ページトップ
  • 平成18年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第2節 国会からの検査要請事項に関する報告

<参考:報告書はこちら>

各府省等が締結している随意契約に関する会計検査の結果について


第3 各府省等が締結している随意契約に関する会計検査の結果について

要請を受諾した年月日
平成18年6月8日
検査の対象
内閣、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省(平成19年1月8日以前は内閣府防衛庁)、国会、裁判所、会計検査院
検査の内容
上記の府省等が締結している随意契約についての検査要請事項
報告を行った年月日
平成19年10月17日

1 検査の背景及び実施状況

(1) 検査の要請の内容

 会計検査院は、平成18年6月7日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月8日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一) 検査の対象

 内閣、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、国会、裁判所、会計検査院

(二) 検査の内容

 各府省等が締結している随意契約についての次の各事項

〔1〕 随意契約を含めた契約全般の状況

〔2〕 随意契約の実施状況及び随意契約となった理由の妥当性

〔3〕 公益法人に対する随意契約の実施状況及び公益法人による再委託の状況

〔4〕 契約の透明性の向上に向けた体制整備の状況

〔5〕 随意契約先公益法人における所管府省退職者の再就職者数

〔6〕 再委託先への所管府省及び当該公益法人それぞれの退職者の再就職者数

〔7〕 〔5〕〔6〕についてそれぞれの公益法人及び再委託先の従業員に占める再就職者の比率、役員に占める比率


(2) 平成16年度決算に関する決議における内閣に対する警告の内容

 参議院では、18年6月7日に決算委員会において、検査を要請する旨の上記の決議を行うとともに、平成16年度決算に関して内閣に対し警告すべきものと議決し、同月9日に本会議において内閣に対し警告することに決している。
 この警告決議のうち、上記検査の要請に関連する項目の内容は、次のとおりである。

1 平成十六年度に中央省庁が実施した一件五百万円以上の工事の発注や、業務委託等の契約に占める随意契約の件数の割合が約七十パーセントと極めて高率になっており、中でも、国土交通省所管の各建設協会などを始め所管公益法人に発注した契約には、随意契約割合が百パーセント、あるいはそれに近い高率になっている例が少なからず見られ、さらに、これらの公益法人に多数のOBが天下っていることは、契約の公平性、競争性及び透明性の確保に疑念を抱かせ、看過できない。また、IT調達にあっては、民間企業を相手とする随意契約が金額の七割から八割を占めている省庁もある。
 政府は、随意契約の見直しに当たっては、相手方の官民を問わず一般競争入札を原則とし例外的に随意契約を認めている会計法の精神に照らして厳格な運用に努めるとともに、所管公益法人等への業務委託の実施に当たっては、天下りの状況も含め積極的に情報開示を行うなど、国民の不信を招くことのないよう厳正に対処し、公共調達の適正化に努めるべきである。


(3) 国の契約方式等の概要

ア 契約方式

 国の法令上の契約方式としては、一般競争契約及び指名競争契約(以下、両者を合わせて「競争契約」という。)並びに随意契約の三つがあるが、機会の均等、公正性の保持、予算の効率的使用の面から、一般競争契約が原則とされており、法令上の適用理由に該当する場合だけ例外として指名競争契約又は随意契約が認められている。
 そして、契約の性質又は目的から価格のみの競争により難い場合には、価格だけでなく、技術的要素等も併せて総合的に評価して落札者を決定する、いわゆる総合評価方式が認められている。
 また、近年、契約手続の前段階において、複数の業者から企画書等を提出させるなどして、これらの内容や業務遂行能力が最も優れた者を選定する手続(以下「企画競争」という。)を経て、その者を契約相手方とする随意契約(以下、このような随意契約を「企画随契」という。)も行われるようになってきている。

イ 各府省等が実施した随意契約の点検

 政府における随意契約の適正化に向けた取組の一環として、各府省等では、17年度に締結した随意契約について随意契約によることが適切かどうかの点検(以下、「随意契約点検」という。)を行い、その結果及び「随意契約見直し計画」(改訂)を公表している。この「随意契約見直し計画」(改訂)によると、17年度における国全体の随意契約(契約に係る予定価格が少額であることによる随意契約(以下「少額随契」という。)等を除く。)10.1万件、契約金額3.8兆円のうち、6.4万件(64.2%)、2.4兆円(63.1%)を一般競争契約、企画随契等の競争性のある契約方式等に移行することにしている。


(4) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、各府省等の契約全般の状況を把握するとともに、契約事務が適切に行われ、公正性、競争性及び透明性が確保されているかなどに着眼して検査を実施した。
 検査は、各府省等の内部部局及び地方支分部局等における支出原因契約を対象とした。そして、契約の状況については、直近の18年度は随意契約を含めた契約全体、17年度は随意契約に絞り、調書を徴して契約の実施状況、競争性の状況、再委託の状況等を分析するとともに、調書に該当契約があった内部部局40箇所のすべて及び地方支分部局等537箇所を抽出して会計実地検査を行った。また、国の随意契約の相手方である公益法人及び当該公益法人から再委託先への再就職者数については、所管府省及び当該公益法人の協力を得て提出された調査票等に基づき調査を実施した。

2 検査の結果

(1) 随意契約を含めた契約全般の状況

ア 府省等における契約全体の状況

 各府省等の国内のすべての官署において締結された支出原因契約(少額随契が認められる契約等は除く。以下「対象契約」という。)のうち、18年度(12月まで)の府省等全体の契約は、各府省等から提出された調書によると、表1のとおり、件数で14.1万件、支払金額(18年12月までに支払われた金額。以下同じ。)で2.2兆円となっている。
 これを契約種類別にみると、件数、支払金額共に「役務」、「工事(設計、調査等を含む。)」の順に多くなっている。

表1 契約種類別の契約状況(平成18年度(12月まで))
(単位:件、百万円、%)
契約種類
件数
支払金額
 
割合
 
割合
工事(設計、調査等を含む。)
36,809
25.9
663,203
30.0
用地取得・補償
3,531
2.5
130,940
5.9
物品等の購入
17,317
12.2
335,159
15.1
物品等の製造
5,137
3.6
54,151
2.4
物品等の賃借
12,664
8.9
302,204
13.7
役務
66,532
46.9
726,659
32.8
合計
141,990
100
2,212,320
100

イ 契約相手方別の契約状況

 契約の相手方については、民間企業、公益法人、独立行政法人等(独立行政法人、特殊法人及び認可法人をいう。以下同じ。)及びその他に4分類した。このうち公益法人については、各府省と結び付きの深い所管公益法人(注1) を括弧内に内書きで示している。
 18年度対象契約を契約相手方別にみると、「民間企業」との契約の割合が、件数、支払金額共に最も多く、それぞれ全体の75.6%、65.8%を占めている。次いで多いのは、件数では「公益法人」が8.8%(うち所管公益法人6.2%)、支払金額では「独立行政法人等」が8.2%、「公益法人」が8.1%(うち所管公益法人6.3%)となっている。

 所管公益法人  各府省が設立許可及び指導監督の権限を有する公益法人をいう。


ウ 契約方式の状況

 18年度(12月まで)の対象契約について契約方式の状況をみると、表2のとおり、競争契約は、件数で43.5%、支払金額で37.8%、随意契約は、件数で56.5%、支払金額で62.2%となっており、件数、支払金額共に随意契約が過半を占めている。また、競争契約を総合評価方式により行ったものは、件数で5.3%、支払金額で15.9%を占めている。

表2 契約方式の状況(平成18年度(12月まで))
上段:件数、金額(単位:件、億円)
下段:割合(単位:%)
区分
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画競争を経ない随意契約
件数
37,387
6,516
24,309
1,033
61,696
7,549
80,294
67,704
141,990
(26.3)
(4.6)
(17.1)
(0.7)
(43.5)
(5.3)
(56.5)
(47.7)
(100)
支払金額
5,289
3,217
3,063
296
8,353
3,514
13,770
12,761
22,123
(23.9)
(14.5)
(13.8)
(1.3)
(37.8)
(15.9)
(62.2)
(57.7)
(100)
(注)
 「随意契約」には、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)第99条の2の規定に基づき、競争に付したが入札者がいないため、又は再度の入札をしても落札者がいないため随意契約(以下「不落随契」という。)を行った場合も含めている。以下の表において、特に除外する旨の注記をしない限り同様である。


