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  • 平成18年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第3節 特定検査対象に関する検査状況

都道府県における不適正な経理処理に係る国庫補助金等の状況について


第4 都道府県における不適正な経理処理に係る国庫補助金等の状況について

検査対象
厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省、防衛省(平成19年1月8日以前は内閣府防衛庁)
検査の対象とした経理処理
47都道府県のうち、平成10年11月から19年4月までの間に実施した内部調査により明らかにされた13府県における不適正な経理処理
不適正な経理処理によりねん出されるなどした金額
37億4265万円
(13府県)
(うち会計実地検査を行った5府県に係る金額23億6169万円)
上記5府県のうち本院が確認した国庫補助金等相当額
7634万円
(3府県)

1 検査の背景

 一部の府県において、長年にわたり不適正な経理処理による資金のねん出が行われていた事態が、平成18年から19年にかけて明らかになり、公金を扱う地方公共団体における経理について社会的な関心が高まっている。そして、19年6月に参議院決算委員会が行った「平成17年度決算審査措置要求決議」においても、政府に対して、地方自治体の裏金に対する指導監督について適切な措置を講じるべきであるなどとされている。
 このような事態は、一義的には地方公共団体自体の経理の問題であるが、不適正な経理処理の対象となった公金の中に、国庫補助金等(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「補助金適正化法」という。)第2条第1項に規定する「補助金等」のほか、国の事業を地方公共団体へ委託する場合に必要な経費、国が支出を委任している委嘱等事業の実施に要する経費を含む。以下同じ。)が含まれていれば、本院としてもその状況を確認し、必要に応じて是正させる必要がある。
 本院は、平成6年度決算検査報告において、公共事業に係る国庫補助事業の食糧費について原則として懇談会の経費は補助の対象としないことなどとするよう改善させた事項を、8、9両年度の決算検査報告において、国が都道府県に委嘱又は委託して実施している教育関係事業等について架空の名目により旅費、謝金等を不正に支出し、これを別途に経理し、同事業等の実施とは直接関係のない用途に使用するなどしていた事態を指摘した事項を掲記している。また、7、8、9各年度の決算検査報告において、旅費等の事務費の不適正な経理処理に対する都道府県の内部調査等の取組等について検査した状況を掲記しており、これらを通じて広く警鐘を鳴らし、各地方公共団体の自浄作用を促してきた。このうち、平成9年度決算検査報告の「国庫補助事業に係る旅費等の執行について」では、10年10月末までの累計で、23道府県において総額431億余円の旅費等の執行に関して不適正な経理処理が行われており、これに関連する国庫補助事業について国庫補助金等が返還又は減額されるなどした旨を記述している。
 本院としては、その後も、地方公共団体における様々な国庫補助事業の実施状況について、毎年重点を置いて検査を行っており、その結果、不適切と認められた事態についてはその都度、決算検査報告に掲記しているが、昨今の状況を踏まえ、都道府県における不適正な経理処理に係る国庫補助金等の状況について検査を行うこととした。


2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 上記のような状況を踏まえ、合規性等の観点から、不適正な経理処理があったとされる府県において、内部調査の実施状況や不適正な経理処理の具体的な内容はどのようになっているか、不適正な経理処理の対象となった公金の中に国庫補助金等が含まれていないかに着眼して検査した。
 検査に当たっては、全都道府県における10年11月以降の内部調査の実施状況を把握し、内部調査を実施している府県からその調査結果の報告を求め、このうち、不適正な経理処理により資金がねん出されていたことなどが内部調査によって明らかにされている府県を対象として、次のような方法により検査した。
〔1〕 内部調査が最近実施され、かつ、不適正な経理処理の金額が相当規模の府県に対しては、会計実地検査を行い、国庫補助金等の受入れ等の関係資料、府県の支出命令書、物品購入等の関係資料等を確認するなどする。
〔2〕 〔1〕以外の県に対しては、内部調査の結果を裏付ける関係資料等の報告を求めて確認するなどする。

3 検査の状況

(1) 47都道府県における内部調査の実施状況

 前記のとおり、本院では平成9年度決算検査報告において事務費の不適正な経理処理に対する都道府県の内部調査等の取組等について検査した状況を掲記しており、その際に、10年10月末日現在における都道府県の内部調査の実施状況等について報告を求め、その内容を調査、検討している。そこで、その後に都道府県が行った内部調査の状況を把握するために、10年11月以降19年4月末日までの間に、都道府県自らが全庁的に行った内部調査(注1) の実施状況に関して報告を求めた。

 都道府県自らが全庁的に行った内部調査  都道府県が有識者等に委嘱して設置したいわゆる外部調査委員会等が主体となった調査を含むが、監査委員等が行う監査は含まない。


 47都道府県からの報告によると、表1のとおり、〔1〕内部調査を実施していたもの18府県、〔2〕内部調査を実施中のもの2府県(いずれも〔1〕と重複)、〔3〕内部調査を実施していないもの29都道県となっている。
 そして、内部調査を実施していた18府県については、〔1〕内部調査の結果、不適正な経理処理があったとしているもの13府県、〔2〕不適正な経理処理はなかったとしているもの5県となっている。
 さらに、不適正な経理処理があったとしている13府県(内部調査の件数(注2) 18件)について、不適正な経理処理と国庫補助金等との関連についてみると、表1のとおり、〔1〕関連があったとしているもの5府県(内部調査5件)、〔2〕関連がなかったとしているもの3県(内部調査4件)、〔3〕関連の有無は不明であるとしているもの7県(内部調査9件)となっている。

 内部調査の件数  原則として、内部調査ごとに1件とカウントしているが、実質的に同一の事態を解明するに当たり複数回にわたって調査を行っている場合や、知事部局の調査グループが行った調査内容を外部調査委員会等が検証しているような場合は1件としている。


表1 47都道府県における平成10年11月以降の内部調査の実施状況(19年4月末現在)
内部調査の実施状況
都道府県名
実施期間
対象年度
不適正な経理処理の有無
内部調査の結果不適正な経理処理とされた金額(千円)注(1)
国庫補助金等との関連の有無
実施している
(18府県)
山形県
14年5月〜12月
12年度
(13府県)
1,203
有5府県
無  3県
不明7県
15年5月〜11月
13年度
441
新潟県
10年8月〜12月
9年度
538
不明
18年9月〜11月
16年度〜18年度
3,118
不明
19年2月〜4月
18年度
971
岐阜県
18年7月〜9月
4年度〜18年度
1,697,221
不明
静岡県
〔1〕 15年3月
〔2〕15年4月〜8月
9年度〜14年度
208,301
不明
三重県
18年7月
17年度
650
大阪府
18年12月〜19年2月
10年度〜18年度
約68,800
兵庫県
10年5月〜11年1月
7年度〜9年度(一部事務所については、6年度〜9年度)
182,943
鳥取県
〔1〕 18年9月〜19年2月
〔2〕 18年9月〜11月
(教育委員会分)
11年度〜18年度
〔1〕24,966
〔2〕2,348
不明
島根県
15年9月
14年度
4,000
香川県
〔1〕14年1月〜3月
〔2〕14年12月〜15年1月
(補充調査)
8年度〜13年度
〔1〕856,576
〔2〕55,308
高知県
14年1月〜6月
8年度以降
74,569
不明
佐賀県
16年6月〜17年3月
10年度以前
90,819
不明
17年8月〜10月
調査時点
23,811
不明
18年10月〜11月
17年度
199,983
長崎県
18年10月〜19年1月
11年度〜18年度
424,538
不明
茨城県
18年8月中旬
調査時点
(5府県)
神奈川県
毎年度
毎年度
愛知県
毎年度
毎年度
京都府
18年8月
調査時点
山口県
18年10月
18年度
実施中
(2府県)
山形県
18年11月〜
18年度
     
大阪府
19年3月〜
17年度
   
実施していない
(29都道県)
北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、滋賀県、奈良県、和歌山県、岡山県、広島県、徳島県、愛媛県、福岡県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
 不適正な経理処理の内容は様々であり、資金のねん出を伴わないものも含まれている。詳細は、検査の結果をまとめた表12 及び表13 参照。
 複数の調査を実施している府県があるため、合計しても13府県にならない。

