要請を受諾した年月日
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平成19年2月22日
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検査の対象
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内閣府
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検査の内容
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平成13年度から18年度までの間に内閣府が実施したタウンミーティングの運営に関する請負契約についての検査要請事項
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契約の相手方
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株式会社電通(平成13〜15各年度)
株式会社朝日広告社(平成14年度、16〜18各年度)
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支払金額
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21億円(平成13年度〜18年度)
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報告を行った年月日
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平成19年10月17日
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会計検査院は、平成19年2月21日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月22日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。
一、会計検査及びその結果の報告を求める事項
(一) 検査の対象
内閣府
(二) 検査の内容
平成十三年度から十八年度までの間に内閣府が実施したタウンミーティングの運営に関する請負契約についての次の各事項
〔1〕 契約方法、契約手続などの状況
〔2〕 契約金額、支払金額など契約執行の状況
〔3〕 会計事務処理の状況
参議院では、19年2月21日に決算委員会において、検査を要請する旨の上記の決議を行うとともに、6月11日に平成17年度決算に関して内閣に対し警告すべきものと議決し、同月13日に本会議において内閣に対し警告することに決している。
この警告決議のうち、上記検査の要請に関する項目の内容は、次のとおりである。
1 国民との双方向の重要な対話の場として政府が行うタウンミーティングにおいて、コスト意識を欠いた不適切な運営が行われていたことに加え、内閣の重要課題について広く国民から意見を聞くという趣旨を逸脱し、事前に発言の依頼が行われていたことは、看過できない。
政府は、新たな方式による出直しに当たり、国民との直接対話の意義及び広く民意を政策形成に反映させることの重要性を認識し、関係者全員に対してコスト意識を徹底させるとともに、テーマや発言者の選定、契約、会計経理などについて、透明かつ公正適切な運営への改善を図り、効果的な国民との直接対話の場の実現に尽力すべきである。
タウンミーティング(内閣府が実施したものをいう。以下同じ。)は、内閣の閣僚等が、内閣の重要課題について広く国民から意見を聞くとともに国民に直接語りかけることにより、内閣と国民との対話を促進することを目的として、13年6月から18年9月までの間に174回にわたって開催された。
タウンミーティングの開催に当たって、内閣府では、13年5月に設置されたタウンミーティング担当室(以下「TM室」という。)が事業の運営を担当し、入札・契約等の会計事務は大臣官房会計課(以下、単に「会計課」という。)が担当していた。そして、開催会場の候補の選定、参加者の募集事務、当日の事務作業予定等を取りまとめた運営マニュアルの作成、会場設営、当日の受付、警備及び議事録の作成等タウンミーティングの運営に関する一連の業務については、表1のとおり株式会社電通(以下、単に「電通」という。)及び株式会社朝日広告社(以下、単に「朝日広告社」という。)に、契約期間中に開催される分を一括して請け負わせている。
年度
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請負業者
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契約年月日
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契約期間
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開催回数
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支払金額(円)
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13年度
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前期
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電通
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13.5.23
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13.5.23〜13.8.10
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16
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386,473,217
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後期
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電通
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13.8.1
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13.8.1〜13.12.21
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34
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552,802,943
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14年度
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前期
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朝日広告社
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14.4.1
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14.4.1〜14.7.31
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11
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79,114,457
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後期
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電通
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14.7.25
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14.8.1〜15.3.31
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15