 契約種類別に契約方式の状況をみると、件数、支払金額共に競争契約の割合の方が高いのは、「工事(設計、調査等を含む。)」(件数72.8%、支払金額77.0%)、「物品等の購入」(件数69.9%、支払金額58.4%)だけで、それ以外の契約種類では随意契約の割合の方が高い状況となっている。
 契約相手方別に契約方式の状況をみると、表3のとおり、競争契約の割合は、「民間企業」が件数、支払金額共に最も高く、それぞれ55.2%、55.1%となっている。
 一方、「公益法人」が契約相手方である場合の競争契約の割合は、件数で14.1%、支払金額で3.5%となっており、「民間企業」との契約の場合と比べて、競争契約の割合は件数で41.1ポイント、支払金額で51.6ポイント低い状況となっている。これは公益法人が契約相手方となる契約は、随意契約の割合が相対的に高い「役務」に関するものの占める割合が高いことによると考えられる。

表3 契約相手方別の契約方式の状況(平成18年度(12月まで))
上段:件数(単位:件)
〔1〕件数
下段:割合(単位:%)
契約方式
契約相手方
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画競争を経ない随意契約
民間企業
35,623
6,503
23,576
1,031
59,199
7,534
48,081
40,685
107,280
(33.2)
(6.1)
(22.0)
(1.0)
(55.2)
(7.0)
(44.8)
(37.9)
(100)
公益法人
1,322
6
446
2
1,768
8
10,758
8,488
12,526
(10.6)
(0.0)
(3.6)
(0.0)
(14.1)
(0.1)
(85.9)
(67.8)
(100)
 
うち所管公益法人
986
6
312
1,298
6
7,485
5,963
8,783
(11.2)
(0.1)
(3.6)
 
(14.8)
(0.1)
(85.2)
(67.9)
(100)
独立行政法人等
42
1
2
44
1
3,145
2,585
3,189
(1.3)
(0.0)
(0.1)
 
(1.4)
(0.0)
(98.6)
(81.1)
(100)
その他
400
6
285
685
6
18,310
15,946
18,995
(2.1)
(0.0)
(1.5)
 
(3.6)
(0.0)
(96.4)
(83.9)
(100)
合計
37,387
6,516
24,309
1,033
61,696
7,549
80,294
67,704
141,990
(26.3)
(4.6)
(17.1)
(0.7)
(43.5)
(5.3)
(56.5)
(47.7)
(100)

上段:支払金額(単位:百万円)
〔2〕支払金額
下段:割合(単位:%)
契約方式
契約相手方
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画競争を経ない随意契約
民間企業
501,706
321,361
301,196
29,663
802,903
351,025
653,740
620,552
1,456,644
(34.4)
(22.1)
(20.7)
(2.0)
(55.1)
(24.1)
(44.9)
(42.6)
(100)
公益法人
4,310
1,923
6,233
172,586
144,383
178,820
(2.4)
 
(1.1)
 
(3.5)
 
(96.5)
(80.7)
(100)
 
うち所管公益法人
3,637
1,201
4,838
134,632
110,865
139,471
(2.6)
 
(0.9)
 
(3.5)
 
(96.5)
(79.5)
(100)
独立行政法人等
262
1
264
181,270
169,848
181,535
(0.1)
 
(0.0)
 
(0.1)
 
(99.9)
(93.6)
(100)
その他
22,643
415
3,256
25,899
415
369,421
341,346
395,320
(5.7)
(0.1)
(0.8)
 
(6.6)
(0.1)
(93.4)
(86.3)
(100)
合計
528,923
321,777
306,377
29,663
835,301
351,440
1,377,018
1,276,130
2,212,320
(23.9)
(14.5)
(13.8)
(1.3)
(37.8)
(15.9)
(62.2)
(57.7)
(100)

 そして、競争契約において、その利点が発揮されるためには、なるべく多数の業者が入札に参加し適切な競争が行われることが重要である。18年度(12月まで)の対象契約について競争契約の応札者数の状況を件数でみると、表4のとおり、応札者が5者以上あるものが過半数(指名競争契約では80%以上)を占める一方、1者応札のものも16.8%ある。そして、一般競争契約ではあっても、27.3%が1者応札により行われている状況となっている。

表4 競争契約における応札者数の状況(平成18年度(12月まで))
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
応札者数
契約方式
1者
2者
3者
4者
5者以上
合計
竸争契約
10,348
8,067
6,297
4,713
32,271
61,696
(16.8)
(13.1)
(10.2)
(7.6)
(52.3)
(100)
 
一般競争契約
10,224
6,859
5,037
3,602
11,665
37,387
(27.3)
(18.3)
(13.5)
(9.6)
(31.2)
(100)
指名竸争契約
124
1,208
1,260
1,111
20,606
24,309
(0.5)
(5.0)
(5.2)
(4.6)
(84.8)
(100)

エ 落札率の状況

 落札率(契約金額の予定価格に対する比率をいう。以下同じ。)については、予定価格の妥当性や契約方式それぞれの特性などから、その高低だけをもって一律に評価できない面はあるものの、契約の競争性や予算執行の経済性及び効率性を評価する際の指標の一つと考えられる。18年度(12月まで)の対象契約について契約方式別に平均落札率の状況をみると、表5のとおり、競争契約が86.3%(一般競争契約85.8%、指名競争契約86.9%)、随意契約が97.3%となっており、競争契約と随意契約とでは11.0ポイントの開差がある。

表5 契約方式別の落札率の状況(平成18年度(12月まで))
(単位:%)
契約方式
一般競争契約
指名競争契約
随意契約
合計
平均落札率
85.8
86.9
97.3
91.7
86.3
(注)
 18年度の対象契約から単価契約、概算契約、長期継続契約、国庫債務負担行為に係る契約等を除いている。


 また、落札率の高低別に契約件数の分布状況をみると、図1 のとおり、随意契約の場合には、落札率90%以上のものが9割以上を占めている。

図1 落札率の分布図

図1落札率の分布図

 さらに、競争契約について応札者数と平均落札率の関係をみると、表6のとおり、1者応札の場合は平均落札率が93.3%となっているのに対し、応札者数が2者以上の場合はいずれもこれを6ポイント以上も下回っており、競争契約であっても1者応札の場合には実質的な競争の利益を享受しにくい状況が示されている。

表6 競争契約における応札者数別の落札率の状況(平成18年度(12月まで))
(単位:%)
応札者数
1者
2者
3者
4者
5者以上
合計
平均落札率
93.3
86.8
84.9
83.4
84.9
86.3

(2) 随意契約の実施状況及び随意契約となった理由の妥当性

 対象契約のうち17年度及び18年度(12月まで)に締結された随意契約(以下「対象随意契約」という。)について、その実施状況、随意契約とした理由の状況及び企画競争の実施方法の状況を検査したほか、少額随契を含む契約の一部を抽出して随意契約とした理由の妥当性等について検査した。これらの状況を示すと次のとおりである。

ア 随意契約の実施状況

 府省等全体の対象随意契約の件数と支払金額は、表7のとおり、17年度は8.9万件、2.6兆円、18年度(12月まで)は8.0万件、1.3兆円となっている。

表7 随意契約の実施状況(平成17年度及び18年度(12月まで))
(単位:件、百万円)
年度
件数
支払金額
随意契約全体(A)
随意契約全体(D)
 
企画随契(B)
((B)/(A))
企画競争を経ない随意契約(C)
((C)/(A))
 
企画随契(E)
((E)/(D))
企画競争を経ない随意契約(F)
((F)/(D))
17
89,870
9,035
(10.1%)
80,835
(89.9%)
2,679,524
272,024
(10.2%)
2,407,500
(89.8%)
18
(12月まで)
80,294
12,590
(15.7%)
67,704
(84.3%)
1,377,018
100,888
(7.3%)
1,276,130
(92.7%)

