会社名
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(2)
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東日本電信電話株式会社
西日本電信電話株式会社
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科目
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設備投資勘定
設備投資勘定
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部局等
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(1)
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東日本電信電話株式会社本社
西日本電信電話株式会社本社
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宅内工事の概要
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加入者からの注文に基づきケーブル等の通信設備や電話機等の加入者設備を整備する工事
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検査した宅内工事件数
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(1)
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6,818件
13,767件
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上記のうち、実績の確認が適切に行われておらず過大に支払われていた請負費
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(1)
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160万円
560万円
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上記のうち、費用の請求が適切に行われておらず過大に支払われていた請負費
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(1)
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1950万円
2240万円
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東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)では、加入電話や光サービス等を提供するため、加入者からの注文に基づきケーブル等の通信設備や電話機等の加入者設備を整備する工事(以下「宅内工事」という。)について、それぞれの支店を通じてNTT東日本では11社の、NTT西日本では14社の通信建設会社に請け負わせて実施している。
宅内工事については、それぞれの本社が定めた標準単価、作業内容に応じた個別工程(以下「約定工程」という。)の適用範囲等を記した共通仕様書及び工程説明書に基づき、各支店が各通信建設会社と契約し、作業の回数や敷設したケーブルの長さ等を単位とし、実施した数量(以下「実施数」という。)により請負費を支払うこととしている。
一方、宅内工事では加入者宅に作業者を派遣する移動費等を内容とする「共通工程費」を約定工程の一つとして設定し、工程説明書に基づき他の約定工程の実施数や難易度等にかかわりなく、工事現場への移動回数、工事中の現場移動回数に応じて計上できることとなっていて、通常は実施した工事ごとに1件、引っ越し等で作業中に現場移動を伴う工事では2件を計上している(参考図参照)
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そして、通常より多くの作業班を投入する工事や移動回数の多い工事では、各支店の宅内工事担当者(以下「工事マネージャ」という。)の判断により、従事した工事班数や現場に出向いた回数等に応じた件数分の共通工程費を加算できることになっている。
各支店では、加入者から受け付けた注文内容に、同一工事における現場移動の有無等を追記した作業指示書を通信建設会社に送付することにより工事を発注している。
通信建設会社は、注文の履行に必要と思われる約定工程を選択して宅内工事を実施し、実施数を施工完了報告用のシステム(以下「システム」という。)に入力するとともに、実施内容を記録した作業指示書等の書類(以下「完了報告書類」という。)を工事マネージャに送付し、費用を請求することとなっている。
各支店では、工事マネージャ等が完了報告書類とシステムに入力されている約定工程や実施数(以下「工事データ」という。)を照合し、確認した後、1箇月ごとに請負費を確定して通信建設会社に支払っている。
NTT東日本及びNTT西日本が、サービスの向上に向け、休日等における工事対応の推進に取り組むなどして膨大な件数を実施し、通信建設会社に多額の請負費を支払っている宅内工事について、本院は、合規性等の観点から、実績の確認や費用の請求が適切に行われているかに着眼して検査を行った。