 そこで、検査に当たっては、本年次、不適正な経理処理があったとされている13府県のうち、内部調査が最近実施され、かつ、不適正な経理処理の金額が相当規模となっている5府県(大阪府、岐阜、鳥取、佐賀、長崎各県)については会計実地検査を行い、それ以外の8県については内部調査の結果を裏付ける関係資料等の報告を求めて確認するなどして、検査することとした。
 今回、府県の内部調査の結果等を基に、本院が検査を実施した範囲においては、以下のような状況となっている。

(2) 長崎県

ア 県による調査の実施

 本院が10年に行った「地方公共団体における国庫補助事業に係る事務費の執行について」の報告依頼に対して、長崎県からは、10年10月末以前は、不適正な経理処理に関する内部調査を行っていない旨の回答を得ている。その後、11年に、知事の指示により県が調査を行った結果、物品調達に関する不適正な経理処理が明らかとなったことから、県は、その解消と再発防止を指示していたとしている。
 しかし、18年4月に、土木部住宅課において不適正な物品調達が行われている事態が判明したことを受け、県では、同年10月、内部調査特別チームを編成するとともに、11月には外部の有識者9名の委員からなる第三者機関の物品調達等外部調査委員会を設置し、公安委員会を除く248部署及び文具納入業者91者を対象に、11年度以降における不適正な物品調達に関する調査に着手した。
 そして、内部調査特別チームは、調査対象の部署及び業者に対して調査項目を示して回答を求め、その報告に基づいて選定した部署等に対してヒアリング調査、書類調査等を実施し、また、物品調達等外部調査委員会は、内部調査特別チームとの並行調査として、関係部署及び納入業者の調査、内部調査の検証等を実施し、18年11月及び19年1月に調査結果を公表した。

イ 不適正な経理処理の内容等(県の調査結果の概要)

 県の調査結果によれば、次のような手法等により資金をねん出するなどしていた。
〔1〕 「預け」
 架空の物品調達により物品の納品なしに代金名目で一定額を納入業者へ支払い、その公金を納入業者に管理させていたもの 
〔2〕 「書き換え」
 請求書を、各課が会計課を通さずに直接調達できる5,000円以下に小分けして書き換えし、請求書と異なる物品を納入させていたもの
 このうち、「預け」は、248部署のうち68部署において行われており、その総額は、表2のとおり、11年度期首額2億2484万余円、11年度から18年度までの発生額1億8290万余円、計4億0775万余円となっている。そして、費消された額は計3億7347万余円であり、その使途は、公用で使用したものと判断できたもの(42.6%)のほか、他部署への配分(33.4%)、私的流用等の使用(4.6%)などもあったとされている。
 また、「書き換え」は、55部署において行われており、その総額は計1678万余円(12年度から18年度)となっている。

表2 「預け」の発生額及び費消額
(単位:千円)
年度
区分
11
12
13
14
15
16
17
18
合計
期首残高
224,849
発生額
19,851
17,262
22,033
29,512
41,701
34,248
19,026
△732
182,901
費消額
174,466
27,973
25,203
25,191
33,669
36,440
36,585
13,948
373,475
期末残高
16,816
「預け」の総額
11年度期首残高+11年度から18度までの発生額=4億0775万余円
注(1)
 各欄に金額の確認できない部署のものが含まれているため、「期首残高」に「発生額」の計及び「費消額」の計を加減しても「期末残高」には一致しない。
注(2)
 平成18年度においては、「預け」の発生額はなく、△732千円は県の調査以前の18年7月時点に業者から県に返還されたものである。

ウ 不適正な経理処理と国庫補助金等との関連

 本院は、県の職員や業者からの確認書類等により、県の調査結果の事案の概要、調査時の残額、費消額等を聴取し、また、これらの裏付けとして、支出命令書等の会計書類、業者の納入関係書類があるものはそれらにより、県の調査結果の内容について検査した。
 しかし、不適正な経理処理と国庫補助金等との関連については、県の調査結果では明らかにされていないことから、これを検査したところ、次のような状況となっていた。

(ア) 「預け」と国庫補助金等との関連

a 国庫補助金等との関連の有無が確認できたもの
[18部署、「預け」の額1億4058万余円]

 前記68部署のうち、18部署については、会計書類等が保存されていた13年度以降にも「預け」を行っていた。これらについて県の支出命令書等の会計書類を検査したところ、このうち、14部署における13年度以降の「預け」(1億3525万余円) の中には、公共事業に係る事務費等を中心とした国庫補助事業に係る支出が含まれており、一方、残りの4部署における13年度以降の「預け」(533万余円)については、県単独事業に係る支出のみとなっていて、国庫補助事業に係る支出は含まれていなかった。
 そして、上記の14部署の「預け」について支出命令書ごとに精査し、一つの国庫補助金等しか含まれていない支出科目の支出については当該国庫補助事業の補助率等により、また、複数の国庫補助金等が含まれている支出科目の支出については、当該科目の金額に対する国庫補助事業の事務費等の金額の比率及び当該科目から支出された国庫補助事業の補助率により、国庫補助金等相当額を算定したところ、「預け」のうちの国庫補助事業に係る支出に相当する額(以下「国庫補助対象相当額」という。)は計6944万余円(13年度から17年度)、これに係る国庫補助金等相当額は計3722万余円(同)となっていた。
 これを所管別及び年度別に示すと、表3のとおりである。

表3 「預け」に関する国庫補助金等相当額の所管別・年度別分類
(単位:円)
所管
「預け」に含まれていた国庫補助金等
区分
年度
合計
13
14
15
16
17
厚生労働省
中小企業福祉事業費等補助金等3補助金
国庫補助対象相当額
57,672
26,266
4,602
5,832
94,372
国庫補助金等相当額
41,775
13,017
2,277
2,747
59,816
農林水産省
畑地帯総合整備事業費補助等56補助金
国庫補助対象相当額
5,897,487
7,068,247
10,955,018
4,668,603
2,496,656
31,086,011
国庫補助金等相当額
2,912,894
3,570,882
5,802,672
2,577,783
1,441,979
16,306,210
国土交通省
河川等災害復旧事業費補助等51補助金
国庫補助対象相当額
4,261,595
8,084,779
9,369,351
12,796,678
3,745,654
38,258,057
国庫補助金等相当額
2,068,268
4,226,520
5,207,708
7,210,431
2,146,087
20,859,014
防衛省
障害防止対策事業費補助金
国庫補助対象相当額
3,073
3,073
国庫補助金等相当額
1,597
1,597
合計
国庫補助対象相当額
10,216,754
15,182,365
20,328,971
17,471,113
6,242,310
69,441,513
国庫補助金等相当額
5,022,937
7,812,016
11,012,657
9,790,961
3,588,066
37,226,637

 その一例を示すと次のとおりである。

<事例1>

 A部署では、平成18年2月3日に、ノート、ボールペン等を購入することとして、支出負担行為決議書兼支出命令書(249,270円)を作成し、これに基づいて同月7日、業者に同額を支払っていた。しかし、支払時点では、実際には上記の物品は納品されておらず、業者への「預け」とされていた。
 そして、この「預け」とされた249,270円には、国土交通省所管の交通安全施設等整備事業費補助及び河川等災害復旧事業費補助の事務費が含まれており、これに係る国庫補助金相当額を算定すると計141,948円となる。

b 国庫補助金等との関連の有無が確認できなかったもの
[65部署(15部署はaと重複)、「預け」の額2億6196万余円]

 68部署のうち65部署の12年度以前に行われた「預け」(2億6196万余円)については、会計書類等が保存期限(5年)の経過により既に廃棄されていたことなどから、国庫補助金等との関連の有無は確認できなかった。
 しかし、この65部署のうち54部署に対して、17年度における国庫補助金等が配賦されていた。このため、12年度以前に行われた「預け」についても、国庫補助金等との関連の可能性が皆無とはいえない状況である。

(イ) 「書き換え」と国庫補助金等との関連

 「書き換え」が行われていた55部署、1678万余円について、(ア)の「預け」と同様の方法により国庫補助金等との関連を検査したところ、このうち、16部署において、国庫補助対象相当額278万余円、これに係る国庫補助金等相当額が計153万余円含まれていた。
 これを所管別及び年度別に示すと、表4のとおりである。