 対象随意契約を契約種類別にみると、表8のとおり、件数は「役務」が最も多く6割弱を占めている。また、随意契約に占める企画随契の割合は、企画競争を行う余地が比較的高い設計、調査等を含む「工事(設計、調査等を含む。)」や、調査、研究、広報等を含む「役務」において高くなっている。

表8 契約種類別の随意契約の状況(件数)(平成17年度及び18年度(12月まで))
(単位:件、%)
区分
契約種類
17年度
18年度(12月まで)
随意契約全体(A)
(契約種類別割合)
随意契約全体(C)
(契約種類別割合)
 
うち企画随契(B)
割合(B)/(A)
 
うち企画随契(D)
割合((D)/(C))
工事(設計、調査等を含む。)
11,126
(12.4)
3,076
27.6
9,998
(12.5)
4,428
44.3
用地取得・補償
4,891
(5.4)
41
0.8
3,327
(4.1)
73
2.2
物品等の購入
8,089
(9.0)
2
0.0
5,210
(6.5)
6
0.1
物品等の製造
4,243
(4.7)
64
1.5
3,228
(4.0)
49
1.5
物品等の賃借
12,400
(13.8)
4
0.0
11,525
(14.4)
2
0.0
役務
49,121
(54.7)
5,848
11.9
47,006
(58.5)
8,032
17.1
合計
89,870
(100)
9,035
10.1
80,294
(100)
12,590
15.7

イ 随意契約とした理由の状況

 対象随意契約について、随意契約とした法令上の適用理由をみると、表9のとおり、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」(会計法(昭和22年法律第35号)第29条の3第4項)に該当するためとしているものが最も多く、件数、支払金額共に80%以上を占めている。

表9 法令上の適用理由
(単位:件、百万円、%)
法令上の適用理由
17年度
18年度(12月まで)
件数
支払金額
件数
支払金額
 
割合
 
割合
 
割合
 
割合
契約の性質又は目的が競争を許さない場合(会計法第29条の3第4項)
79,265
88.2
2,324,471
86.7
65,714
81.8
1,102,810
80.1
緊急の必要により競争に付することができない場合(同上)
497
0.6
6,820
0.3
412
0.5
3,421
0.2
競争に付することが国に不利と認められる場合(同上)
1,320
1.5
23,384
0.9
1,146
1.4
10,675
0.8
国の行為を秘密にする必要があるとき(予決令第99条第1号)
1,360
1.5
52,049
1.9
969
1.2
22,734
1.7
運送又は保管をさせるとき(予決令第99条第8号)
357
0.4
38,431
1.4
300
0.4
32,400
2.4
その他(不落随契を含む。)
7,071
7.9
234,365
8.7
11,753
14.6
204,975
14.9
合計
89,870
100
2,679,524
100
80,294
100
1,377,018
100

 そこで、17年度の対象随意契約の内部部局締結分のうち、各府省等が随意契約の理由を「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するとして公表している契約について、更に具体的な理由を分類した結果は、表10のとおりである。
 これによると、主な理由としては24項目(「25 その他」はこの24項目に含まれないもの)あるが、「1 企画競争を実施」を理由とするものが25.8%、「19 専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」が20.5%、「21 契約実績、経験を有する」が8.4%を占めており、これらで全体の過半を占めている。
 一方、これら24項目の具体的理由を、他に履行可能な者がいる可能性の程度によって次のA、B、Cの三つのグループに大別すると、それぞれの件数割合は、25.8%、26.2%及び37.5%となっており、このうち特にCグループには、随意契約の具体的な理由に占める割合が高い「19 専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」及び「21 契約実績、経験を有する」が含まれている。

Aグループ
契約手続の前段階において複数の参加者を想定し、審査の結果、最も優れた企画書等の提案者と契約するとしているため、ある程度競争性が担保されているもの
Bグループ
契約相手方が唯一の者であることの理由が記述されていると考えられるもの
Cグループ
契約相手方が唯一の者であることの理由が必ずしも記述されていないと考えられるもの

表10 「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に当たるとしている具体的な理由
(単位:件、%)
具体的な理由
件数
順位
 
割合
A
1
企画競争を実施(企画案の提案者)
3,844
25.8
1
B
2
法令、条約、閣議決定の取決め等に基づく
264
1.8
12
3
場所が限定されている施設・敷地の賃借、使用料
56
0.4
18
4
官報、法律案、予算書又は決算書の印刷等
52
0.3
19
5
水道、ガス料の長期継続契約、郵便料金、NHK受信料
23
0.2
22
6
供給元が一の場合の出版元等からの書籍の購入
307
2.1
9
7
特許権、実用新案権、著作権等を有している
415
2.8
8
8
美術品及び工芸品等の購入
17
0.1
24
9
特定情報の提供者
266
1.8
11
10
複数年度の使用を前提とした物件の賃借
739
5.0
5
11
情報システムの(当初の)開発者
974
6.5
4
12
特注の機械、設備の製造者
45
0.3
20
13
互換性・連動性を確保する必要がある
214
1.4
13
14
複数年度の実施を前提とした事業
513
3.4
7
15
電気需給契約、電話料金
19
0.1
23
3,904
26.2
 
C
16
「12」以外の機械、設備の製造者
514
3.5
6
17
連絡体制(ネットワーク、組織)を有している
282
1.9
10
18
リース物件の所有者による保守等
41
0.3
21
19
専門的又は高度な知識、知見、技術を有する
3,052
20.5
2
20
秘密性、安全性の保持
101
0.7
16
21
契約実績、経験を有する
1,245
8.4
3
22
公平性、中立性を有している
148
1.0
14
23
特殊な施設・設備を有する
84
0.6
17
24
「6」以外の書籍、新聞の購入
106
0.7
15
5,573
37.5
 
25 その他
1,560
10.5
 
合計
14,881
100
 

(注)
 一つの契約について複数の具体的理由が公表されている場合は、原則として、異なるグループの理由についてはA、B、Cの順に優先し、同じグループの理由については、公表理由の中で最初に記載されているものを優先して分類している。表16においても同じ。


 次に、A、B及びCグループに区分した上記の契約のうち随意契約点検の措置内容が「公募を実施」又は「当該年度限り等」とされている契約以外の契約計10,119件について、グループごとに随意契約点検の措置内容の状況をみると、図2 のとおりである。
 これによると、競争契約へ移行するとしているものの割合は、Bグループが52.6%であるのに対して、Cグループはそれより10ポイント高い62.6%となっている。一方、企画競争を経ない随意契約のままとしている割合は、Bグループが42.7%であるのに対して、Cグループではそれより20.8ポイント低い21.9%となっている。
 このように、「19 専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」などが含まれているCグループには、契約相手方が唯一の者であることの理由がより明確に記述されているBグループに比べて、競争契約に移行できる余地の高かったものが多く含まれていたと考えられる。

図2 具体的な理由別にみた当局が今後執るとしている措置内容の状況

図2具体的な理由別にみた当局が今後執るとしている措置内容の状況


ウ 企画競争の実施方法の状況

 企画競争の実施に当たり、最も優れた者の選定が恣意的に行われた場合、契約の競争性等が十分確保されなくなることから、実施方法の内容が極めて重要である。
 そこで、各省庁(各府省等の本省及び外局等をいう。以下同じ。)における企画競争の実施に係る要領等の整備状況を19年4月1日現在でみると、40省庁のうち、〔1〕各府省等の部内で統一的な要領等を作成しているのは21省庁となっている。また、〔2〕統一的な要領等は作成していないが企画競争を実施する都度、契約案件ごとに事前に作成するとしているのは18省庁である。このうち今後、統一的なものを作成する予定としている1省庁を除く17省庁では、契約内容が多岐にわたることなどから今後も統一的な要領等の作成予定はないとしている。さらに、〔3〕企画競争を実施する必要のある契約案件はないため、要領等を特段作成していないとしているのは1省庁となっている。
 次に、18年度の内部部局締結分の企画随契6,013件について、企画競争への応募者数の状況をみると、応募者数が5者以上のものが半数以上ある一方、1者応募のものも23.4%ある。
 また、企画競争を行うに当たっての参加者の募集方法をみると、広く一般に募集している「一般募集」がほとんどであるが、参加者を限定して募る「限定募集」も11.9%見受けられる。
 そして、企画競争の審査における契約担当部局の関与の状況をみると、契約担当部局が審査に参加しているものは26.1%、参加はしていないが審査内容・審査結果の報告を書面で受けているものは29.4%、いずれの報告も受けていないものが4.8%となっている。
 さらに、審査を行う際の評価項目の設定の有無についてみると、6,013件の契約中5,348件とほとんどの契約において評価項目は設定されているが、設定していないとしているものも11.1%見受けられる。また、評価項目を設定したとしている契約について、評価項目数をみると、5項目以上のものが75.0%となっている一方、1項目しか設定していないとしているものも1.9%見受けられる。