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114,296,212
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15年度
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電通
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15.4.1
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15.4.1〜16.3.31
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28
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297,112,917
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16年度
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朝日広告社
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16.4.1
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16.4.1〜17.3.31
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26
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242,186,845
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17年度
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朝日広告社
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17.4.1
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17.4.1〜18.3.31
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23
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295,540,185
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18年度
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朝日広告社
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18.4.3
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18.4.1〜19.3.31
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19
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202,330,194
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合計
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172
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2,169,856,970
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注(1)
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13年6月から18年9月までの間に開催された174回のタウンミーティングのうち、13年度の第51回雇用創出タウンミーティングイン東京(13年12月16日)は内閣府の経費負担によるものではなく、また、第52回タウンミーティングイン葛飾(14年3月3日)は共催団体と共に内閣府が直営により実施しており、それぞれ上記の契約には含まれていないため、上記契約による開催回数は172回となっている。
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注(2)
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14年度前期の契約は、14年4月15日に業務を追加する契約変更を行っている。
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13年度から18年度までの間に内閣府が締結した上記のタウンミーティングの運営に関する請負契約8件(支払金額計21億6985万余円、開催回数172回)を対象として、〔1〕契約方法、契約手続などの状況、〔2〕契約金額、支払金額など契約執行の状況、〔3〕会計事務処理の状況の事項の別に、合規性、経済性等の観点から、以下の点に着眼して検査した。
〔1〕 については、各契約の契約方式、契約形態は適切か、入札・契約などの手続は適切に実施されているかなど
〔2〕 については、仕様の内容や予定価格の算定は適切か、単価契約に関して、単価の設定は適切か、支払金額の基とした員数等は実績を反映しているかなど
〔3〕 については、給付の完了の確認、請求書の審査、内部監査等は適切に行われているかなど
検査に当たっては、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき内閣府から本院に提出される証拠書類等(契約書、仕様書、検査調書、領収書、精算関係書類等)の内容を精査するとともに、タウンミーティングに係る関係書類の提出を求め、担当者や当時の担当者から説明を聴取した。
本院は、19年次に実施した本件事案の検査において、在庁して関係書類の分析等の検査を行ったほか、内閣府並びにその請負先である電通及び朝日広告社に対する会計実地検査を行った。
ア 13年度のタウンミーティングの運営に関する請負契約について
内閣府では、13年度においては、タウンミーティングの運営に関する請負に当たり、13年5月23日から8月10日まで(13年度前期)を契約期間とする契約と、13年8月1日から12月21日まで(13年度後期)を契約期間とする契約を次のように締結している。
(ア) 契約方式及び契約形態
a 13年度前期の契約
内閣府では、13年度前期においては、会計法(昭和22年法律第35号)第29条の3第4項に規定する契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合に該当するとして、随意契約の契約方式により電通と総価契約の契約形態で契約を締結していた。
上記の規定に該当し、電通と契約する理由については、本件契約に当たりTM室が作成したタウンミーティングの実施についての伺いに添付されている請負先選定理由によると、おおむね、タウンミーティングは、13年5月7日の総理大臣所信表明演説に盛り込まれ、半年間で47都道府県で実施するものとされており、緊急に準備に取り掛かる必要があるなどとなっていた。
そして、13年度前期のタウンミーティングは、上記所信表明演説の行われた40日後の6月16日に鹿児島市で第1回が行われてから7月8日までの23日間に13道県の16市町村で計16回行われていた。
b 13年度後期の契約
内閣府では、13年度後期においては、会計法第29条の3第4項に規定する契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとして、企画競争を経た後、随意契約により電通と総価契約を締結していた。
上記の規定に該当する理由について、内閣府では、13年度後期の契約においても、運営業務に関する知見がTM室に十分蓄積されておらず、より良い手法を模索していたため、直ちに運営業務を定型化して競争に付すことはできなかったとしている。
そして、内閣府における具体的な企画競争の手続を確認したところ、内閣府では、企画競争の説明会を実施した後、複数の者から提出された企画書等について評定するなどした結果、点数が最上位であった電通と契約を行っていた。