表4 「書き換え」に関する国庫補助金等相当額の所管別・年度別分類
(単位:円)
所管
「書き換え」に含まれていた国庫補助金等
区分
年度
合計
13
14
15
16
17
18
厚生労働省
中小企業福祉事業費等補助金等7補助金
国庫補助対象相当額
7,414
15,524
142,800
165,738
国庫補助金等相当額
6,555
13,568
142,800
162,923
農林水産省
畜産振興総合対策事業費補助金等35補助金
国庫補助対象相当額
84,870
24,801
360,622
166,559
9,953
646,805
国庫補助金等相当額
44,853
9,694
200,823
86,212
4,976
346,558
国土交通省
河川総合開発事業費補助等25補助金
国庫補助対象相当額
9,387
18,541
1,085,485
328,970
387,437
1,829,820
国庫補助金等相当額
4,693
9,486
450,288
175,881
244,330
884,678
環境省
自然環境保全調査等地方公共団体委託費
国庫補助対象相当額
136,121
136,121
国庫補助金等相当額
136,121
136,121
防衛省
募集事務地方公共団体委託費等2委託費
国庫補助対象相当額
146
3,150
3,296
国庫補助金等相当額
146
3,150
3,296
合計
国庫補助対象相当額
94,257
50,756
1,085,485
705,262
836,067
9,953
2,781,780
国庫補助金等相当額
49,546
25,735
450,288
390,418
612,613
4,976
1,533,576

 その一例を示すと次のとおりである。

<事例2>

 B部署では、5,000円以下の物品調達については会計課を通さずに直接調達できることから、実際には納品されていないリバーサルフィルム(5本4,704円)が納品されたこととして業者から請求書を提出させ、同様の請求書10枚(合計金額47,040円)に基づいて、平成18年4月12日に支出負担行為決議書兼支出命令書を作成し、同月19日、47,040円を業者に支払っていた。しかし、実際には、当該消耗品費は、事務機器の修理費やその他の消耗品の購入代金(136,121円)の一部に充てられていた。
 そして、この「書き換え」による支払額47,040円には、全額環境省所管の自然環境保全調査等地方公共団体委託費が充てられていた。


エ 事態の発生原因

 上記のように、不適正な経理処理により資金がねん出されるなどしていた背景としては、県の調査報告書によれば、物品調達に際して検品システムが機能していなかったこと、工事予算を有する部署で予算を年度内に消化できない状況があったこと、職員の公金意識が希薄であったことなどを挙げている。
 また、以上のほか、県は11年に「預け」の存在を把握し、その解消を指示したにもかかわらず徹底した見直し措置が執られなかったこと、不適正な経理処理の対象となった公金の中に国庫補助金等が含まれていた部署においては、国庫補助事業に係る適正な経理についての認識が十分でなかったことなども原因と考えられる。


オ 返還及び再発防止策の策定

(ア) 返還

 県では、「預け」については、その使途が公的な使用と認められた分の80%相当額を控除した2億1043万余円、「書き換え」についてはその10%相当額167万余円、計2億1211万余円に利子相当額3072万余円、外部調査委員会等の費用2338万余円を加えた額の計2億6623万余円を、関係者並びに職員及び退職職員から県に返還させることとしており、19年5月末日現在、全額が県に返還されている。
 また、「預け」及び「書き換え」の中に含まれていた国庫補助金等相当額の国庫への返還等については、19年9月末現在、関係省庁と協議中である。

(イ) 再発防止策の策定

 県では、19年2月に、〔1〕物品調達システム、〔2〕事務費に係る予算措置、〔3〕建設事務費の取扱い、〔4〕監査等の充実・強化、〔5〕公務員倫理教育の徹底等再発防止に向けた意識改革などを内容とする再発防止策を策定し、逐次実施している。

(3) 佐賀県

ア 県による調査の実施

 本院が10年に行った「地方公共団体における国庫補助事業に係る事務費の執行について」の報告依頼に対して、佐賀県からは、需用費等の経費について調査を行った結果、複写機使用料について、他部署分の支払や次年度以降の支払に充てるなど不適正な経理処理を行っていたものが6億4433万余円あり、このうち次年度以降の支払に充てられたものに係る9年度末の業者における保管金の残高3億1670万余円を県に返還させたが、国庫補助金等の返還額については調査中との回答であった。そして、その後、県から、国庫補助金等相当額1億9644万余円を国庫に返還した旨の回答を得ている。
 しかし、17年7月に、職員が所属部署で管理していた通帳から公金の着服を繰り返していた事態が判明したことを受け、県の職員課では、翌月、公安委員会を除く163部署を対象として、各部署が管理している通帳に、不適正な管理の通帳や着服等がないかどうかについて調査を実施した。さらに、同年9月、調査対象を拡大して、職員の私的な通帳を含めて県庁に存在するすべての通帳などの調査及び現金や業者への預け金など各部署において管理している資金に関する調査に着手した。そして、同課では、これらの通帳、預け金等について、所属長にその存在の有無を確認させた上で、通帳については、その性格等を調査報告させ、更に詳細な調査が必要なものについては関係者からの事情聴取や通帳取引記録等の資料の収集を行うなどしたほか、預け金等については、関係者からの事情聴取を行うとともに、業者にも資料の提出等の協力を依頼して調査を実施し、17年10月に調査結果を公表した。


イ 不適正な経理処理の内容等(県の調査結果の概要)

 県の調査結果によれば、163部署のうち13部署において、次のような手法等により資金をねん出するなどしていた。
〔1〕 「預け」
 消耗品の納入等の事実がないのに関係書類を作成して業者に先払いし、その公金を業者に管理させていたもの
〔2〕 旅費の架空請求等
 架空出張により支出した旅費や、用地買収の際に関係者に支払うべき立会謝金を保管していたもの
〔3〕 会議を開催する際の負担金の残額等の保管会議を開催する際の負担金の残額や公用切手の払戻金等を保管していたものこれらの手法等でねん出されていた資金のうち、県庁内部で保管されていたものは、表5のとおり、17年10月現在で、通帳(預金)分787万余円及び現金70万余円、外部の業者に対する「預け」2170万余円、計3029万余円である。そして、これらに係る17年度までの不適正入金額は2381万余円であるとしていたが、「預け」に係る不適正入金額については、「預け」の残高の確定を調査目的としていたことから、調査対象としていない。

表5 不適正な経理処理に係る資金の額
(単位:千円)
区分
17年度までの不適正入金額
17年10月現在の残高
通帳(預金)
21,626
7,876
現金
2,184
704
「預け」
(調査対象外)
21,708
合計
23,811
30,290

 また、前記の13部署における不適正な経理処理に係る資金の使途は、事務用品等の消耗品費、庁舎維持費、高速道路代、懇談会等の送迎費用、国や他県等への土産代、会食費等であるとしている。

ウ 不適正な経理処理と国庫補助金等との関連

 県の調査結果では、不適正な経理処理のうち「預け」については、17年10月現在の残高2170万余円が明らかにされただけで、その発生額は前記のとおり明らかにされていない。
 そこで、本院は、県の調査票により、調査結果の事案の概要、不適正な資金の出所等を聴取し、また、これらの裏付けとして、支出命令書等の会計書類、業者の納入関係書類が残っているものはそれらにより、県の調査結果の内容について検査するとともに、「預け」の発生額についても検査したところ、次のような状況となっていた。
 すなわち、前記13部署のうち8部署では、消耗品費、タクシー使用料等を原資とした「預け」が行われており、その総額は、表6のとおり、12年度期首額1181万余円、12年度から17年度までの発生額1億1226万余円、計1億2407万余円となっている。

表6 「預け」の発生額及び費消額
(単位:千円)
年度
区分
12
13
14
15
16
17
合計
期首残高
11,816
6,730
7,214
17,831
27,725
31,529
発生額
13,159
20,804
29,422
27,984
17,531
3,358
112,260
費消額
18,245
20,321
18,805
18,089
13,727
13,179
102,367
期末残高
6,730
7,214
17,831
27,725
31,529
21,708
「預け」の総額
12年度期首残高+12年度から17年度までの発生額=1億2407万余円
注(1)
 一部の部署において、平成12、13両年度の各欄に金額が確認できないものがあったが、「預け」の発生年度が12年度以前であることから、これらの部署については、期末残高に費消額を加えるなどして算出した額を期首残高とし、12年度の期首残高に加えている。
注(2)
 平成17年度の金額は、調査時点(17年10月)のものである。