エ 随意契約とした理由の妥当性等

 各府省等における17年度及び18年度の契約のうち、18年11月から19年7月までに会計実地検査を行った各官署で締結された契約の中から、契約金額の規模や契約の内容となっている業務の性質等を勘案するなどして抽出した契約について、随意契約とした理由は妥当かなどを検査した。
 これらの検査に際しては、前記のアからウまでにおける随意契約に係る全体的な特徴、傾向等に関する検査状況を踏まえつつ、検査対象として抽出した契約について、随意契約とした理由の妥当性を改めて横断的に洗い直すこととした。そして、対象とした随意契約の中には既に各府省等において随意契約の見直し計画に従い措置を講じているものもあるが、これらについても同様な考え方で検査した。
 検査の結果、随意契約とした理由の妥当性に関して検討の余地があったと認められるに至った契約が601件(当局による見直しとの関係は、次項オにおいて記述している。)見受けられたので「(ア) 随意契約とした理由の妥当性に関して検討の余地があったもの」として、また、随意契約とした理由の妥当性に関して検討の余地があったとまではいえないものについて、競争性を高める工夫を行い競争契約等に移行している事例も見受けられたので「(イ) 競争性を高める工夫をし、競争契約等に移行しているもの(参考事例)」として、それぞれを次に掲げた。(なお、本項及び2−(3)−エにおいて示している18年度の支払金額は、18年12月までのものでなく、18年度分の全額である。)

(ア) 随意契約とした理由の妥当性に関して検討の余地があったもの

 随意契約とした理由の妥当性に関して検討の余地があった契約(以下「個別の事態」という。)601件について、契約内容の業務の性質により次の三つに区分した。これを府省等別にみると、表11のとおりである。

 

〔1〕共通的業務
各府省等の行政事務の内容のいかんにかかわらず、共通的に必要とされる業務で、具体的には、備品・消耗品の購入、備品等の賃借、清掃、警備等の庁舎等維持管理、庁舎・機械設備の保守・管理等の業務がこれに該当する。
〔2〕行政補助的業務
各府省等の専門的行政事務の補助的な業務で、具体的には、データ入力、情報提供業務、印刷業務等の業務がこれに該当する。
〔3〕調査研究等業務
行政事務を遂行するための調査研究等の業務で、具体的には、調査検討、研究、広報等の業務がこれに該当する。

表11 府省等別の業務の性質区分
(単位:件、百万円)
府省等
〔1〕共通的業務
〔2〕行政補助的業務
〔3〕調査研究等業務
合計
件数
支払金額
件数
支払金額
件数
支払金額
件数
支払金額
内閣
2
7
1
9
1
30
4
47
内閣府
16
415
2
8
5
118
23
542
総務省
26
346
4
93
9
308
39
747
法務省
91
1,271
7
39
98
1,311
外務省
9
251
2
11
1
6
12
269
財務省
60
862
13
4,400
2
25
75
5,288
文部科学省
6
175
1
2
1
10
8
187
厚生労働省
70
1,004
3
11
73
1,015
農林水産省
41
283
15
138
6
180
62
602
経済産業省
12
79
6
219
4
297
22
596
国土交通省
87
3,279
11
85
13
285
111
3,649
環境省
3
7
3
7
防衛省
5
35
4
14
2
46
11
96
国会
33
542
2
19
35
561
裁判所
20
178
1
2
21
181
会計検査院
3
21
1
4
4
26
合計
(割合(%))
484
(80.5)
8,762
(57.9)
71
(11.8)
5,040
(33.3)
46
(7.7)
1,328
(8.8)
601
(100)
15,131
(100)
(注)
 「件数」及び「支払金額」は、平成17、18両年度の計である。ただし、両年度において対応している契約については、件数は両年度分を合わせて1件としてカウントしている。また、複数の少額随契を一括して競争契約を行うべきとする個別の事態は1件としてカウントしている。表18においても同じ。


 上記の個別の事態601件を、随意契約の法令上の適用理由(「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」については表10の具体的な理由)別にみると、件数では「19 専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」が最も多く(全体の2割強)、次いで、「16 「12」以外の機械、設備の製造者」及び「21 契約実績、経験を有する」が同程度となっている。
 以下、上記の個別の事態を、〔1〕共通的業務、〔2〕行政補助的業務及び〔3〕調査研究等業務の三つに区分し、契約内容の具体的な業務別に示すと、表12のとおりである。

表12 契約内容区分別の件数及び支払金額
(単位:件、百万円)
契約内容の区分
件数
支払金額
〔1〕共通的業務
物品
備品・消耗品の購入
56
576
備品等の賃借
4
41
役務
清掃、警備等の庁舎等維持管理
104
3,823
庁舎機械設備の保守・管理等
186
2,722
その他の役務(共通的業務)
134
1,599
484
8,762
〔2〕行政補助的業務
役務
データ入力、情報提供
14
148
その他の役務(行政補助的業務)
57
4,891
71
5,040
〔3〕調査研究等業務
役務
調査検討
29
709
研究
3
74
広報
14
544
46
1,328
合計
601
15,131

(イ) 競争性を高める工夫をし、競争契約等に移行しているもの(参考事例)

 契約締結時点において随意契約とした理由の妥当性に関して検討の余地があったとまではいえないものについて、その後、各府省等において、競争性を高める工夫をして、競争契約等に移行しているものが見受けられた。その主な事例としては、秘密保持方法等について提案を行わせる企画競争を実施しているもの、業務内容を具体的に仕様書に定めることにより競争契約に移行しているもの、秘密漏えい防止等のための措置を講じることにより競争契約に移行しているもの等があった。

オ 個別の事態と随意契約点検及び見直し状況との関連等

(ア) 個別の事態と見直し状況との関連

 随意契約とした理由の妥当性に関して検討の余地があった上記の個別の事態601件について、19年8月1日現在における当局による見直し状況の詳細をみると、表13のとおり、契約済み477件、未契約44件、計521件となっている。そして、このうち、今回の会計実地検査の結果、移行が相当と認められた契約方式等に対応した見直しとなっているものが438件(うち「競争契約に移行」は、措置済み364件、措置予定26件、計390件)あるが、「措置未済」や「措置予定なし」が計83件となっている。

表13 個別の事態に係る契約の見直し状況
(単位:件)
区分
合計
見直し状況(19年8月1日現在)
契約済み
未契約
当該年度限り等
措置済み
措置未済
措置予定
措置予定なし
競争契約に移行
企画随契に移行
公募を実施
竸争契約に移行
企画随契に移行
公募を実施
件数
601
364
17
17
79
26
2
12
4
80
477
44

(イ) 個別の事態についての見直し後における競争性の状況

 上記(ア)の19年8月1日現在の見直し状況において競争契約又は企画競争に移行済みとなっている個別の事態について、応札者又は応募者の数にどのような変化があったか、落札率に変化は生じたか及び契約相手方に変更があったかについてみたところ、表14のとおりとなっている。
 これによると、全体では、平均落札率は移行前の94.1%から移行後は83.5%へ10.6ポイント低下しており、特に、応札者等が2者以上となった場合には71.0%と23.1ポイント低下していて、見直しの結果、実質的にも競争性が向上している状況がうかがえる。一方、応札者等が1者しかいない195件の平均落札率は移行前とほぼ同水準の93.1%にとどまり、契約相手方もそのほとんどは随意契約当時の相手方と同一の者となっている。