また、13年度後期のタウンミーティングは、9月8日から11月18日までの72日間に34都府県の34市区町で計34回行われていた。
(イ) 契約手続
a 13年度前期の契約
13年度前期の契約における契約書作成までの事務手続は、決裁文書等の上では次のように行われたこととなっていた。
〔1〕 TM室の担当者は、13年5月21日付けでタウンミーティングの実施についての伺いを起案し、TM室室長までの決裁を受けるなどした。
〔2〕 会計課の担当者は、予定価格調書を作成し、5月23日付けで支出負担行為担当官である会計担当参事官の決裁を経て予定価格が決定された。
〔3〕 内閣府は、電通から5月23日付けで見積書を徴取した。その金額は、〔2〕で決定された予定価格の範囲内であった。
〔4〕 会計課の担当者は、随意契約で電通と契約をすることについての伺いを契約書案、仕様書案等を添付して5月23日付けで起案し、会計担当参事官及び会計課長の決裁を受けた。
〔5〕 会計課の担当者は、支出負担行為決議書を5月23日付けで起案した。そして、同日付けで、会計担当参事官と電通との間で契約書が作成された。
しかし、内閣府及び電通から説明を聴取するなどしたところ、実際は表2に示すとおりであったと認められた。
番号
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契約手続
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決裁文書等上の日付
|
実際の時期
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〔1〕
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実施についての伺いの起案
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13年5月21日
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13年6月以降
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〔2〕
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予定価格の決定
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13年5月23日
|
13年度前期のタウンミーティングの開始(13年6月16日)後
|
〔3〕
|
見積書の徴取
|
13年5月23日
|
13年度前期のタウンミーティングの終了(13年7月8日)後
|
〔4〕
|
契約をすることについての伺い(仕様書添付)の起案
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13年5月23日
|
13年度前期のタウンミーティングの終了(13年7月8日)後
|
〔5〕
|
支出負担行為決議書の起案、契約書作成の完了
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13年5月23日
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14年3月頃
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b 13年度後期の契約
13年度後期の契約における予定価格調書の作成から契約書作成までの事務手続は、決裁文書等の上では次のように行われたこととなっていた。
〔1〕 会計課の担当者は、予定価格調書を作成し、8月1日付けで支出負担行為担当官である会計担当参事官の決裁を経て予定価格が決定された。
〔2〕 会計課は、電通から8月1日付けで見積書を徴取した。その金額は、〔1〕で決定された予定価格の範囲内であった。
〔3〕 会計課の担当者は、随意契約で電通と契約をすることについての伺いを契約書案、仕様書案等を添付して8月1日付けで起案し、会計担当参事官及び会計課長の決裁を受けた。
〔4〕 会計課の担当者は、支出負担行為決議書を8月1日付けで起案した。そして、同日付けで、会計担当参事官と電通との間で契約書が作成された。
しかし、内閣府及び電通から説明を聴取するなどしたところ、実際は表3に示すとおりであったと認められた。
番号
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契約手続
|
決裁文書等上の日付
|
実際の時期
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〔1〕
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予定価格の決定
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13年8月1日
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13年9月以降
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〔2〕
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見積書の徴取
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13年8月1日
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13年度後期のタウンミーティングの終了(13年11月18日)後
|
〔3〕
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契約をすることについての伺い(仕様書添付)の起案
|
13年8月1日
|
13年度後期のタウンミーティングの終了(13年11月18日)後
|
〔4〕
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支出負担行為決議書の起案、契約書作成の完了
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13年8月1日
|
14年4月頃
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このように、13年度においては、電通と随意契約の契約方式により総価契約を事業の実施前に締結したとしているが、事業の実施を先行させ、契約を確定させるまでに必要となる見積書の徴取、支出負担行為決議書及び契約書の作成等の手続を事後的に行う処理をして、実際には請負業務を了した後に契約金額を確定させていたと認められた。さらに、支出負担行為決議書、契約書等の日付をさかのぼって記載していたと認められた。
イ 14年度から18年度までのタウンミーティングの運営に関する請負契約について
(ア) 契約方式及び契約形態
内閣府では、14年度から18年度までのタウンミーティングの運営に関する請負に当たり、一般競争の契約方式により、13年度における総価契約と異なり標準的な個々の業務ごとに単価を定める単価契約の契約形態で契約を締結していた。
また、内閣府では、14年度から単価契約とした理由については、タウンミーティングは基本的な開催形式が定型化されたものであるが、開催する会場の規模や仕様、出席閣僚等や一般参加者の人数等が毎回異なるためなどと説明している。
そして、14年度以降のタウンミーティングの実績をみると、基本的な仕様は定まっていたが、毎回の必要な各項目の員数は異なっている状況となっていた。
(イ) 仕様書の作成、予定価格の算定、入札及び落札者の決定
内閣府では、請負内容を特定する仕様書の作成、予定価格の算定、入札及び落札者の決定について、次のように行っていた。
〔1〕 タウンミーティング開催1回当たりに必要となる標準的な個々の業務(受付や警備員の配置、ハイヤーの手配等)と各業務ごとに要する標準的な数量(以下「モデル員数」という。)を記載した仕様書を作成する。
〔2〕 仕様書における標準的な個々の業務に対応するモデル員数にその単価を乗ずるなどしてタウンミーティング開催1回当たりの金額の総額について積算した金額を予定価格とする。
〔3〕 仕様書を入札参加者に事前に示して、モデル員数を前提としたタウンミーティング開催1回当たりの金額について入札することを求め、最も低い金額を入札した者を落札者と決定する。