NTT東日本の7支店(注1) 及びNTT西日本の15支店(注2) において、会計実地検査を行い、宅内工事における実績の確認方法や費用の請求方法を検査するとともに、システムから出力した支店ごとの平成18年12月から19年5月までの工事データのうち1箇月分計690,038件(NTT東日本437,345件、NTT西日本252,693件)について検査した。そして、本院で作成したプログラムにより、共通工程費を2件以上計上している工事データから、約定工程の実施数や、共通工程費の加算について、確認が必要と判断された20,585件(NTT東日本6,818件、支払額4億5783万余円、うち共通工程費1億3213万余円、NTT西日本13,767件、支払額7億0277万余円、うち共通工程費1億4891万余円)を抽出し、これらを完了報告書類と照合するとともに、必要に応じて現場を確認する方法により検査を行った。
NTT東日本の7支店 東京、千葉、埼玉、山梨、宮城、青森、北海道各支店
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NTT西日本の15支店 大阪、大阪南、和歌山、兵庫、金沢、富山、広島、岡山、愛媛、香川、徳島、福岡、長崎、佐賀、沖縄各支店
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検査したところ、共通工程費等の取扱いについて、次のような事態が見受けられた。
(ア) NTT東日本の7支店及びNTT西日本の14支店(注3) では、完了報告書類の実施数がシステムに誤って入力されていたが、実績の確認が十分でなく、それらが訂正されないまま、請負費を過大に支払っていた工事がそれぞれ317件、610件、計927件及び過小に支払っていた工事がそれぞれ163件、52件、計215件見受けられた。
NTT西日本の和歌山支店では、光ファイバ1本を配線し、光回線終端装置1個を設置するための宅内工事(請負費48,442円)で、完了報告書類に共通工程費を11件と計上し、請負費を支払っていた。
しかし、この工事は、加入者宅への移動に対し1件とするべき共通工程費を通信建設会社が誤って11件と入力したもので、工事マネージャが実績の確認を十分行っていなかったため、10件の共通工程費32,460円が過大に支払われていた。
(イ) NTT東日本の6支店(注4) 及びNTT西日本の9支店(注5) では、前記のとおり、共通工程費は他の約定工程の実施数や難易度等にかかわりなく計上するものであるのに、完了報告書類に共通工程費を計上する際に他の約定工程の作業量に応じて加算するなど独自の取扱いをしていたり、工事マネージャが共通工程費の適用範囲を十分理解しないまま通信建設会社に指示して加算していたりしたため、共通工程費の件数が過大に請求されたまま請負費を支払っていた工事がそれぞれ1,211件、2,125件、計3,336件見受けられた。
NTT東日本の6支店 東京、千葉、埼玉、宮城、青森、北海道各支店
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NTT西日本の9支店 大阪、大阪南、和歌山、兵庫、広島、岡山、愛媛、福岡、沖縄各支店
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NTT東日本の北海道支店では、アパート内の店舗へ電話用のケーブルを7回線分配線する宅内工事(請負費86,129円)を行う際に、施工時間が制約されたなどのため、工事マネージャの判断により4班で実施し、これに難易度を考慮して各班に2件ずつ計8件の共通工程費を認め、請負費を支払っていた。
しかし、実施する約定工程の難易度に応じた加算は共通工程費の適用範囲に含まれていないことから、工事班数分の4件で足り、加算した4件の共通工程費12,672円が過大に支払われていた。
以上のように、宅内工事における実績の確認が不十分な事態や共通工程費が適用範囲を超えて加算されている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
前記(ア)の宅内工事927件(請負費、NTT東日本2117万余円、NTT西日本4209万余円)について、それぞれ実績の確認体制を整備して誤りを訂正した後に支払っていれば、請負費は、NTT東日本において1847万余円、NTT西日本において3605万余円となり、共通工程費等が過小に支払われていた宅内工事を考慮してもNTT東日本において約160万円、NTT西日本において約560万円の請負費がそれぞれ過大に支払われていたと認められた。
また、前記(イ)の宅内工事3,336件(請負費、NTT東日本1億5976万余円、NTT西日本1 億1776万余円)について、共通工程費の加算に係る統一的な判断基準を示し、共通工程費の趣旨を徹底して実施していれば、請負費は、NTT東日本において1億4018万余円、NTT西日本において9527万余円となり、NTT東日本において約1950万円、NTT西日本において約2240万円の請負費がそれぞれ過大に支払われていたと認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 本社において、完了報告書類の確認項目や確認方法等についてのマニュアルを整備していなかったため、各支店における実績の確認が十分できていなかったこと
イ 本社が配布した工程説明書に、共通工程費を加算する場合の適用範囲等についての判断基準を明確に定めていなかったため、各支店では、それぞれ独自の取扱いをしていたり、工事マネージャに対して適切な指導が行われていなかったりして共通工程費を過大に加算していたこと
上記についての本院の指摘に基づき、NTT東日本の本社では19年8月に、NTT西日本の本社では19年9月に、宅内工事の工事データについて実績の確認方法を明記したマニュアルを整備し、共通工程費の適用範囲を明確にする文書を各支店に発するなどして、宅内工事の実施体制を整備する処置を講じた。