表14 見直し後の応札者(応募者)数、落札率等
(単位:件、%)
競争契約又は企画随契に移行済みとなっている個別の事態
競争契約又は企画随契に移行後の状況
全体
応札者(応募者)1者(A)
応札者(応募者)2者以上
(A)のうち
件数
平均落札率
平均落札率
平均応札者数
件数
平均落札率
件数
平均落札率
契約相手方が同じもの
契約相手方が異なるもの
件数
平均落札率
件数
平均落札率
381
94.1
83.5
2.0
195
93.1
181
71.0
167
93.2
28
92.9

(注)
 見直し後に競争入札を行ったが不落随契となった個別の事態については、移行後の平均落札率等の分析対象から除いている。


(3) 公益法人に対する随意契約の実施状況及び公益法人による再委託の状況

ア 公益法人を契約相手方とする随意契約の実施状況

 18年度(12月まで)の対象契約のうち公益法人を契約相手方とする契約の契約方式は、表15のとおり、随意契約の割合が件数で85.9%、支払金額で96.5%となっており、契約全体でみた随意契約の割合(件数で56.5%、支払金額で62.2%)に比べて、それぞれ29.4ポイント及び34.3ポイント高くなっている。
 また、企画競争を経ない随意契約の割合も件数で67.8%で、契約全体でみた割合47.7%より20.1ポイント高いほか、競争契約についても、1者応札の割合は件数で47.0%で、契約全体でみた割合16.8%より30.2ポイント高いなど、全般的に競争性は低い状況となっている。

表15 公益法人を契約相手方とする契約の競争性の状況(平成18年度(12月まで))
上段:件数(単位:件)
〔1〕件数
下段:割合(単位:%)
区分
競争契約(A)
随意契約
合計
競争契約のうち1者応札(B)
(B)/(A)(%)
 
うち企画競争を経ない随意契約
契約全体
61,696
(43.5)
80,294
67,704
141,990
(100)
10,348
16.8
(56.5)
(47.7)
公益法人が契約相手方
1,768
(14.1)
10,758
8,488
12,526
(100)
831
47.0
(85.9)
(67.8)
 
うち所管公益法人
1,298
(14.8)
7,485
(85.2)
5,963
(67.9)
8,783
(100)
647
49.8

上段:支払金額(単位:百万円)
〔2〕支払金額
下段:割合(単位:%)
区分
競争契約(A)
随意契約
合計
競争契約のうち1者応札(B)
(B)/(A)(%)
 
うち企画競争を経ない随意契約
契約全体
835,301
(37.8)
1,377,018
1,276,130
(57.7)
2,212,320
(100)
97,836
11.7
(62.2)
公益法人が契約相手方
6,233
(3.5)
172,586
144,383
(80.7)
178,820
(100)
2,916
46.8
(96.5)
 
うち所管公益法人
4,838
(3.5)
134,632
(96.5)
110,865
(79.5)
139,471
(100)
2,485
51.4

イ 公益法人を契約相手方とする随意契約において随意契約とした理由の状況

 公益法人を契約相手方とする対象随意契約について、随意契約とした法令上の適用理由をみると、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するためとしているものの割合がほぼ100%に近い状況となっており、随意契約全体でみた場合に対し、件数でみても9ポイントから14ポイント以上高くなっている。
 また、公益法人を契約相手方とする17年度の対象随意契約のうちの内部部局締結分について、法令上の適用理由を「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」としている随意契約の具体的な理由をみると、表16のとおりとなっており、随意契約全体の場合と比べてCグループの割合が極端に高くなっている。これは、具体的な理由のうち最も大きな割合を占める「19 専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」が43.7%で、随意契約全体の場合の20.5%と比較して大きな開きがあること、また、「21 契約実績、経験を有する」の割合も13.8%と随意契約全体の割合より高いことによるもので、このことは公益法人を契約相手方とする随意契約における大きな特徴となっている。

表16 「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に当たるとしている具体的な理由
(単位:件、%)
具体的な理由
内部部局全体
左のうち公益法人が契約相手方
件数
割合
件数
割合
A
1
企画競争を実施(企画案の提案者)
3,844
25.8
779
22.1
B
2
法令、条約、閣議決定の取決め等に基づく
264
1.8
38
1.1
3
場所が限定されている施設・敷地の賃借、使用料
56
0.4
4
官報、法律案、予算書又は決算書の印刷等
52
0.3
5
水道、ガス料の長期継続契約、郵便料金、NHK受信料
23
0.2
6
供給元が一の場合の出版元等からの書籍の購入
307
2.1
100
2.8
7
特許権、実用新案権、著作権等を有している
415
2.8
29
0.8
8
美術品及び工芸品等の購入
17
0.1
9
特定情報の提供者
266
1.8
34
1.0
10
複数年度の使用を前提とした物件の賃借
739
5.0
1
0.0
11
情報システムの(当初の)開発者
974
6.5
54
1.5
12
特注の機械、設備の製造者
45
0.3
13
互換性・連動性を確保する必要がある
214
1.4
10
0.3
14
複数年度の実施を前提とした事業
513
3.4
59
1.7
15
電気需給契約、電話料金
19
0.1
2
0.1
3,904
26.2
327
9.3
C
16
「12」以外の機械、設備の製造者
514
3.5
5
0.1
17
連絡体制(ネットワーク、組織)を有している
282
1.9
107
3.0
18
リース物件の所有者による保守等
41
0.3
19
専門的又は高度な知識、知見、技術を有する
3,052
20.5
1,539
43.7
20
秘密性、安全性の保持
101
0.7
10
0.3
21
契約実績、経験を有する
1,245
8.4
487
13.8
22
公平性、中立性を有している
148
1.0
74
2.1
23
特殊な施設・設備を有する
84
0.6
26
0.7
24
「6」以外の書籍、新聞の購入
106
0.7
35
1.0
5,573
37.5
2,283
64.9
25 その他
1,560
10.5
130
3.7
合計
14,881
100
3,519
100

ウ 公益法人による再委託の状況

 契約相手方に対して、契約の全部又は一部を更に第三者に再委託(下請を含む。以下同じ。)することを無条件に認めると、当該契約相手方を選定した発注者の意図に沿わない結果となったり、契約履行の責任の所在が不明確になって適正な履行の確保が阻害されたりするおそれがあるため、一般的には、再委託は発注者の承認を要することとされており、一括再委託は禁止されている。
 そこで、対象随意契約のうち、契約相手方が公益法人で予定価格が300万円を超える随意契約17年度10,564件、18年度(12月まで)7,915件について、再委託の状況をみると、以下のとおりとなっている。

(ア) 再委託に関する契約条項の状況

 上記の契約について、契約書、仕様書等の条項(以下「契約条項」という。)において、再委託についてどのように定めているかをみると、一定の条件を付して認めている「条件付認容」が、件数、支払金額共に全体の80%以上を占めている一方、「定めなし」としているものも10%程度ある。

(イ) 再委託の実施状況

 上記(ア)の契約のうち、国の支払及び再委託に係る支払が共に完了していて、両者の支払金額の対応関係が明確な17年度分について実際の再委託の実施状況をみると、再委託が行われている契約(元契約)の割合は、件数で1割弱程度、支払金額で2割強程度となっており、発注者である国が再委託の有無を把握していないものも、件数で2%弱程度ではあるが見受けられる。
 次に、元契約のうち再委託支払金額が判明している980件について、再委託率(国の支払金額に占める再委託支払金額の割合をいう。以下同じ。)の状況をみると、表17のとおり、再委託率が50%以上となっている契約の割合は件数で20.3%、支払金額で44.4%となっており、再委託率が90%以上となっているものも件数で3.5%、支払金額で17.6%を占めている。