(ウ) 契約単価の決定、契約の締結
内閣府では、契約単価の決定、契約の締結について、次のように行っていた。
〔1〕 落札者は各契約に係る入札説明書に示されたところにより、開札後契約上実費精算とする業務以外の各業務ごとに単価を定めた契約単価内訳書を内閣府に提出する。この契約単価内訳書の提出は開札後速やかに行うこととなっており、謝礼金等の事前に単価が指定された一部の項目を除き、この契約単価内訳書の単価は、仕様書に定められた各業務ごとのモデル員数にこの単価を乗じた合計額が落札金額と一致する範囲内で落札者が自由に設定できるものとなっている。また、一般管理費について、独立した項目は設定されていない。
〔2〕 内閣府は、〔1〕により落札者が契約単価内訳書に記載した各業務ごとの単価をもって落札者と単価契約を締結する。
〔3〕 仕様書は契約書に付属するものとなるが、仕様書において、仕様書に記載のない事務(以下「追加作業」という。)については、内閣府の指示があった場合には、これに従い、速やかに対応することとし、これに係る費用(以下「追加費用」という。)は別途協議する旨定めていた。
(エ) 支払金額の算定
内閣府では、支払金額について、次のように算定していた。
〔1〕 契約単価を設定している項目(以下「単価項目」という。)に係る業務については、モデル員数は仮置きとし、実際のタウンミーティングに当たっての員数は内閣府の指示によるものとされている。そして、実施されたタウンミーティングの実際の員数にそれぞれ契約単価を乗じたものを合計して当該タウンミーティングの単価項目に係る支払金額とする。
〔2〕 会場借上げに要する費用等契約上実費精算とする業務については実費精算を行う。
〔3〕 〔1〕、〔2〕に、追加費用を加えた金額を当該タウンミーティングに係る支払金額とする。
(オ) 契約手続
14年度から18年度までの契約における契約書作成までの事務手続は、関係書類及び内閣府の説明によれば、おおむね、〔1〕TM室の担当者による仕様書案を添付した実施についての伺いの起案、〔2〕会計課の担当者による入札実施、入札公告についての伺いの起案、〔3〕会計担当参事官による入札公告の開始、〔4〕TM室及び会計課による入札説明会の実施、〔5〕会計課の担当者による予定価格決定についての伺いの起案、〔6〕会計課による入札の実施、〔7〕落札者からの契約単価内訳書の提出、〔8〕会計課の担当者による契約をすることについての伺いの起案、〔9〕会計担当参事官と落札者との間で契約書の作成となっている。
そして、内閣府並びに請負業者である朝日広告社及び電通から説明を聴取するなどしたところ、上記の手続のうち、15年度、17年度及び18年度の〔7〕以降の手続について、決裁文書等上の日付及び実際の時期は、表4のとおりであったと認められた。
番号
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契約手続
|
15年度
|
17年度
|
18年度
|
|||
決裁文書等上の日付
|
実際の時期
|
決裁文書等上の日付
|
実際の時期
|
決裁文書等上の日付
|
実際の時期
|
||
(参考)入札の実施
|
15.3.17
|
15.3.17
|
17.2.28
|
17.2.28
|
18.1.27
|
18.1.27
|
|
(参考)タウンミーティング初回開催日
|
/
|
15.4.5
|
/
|
17.4.2
|
/
|
18.4.1
|
|
〔7〕
|
契約単価内訳書の提出
|
15.3.17
|
15年5月以降
|
記載なし
|
17年7月以降
|
記載なし
|
18年4月下旬以降
|
〔8〕
|
契約をすることについての伺いの起案
|
15.4.1
|
15年5月以降
|
17.4.1
|
17年7月以降
|
18.4.3
|
18年4月下旬以降
|
〔9〕
|
契約書作成の完了
|
15.4.1
|
15年5月以降
|
17.4.1
|
17年7月以降
|
18.4.3
|
18年4月下旬以降
|
このように、15年度、17年度及び18年度においては、事業の実施を先行させ、契約を確定させるまでに必要となる落札者が開札後速やかに提出することとなっている契約単価内訳書の受領や契約書の作成等の手続を事後的に行う処理をしていたり、契約書等の日付をさかのぼって記載したりしていたと認められた。
特に、契約単価内訳書の受領が事業の開始後になっている事態については、落札者が、員数の実績を確認した後にモデル員数に比べて実際の員数が大きく増加した項目に高い契約単価を設定することを可能とするものであり、発注者に過大な費用を支払うリスクを生じさせるものであった。
ア 13年度のタウンミーティングの運営に関する請負契約について
(ア) 契約金額
13年度の契約は、随意契約による総価契約であり、契約書、請求書等により確認したところ、その契約金額386,473,217円(前期)及び552,802,943円(後期)は、支払金額(消費税(地方消費税を含む。)を含む。以下同じ。)と同額となっていた。そして、この契約金額は、前記のとおり、支出負担行為決議書の起案が、実際にはタウンミーティングの事業の終了後であったと認められることなどから、請負業務を了した後に確定させていたと認められた。
そして、各契約に係る仕様書は、前記のとおり、実際にはタウンミーティングの事業の終了後に決定されたものであった。
また、予定価格は、前記のとおり、13年度前期はタウンミーティングの事業の開始後に、13年度後期は予定価格調書に記載された日付よりも後に決定されたものであったと認められることなどから、本件2件の契約においてどのような位置付けであったかは明らかでない。なお、この予定価格について内閣府では、他の契約の予定価格を類推させるおそれがあるとして、公表していない。
その上で、13年度の契約金額に係る予定価格の積算についてみると、単価に関し、旅費、会場費、ISDN工事・通信料及び新聞広告掲載料以外は、すべて電通又はその再請負先であるA社が作成した人件費等単価表又は人件費等単価証明書が根拠となっており、他の取引の実例価格を調査してそれを考慮することは行われていなかった。
また、13年度の予定価格算定に用いられた単価についてみると、14年度以降の単価契約において設定されている単価項目とおおむね対応すると思料される項目において、一般競争契約となった14年度以降の契約単価より高額となっていたり、14年度以降には見られない項目に高額な単価が設定されていたりしているものがあった。
(イ) 支払金額
a 総額及び1回当たりの平均金額
タウンミーティングの運営に関する請負契約について、13年度前期及び後期の契約金額、支払金額及び支払金額のうち14年度以降の契約に含まれていない新聞広告掲載料相当額を除いた金額をそれぞれのタウンミーティングの開催回数で除した1回当たりの平均金額は表5のとおりとなっていた。
年度
|
開催回数(a)
|
契約金額(円)
|
支払金額(円)
|
1回当たりの平均金額(b/a)
|
||
うち、新聞広告掲載料相当額を除いた金額(b)
|
||||||
13年度
|
前期
|
16回
|
386,473,217
|
386,473,217
|
349,559,942
|
2184万余円
|
後期
|
34回
|
552,802,943
|
552,802,943
|
452,023,365
|
1329万余円
|
|
14〜18年度
|
122回
|
−
|
1,230,580,810
|
1,230,580,810
|
1008万余円
|
b 電通からの請求金額
契約書によれば、請負業者は、運営業務が終了し、内閣府の検査が完了した後、代金を内閣府に請求するものとされている。そして、本契約は金額の確定した総価契約であることから、予定回数の変更等の特段の事情がない限り、契約金額と同額の支払が行われることとなり、13年度前期、後期ともに、請負業者である電通から、契約金額と同額の請求書が内閣府に提出されていた。
イ 14年度から18年度までのタウンミーティングの運営に関する請負契約について
(ア) 契約金額及び支払金額
14年度から18年度までの請負契約について、契約書、請求書等により、各契約ごとの支払金額を単価項目部分、実費精算部分、請求書において追加費用が明らかとなるよう単価項目とは別に設けられた項目(以下「追加項目」という。)の部分に分類して整理するなどすると、表6のとおり、14年度前期を除き入札の対象となった単価項目部分の支払金額が落札価格に開催回数を乗じて得た金額よりも多額となるなどの状況となっていた。
年度
|
開催回数
|
支払金額
|
落札価格(上段)
落札価格×開催回数(下段)
|
||||
うち単価項目部分
|
うち追加項目部分
|
