化の際に固定資産の鑑定評価を行い、これによる時価評価額を台帳価格とする固定資産台帳を整備しており、土地及び建物を効率的に活用して貸付料収入を得るため、16年12月に、東京大学固定資産(不動産)貸付取扱要領(以下「貸付要領」という。)を定めている。これにより、固定資産台帳価格を基に貸付料を算定することとした貸付料算定基準(以下「算定基準」という。)を整備し、16事業年度下期の貸付契約から適用している。
算定基準によれば、土地に係る貸付料は、固定資産台帳価格に期待利回りを乗ずるなどして算定し、建物に係る貸付料は、建物及び建物附帯工作物の固定資産台帳価格に期待利回りを乗じた額に地代相当額を加えるなどして算定することとなっている。
また、貸付期間は、貸付要領により、1事業年度以内となっているが、期間満了の翌日から起算して2事業年度まで延長できることとなっている。この場合の貸付料は、延長前の貸付料と同額となっている。
さらに、借主は、貸付契約を更新することができるが、この場合の貸付料は、算定基準に基づき、固定資産台帳価格を基に算定することとなっている。そして、算定基準により、固定資産台帳価格を基に算定した額が、更新前の貸付料の1.05倍を超えるときは、更新前の貸付料の1.05倍の額を更新後の貸付料とし、逆に、0.95倍に満たないときは、0.95倍の額を更新後の貸付料とする措置(以下「調整措置」という。)を講ずることとしている。
16事業年度下期以降は、継続貸付けも、法人化後の新たな貸付け(以下「新規貸付け」という。)と同様に、算定基準に基づき、固定資産台帳価格を基に貸付料を算定することとなっているが、固定資産台帳価格が鑑定評価による時価評価額を基にしていることから、継続貸付けの16事業年度下期の契約に当たり、その貸付料が15年度の国有財産使用料と比べて急騰する場合があることが見込まれた。
そこで、東京大学は、継続貸付けの16事業年度下期の貸付料にも、15年度の国有財産使用料を更新前の貸付料として調整措置を講ずることとし、貸付料が急騰することを防止している(以下、この場合の調整措置を「一時的な緩和措置」という。)。東京大学では、一時的な緩和措置を講ずる趣旨を、〔1〕継続貸付けの借主の資金計画を考慮すること、〔2〕貸付料の急騰により店舗等が撤退した場合の学生や教職員に対する不便を避けること、〔3〕店舗等が貸付料の上昇分を価格に転嫁するなどした場合の学生等への負担を避けることなどとしている。
本院は、東京大学において、合規性等の観点から、貸付料を含む不動産の貸付条件は適切なものとなっているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、16事業年度下期456件(貸付料計3733万余円)、17事業年度470件(同8418万余円)、18事業年度494件(同1億1825万余円)の貸付契約(同2億3978万余円)を対象として、契約書等の書類により検査した。
16事業年度下期の貸付契約456件のうち、貸付要領に基づき18事業年度まで貸付期間を延長したものが435件あり、このうち継続貸付けは349件あった。
そして、この349件のうち、16事業年度下期の貸付料算定に当たり一時的な緩和措置を講じたものが145件(16事業年度下期から18事業年度までの貸付料計1億1867万余円)あった。
この145件のうち、46件は、主に鉄塔、地中管路等の設置を目的として電気事業者、ガス供給事業者等に土地を貸し付けたものであり、99件は、主に店舗等の設置を目的として建物を貸し付けたものであった。また、この145件のうちの64件については、固定資産台帳価格を基に算定した額が15年度の国有財産使用料を上回っているために一時的な緩和措置を講じたものであった。
そして、上記64件の16事業年度下期の貸付料は計1017万余円であり、これらを新規貸付けとした場合に算定基準により算定した貸付料計1931万余円の52%となっていて、著しい差が生じていた。
東京大学では、法人化前の東京大学において平成15年度以前から、演習林において鉄塔及び高圧線を設置するため、A電力会社に土地約3万m2
の使用を許可したものについて、16事業年度以降は継続貸付けを行っていた。そして、16事業年度下期の貸付料の算定に当たり、固定資産台帳価格を基に年額901,500円と算定したが、この額が15年度の国有財産使用料677,005円の1.05倍の額である710,900円を超えていたことから、一時的な緩和措置を講じて貸付料を年額710,900円としていた。
そして、これらについては、貸付契約の更新ごとに調整措置が講じられることから、相当期間、継続貸付けに係る貸付料が固定資産台帳価格を基に算定した額と同額になることはないと認められた。
このように、東京大学では、前記の趣旨から、継続貸付けについて一時的な緩和措置を講じていたが、このために、適切な貸付料が徴収されていないものがあり、継続貸付けと新規貸付けとの間の公平性が損なわれている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
一時的な緩和措置を講じた継続貸付けについて、一時的な緩和措置を講じなかったとして各事業年度の貸付料を算定すると、貸付料の額が下回るものを含めて計1億4467万余円となり、実際の貸付料計1億1867万余円との差額計2590万円を徴収することができたと認められた。
このような事態が生じていたのは、継続貸付けに対して一時的な緩和措置を講ずることの趣旨や一時的な緩和措置を講じた場合の貸付料について十分に検討していなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、東京大学では、19年4月に、継続貸付けに係る契約更新後の貸付料を、一時的な緩和措置を講じた額である18事業年度の貸付料に対して調整措置を講じずに固定資産台帳価格に基づいて算定した額とし、継続貸付け の貸付料を新規 貸付けの貸付料と同一の取扱いとして、適切な貸付料を徴収する処置を講じ た。