表17 再委託率の状況(平成17年度)
上段:件数、支払金額(単位:件、百万円)
下段:割合(単位:%)

表17再委託率の状況(平成17年度)上段:件数、支払金額(単位:件、百万円)


 また、上記の再委託率が50%以上となっているもののうち、内部部局締結分について、委託先が再委託を必要とした理由をみると、専門的技術・知見を有する専門業者に再委託する方がより効率的、効果的であるなどとなっている。一方、再委託の実施には、発注者である国の書面による事前の承認が必要である旨の契約条項を定めているにもかかわらず、実際には書面による申請及び承認がなされないまま再委託が行われているため、再委託の理由が把握できないものも見受けられた。

エ 公益法人を契約相手方とする随意契約の随意契約とした理由の妥当性等

 2−(2)−エ−(ア)で記述した随意契約とした理由の妥当性に関して検討の余地があった個別の事態601件のうち、公益法人を契約相手方とする契約133件について、業務の性質により区分し、これを府省等別にみると、表18のとおりである。

表18 府省等別の業務の性質区分(公益法人)
(単位:件、百万円)
府省等
〔1〕共通的業務
〔2〕行政補助的業務
〔3〕調査研究等業務
合計
件数
支払金額
件数
支払金額
件数
支払金額
件数
支払金額
内閣
1
30
1
30
内閣府
2
64
1
3
4
112
7
181
総務省
1
1
2
30
6
155
9
187
法務省
7
517
1
8
8
525
外務省
1
4
1
3
1
6
3
14
財務省
10
463
4
3,950
2
25
16
4,439
文部科学省
1
2
1
2
厚生労働省
20
107
1
3
21
110
農林水産省
3
25
6
57
3
67
12
149
経済産業省
2
9
5
212
3
266
10
489
国土交通省
18
2,717
8
59
13
285
39
3,062
環境省
1
2
1
2
防衛省
1
7
2
46
3
54
国会
1
8
1
8
裁判所
会計検査院
1
4
1
4
合計
(割合(%))
67
(50.4)
3,929
(42.4)
31
(23.3)
4,335
(46.8)
35
(26.3)
996
(10.8)
133
(100)
9,262
(100)

 これらの個別の事態について、随意契約の法令上の適用理由(「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」については表10の具体的な理由)別にみると、「19 専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」を理由とするものが件数、支払金額共に最も多く(全体に対する割合が件数で39.1%、支払金額で57.9%)、次いで、「21 契約実績、経験を有する」となっている。
 そして、随意契約全体の個別の事態と比較すると、「19 専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」の件数割合が、全体では2割強であるのに対して公益法人を契約相手方とする場合は4割弱あり、「20 秘密性、安全性の保持」及び「22 公平性、中立性を有している」の件数割合も公益法人の方が相当高くなっており、公益法人に係る個別の事態の特徴となっている。
 次に、上記の個別の事態を2−(2)−エにおけると同様に、〔1〕共通的業務、〔2〕行政補助的業務及び〔3〕調査研究等業務の三つに区分し、契約内容の具体的な業務別に示すと、表19のとおりである。

表19 契約内容区分別の件数及び支払金額
(単位:件、百万円)
契約内容の区分
件数
支払金額
〔1〕共通的業務
物品
備品・消耗品の購入
7
228
役務
清掃、警備等の庁舎等維持管理
23
2,578
庁舎機械設備の保守・管理等
6
828
その他の役務(共通的業務)
31
294
67
3,929
〔2〕行政補助的業務
役務
データ入力、情報提供
8
67
その他の役務(行政補助的業務)
23
4,268
31
4,335
〔3〕調査研究等業務
役務
調査検討
21
471
研究
3
74
広報
11
449
35
996
合計
133
9,262

 また、この中には、契約相手方である公益法人が契約対象業務を再委託しているもので、随意契約とした理由との整合性に関して疑義がある個別の事態も見受けられた。

(4) 契約の透明性の向上に向けた体制整備の状況

 前項(2)、(3)においては、随意契約とした理由の妥当性に関して検討の余地があると認められる事態が多数見受けられた。その背景として、限られた時間の中で多数の契約を処理する必要があることから、契約事務の負担軽減が可能な随意契約に依存しがちになる面があると考えられ、このことが結果的に随意契約とする理由の妥当性の検討に影響するとも考えられる。そこで、各省庁の内部部局を対象として、契約担当職員の配置状況、随意契約とした理由の審査体制、契約情報の公表状況等について検査した。

ア 契約担当職員の配置状況

 契約締結事務に携わる内部部局の契約担当官等を含む契約担当職員の数(実員)(18年4月1日現在)は、それぞれ各省庁の予算規模、所掌事務等が異なることなどもあり、最小3人から最大164人(全体の平均31.2人)となっている。

イ 随意契約とした理由の審査体制

 随意契約とした理由の妥当性に関する事前の審査体制については、19年4月1日現在で、40省庁のすべてにおいて、契約担当部局が通常の契約締結事務の決裁を行う中で審査を行っている。また、これに加えて、23省庁においては内部規程等に基づき設置された審査委員会等が、14省庁においては監査担当部局が、それぞれ又は重ねて審査を行っているとしている。また、契約権限を大臣官房会計課等以外の他の部局にも委任するなどしている11省庁においては、大臣官房会計課等やそれ以外の審査組織において重ねて審査を行っている。

ウ 内部監査の実施状況

 各省庁の内部部局の内部監査機関が、17年度又は18年度に実施した随意契約に関する内部監査の状況をみると、内部監査を行った30省庁はすべて、随意契約に関する監査を実施している。特に、このうちの23省庁においては、17、18両年度共に随意契約とした理由の妥当性の検証を重点事項とし、監査計画、監査方針等において具体的にその取扱いを定めている。

エ 随意契約等の公表状況

 各省庁が締結する契約内容の事後の公表については、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律第127号)、「国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令」(昭和55年政令第300号)、「公共調達の適正化について」(平成18年財計第2017号)等の根拠法令等において定められている。これらの根拠法令等ごとに、公表対象の契約、公表時期及び公表方法を比較すると、表20のとおりである。

表20 根拠法令等の状況
根拠法令等
「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」
「国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令」
「随意契約に関する事務の取扱い等について」
「公共調達の適正化について」
「行政効率化推進計画」
公表対象の契約
公共工事
物品等又は特定役務(特定調達契約)
特定調達契約に該当しないすべての随意契約(少額随契等を除く。)
すべての契約(少額随契等を除く。)
すべての契約(少額随契を除く。)
公表時期
遅滞なく
落札者等決定日の翌日から起算して72日以内
契約締結後72日以内
契約締結後72日以内
競争…毎年度随契…指定なし
公表方法
公衆の見やすい場所に掲示、公衆の閲覧に供する方法又はインターネット
官報により公示
ホームページにおいて公表
ホームページにおいて公表
競争…指定なし随契…ホームページにおいて公表

 このうち、公表方法についてみると、根拠法令等によって、公衆の閲覧に供する方法、官報により公示する方法又はホームページに掲載する方法などの違いがあるが、近年インターネットが広く普及し、これを利用した情報の入手が一般的になっている。
 そこで、各種契約情報の公表方法のうち、各省庁のホームページを用いた公表状況(19年5月末現在)をみると、ホームページ上で公表することとされている各種契約情報については、ほとんどの省庁において記載されている。また、ホームページでの公表が義務づけられていない各種契約情報についても、ホームページに掲載している省庁もある。
 これらのホームページによる各種契約情報の公表については、透明性の向上の面から、アクセスのしやすさ、情報入手の利便性が重要であると考えられる。そこで、各省庁におけるホームページでの掲載状況をみると、ほとんどの省庁ではトップページに「調達情報」等の掲載項目を設け、そこからリンク先のページで公表を行っている。しかし、リンク先ページの掲載項目名からは、掲載されている各種契約情報がどのような根拠法令等に基づいて公表されたものなのかが分かりにくいものがあるなど、契約情報へのアクセスの面で利便性に欠けるものも見受けられた。
 前記の「公共調達の適正化について」では、少額随契等を除くすべての契約について公表することとされているが、上記の状況について、この財務省通知に基づく契約情報を例にとると、最初のリンク先ページの掲載項目名で直ちに「公共調達の適正化について」に基づく契約情報であることが分かる省庁がある一方、複数回のクリック操作を繰り返さないとそのことが分からない省庁や公表の根拠法令等を示していない省庁もある。また、一部の省庁の外局の中には、本省のホームページで掲載しているがその旨の説明を記載していないものもみられる。