 一方、不適正な経理処理と国庫補助金等との関連も、県の調査結果では明らかにされていないことから、県庁内部で保管されていた通帳(預金)及び現金の不適正入金額2381万余円並びに「預け」の総額1億2407万余円、計1億4788万余円について国庫補助金等との関連を検査したところ、次のような状況となっていた。

(ア) 国庫補助金等との関連の有無が確認できたもの
[1部署、不適正な経理処理の額9910万余円]

 前記の「預け」を行っていた8部署のうち1部署は、13年度以降にも「預け」を行っていた。これらについて県の支出命令書等の会計書類を検査したところ、13年度から17年度までの「預け」の発生額9910万余円の中には国庫補助事業に係る支出が含まれていた。
 そして、同部署の「預け」について、長崎県について行ったと同様の方法により、国庫補助金等相当額を算定したところ、「預け」のうちの国庫補助対象相当額は計6550万余円(13年度から17年度)、これに係る国庫補助金等相当額は計3369万余円となっていた。
 これを所管別及び年度別に示すと、表7のとおりである。

表7 「預け」に関する国庫補助金等相当額の所管別・年度別分類
(単位:円)
所管
「預け」に含まれていた国庫補助金等
区分
年度
合計
13
14
15
16
17
国土交通省
地方道路整備臨時交付金等31補助金
国庫補助対象相当額
12,160,258
18,552,549
19,765,608
12,600,337
2,157,779
65,236,531
国庫補助金等相当額
6,193,856
9,366,107
10,312,072
6,586,153
1,101,349
33,559,537
財務省
急傾斜地崩壊対策事業資金貸付金等2貸付金(注)
国庫補助対象相当額
272,502
272,502
国庫補助金等相当額
135,643
135,643
合計
国庫補助対象相当額
12,160,258
18,825,051
19,765,608
12,600,337
2,157,779
65,509,033
国庫補助金等相当額
6,193,856
9,501,750
10,312,072
6,586,153
1,101,349
33,695,180
 これらの貸付金は、日本電信電話株式会社の株式売却収入を財源とする財務省所管産業投資特別会計社会資本整備勘定からの無利子貸付金であり、急傾斜地崩壊対策事業費補助等の補助金相当額を県等に無利子で貸し付けるもので、償還の際、国(国土交通省)から県等に対し償還額に相当する額の補助金が交付されることから、補助金と同様に取り扱われている。


 その一例を示すと次のとおりである。

<事例3>

 C部署では、平成17年6月3日に、パイプ式ファイル等を購入することとして、支出命令書(73,643円)を作成し、これに基づいて同月13日、業者に同額を支払っていた。しかし、支払時点では、実際には上記の消耗品は納品されておらず、業者への「預け」とされていた。
 そして、この「預け」とされた73,643円には、国土交通省所管の砂防事業費補助の事務費が含まれており、これに係る国庫補助金相当額を算定すると36,806円となる。

(イ) 国庫補助金等との関連の有無が確認できなかったもの
[13部署(1部署は(ア)と重複)、不適正な経理処理の額4878万余円]

 上記(ア)の分を除く13部署の12年度以前に不適正な経理処理が行われたもの(4878万余円)については、会計書類等が保存期限(5年)の経過により既に廃棄されていたことなどから、国庫補助金等との関連の有無は確認できなかった。
 しかし、この13部署のうち12部署に対して、17年度における国庫補助金等が配賦されていた。このため、12年度以前に行われた不適正な経理処理についても、国庫補助金等との関連の可能性が皆無とはいえない状況である。


エ 事態の発生原因

 上記のように、不適正な経理処理により資金がねん出されるなどしていた背景としては、県では、事業費の全額執行へのこだわりがあったこと、職員の公金に対する意識が徹底していなかったこと、事業に伴う謝礼や土産代などの交際費的経費のねん出の必要があったことなどとしている。
 また、以上のほか、不適正な経理処理の対象となった公金の中に国庫補助金等が含まれていた部署においては、国庫補助事業に係る適正な経理についての認識が十分でなかったことなども原因と考えられる。


オ 返還及び再発防止策の策定

(ア) 返還

 県では、「預け」については、他の用途に使用しているものではないこととしていることから返還の対象としないこととしているが、その使途が公用以外の使用と認められる122万余円は返還させることとしている。そして、この122万余円に、通帳(預金)及び現金について不適正な経理処理により資金をねん出した額から支出が適正と認められる額を控除した額に利子相当額を加えた額2983万余円を合わせた計3105万余円を職員から返還させることとしており、17年12月に全額が県に返還されている。
 また、「預け」の中に含まれていた国庫補助金等相当額の国庫への返還等については、19年9月末現在、関係省庁と協議中である。

(イ) 再発防止策の策定

 県では、17年10月に、〔1〕公的通帳管理のルール化、〔2〕事務処理の適正化、〔3〕「預け」防止対策、〔4〕適切な予算措置及び財務制度の見直しなどを内容とする再発防止策を策定し、逐次実施している。

(4) 大阪府

ア 府による調査の実施

 本院が10年に行った「地方公共団体における国庫補助事業に係る事務費の執行について」の報告依頼に対して、大阪府からは、旅費、需用費等の経費について調査を行った結果、旅費等の執行に関して架空の名目で支出するなど不適正な経理処理を行っており、これによりねん出された資金15億7000万余円を府に返還させた上、国庫補助金等相当額3205万余円を国庫に返還した旨の回答を得ている。
 しかし、18年11月、9年度以前に行われた不適正な経理処理によりねん出され、府に返還されないままになっていたと考えられる現金等が1出先機関に保管されていた事態が判明したことを受け、府では、同年12月、公安委員会を除く362部署を対象に、人事課調査グループが同様の現金等が庁内各職場に保管されていないかなどの調査に着手するとともに、外部の有識者3名の委員からなる第三者機関の不適正な会計処理に関する調査委員会を設置した。
 そして、府の内部調査では、目的・性格が明確でない現金等が、現在保管されていないか、10年度になかったか、10年度以降新たに生み出されていないかなどについて、各部署において経理の責任者等からヒアリング調査を行い、通帳や担当者の帳簿がある場合には、その内容を確認した。また、不適正な会計処理に関する調査委員会は、府の内部調査結果の検証と再発防止等についての提言を意見書としてまとめ、19年2月に公表した。


イ 不適正な経理処理の内容等(府の調査結果の概要)

 府の調査結果によれば、23部署において、次のような手法等により資金をねん出するなどしたり、過去にねん出された資金を引き継いで保管したりしていた。
〔1〕 賃金等の架空請求
 非常勤職員の賃金等の請求を行う際に、実際には勤務していないのに勤務していたこととしたり、勤務時間を水増ししたりして賃金等を請求し、これを名義人に支払ったこととして資金をねん出したり、いったん名義人に支払った後、返還させたりしていたもの
〔2〕 9年度以前の資金を引き継いだもの
 9年度以前に行われた不適正な経理処理によりねん出された資金を府に返還せずに保管していたものこれらの総額は、表8のとおり、19年1月現在の残額3350万余円及び10年度以降の費消額3532万余円、計約6880万円となっている(なお、23部署のうち1部署については、19年9月現在、引き続き府において事実関係等を調査中である。)。
 そして、上記の23部署における不適正な経理処理に係る資金の使途は、各部署の歓送迎会費用やせん別、慶弔費、交通費、物品や消耗品の購入等のほか、私的流用等もあったとしている。

表8 不適正な経理処理に係る資金の額
(単位:千円)
不適正な経理処理が行われた年度
9年度以前
10年度以降
合計
10年4月以降の費消額
23,279
12,047
35,327
19年1月現在の残高
30,936
2,566
33,503
合計
約5420万円
約1460万円
約6880万円
(注)
 合計額が「約」となっているのは、調査が継続されている1部署についても含められているためである。


ウ 不適正な経理処理と国庫補助金等との関連

 本院は、府のヒアリング調査の調査票により、府の調査結果の事案の概要、調査時の残額、費消額、不適正な資金の出所、9年度以前に行われた不適正な経理処理によりねん出した現金を残した理由等を聴取し、また、これらの裏付けとして、支出命令伺書等の会計書類、通帳や費消した際の領収書等があるものはそれらにより、府の調査内容について検査した。
 そして、不適正な経理処理と国庫補助金等との関連については、府でも今回の内部調査後、下記の(ア)の2部署についてその把握に着手していたが、本院は、この2部署を含め、上記23部署のうち調査が継続されている1部署を除いた22部署(不適正な経理処理の額6383万余円)について、国庫補助金等との関連を検査したところ、次のような状況となっていた。