うち実費精算部分
|
|||||
14年度
|
前期
|
11
|
79,114,457
|
63,970,907
|
0
|
15,143,550
|
6,892,180
75,813,980
|
後期
|
15
|
114,296,212
|
92,047,675
|
0
|
22,248,537
|
4,982,650
74,739,750
|
|
15年度
|
28
|
297,112,917
|
230,059,964
|
0
|
67,052,953
|
5,824,750
163,093,000
|
|
16年度
|
26
|
242,186,845
|
153,352,619
|
36,420,268
|
52,413,958
|
4,669,750
121,413,500
|
|
17年度
|
23
|
295,540,185
|
204,158,939
|
33,229,494
|
58,151,752
|
4,559,500
104,868,500
|
|
18年度
|
19
|
202,330,194
|
118,323,453
|
35,614,687
|
48,392,054
|
4,879,750
92,715,250
|
注(1)
|
落札価格は、落札金額に謝礼金を除き100分の105を乗じた金額である。ただし、14年度前期は実費精算部分も含めて入札しているが、表中の金額は、落札価格のうち、単価項目に係る部分の金額である。
|
注(2)
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14年度前期及び17年度は、落札者決定後に単価項目の追加が行われているが、表中の金額は、当該追加を反映した後の金額である。
|
注(3)
|
14年度前期の参加者募集チラシはモデル員数が仕様書において示されていないことから、14年度後期以降と同様の1,000枚として計算した。
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注(4)
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17年度の支払金額には、タウンミーティングの延期により生じた費用が含まれている。
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また、必要な調整を行った上で、実費精算部分を除いた支払金額の構成についてみると、員数の増加による単価項目部分の支払金額は14年度後期以降、追加費用の支払金額は16年度以降において、それぞれ相当な割合を占めていた。
このようにモデル員数と精算員数との間に大幅なかい離が生じている状態は、最も経済的に事業を行う業者が選定されなくなるおそれがあると認められ、また、追加費用の支払金額については競争の原理が機能していないことから、事前に実施が予想される項目についてできる限り事前に仕様書に反映させ、入札の対象とする必要があると認められた。
(イ) 仕様書
前記のとおり、内閣府は、タウンミーティング開催1回当たりに必要となる標準的な個々の業務と各業務ごとのモデル員数を仕様書に記載している。
そして、モデル員数は人数等で示されている項目と式数で設定している項目とがあるが、後者のうち、「内閣府との事前調整」の項目のように対象となる作業の内容が示されていなかったり、「託児室の設置」の項目のように保育士の雇用、ベビーベッド・遊具等の設置を含む旨の説明はあるがどのような場合に員数を増加させるかの説明がなかったりしているなど、単価設定の前提となる条件が明確ではない項目も見受けられた。
また、14年度から18年度までの各年度の契約において、次の事例のように、モデル員数と精算員数との間に継続的に後者が前者を上回るなど相当のかい離が生じている状況となっていた。
「警備員」のモデル員数は、平成14年度前期から18年度まですべて10名であった。しかし、精算員数は、14年度前期から18年度まで各回の平均で、順に、9.6名、26.3名、26.9名、15.0名、18.0名、17.3名となっていた。
(ウ) 予定価格
各年度の予定価格は、各業務ごとに算出した単価に、モデル員数を乗じて合計するなどして算定しているが、予定価格の算定方法を各年度ごとについてみると、〔1〕14年度前期は、当初の契約において予定価格算定のための単価を設定した74の項目のうち54の項目において、13年度の請負業者である電通及びその再請負先であるA社の人件費等単価証明書に記載された単価に一定の割引率を乗ずるなどして、〔2〕14年度後期から16年度までは、基本的に、14年度前期の各項目の契約単価を用いて、〔3〕17、18両年度は、基本的に、直近3契約分の契約単価を平均して、それぞれ算出した単価にモデル員数を乗ずるなどして予定価格を算定していた。
そして、モデル員数と精算員数との間に継続的に後者が前者を上回るなど相当のかい離が生じていたり、単価が他の取引の実例価格を調査してそれを考慮したものとはなっていなかったりしている状況となっていた。
(エ) 契約単価
単価項目及び契約単価の14年度以降の推移について、契約書等により確認したところ、16年度までにおいて単独で項目を設定することが疑問である項目が見受けられた。
そして、次の事例のように、特に16年度までにおいて契約単価が大幅に変動しているものが見受けられた。また、一般管理費についてみると、契約単価内訳書には独立した項目が設定されていないことなどから、どの単価項目にどの程度一般管理費が計上されているか不明となっていた。
「会場発言者マイク係」のモデル員数は、平成14年度から16年度まですべて3名であった。そして、この項目の契約単価は14年度から16年度までの間で、5,000円から20,000円までと大きく変動していた。
このような契約単価の決定方法の下では、ある単価を高額に設定した場合、他の単価が低額に設定されることとなることから、ある特定の単価が高額であることが直ちに支払金額の総額の増加となるものではない。しかし、内閣府が関与することなく落札者が契約単価を決定する方法は、落札者が予定価格算定に用いた単価よりも大幅に高い契約単価を設定した項目について精算員数が増加した場合に、当初の想定より大幅に高い費用を負担するリスクを内閣府が負うこととなる。
(オ) 精算
a 員数の指示等の記録について
単価項目に係る業務についての員数の指示や、追加作業を行わせる内閣府の指示がどのように行われているか検査したところ、請負業者に対する指示は適宜口頭で、あるいは打合せを経るなどして伝えられているとしているが、これらの指示を後日の精算に用いるために取りまとめて記録したものは作成されていなかった。
また、追加費用については、内閣府と請負業者の間で別途協議することとされているが、追加作業の内容及びこれに係る追加費用の算定方法、請求に当たって付すべき資料等について内閣府と請負業者との協議によりどのように決定されたかを示す記録はほとんどの場合において作成されていなかった。
b 単価項目の員数について
単価項目について、精算員数が本来精算されるべき員数と異なっているものの有無について検査した。その結果、次の(a)、(b)、(c)の事態が見受けられた。
(a) ハイヤー等の員数の上乗せについて
ハイヤー及び閣僚使用車の伴走車(以下「ハイヤー等」という。)の精算台数が運営マニュアルに添付されている閣僚等の行程表又は再請負先からの請求書により確認できた台数と異なっている事態(これに係る精算金額8,413,100円(消費税を除く。以下bにおいて同じ。))が、朝日広告社分で42回、電通分で1回、計43回のタウンミーティングにおいて見受けられた。
上記について、閣僚等の行程表等に記載されている台数より多い台数を請求書に記載した理由を朝日広告社から聴取したところ、次のように説明があった。
〔1〕 応札した時点で朝日広告社が想定していた配車の条件は、5ナンバー車で最寄りの空港(又は駅)からタウンミーティング会場への単純往復であったところ、TM室の主担当から、3ナンバー車のハイヤーを手配すること、閣僚等の行程に合わせ前日等からの手配や視察等の遠距離移動がある場合でも対応することを指示されたほか、ハイヤー等を現地で調達できず遠方から調達した場合も生じていた。
〔2〕 〔1〕により要した経費の請求に関し、内閣府に相談したところ、TM室の会計担当から契約単価で割り戻して台数を計上するよう指示され、所要経費に一般管理費を加えた金額を契約単価で割り戻して精算台数を算出した。
一方、内閣府に対しても上記に関し事情を聴取したところ、上記〔2〕に関しては確認できないとの説明があった。