オ 契約の適正化に向けた政府の取組

 政府においては、現在、随意契約の適正化(競争性、透明性の向上)に向けた取組を進めており、各府省等で実施された随意契約点検もその一環として行われたものである。また、前記の「公共調達の適正化について」においても、随意契約の適正化を図るための措置、再委託の適正化を図るための措置、契約に係る情報の公表、随意契約についての内部監査の措置等を講じることとされている。
 また、各府省等は、上記の随意契約点検を踏まえて「随意契約見直し計画」(改訂)を作成しているが、この見直し状況については、現在フォローアップが行われているところである。

(5) 随意契約先公益法人における所管府省退職者の再就職者数

 対象随意契約の相手方となっている所管公益法人(以下「随契先公益法人」という。)の数は、表21のとおり、1,223法人であり、これについて、調査の協力を得て提出された調査票等で把握できた範囲で18年4月1日現在における所管府省退職者の再就職者(注2) の状況をみると、所管府省退職者の再就職者が在籍有りとしているのは、1,223法人の78.7%に当たる962法人である。そして、この962法人における所管府省退職者の再就職者数は9,993人であるとしており、1法人当たり平均10.3人となっている。

 所管府省退職者の再就職者  国の行政機関に常勤の職員として職務に従事した者で、国家公務員を退職し、随契先公益法人(次項(6)においては、随契先公益法人からの再委託先)に再就職した者をいい、人事交流による出向等は含まない。


表21 随契先公益法人への所管府省退職者の再就職者の状況(平成18年4月1日現在)
(単位:法人、人、百万円)
所管公益法人数(A)
随契先公益法人数(B)
(B)のうち所管府省退職者の再就職者の在籍の有無別法人数
(C)における所管府省退職者の再就職者数(D)
1法人当たりの平均再就職者数(D)/(C)
(C)の随契先公益法人への随契支払額
((B)/(A))
「有」(C)
((C)/(B))
「無」
17年度
18年度(12月まで)
6,789
1,223
(18.0%)
962
(78.7%)
261
9,993
10.3
358,786
125,144
(注)
 「(C)の随契先公益法人への随契支払額」は、国から再就職者が在籍している随契先公益法人への随意契約に係る支払金額である。


(6) 再委託先への所管府省及び当該公益法人それぞれの退職者の再就職者数

 随契先公益法人を相手方とする対象随意契約で予定価格が300万円を超えるもののうち、17年度又は18年度のいずれかの年度の再委託支払金額が年間合計1000万円を超えている再委託先の数は528者(再委託元の随契先公益法人は122法人)である。

ア 再委託先への所管府省退職者の再就職者数

 上記の再委託先528者について、前項(5)と同様に、調査票等で把握できた範囲で18年4月1日現在における所管府省退職者の再就職者の状況をみると、表22のとおり、在籍無しとしているのは29者、在籍有りとしているのは27者、所管府省より調査困難等との回答があったものは472者である。そして、この27者における所管府省退職者の再就職者数は96人であるとしており、1者当たり平均3.5人となっている。

表22 再委託先への所管府省退職者の再就職者の状況(平成18年4月1日現在)
(単位:法人、人)
再委託先の数
左のうち所管府省退職者の再就職者の在籍の有無別数
(A)における所管府省退職者の再就職者数(B)
1者当たりの平均再就職者数(B)/(A)
「有」(A)
「無」
「調査困難等」
528
27
29
472
96
3.5
(注)
 「調査困難等」は、所管府省より、資料がないなどのため再委託先への所管府省退職者の再就職の調査が困難、不能との回答があった再委託先の数である。


イ  再委託先への随契先公益法人退職者の再就職者数

 前記の再委託先528者について、調査票等で把握できた範囲で18年4月1日現在における随契先公益法人退職者の再就職者(注3) の状況をみると、表23のとおり、在籍無しとしているのは405者、在籍有りとしているのは30者、随契先公益法人より調査困難等との回答があったものは93者である。そして、この30者における随契先公益法人退職者の再就職者数は84人であるとしており、1者当たり平均2.8人となっている。

 随契先公益法人退職者の再就職者  随契先公益法人に常勤の役員又は職員として職務に従事した者で、当該公益法人を退職し、再委託先に再就職した者をいい、人事交流による出向等は含まない。


表23 再委託先への随契先公益法人退職者の再就職者の状況(平成18年4月1日現在)
(単位:法人、人)
再委託先の数
左のうち所管府省退職者の再就職者の在籍の有無別数
(A)における所管府省退職者の再就職者数(B)
1者当たりの平均再就職者数(B)/(A)
(B)のうち所管府省退職者
「有」(A)
「無」
「調査困難等」
528
30
405
93
84
2.8
41
(注)
 「調査困難等」は、随契先公益法人より、資料がないなどのため再委託先への随契先公益法人退職者の再就職の調査が困難、不能との回答があった再委託先の数である。


(7) (5)、(6)についてそれぞれの公益法人及び再委託先の従業員に占める再就職者の比率、役員に占める比率

ア 随契先公益法人の従業員及び役員に占める再就職者の比率

 前項(5)において、所管府省退職者の再就職者が従業員又は役員で在籍有りとの回答があった962法人について、前項(5)、(6)と同様に、調査票等で把握できた範囲で、〔1〕従業員数に占める所管府省退職者の再就職者数の比率、〔2〕役員数に占める所管府省退職者の再就職者数の比率を示すと、表24のとおりである。

表24 随契先公益法人への所管府省退職者の再就職者数の比率(平成18年4月1日現在)
(単位:法人、%)
所管府省退職者の再就職者が在籍している随契先公益法人数(A)
区分
所管府省退職者の占める比率別随契先公益法人数((A)に対する割合)
該当者無し
10%未満
10%以上20%未満
20%以上30%未満
30%以上40%未満
40%以上50%未満
50%以上60%未満
60%以上70%未満
70%以上80%未満
80%以上90%未満
90%以上
962
従業員
415
(41.9)
233
(23.5)
123
(12.4)
84
(8.5)
47
(4.7)
19
(1.9)
27
(2.7)
16
(1.6)
8
(0.8)
11
(1.1)
8
(0.8)
役員
29
(2.9)
379
(38.2)
208
(21.0)
158
(15.9)
106
(10.7)
47
(4.7)
30
(3.0)
12
(1.2)
7
(0.7)
7
(0.7)
8
(0.8)
(注)
 「所管府省退職者の占める比率別随契先公益法人数」の公益法人数は、共管公益法人の重複を含んだ数であり、( )書きは、この重複を含めた延べ991法人に対する割合である。


イ 再委託先の従業員及び役員に占める再就職者の比率

 前項(6)において、所管府省退職者の再就職者が従業員又は役員で在籍有りとの回答があった再委託先27者について、調査票等で把握できた範囲で、〔1〕従業員数に占める所管府省退職者の再就職者数の比率、〔2〕役員数に占める所管府省退職者の再就職者数の比率を示すと、表25のとおりである。

表25 再委託先への所管府省退職者の再就職者数の比率(平成18年4月1日現在)
(単位:法人、%)
所管府省退職者の再就職者が在籍している再委託先の数(A)
区分
所管府省退職者の占める比率別再委託先数((A)に対する割合)
該当者無し
10%未満
10%以上20%未満
20%以上30%未満
30%以上40%未満
40%以上50%未満
50%以上60%未満
60%以上70%未満
70%以上80%未満
80%以上90%未満
90%以上
27
従業員
13
(48.1)
14
(51.9)
役員
6
(22.2)
11
(40.7)
2
(7.4)
4
(14.8)
3
(11.1)
1
(3.7)