(ア) 国庫補助金等との関連の有無が確認できたもの
[4部署、不適正な経理処理の額1461万余円]

 上記22部署のうち、2部署では、13年度から17年度までの間に、農林水産省の国庫補助事業として、家畜伝染病予防事業等を実施するに当たり、非常勤職員の賃金等の架空請求を行って資金をねん出し、職員の親睦会経費等として費消していた。
 本院は、上記の事態に関して、非常勤職員の実際の勤務状況に係る資料、歳出予算差引表等の関係書類に基づいて検査したところ、表9のとおり、2部署において不適正な経理処理が行われた1189万余円(13年度から17年度)のうちに、国庫補助対象額781万余円、これに係る国庫補助金等相当額388万余円が含まれていた。

表9 不適正な経理処理に係る国庫補助金等相当額(平成13年度〜17年度)
(単位:円)
区分
年度
合計
13
14
15
16
17
不適正な経理処理の額(a)
4,511,097
3,742,896
1,915,020
964,992
761,226
11,895,231
(a)のうち、国庫補助対象額
3,219,100
2,309,000
975,390
734,100
574,950
7,812,540
 
不適正な経理処理に含まれていた国庫補助金等相当額
1,603,164
1,142,245
487,695
367,050
287,456
3,887,610

 その一例を示すと、次のとおりである。

<事例4>

 D部署では、家畜伝染病予防事業及び家畜衛生対策事業を実施するに当たり、同部署の職員の業務を補佐させるため、獣医師や作業員を非常勤職員として雇い入れるなどしている。しかし、同部署では、平成13年度から17年度の間において、一部の獣医師等から名義を借り、その者が実際には全く勤務していないのに勤務していたとする雇用報告書等や勤務時間を水増しした雇用報告書等を作成し、これに基づき賃金等の支払を請求し、名義人に支払ったこととして資金をねん出したり、いったん名義人に支払った後、同人から返還させたりなどして計4,777,224円について不適正な経理処理を行っていた。
 そして、この中には、農林水産省所管の国庫補助事業に係る国庫補助対象額3,787,280円、国庫補助金相当額1,888,414円が含まれていた。

 なお、この2部署を除く20部署のうち、外部の団体の事務局を担当していた2部署において、団体の経費の未精算金を保管していたものなどがあったが、その中に国庫補助金等は含まれていなかった。

(イ) 国庫補助金等との関連の有無が確認できなかったもの
[19部署(1部署は(ア)と重複)、不適正な経理処理の額4921万余円]

 22部署のうち19部署については、9年度以前に不適正な経理処理が行われたもの(4921万余円)が含まれており、その内容は府の調査においても明らかになっておらず、また、会計書類等が保存期限(5年)の経過により既に廃棄されていたことなどから、国庫補助金等との関連は確認できなかった。
 しかし、この19部署のうち10部署に対して、17年度における国庫補助金等が配賦されていた。このため、9年度以前に行われた不適正な経理処理についても、国庫補助金等との関連の可能性が皆無とはいえない状況である。

エ 事態の発生原因

 上記のように不適正な経理処理により資金がねん出されるなどしていた背景としては、不適正な会計処理に関する調査委員会の意見書によれば、金銭取扱い体制の不備、綱紀に対する意識の不徹底のほか、9年度当時、府に返還させる指示が十分でなかったこと及び各部署に対して返還確認を行わなかったことなどを挙げている。
 また、以上のほか、不適正な経理処理の対象となった公金の中に国庫補助金等を含めていた部署においては、国庫補助事業に係る適正な経理についての認識が十分でなかったことなども原因と考えられる。

オ 返還及び再発防止策の策定

(ア) 返還

 府では、22部署(23部署のうち、引き続き調査中の1部署を除く。)において不適正な経理処理によりねん出された資金等の額6383万余円に利子相当額を加えるなどした額9032万余円を、関係部署の職員及び元職員から返還させることとしており、19年5月1日現在、全額が府等に返還されている。
 また、不適正な経理処理の中に含まれていた国庫補助金等相当額については、19年9月に3,887,610円が国庫へ返還された。

(イ) 再発防止策の策定

 府では、19年2月、「不適正会計等にかかる当面の対応(案)」をまとめ、綱紀保持基本指針の遵守等、職員の意識改革、会計事務に係る点検・検査の充実、監査の充実強化、再発防止策実施状況の公表などを内容とする再発防止策を策定し、逐次実施している。

(5) 岐阜県

ア 県による調査の実施

 本院が10年に行った「地方公共団体における国庫補助事業に係る事務費の執行について」の報告依頼に対して、岐阜県からは、10年10月末以前は、不適正な経理処理に関する内部調査を行っていない旨の回答を得ている。
 その後、18年7月、県の不適正な経理処理によってねん出された資金(いわゆる「プール資金」)が県職員組合に存在することが判明したことを受け、県では、資金調査チームを編成するとともに、外部の有識者3名の委員からなる第三者機関のプール資金問題検討委員会を設置し、公安委員会を除く379部署(6年度時点)を対象に、情報公開条例施行直前の6年度にさかのぼって、不適正な経理処理による資金作りの状況に関する調査に着手した。
 そして、資金調査チームは、職員等に対して、調査票による調査、調査票記載事項に対する詳細確認等のため必要なヒアリング等による調査を実施し、また、プール資金問題検討委員会は、資金調査チームが行った調査結果について検証等を行い、18年9月にその結果を公表した。

イ 不適正な経理処理の内容等(県の調査結果の概要) 

 県の調査結果によれば、379部署のうち244部署(いずれも6年度時点での部署数)において、次のような手法等により資金をねん出していた。
〔1〕 旅費の架空請求
 職員の出張の際に架空の旅費請求を加えて虚偽の旅行命令書、旅費請求書を作成し、実際に出張した分の旅費を職員に支払った後、残額を保管するなどしていたもの
〔2〕 食糧費の架空請求
 あらかじめ飲食店から記名押印がある白紙の請求書を入手しておいて、架空の会議等や人数を水増しした会議等のための経費を記載した請求書を作成して飲食店に支払い、これを「預け」としたり、現金を返還させたりしていたもの
〔3〕 消耗品費、燃料費、印刷製本費等の架空請求
 あらかじめ業者から白紙の請求書等を入手しておいて、架空の請求書、納品書を作成し、各部署が支払証によって現金を受領して業者に支払い、残額を保管したり、口座振込の場合には、業者への「預け」としたり、現金を返還させたりしていたもの
〔4〕 農産物等の売却
 試験研究実施に伴って生じた農産物等を農協等を通じて出荷し、その売上金を県の収入とせずに別口座に入金していたもの
 これらの総額は、表10のとおり、4年度から15年度までの推計で計16億9722万余円とされており、18年9月1日現在の残高は3億0477万余円となっている。
 そして、不適正な経理処理によりねん出された資金の額については、6年度以前は、ほぼ全庁的に不適正な経理処理による資金のねん出が行われていたと考えられたことから、前記の調査票やヒアリング等の結果を基に、まず6年度についてねん出額を推計し、6年度から3年程度前まではほぼ同額と推定しても合理的であるとして4年度及び5年度のねん出額を6年度と同額とし、7年度以降はすべての年度について調査を行ってねん出額を推計又は算定している。

表10 不適正な経理処理に係る資金の額
(単位:千円)
4年度
5年度
6年度
7年度
8年度
9年度
10年度
11年度
466,000
466,000
466,000
204,378
69,406
12,772
6,890
5,582

12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
17年度
18年度
(8月時点まで)
合計
18年9月1日
現在残高
123
58
12
1,697,221
304,773

 また、不適正な経理処理に係る資金の使途は、外部の人を招いた懇談会費、予算要望時における国の所管省庁への土産代、他県調査時の土産代等のように予算には計上されていないが業務を遂行するために必要と考えられていた費用のほか、職員間の懇談会費等のように職員により費消されたものも含まれていたとされているが、それぞれの金額については明らかにされていない。