そして、内閣府と朝日広告社との間で、どのような協議を経て精算された台数(これに係る精算金額計8,323,100円)となったかについては、書面による記録がないなどのため、確認できず、その妥当性について検証することは困難な状況であった。
(b) ハイヤー等以外の追加費用の単価項目への上乗せについて
上記(a)以外で本来精算されるべき員数と異なった員数で精算されていた単価項目の有無について、電通及び朝日広告社に対し当時の事情を聴取するなどして検査した。その結果、両社の説明等によれば、電通では15年度の15回、朝日広告社では17年度の11回のタウンミーティングにおいて、いずれも追加作業が、追加項目として明示されず、単価項目の員数に上乗せした請求(両社の合計で40,710,500円)が行われ、それに沿って精算が行われていた。
また、内閣府が支払った費用の妥当性については、内閣府の員数の指示及び追加作業の指示を後日の精算に用いるために取りまとめて記録したものがないことや、追加作業の内容及びこれに係る追加費用の算定方法等について内閣府と請負業者との協議によりどのように決定されたかを示す記録がないことなどから、検証することは困難な状況であった。
(c) 員数が式数で設定されている単価項目の精算が統一的な方法により行われていないものについて
仕様書において員数を式数で設定しているもので複数式による精算があった項目のうち、「託児室」及び「タウンミーティング当日議事概要」について、式数の算定方法が仕様書等において明確に示されておらず、統一的な方法で精算が行われていない事態が見受けられた。
このうち、託児室については、各年度の仕様書において、未就学児5名程度収容の部屋を1室借り上げることとされており、その部屋の借上げに要する費用自体は他の会場借上げに関する費用と併せて実費精算することとされている。
一方、保育士の雇用、ベビーベッド・遊具等の設置を含む託児室の設置(それらの機材等に関する準備、運搬、搬入、設置、当日の調整・操作、片付け、撤去等一切の作業を含む。)に関する費用は、別途独立の項目が設けられ、1式当たりの契約単価が定められているが、どのような場合に式数を増加させるかなど、式数の算定方法については明確に示されていなかった。
そして、託児室の精算員数についてみると、複数式で精算が行われたタウンミーティングが15年度から18年度までで計26回(複数式の精算により増加した金額計1,970,000円)見受けられた。複数式の請求を行った理由は、請負業者の説明によれば、15年度の請負業者である電通では、託児希望者が会場借上げに関し仕様書に記載された5名を超え、これに対応するためとのことであり、また、16年度から18年度までの請負業者である朝日広告社では、手配した保育士・介護士等の派遣した人数をもって式数としたとのことであった。
c 追加項目について
追加費用について、単価項目の員数に上乗せして精算を行っていた事態については前記のとおりであるが、多くの場合追加費用は、請求書において、追加項目として明示されて請求されている。
そして、追加項目として明示されている追加費用は16年度以降の各年度において見受けられ、これらの金額、内容等について検査したところ、16年度は計3642万余円、17年度は計3322万余円、18年度は計3561万余円となっていたが、これらの内閣府が支払った費用の妥当性については、各年度とも追加作業を行わせる内閣府の指示を後日の精算に用いるために取りまとめて記録したものがなく、また、追加作業の内容及びこれに係る追加費用の算定方法等について内閣府と請負業者との協議によりどのように決定されたかを示す記録もほとんどの場合においてないことなどから、検証することは困難な状況であった。
(カ) 18年度の第4回以降に実施されたタウンミーティングに係る精算
内閣府では、18年12月13日に公表されたタウンミーティング調査委員会の調査報告書において精算業務の適正化に向けた措置を速やかに講じるよう指摘されたことなどを踏まえ、同調査報告書公表時に未精算であった18年度の第4回以降のタウンミーティング16回分の精算に当たっては、員数、金額等について、運営マニュアル等を通じた内閣府の指示の有無や実際に施工した再請負先の会社から朝日広告社にあてた請求書等の客観的資料を基に裏付け・確認されるものをもって、厳格に精算を行うこととした。
そして、例えばハイヤー等については、朝日広告社を通じて、実際に配車したハイヤー会社から朝日広告社の再請負先の会社への請求書を特に徴取し、それにより実費精算を行ったり、また、追加費用については、再請負先の会社が朝日広告社にあてた請求書を徴取して、それにより実費精算を行ったりなどして、請求金額211,359,064円に対して178,968,739円を支払っていた。
ウ 謝礼金について
13年度から18年度までのタウンミーティングの開催に当たり、民間人有識者等に対し謝礼金を支払っているものがある。
(ア) 13年度における謝礼金の支払
13年度においては、電通から内閣府に提出された請求明細書に、各回の開催ごとに「出演者謝礼」という項目があり、その総額は計11,719,287円(1回の開催で最高908,166円、最低118,000円、平均約23万円。消費税を除く。以下ウにおいて同じ。)であった。
また、どのように「出演者謝礼」の算定を行ったかについては、請負業者である電通の説明によれば、各地方新聞社等が登壇者、コーディネーター、司会者、手話通訳者等に関し支払った費用を集計するなどしたものであった。
(イ) 14年度以降における謝礼金の支払
仕様書及び契約単価内訳書では、民間人有識者等に対する謝礼金については内閣府が指定した単価が契約単価となっていて、その金額は「民間人有識者謝礼金」は30,000円、「依頼登壇者謝礼金等」は20,000円、「その他の協力者謝礼金等」は5,000円であった。
そして、その支払状況を領収書等により確認したところ、14年度から18年度までの合計で、4,965,000円となっていた。
また、14年度以降の謝礼金の支払状況を上記に加え、民間人有識者等への交通費等並びにコーディネーター、司会者及び手話通訳者に係る支払金額を含めて13年度の「出演者謝礼」と比較した1回当たりの平均金額についてみると、13年度前期及び13年度後期は273,643円及び215,911円、14年度から18年度までは133,397円から265,725円となっていた。
ア 会計事務処理の体制等について
(ア) 会計事務職員の配置状況
タウンミーティングの運営に関する請負契約について、関係する主な会計事務職員の配置状況は表7のとおりとなっていた。
会計事務職員
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任命されている職員
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支出負担行為担当官
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会計担当参事官
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官署支出官
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会計課長
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支出負担行為担当官の代行機関
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会計課総括課長補佐
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官署支出官の代行機関
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会計課調査官
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検査職員
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会計課契約第1担当補佐
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監督職員
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会計課契約第1、2係長
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支出負担行為担当官の事務のうち、14年度以降のタウンミーティングの運営に関する請負契約に係る支出負担行為に関する事務の一部は、代行機関が行っている。