 次に、随契先公益法人退職者の再就職者が在籍有りとの回答があった再委託先30者について、調査票等で把握できた範囲で、〔1〕従業員数に占める随契先公益法人退職者の再就職者数の比率、〔2〕役員数に占める随契先公益法人退職者の再就職者数の比率を示すと、表26のとおりである。

表26 再委託先への随契先公益法人退職者の再就職者数の比率(平成18年4月1日現在)
(単位:法人、%)
随契先公益法人退職者の再就職者が在籍している再委託先の数(A)
区分
随契先公益法人退職者の占める比率別再委託先数((A)に対する割合)
該当者無し
10%未満
10%以上20%未満
20%以上30%未満
30%以上40%未満
40%以上50%未満
50%以上60%未満
60%以上70%未満
70%以上80%未満
80%以上90%未満
90%以上
30
従業員
10
(27.8)
25
(69.4)
1
(2.8)
役員
20
(55.6)
1
(2.8)
5
(13.9)
4
(11.1)
3
(8.3)
1
(2.8)
1
(2.8)
1
(2.8)
(注)
 「随契先公益法人退職者の占める比率別再委託先数」の再委託先数は、再委託先の重複を含んだ数であり、( )書きは、この重複を含めた延べ36者に対する割合である。


3 検査の結果に対する所見

ア 各府省等が締結している随意契約等について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、契約全般の状況を把握するとともに、契約事務が適切に行われ、公正性、競争性及び透明性が確保されているかなどに着眼して会計実地検査を行った。また、随意契約先公益法人等への再就職者数については、所管府省及び随意契約先公益法人の協力を得て調査を実施し、提出された調査票等から把握できた範囲でその結果を記述した。
 検査の結果は、次のとおりである。

(ア) 契約方式について

a 契約方式については、18年度対象契約全体でみると、随意契約の割合(件数56.5%、支払金額62.2%)の方が競争契約の割合(同43.5%、同37.8%)より高く、平均落札率も、競争契約は86.3%、随意契約は97.3%で、随意契約の方が競争契約より11.0ポイント高くなっており、競争性及び経済性の面で十分ではない状況となっている。また、契約相手方別にみると、競争契約の割合は、民間企業が最も高く(件数55.2%、支払金額55.1%)、公益法人はそれに比べて件数で41.1ポイント、支払金額で51.6ポイント低い状況となっている。

b 随意契約としている理由については、法令上の適用理由を「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するためとしている契約が8割以上を占める。その具体的な理由をみると、「専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」、「契約実績、経験を有する」など他に履行可能な者がいないことが必ずしも明確にされていないものが相当数見受けられる。
 そして、契約の一部を抽出して随意契約とした理由の妥当性を実際に検証したところ、「専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」などを具体的な理由として契約相手方を選定している随意契約の中には、その理由の妥当性に関して検討の余地があったものが多く見受けられる。また、随意契約の理由の妥当性に関して検討の余地があったものについて、19年8月1日現在における見直し状況をみると、措置未済や措置予定なしのものが残されているほか、競争契約等に移行済みのもののうち約半数は応札者(応募者)が1者しかおらず、その平均落札率は移行前とほぼ同水準となっている。

c 随意契約に当たって企画競争が実施されている場合もあるが、各府省等によっては統一的な実施基準を作成していない省庁もあり、企画競争の実施方法においても公平性及び透明性の確保が十分でないものがある。

(イ) 公益法人を契約相手方とする随意契約について

a 公益法人を契約相手方とする契約については、随意契約の割合が18年度対象契約全体でみた場合よりも件数で29.4ポイント、支払金額で34.3ポイント高く、企画競争を経ない随意契約の割合についても、同様に契約全体でみた場合よりも件数で20.1ポイント高い。また、随意契約としている理由については、法令上の適用理由を「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するためとしている契約が100%近くを占めており、その具体的な理由をみると、「専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」としているものの割合が随意契約全体でみた場合よりも23.2ポイント高くなっている。

b 契約相手方が公益法人である随意契約における再委託については、契約条項において再委託に関する規定を設けていないものが1割強見受けられる。また、事前の承認を必要とする旨の契約条項を定めているにもかかわらず、実際には書面による申請及び承認がなされないまま再委託が行われているものも見受けられる。さらに、再委託が行われている契約のうち17年度分の再委託率をみると、再委託率が50%以上となっているものの割合が件数で20.3%、支払金額で44.4%を占めており、再委託率が50%以上の契約の中には、契約相手方を唯一の者であるとしている随意契約の具体的な理由との整合性に疑義のあるものが見受けられる。

(ウ) 契約の透明性の向上に向けた取組について

 契約の透明性の向上に向けた体制整備については、各省庁ともおおむね随意契約の理由の妥当性を審査する際の具体的な基準等を作成している。しかし、各種契約情報のホームページでの公表において、掲載方法や掲載項目に関し、契約情報へのアクセスの面で利便性に欠ける状況が見受けられる。
 このように、国の支出の原因となる契約については、公正性、競争性、透明性等の面で様々な課題が見受けられる。そして、これらの課題に対しては、現在、政府においても、公共調達の適正化に向けた取組が行われている。

イ 国においては、行政事務の遂行上、引き続き、多様な内容の契約を実施する必要があるが、その支出が国民の貴重な財源をもって充てられることにかんがみ、契約の締結に当たっては、より一層経済的及び効率的に行っていくことが要請される。
 したがって、各府省等においては、今般の随意契約点検の結果を踏まえて作成した「随意契約見直し計画」(改訂)の着実な実施と的確なフォローアップ及び必要に応じた計画内容の見直しを図るとともに、新たな契約の締結に当たっては、競争契約を原則とする会計法令の趣旨に則り厳格な運用を行うほか、次の点に留意することにより、契約の公正性、競争性及び透明性の確保に努める必要がある。

(ア) 契約方式について

a 他府省等や他部署の契約実例を調査して参考にするとともに、発注する業務の内容を仕様書等においてより具体的かつ詳細に定めるほか、少額購入等を予定している調達についてもこれを計画的に集約することにより一括契約を可能とするなどして競争契約を拡大し、契約の透明性の向上を図る。併せて、競争契約を実施する場合においては、国民生活に対する安全性等への配慮を十分行った上で、実質的な競争性の確保を図る。

b やむを得ず随意契約によらざるを得ないとき、特に「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」という理由を適用する場合には、他に履行可能な者がいないかの把握等を厳格に行う。

c 仕様書等の内容を具体的に提示できる場合は、総合評価方式を含む競争契約に移行することに努める。そして、仕様書等の内容の具体的な提示が困難で随意契約によらざるを得ない場合でも、可能な限り企画競争の可能性を検討するとともに、企画競争については、審査員の構成、審査方法等に関して統一的な実施基準を作成し、これに基づいて実施するなどして公平性及び透明性の一層の向上を図る。

(イ) 公益法人を契約相手方とする随意契約について

a 従来から公益法人を契約相手方としてきた随意契約について、契約の具体的な業務内容を精査し、他に履行可能な者がおらず、真に随意契約によらざるを得ない場合に該当するもの以外は、速やかに競争契約に移行する。

b 再委託については、禁止する又は承認を要する旨の契約条項を設けるとともに、再委託の承認に当たっては、契約条項を遵守して書面により申請させるほか、随意契約とした理由との整合性に留意する。

(ウ) 契約の透明性の向上に向けた取組について

 契約の透明性の向上に向けて一層の体制整備に努めるとともに、契約情報をホームページで公表する場合には、掲載方法や掲載項目名を工夫するなどして、必要な情報へのアクセスを容易にし、その利便性を向上させる。

 本院としては、本報告の取りまとめに際して、時間的制約等から各府省等の見直し状況に係る検証を終えるに至っていない部分があることから、これを中心に引き続き検査を実施し、検査の結果については、取りまとめが出来次第報告することとする。