ウ 不適正な経理処理と国庫補助金等との関連

 本院は、前記の調査票を抽出して、調査の対象、結果等を聴取するとともに、調査票の回答を補完したヒアリング結果を併せて調査し、県の調査方法、不適正な経理処理によりねん出された資金の額の推計又は算定方法等について検査した。
 しかし、不適正な経理処理と国庫補助金等との関連については、県の調査では明らかにされていないことから、これについて検査したところ、次のような状況となっていた。

(ア) 国庫補助金等との関連がないことが確認できたもの
[1部署、不適正な経理処理の額6万余円]

 14、15両年度において不適正な経理処理が行われた1部署については、歳入集計表等で国庫補助金等との関連を検査したところ、国庫補助金等は含まれていなかった。

(イ) 国庫補助金等との関連の有無が確認できなかったもの
[257部署((ア)の1部署は重複)、不適正な経理処理の額16億9715万余円]

 上記の(ア)の分を除く不適正な経理処理(257部署、16億9715万余円)は12年度以前に行われており、これらについては、会計書類等が保存期限(5年)の経過により既に廃棄されていたことなどから、国庫補助金等との関連の有無は確認できなかった。
 しかし、245部署(組織変更のため上記の257部署は245部署となった。)のうち151部署に対して、17年度における国庫補助金等が配賦されていた。このため、12年度以前に行われた不適正な経理処理についても、国庫補助金等との関連の可能性が皆無とはいえない状況である。

エ 事態の発生原因

 上記のように不適正な経理処理により資金がねん出されていた背景としては、県の報告書によれば、いわゆる官官接待の費用、予算が認められなかった備品の購入費用等のように予算には計上されていないが業務を遂行するために必要と考えられていた費用があったこと、予算使い切り主義が行われていたことなどが挙げられており、また、次項オ(イ)の再発防止策の中においては、職員の公金意識の欠如等も原因とされている。
 そして、不適正な経理処理のほとんどについて会計書類等が残っていないため国庫補助金等との関連が解明できない状況となっているのは、都道府県の一部において事務費の不適正な経理処理が行われていた問題が判明した7年当時に、また、8、9、10各年に本院が「地方公共団体における国庫補助事業に係る事務費の執行について」の報告依頼を行った際に、県が徹底した事実解明を行っていなかったことなどが原因と考えられる。

オ 返還及び再発防止策の策定

(ア) 返還

 県では、不適正な経理処理によりねん出された資金の額16億9722万余円に利子相当額を加えた19億1775万円を、関係者並びに職員及び元職員から県に返還させることとしており、19年5月9日までに、全額が県に返還されている。

(イ) 再発防止策の策定

 県では、18年9月に「岐阜県政再生プログラム」をまとめ、〔1〕徹底した情報公開と県民監視体制の構築(情報公開の拡大、監査委員による監査の強化・充実等)、〔2〕職員倫理確立に向けた行動指針の策定、「予算使い切り」の廃絶と徹底した経費節減の実施等の意識改革、〔3〕会計事務のチェック機能及び予算執行基準に関する総点検等を内容とする再発防止策を策定し、逐次実施している。
 さらに、今回、県では返還金を基金とした「ふるさとぎふ再生基金」を設立し、返還金の有効活用を図ることとしている。

(6) 鳥取県

ア 県による調査の実施

 本院が10年に行った「地方公共団体における国庫補助事業に係る事務費の執行について」の報告依頼に対して、鳥取県からは、10年10月末以前は、不適正な経理処理に関する内部調査は行っていない旨の回答を得ている。
 その後、18年9月、いわゆる裏金の存在を示唆する情報があったことから、県では、教育委員会、公安委員会等を除く228部署に対する行政監察室による調査(以下「行政監察室調査」という。)と、教育委員会による同委員会22部署に対する調査(以下「教育委員会調査」という。)に着手した。
 そして、行政監察室調査においては、不適正な経理処理による資金造成を行っていないか、過去の不適正な経理処理により発生した資金又は性格の不明確な資金等疑義のあるものは存在しないかなどについて、各部署が行ったヒアリング調査の結果の報告を受け、このうち追加調査の必要なものについては行政監察室が改めてヒアリングを行い、19年2月に調査結果を公表した。また、教育委員会調査においては、「処理に困っている通帳等」について、各部署から調査結果の報告を受け、18年10月及び11月に調査結果を公表した。

イ 不適正な経理処理の内容等(県の調査結果の概要)

 県の調査結果によれば、ロッカー、机等に存在していた現金等出所不明な資金等(行政監察室調査分402万余円、教育委員会調査分4万余円)を除くと、次のような状況となっている。
 行政監察室調査の結果によれば、228部署のうち10部署において次のような手法等により資金をねん出するなどしていたほか、7部署において図書等の販売に係る収入と支出の差額等を保管していた。
〔1〕 時間外勤務手当の架空請求
 一部職員の給与に実績のない時間外勤務手当を上乗せして支給し、この上乗せ相当額を返還させていたもの
〔2〕 農産物の売却等
 園芸試験場等における農産物の売却代金等を県の収入とせずに別口座に入金するなどしていたもの
〔3〕 10年度以前の資金を引き継いだと思われるもの
 10年度以前に行われた不適正な経理処理によりねん出したと思われる資金を引き継いだもの
 また、教育委員会調査の結果によれば、22部署のうち14部署において、研究協議会等による法規集等の販売に係る収入と支出の差額等を保管していた。
 そして、これらの額は、表11のとおり、19年4月現在の残高が1371万余円(行政監察室調査分1141万余円、教育委員会調査分230万余円)、11年度以降の費消額として明らかにされた額が952万余円(行政監察室調査分)、計2324万余円となっている。

表11 不適正な経理処理に係る資金の額
(単位:千円)
区分
11年度以降の費消額
19年4月現在の残高
合計
行政監察室調査
9,524
11,413
20,937
教育委員会調査
2,306
2,306
合計
9,524
13,719
23,243

 そして、これらの不適正な経理処理に係る資金の使途は、行政監察室調査分については、備品購入費、懇親会の経費等、教育委員会調査分については、採用試験、管理職試験等での茶菓子代等とされている。

ウ 不適正な経理処理と国庫補助金等との関連

 本院は、県の調査結果の事案の概要、調査時の残額、費消額、不適正な資金の出所等を聴取し、また、これらの裏付けとして、通帳、費消した際の請求書等があるものはそれらにより、県の調査結果の内容について検査した。
 しかし、不適正な経理処理と国庫補助金等との関連については、県の調査では明らかにされていないことから、これについて検査したところ、次のような状況となっていた。

(ア) 国庫補助金等との関連がないことが確認できたもの
 
行政監察室調査分13部署、不適正な経理処理の額1276万余円、教育委員会調査分14部署、同203万余円


 行政監察室調査の対象のうち、12部署については、農産物の売却代金等を県の収入とせずに保管していたものなどであり、国庫補助金等との関連がないことを確認した。また、13年5月及び14年4月に、一部職員の給与に実績のない時間外勤務手当を上乗せして資金をねん出していた1部署については、時間外勤務手当支払計算書で支出科目を調査したり、国庫補助事業の額の確定をする際の資料で国庫補助事業費への計上の有無を調査したりして、国庫補助金等との関連がないことを確認した。
 また、教育委員会調査の対象のうち、14部署については、法規集を発行した際の売上金の残金を保管していたものなどであり、国庫補助金等との関連がないことを確認した。

(イ) 国庫補助金等との関連の有無が確認できなかったもの
 
行政監察室調査分5部署(1部署は(ア)と重複)、不適正な経理処理の額817万余円、教育委員会調査分3部署(3部署は(ア)と重複)、同27万余円


 行政監察室調査の対象のうち、上記の(ア)に該当する分を除く5部署については、会計書類等が保存期限(5年)の経過により既に廃棄されていたことなどから、国庫補助金等との関連の有無は確認できなかった。
 しかし、この5部署のうち4部署に対して、17年度における国庫補助金等が配賦されていた。このため、12年度以前に行われた不適正な経理処理についても、国庫補助金等との関連の可能性が皆無とはいえない状況である。
 また、教育委員会調査の対象のうち、上記の(ア)に該当する分を除く3部署については、県の調査結果によれば、過去の国等の委嘱事業等により購入し使い残した郵便切手が含まれているとしているが、県の説明によれば、聞取りによる推測であるとしており、事実関係を裏付ける関係書類がないことから、国庫補助金等との関連の有無は明確にはならなかった。