また、同契約に係る検査に関する事務については、会計課契約第1担当補佐が支出負担行為担当官の補助者として任命されその事務を行っている。
(イ) TM室の組織及び業務
TM室は室長以下十数名程度の職員によって構成されていたが、初代を除き室長は内閣府大臣官房政府広報室長との兼務となっているほか、室員の多くは内閣府大臣官房他課との併任職員又は他省庁からの出向職員となっていた。
TM室の業務は、主として各省庁からの出向職員が実施する主担当業務と、内閣府大臣官房との併任職員等が実施する会計担当等の業務がある。このうち会計担当業務は、タウンミーティング実施に係る予算管理及び請負業者から内閣府に提出された請求書の一次的な審査等を担当するものであり、おおむね会計課との併任職員1名を充てていた。
また、TM室は18年12月16日に廃止され、その後は、政府広報室がそれまでTM室で行っていた請求書の一次的な審査を行った。
(ウ) タウンミーティング実施に係る会計事務処理の流れ
タウンミーティングの企画、実施等についてはTM室が行い、予定価格の算定や契約の手続などの会計事務処理については会計課が行っているが、会計課の職員がタウンミーティングの開催現場へ赴いて確認を行うことは実務上困難であるとして、14年度以降の実質的な給付の完了の確認はTM室の主担当に、また、各年度の請求書の一次的な審査はTM室の会計担当にそれぞれ委ねている状況となっていた。
イ 契約締結の事務処理、給付の完了の確認、請求書の審査等について
(ア) 13年度の契約に係る手続
13年度の契約については、前記のとおり事業の実施を先行させ、契約書の作成等の手続を事後的に行う処理をするなどしていたと認められた。
(イ) 14年度から18年度までの契約に係る手続
15年度、17年度及び18年度の契約については、前記のとおり、事業の実施を先行させ、落札者が開札後速やかに提出することとなっている契約単価内訳書の受領や契約書の作成等の手続を事後的に行う処理をするなどしていたと認められた。
(ウ) 員数の指示等の記録
前記のとおり、14年度以降の単価契約において、員数等の指示を後日の精算に用いるために取りまとめた記録が作成されておらず、また、追加費用の算定方法等について内閣府と請負業者との協議によりどのように決定されたかを示す記録がほとんどの場合において作成されていなかった。
(エ) 給付の完了の確認
員数の確認を含む給付の完了の確認をするための検査は、支出負担行為担当官の補助者である会計課の職員が検査職員として行うこととされているものの、この検査職員は、個々のタウンミーティングについて実際に現地に赴くことは実務上困難であるとして、TM室の主担当を確認者として契約業務の履行の確認を行わせ、その確認をもって給付の完了を確認したものとしていた。
そして、この確認者である主担当がどのように実際の員数等を確認していたかについては、内閣府の説明によると、主担当はタウンミーティングの開催時においてはその運営に注力しており、主としてタウンミーティングの円滑な開催に支障はないかという点から会場の設営状況やスタッフの配置状況等を目視で確認していたものの、多岐にわたる単価項目について精算事務を念頭に置いた正確な員数等の確認の実施は困難であり、また、十分に行われていなかった。そして、員数等の確認についての書面による記録も作成されていなかった。
(オ) 請求書の審査
内閣府の説明によると、請求は、まず仮の請求書が請負業者からTM室の会計担当へ提出され、その審査を経た後に正式の請求書を受領し、その後会計課の職員による審査が行われていた。
しかし、14年度以降の単価契約については、前記のとおり員数等の指示を後日の精算に用いるために取りまとめた記録が作成されていなかったこと、追加費用の算定方法等について内閣府と請負業者との協議によりどのように決定されたかを示す記録がほとんどの場合において作成されていなかったこと、また、員数等の確認についての書面による記録も作成されていなかったことなどから、TM室の会計担当も会計課も、請求書に記載された個々の員数等を的確に審査することができない状況となっていた。
(カ) 請求書の日付等
請負業者からの請求書に日付が記載されているかについて確認したところ、16年度までは記載されていなかったが、17年度からは記載されていた。
(キ) 内部監査の実施状況等
内閣府の所掌に係る会計の監査は、内閣府本府組織令(平成12年政令第245号)に基づき会計課が行うこととされている。
内閣府では、14年度以前の会計経理については、通常の支出負担行為決議書等の決裁の過程で会計課の経理担当者が行う確認行為等をもって会計経理に関する監査としていたが、会計経理に関する監査を充実させるため、16年7月に会計事務監査実施要領(内閣府大臣官房会計課長決定)を制定し、15年度の会計経理に関する監査から同要領に基づく会計事務監査を実施している。この内部監査の結果については、会計事務監査報告書の中で、会計事務に関して重大な法令違反等は見受けられず、全体としては良好に会計事務が執行されているなどと評価されており、タウンミーティングの請負契約に係る会計経理については、特に個別に取り上げられていなかった。
また、内部牽制についても、結果的に前記の契約書の日付をさかのぼって記載するなどの不適切な処理を防止することができなかった。
ア 本院は、平成13年度から18年度までの間に内閣府が実施したタウンミーティングの運営に関する請負契約について、参議院からの要請に基づき、3項目に関して検査を実施した。
これらの検査結果は、次のとおりである。
(ア) 契約方法、契約手続などの状況
a 13年度の契約について
13年度前期においては、緊急にタウンミーティングの開催準備に取り掛かる必要があることなどから一定の実績のある電通と随意契約の契約方式により、また、13年度後期においては運営業務に関する知見がTM室に十分蓄積されておらず直ちに運営業務を定型化して競争に付すことができなかったことから企画競争を行った後にその評価が最上位であった電通と随意契約の契約方式により、いずれも総価契約を締結していた。
そして、上記の契約については、事業の実施を先行させ、契約を確定させるまでに必要となる見積書の徴取、支出負担行為決議書及び契約書の作成等の手続を事後的に行う処理をして、実際には請負業務を了した後に契約金額を確定させていたと認められた。さらに、支出負担行為決議書、契約書等の日付をさかのぼって記載していたと認められた。
b 14年度以降の契約について
14年度以降においては、13年度にかなりの回数をこなしたことにより運営業務についてのノウハウが蓄積されたことを踏まえ、ある程度定型化した契約を競争入札で行うことが可能となったとして、一般競争により各年度のタウンミーティング開催1回当たりの金額について最も低い金額を入札したものを落札者とすることとし、14年度前期、16年度、17年度及び18年度は朝日広告社、14年度後期及び15年度は電通が落札者となっていた。
そして、その契約形態は、タウンミーティングの基本的な開催形式は定型化されたものであるが、出席閣僚等の対応及び警備に係る人数等が毎回異なりそれに対応するために、標準的な個々の業務ごとに単価を定める単価契約としていた。
このうち、15年度の電通、17年度及び18年度の朝日広告社との契約において、事業の実施を先行させ、契約を確定させるまでに必要となる落札者が開札後速やかに提出することとなっている契約単価内訳書の受領や契約書の作成等の手続を事後的に行う処理をしていたり、契約書等の日付をさかのぼって記載したりしていたと認められた。
特に、契約単価内訳書の受領が事業の開始後になっている事態については、落札者が、員数の実績を確認した後にモデル員数に比べて実際の員数が大きく増加した項目に高い契約単価を設定することを可能とするものであり、発注者に過大な費用を支払うリスクを生じさせるものであった。
(イ) 契約金額、支払金額など契約執行の状況
a 13年度の契約の契約金額、支払金額等について
13年度の契約は、随意契約による総価契約であり、契約金額は支払金額と同額となっていた。そして、この契約金額は、支出負担行為決議書の起案が、実際にはタウンミーティングの事業の終了後であったと認められることなどから、請負業務を了した後に確定させていたと認められた。
各契約に係る仕様書は、実際にはタウンミーティングの事業の終了後に決定されたものであった。
予定価格は、13年度前期はタウンミーティングの事業の開始後に、後期は予定価格調書に記載された日付よりも後に決定されたものであったほか、単価に関し、多くの項目で電通又はその再請負先が作成した資料が根拠となっており、他の取引の実例価格を調査してそれを考慮することは行われていなかった。また、14年度以降の単価契約において設定されている単価項目とおおむね対応すると思料される項目において、一般競争契約となった14年度以降の契約単価より高額となっているものがあるなどしていた。
また、支払金額については、13年度の1回当たりの平均金額は一般競争契約となった14年度以降に比べて高額となっていた。
b 14年度以降の契約の契約金額及び支払金額について
14年度以降の契約の契約形態は、単価契約であるため、契約期間中の総額やタウンミーティング1回当たりの金額が契約金額として定められていない。
支払金額は、14年度前期を除き入札の対象となった単価項目部分の支払金額が落札価格に開催回数を乗じて得た金額よりも多額となるなどの状況となっていた。
また、員数の増加による単価項目部分の支払金額は14年度後期以降、追加費用の支払金額は16年度以降において、それぞれ相当な割合を占めていた。
c 14年度以降の契約の仕様書について
14年度以降の契約の仕様書について、対象となる作業の内容やどのような場合に員数を増加させるかの説明がないなど、単価設定の前提となる条件が明確ではない項目があったり、モデル員数と精算員数との間に継続的に後者が前者を上回るなど相当のかい離が生じていたりしていた。
d 14年度以降の契約の予定価格について
モデル員数と精算員数との間に継続的に後者が前者を上回るなど相当のかい離が生じていたり、単価が他の取引の実例価格を調査してそれを考慮したものとはなっていなかったりしていた。
e 14年度以降の契約の契約単価について
落札者は開札後速やかにあらかじめ仕様書に示されたモデル員数にそれぞれ単価を乗じた合計額が落札金額と一致する範囲内で自由に単価を設定した契約単価内訳書を提出することとされ、契約単価は、この契約単価内訳書に記載された単価を用いることとなっていて、内閣府が関与することなく落札者が決定する仕組みとなっていた。そして、16年度までにおいて単独で項目を設定することが疑問である項目が見受けられたり、特に16年度までにおいて契約単価が大幅に変動しているものが見受けられたりしていた。また、一般管理費についてみると、契約単価内訳書には独立した項目が設定されていないことなどから、どの単価項目にどの程度一般管理費が計上されているか不明となっていた。
このような契約単価の決定方法の下では、ある単価を高額に設定した場合、他の単価が低額に設定されることとなることから、ある特定の単価が高額であることが直ちに支払金額の総額の増加となるものではない。しかし、内閣府が関与することなく落札者が契約単価を決定する方法は、落札者が予定価格算定に用いた単価よりも大幅に高い契約単価を設定した項目について精算員数が増加した場合に、当初の想定より大幅に高い費用を負担するリスクを内閣府が負うこととなる。
f 14年度以降の契約に係る精算について
(a) 単価項目に係る業務についての員数の指示や、追加作業を行わせる内閣府の指示を後日の精算に用いるために取りまとめて記録したものは作成されておらず、また、別途協議することとされている追加費用について、追加作業の内容及びこれに係る追加費用の算定方法、請求に当たって付すべき資料等について内閣府と請負業者との協議によりどのように決定されたかを示す記録がほとんどの場合において作成されていなかった。
(b) 契約単価の中で行うべき業務と追加作業の区別が明確でなかったり、請負業者が追加作業として行った事務が、請求書において追加項目として明示されず、単価項目の員数に上乗せすることにより請求、精算が行われ、追加費用が明確とならなくなったりしていた事態が見受けられた。
(c) 員数が式数で設定されている単価項目について、式数の算定方法が仕様書等において明確に示されておらず、統一的な方法で精算が行われていない事態が見受けられた。
(d) 内閣府では、タウンミーティング調査委員会の調査報告書において、精算業務の適正化に向けた措置を速やかに講じるよう指摘されたことなどを踏まえ、同調査報告書公表時に未精算であった18年度のタウンミーティング16回分の精算に当たっては、員数、金額等について、客観的資料を基に裏付け・確認されるものをもって、厳格に精算を行うこととし、実費精算を行うなどしていた。
(ウ) 会計事務処理の状況
a 契約に係る手続について
前記(ア)で記述したとおり、事業の実施を先行させ、契約を確定させるまでに必要となる契約書の作成等の手続を事後的に行う処理をするなどしていたと認められた。
b 員数の指示等の記録について
前記(イ)f(a)で記述したとおり、単価項目に係る業務についての員数の指示や追加作業を行わせる内閣府の指示を後日の精算に用いるために取りまとめた記録が作成されておらず、また、追加作業の内容及びこれに係る追加費用の算定方法等について内閣府と請負業者との協議によりどのように決定されたかを示す記録がほとんどの場合において作成されていなかった。
c 給付の完了の確認について
14年度以降の契約に係る給付の完了の確認をするための検査は、TM室の主担当を確認者として契約業務の履行の確認を行わせ、検査職員である会計課の職員はその確認をもって給付の完了を確認したものとしていた。
そして、確認者による正確な員数等の確認は十分に行われておらず、また、員数等の確認についての書面による記録も作成されていなかった。
d 請求書の審査について
14年度以降の契約に係る請求は、まず仮の請求書が請負業者からTM室の会計担当へ提出され、その審査を経た後に正式の請求書を受領し、その後会計課の職員による審査が行われていた。
しかし、請求書の審査は、単価項目に係る業務についての員数の指示や追加作業を行わせる内閣府の指示を後日の精算に用いるために取りまとめた記録が作成されていなかったこと、追加作業の内容及びこれに係る追加費用の算定方法等について内閣府と請負業者との協議によりどのように決定されたかを示す記録がほとんどの場合において作成されていなかったこと、また、員数等の確認についての書面による記録も作成されていなかったことなどから、TM室の会計担当も会計課も、請求書に記載された個々の員数等を的確に審査することができない状況となっていた。
e 内部監査の実施状況等について
内閣府の所掌に係る会計の監査は、会計課が行うこととされており、会計事務監査実施要領を制定してそれに基づき監査を行い報告書を作成するようになった15年度以降の会計経理に関する会計事務監査報告書によると、会計事務に関して重大な法令違反等は見受けられず、全体としては良好に会計事務が執行されているなどと評価されており、タウンミーティングの請負契約に係る会計経理については、特に個別に取り上げられていなかった。
また、内部牽制についても、結果的に前記(ア)で記述したとおり契約書の日付をさかのぼって記載するなどの不適切な処理を防止することができなかった。
イ 上記の検査の結果を踏まえ、内閣府では、今後の事業の実施に当たっては、以下の点に留意することが必要である。
(ア) タウンミーティングの運営に関する請負契約の契約手続について、事業の実施を先行させ、契約を確定させるまでに必要となる契約書の作成等の手続を事後的に行う処理をしていたり、契約書等の日付をさかのぼって記載したりしていたと認められたものがあり、このような会計法令に反するなど不適切な処理が繰り返されることのないよう、法令遵守の徹底等の再発防止策を講ずること
(イ) 契約金額、支払金額等について、総価契約を締結した13年度において実際には請負業務を了した後に契約金額を確定させていた事態、単価契約を締結した14年度以降において、内閣府が関与することなく落札者が契約単価を決定することとしていた事態、単価設定の前提となる条件が仕様書において明確でなかったり、精算員数がモデル員数を継続的に大幅に上回っていたり、請負業者との協議の記録が残されないまま追加費用が多額に発生していたりして落札価格に比べて多額の費用を支払うこととなっていた事態などはコスト意識が十分であったとは認められず、今後、事業が一層経済的に実施されるよう努めること
(ウ) 請負契約の会計事務処理について、単価項目に係る業務についての員数の指示や追加作業を行わせる内閣府の指示を後日の精算に用いるために取りまとめた記録が作成されていなかったこと、また、員数等の確認についての書面による記録も作成されていなかったことなどから、TM室の会計担当も会計課も、請求書に記載された個々の員数等を的確に審査することができない状況となっており、今後の請負契約においては必要な記録の整備等が的確に行われるよう、会計機関が必要な指示や態勢整備を行うこと
以上のとおり報告する。
そして、本院としては、今後とも、同様の請負契約等が適切に実施されているか多角的な観点から引き続き検査していく。