エ 事態の発生原因

 上記のように不適正な経理処理により資金がねん出されるなどしていた背景としては、県では、職員に公費・私費の区別の意識が欠如していたこと、予算の全額執行が必要であるとの意識及び慣行があったことなどとしている。


オ 返還及び再発防止策の策定

(ア) 返還

 県では、行政監察室調査分については、各部署に保管されていた現金等(出所不明な資金等402万余円を含む。)に、11年度以降に支出した額のうち職員が飲食その他の公費では支出できない用途に使用した金額等を加えた合計額2110万余円を、関係部署から返還させることとしており、19年3月現在、全額が県に返還されている。
 また、教育委員会調査分については、各部署に保管されていた現金等(出所不明な資金等4万余円を含む。)から関係団体へ引き継ぐべき分等を控除した213万余円を、関係部署から返還させることとし、同年4月現在、全額が県に返還されている。

(イ) 再発防止策

 県では、19年2月に、総務部長通知を発し、県職員への職務専念義務の徹底、公費、物品の適切な取扱い、不適切な事務への従事の禁止等を周知徹底した。
 また、同年5月に、上記の総務部長通知と同趣旨の教育長通知を発し、公私の区別を徹底することなどを指示した。

(7) 内部調査の結果に関する資料等の報告を求め、これらにより検査を実施した8県

 内部調査の結果、不適正な経理処理があったとされている13府県のうち、本院が会計実地検査を行った前記の5府県を除く8県については、内部調査の結果を裏付ける関係書類等の報告を求めて確認するなどして、不適正な経理処理の内容、国庫補助金等との関連等を検査した。
 今回、これらの検査を実施した範囲においては、表12のような状況となっている。

表12 8県における不適正な経理処理の内容等の状況
県名
内部調査の内容
(実施年度)
不適正な経理処理の内容
[不適正な経理処理に係る年度 金額]
費消内容
国庫補助金等との関連
山形県
旅費執行状況調査(14年度)
旅費の架空請求等
[12年度1,203千円]
(支給不足等の額を含む。)
庁舎内駐車場の白線引き経費等(費消額941千円)
旅費執行状況調査(15年度)
旅費の架空請求等
[13年度441千円]
(支給不足等の額を含む。)
個人の借金返済(費消額252千円)
新潟県
会場借上料の調査(10年度)
会議費の支出を懇親会代等に充当していたもの
[9年度538千円]
コーヒー代、昼食代、懇親会費等(費消額538千円)
不明
不適正な会計処理による公金の保管や他への預入金の状況等の調査(18年度)
通帳等での保管金
 受託研究費収入等
[16年度〜18年度3,118千円](私金等を含む。)
備品の購入、行事費用、修繕費、絵画の購入、パソコン購入等
不明
各部署で保管している通帳、現金及び金券についての調査(18年度)
〔1〕通帳での保管金
研修負担金等[2年度〜8年度971千円](職員からの送別会の会費等を含む。)
〔2〕金券の保管
ビール券[16年度〜18年度94枚]
タクシー券[16年度〜18年度18千円分]
出張時の土産代等(費消額969千円)
静岡県
事務所運営費に係る全庁特別調査(14年度〜15年度)
8年度以前の不適正な現・預金を引き継いだもの
[8年度以前208,301千円]
備品の購入、修繕、交通事故処理、清掃委託、宅配代、パソコン関連費用等(費消額99,813千円)
不明
三重県
事務手続についての総点検及び事務処理状況の調査(18年度)
契約に係る事務処理に当たり、不正な完成認定書を作成していたもの(資金のねん出はなし)
[17年度対象となった契約の金額650千円]
兵庫県
旅費執行状況調査(10年度)
旅費の架空請求等
[6年度〜8年度182,943千円]
管内旅費のプール制による再配分
島根県
郵券購入調査(15年度)
年度末に大量購入した切手の翌年度使用(予算の年度区分と切手の使用年度が不整合となっていたもので、資金のねん出はなし)
[14年度4,000千円]
香川県
〔1〕「預け」に関する調査(13年度)
〔2〕補充確認調査(14年度)
「預け」
〔8年度〜13年度911,884千円〔1〕856,576千円+〔2〕55,308千円)〕
事務用品、印刷物、日用品・雑貨、電気機器等(費消額〔1〕750,131千円、〔2〕54,060千円)
高知県
「預け」に関する調査及びそれ以外の不適正な会計処理に関する調査(13年度〜14年度)
〔1〕「預け」
[8年度〜13年度25,416千円
〔2〕受託研究事務費や生産物の売払収入などを県の収入としていないなどしていたもの
[8年度〜13年度49,153千円]
〔3〕その他(資金の性格は不明瞭)
[8年度〜14年6月(調査時点)12,444千円]
〔1〕文具、事務用品、消耗品、備品等の購入等(費消額18,472千円)
〔2〕研究資材、検査機器、実習用物品、消耗品等の購入(費消額36,880千円)
〔3〕市町村の選挙物資の共同発注の支払等、書籍、消耗品等の購入等(費消額11,351千円)
不明
(注)
 「預け」架空の物品調達等により一定額を納入業者へ支払うなどし、その公金を納入業者に管理させるもの


(8) 13府県における不適正な経理処理と国庫補助金等との関連

 本院が、以上の13府県が実施した内部調査の報告書を基に、会計実地検査を行ったり、関係資料等の報告を求めて確認するなどして検査を行ったりした結果から、これらの府県における不適正な経理処理によりねん出されるなどした資金と国庫補助金等との関連をまとめると、表13のとおりである。
 すなわち、会計実地検査を行った5府県については、表13の〔1〕のとおり、不適正な経理処理によりねん出されるなどした資金として内部調査で判明した額は23億6169万余円となっている。このうち、国庫補助金等との関連があったことが確認できたものに係る国庫補助金等相当額は、3府県における7634万余円である(このうち、19年9月末現在、国庫に返還済みとなっているのは、大阪府の388万余円である。)が、このほかに、不適正な経理処理の行われた年度が相当以前であって会計書類等が残っていないなどのため、国庫補助金等との関連は不明であるが、その関連の可能性が皆無とはいえないものも含まれていた。
 また、関係資料等の報告を求め、これらにより検査を実施した8県については、表13の〔2〕のとおり、不適正な経理処理によりねん出されるなどした資金として内部調査で判明した額は、6県の13億8096万余円となっている。このうち、国庫補助金等との関連があった兵庫県及び香川県においては、国庫補助金等相当額9574万余円を既に国庫に返還していた。

表13 13府県における検査の結果
〔1〕 会計実地検査を行った5府県
府県名
不適正な経理処理によりねん出されるなどした資金
左のうち本院が確認した国庫補助金等相当額(千円)
[国庫への返還済額]
備考
〈内部調査の名称〉
ねん出の手法
金額(千円)
府県への返還額(千円)
[返還済額]
長崎県
〈不適切な物品調達問題に関する内部調査〉
〔1〕「預け」注(1)
〔2〕「書き換え」注(2)
〔1〕(11年度期首額+11年度以降の発生額)407,754
〔2〕(12年度から18年度までの発生額)16,784計 424,538
〔1〕から公的使用分の80%を控除した額+〔2〕の10%相当額+利子相当額+外部委員会等の費用(266,233)
[全額返還済]
38,760
(会計書類がない年度の分は不明)
[協議中]
 
佐賀県
〈食糧費等調査〉
主として、食糧費等の執行に関する事務の実態調査である。
〈不適正支出による公金を原資とした通帳等調査〉
〔1〕「預け」
〔2〕旅費の架空請求、負担金の残額等の保管
〔1〕(12年度期首額+12年度以降の発生額)124,076
〔2〕(12年度までの不適正入金額)23,811
計 147,888
〔1〕のうち使途に問題があったもの+〔2〕のうち支出が適正と認められる額を控除したものに利息を加えた額(31,054)
[全額返還済]
33,695
(会計書類がない年度の分は不明)
[協議中]
 
〈未竣工工事調査〉
主として、工事の執行に関する事務の実態調査である。
大阪府
〈「目的・性格が明確でない現金等の保管等」に関する調査〉
〔1〕賃金等の架空請求等
〔2〕9年度以前の資金を引き継いだもの
(調査時点の残額+10年4月以降の費消額)
〔1〕約14,600
〔2〕約54,200計約68,800
左の額から調査継続中の1部署分を控除した額+利子相当額等]
(90,322)
[全額返還済]
3,887
(会計書類がない年度の分は不明)
[返還済]
内部調査が継続中のものが1部署ある。
岐阜県
〈不適正資金に関する調査〉
旅費、食糧費、消耗品、燃料費、印刷製本等の架空請求、農産物等の売却
(4年度から18年度までの発生額)
推計額1,697,221
左の額+利子相当額
(1,917,750)
[全額返還済]
(大半が会計書類がない年度の分で不明)
 
鳥取県
〈不適正な経理処理による資金造成等に関する調査〉等
〔1〕時間外勤務手当の架空請求、法規集等の販売に係る収入と支出の差額等の保管
〔2〕10年度以前の資金を引き継いだと思われるもの
(調査時点の残額+11年度以降の費消額)
〔1〕15,319
〔2〕7,924
計 23,243
左の額から公費で支出できた費消額等を控除した額(19,188)
[全額返還済]
(会計書類がない年度分等は不明)
出所不明な資金等4,071千円は除く。
2,361,690
76,343
 

〔2〕 関係資料等の報告を求め、これらにより検査した8県
県名
不適正な経理処理によりねん出されるなどした資金
左のうち国庫補助金等相当額(千円)
備考
〈内部調査の名称〉
ねん出の手法
金額(千円)
県への返還額(千円)
[返還済額]
山形県
〈旅費執行状況調査(平成14年度)〉旅費の架空請求
(12年度の発生額)
941
左の額+手続き的なミスに係ると認められるもの
(1,105)
[全額返還済]
〈無〉
旅費の支給不足等262千円は除く。
〈平成13年度旅費執行状況調査〉
旅費の架空請求
(13年度の発生額)
252
左の額+手続き的なミスに係ると認められるもの
(389)
[全額返還済]
〈無〉
旅費の支給不足等189千円は除く。
新潟県
〈会場借上料の支出に関する特別調査〉
会場借上料の架空請求
(9年度の発生額)
538
左の全額(538)
[全額返還済]
〈不明〉
 
〈公金実態調査〉
受託研究費収入等
(調査時点の公金の残高)
1,555
左の全額(1,555)
[全額返還済]
〈不明〉
私金等の1,562千円は除く。
〈保管通帳実態調査〉
〔1〕贈答品として受け取ったビール券の換金等
〔2〕講習会の謝礼等
〔1〕通帳での保管金(2年度から8年度までの入金額)
395
〔2〕金券(16年度から18年度までの受領分)
ビール券94枚、タクシー券18千円分
保管金の残額(2)
[全額返還済]
〈無〉
〔1〕では、職員からの送別会の会費、拠出金等の575千円は除く。
静岡県
〈事務所運営費に係る全庁特別調査〉
郵券購入時の水増し請求、旅費の架空請求等
(8年度末に存在していた額)
208,301
14年度末に存在していた額+費消額のうち使途不明金(152,659)
[全額返還済]
〈不明〉
 
三重県
〈事務事業の適正な執行に関する調査等〉
事務処理に不適正な点はあったが、資金のねん出はない。
兵庫県
〈旅費執行状況調査〉
旅費の架空請求等
(6年度から8年度までの発生額)
182,533
左の額+利子相当額
(214,743)
[全額返還済]
〈47,243返還済〉
旅費の支給不足410千円は除く。
島根県
〈郵券購入〉
翌年度使用分の切手の購入はあったが、資金のねん出はない。
香川県
〈預け金に関する調査等〉
「預け」注(1)
(調査時点の残高+8年度〜14年2月までの費消額)
911,884
残金+8年度〜14年2月までの費消額のうち、公務上の必要性が認められない不正使用額に法定利息を付したもの
(298,104)
[全額返還済]
〈48,502返還済〉
 
高知県
〈「預け金」に関する調査〉
〔1〕「預け」注(1)
〔2〕受託研究事務費、生産物売却等
〔1〕(8年度期首額+8〜13年度預入額)
25,416
〔2〕(8年度期首額+8〜13年度預入額)
49,153
計 74,569
〔1〕及び〔2〕の残金+〔1〕及び〔2〕のうち使途に問題があったものと確認ができなかったもの+前項に係る利子相当額(27,357)
[全額返還済]
〈不明〉
表12中の資金の性格が不明瞭な「〔3〕その他」12,444千円は除く。
1,380,968
〈95,746〉
 
 「預け」架空の物品調達等により一定額を納入業者へ支払い、その公金を納入業者に管理させるもの
 「書き換え」納入業者の請求書を、各課が会計課を通さずに直接調達できる5,000円以下に小分けして書き換えし、請求書と異なる物品を納入させるもの
 〈 〉の国庫補助金等相当額は、内部調査の報告書、国庫補助金等の返還に係る関係資料等の報告を求め、把握した金額である。また、これらのほか、佐賀県の未竣工工事調査、島根県の郵券購入については、資金のねん出ではないが、それぞれ国庫補助金等相当額30,449千円及び2,037千円が国庫に返還されている。

なお、各都道府県のその後の内部調査の実施状況等について、改めて19年8月末現在でみると、毎年度内部調査を実施している県以外に、山形県及び大阪府において、同年6月及び8月にそれぞれ内部調査を終了したものがあり、また、宮崎県においては、同年5月に内部調査に着手したもの(同年9月に終了)がある。

4 本院の所見

ア 今回明らかになった府県における不適正な経理処理については、一義的には地方公共団体自体の経理の問題であるが、国庫補助金等との関連を解明する必要があることから、本年次は、不適正な経理処理が内部調査によって明らかにされている13府県について検査を実施した。
 検査の結果、一部の府県において、架空の物品調達等を行っていたり、旅費、賃金等の架空請求を行っていたりなどして資金がねん出されている事態となっており、この中には、不適正な経理処理の対象となった公金の中に、主として、公共事業に係る事務費等からなる国庫補助金等が含まれているものがあった。また、会計書類等が残っていないなどのため国庫補助金等との関連は不明であるが、不適正な経理処理と国庫補助金等との関連の可能性が皆無とはいえないものも含まれていた。
 このように、公金を扱う地方公共団体において、国庫補助金等も含めて不適正な経理処理が行われ、あるいは、その疑いが残る状況となっていたことは、国庫補助事業の適正な執行の見地からは、看過できない事態である。そして、不適正な経理処理の行われた年度が相当以前にさかのぼることから、結果として国庫補助金等との関連が確認できないものがあったことは、不適正な経理処理についての事態の解明が長期間放置されてきたことによると認められる。
 本院としては、7、8、9各年度の決算検査報告において、都道府県における事務費の不適正な経理処理について掲記して広く警鐘を鳴らし、自浄作用を促してきたところであるが、一部の府県において、適時の点検や徹底した見直しがなされておらず、公金意識の欠如等により不適正な経理処理が行われていたことは、極めて遺憾な事態であると考える。

イ 以上のことから、今後、関係機関において、次のような措置を講ずるなどして、国庫補助事業の適正な実施及び経理に努める必要があると認められる。

(ア) 不適正な経理処理が行われていた府県において、
a 不適正な経理処理の対象となった公金の中に国庫補助金等が含まれている場合は、速やかに返還等所要の措置を執る。
b 府県における経理処理の対象が公金であり、その中には、住民の税金だけでなく、国民の税金を財源とする国庫補助金等も含まれていることを十分認識した上で、再発防止策を確実に実行する。

(イ) (ア)以外の都道府県において、
a 上記の府県における事態やその背景等を十分認識し、改めて、国庫補助事業の適正な執行に努める。
b 経理処理に係る内部調査を行う際には、国庫補助金等との関連についても留意する。

(ウ) 国庫補助金等を交付している関係省庁において、
a 不適正な経理処理の対象となった公金の中に含まれていた国庫補助金等相当額分については、速やかに返還の措置等を講ずる。
b 国庫補助金等の額の確定に当たっては、補助金適正化法の趣旨を踏まえて一層厳正に実績報告書の審査等を行うとともに、都道府県等に対して、国庫補助事業に係る経理の適正化について引き続き指導の徹底を図る。

 本院は、都道府県において、国庫補助金等に関連した不適正な経理処理が行われていることがないか、新たに内部調査が行われ不適正な経理処理が明らかになった県を含め、引き続き検査していくこととする。