JICAは、「独立行政法人国際協力機構会計規程」(15年規程(経)第9号)、「一般契約事務取扱細則」(15年細則(調)第8号)等を制定し、その規定に従って契約業務を行っている。さらに、「コンサルタント等契約事務取扱細則」(15年細則(調)第9号。以下「取扱細則」という。)を制定し、コンサルタントと締結する業務実施契約等に関する事務の取扱いについて必要な事項を定めている。
業務実施契約の事務の取扱いは次のとおりである。
(ア) JICAがコンサルタントと締結する業務実施契約書には、次のような条項が設けられている。
〔1〕 受注者は、同契約書の附属書である共通仕様書、特記仕様書、契約金額の内訳書及び業務従事者名簿に従い調査を実施しなければならない。
〔2〕 受注者は、業務従事者名簿において、業務主任者を定めなければならない。そして、業務主任者は業務の実施についての総括管理をつかさどる。
〔3〕 受注者は、業務完了後遅滞なく、発注者に対して業務完了報告書、成果品及び契約金額精算報告書(以下「精算報告書」という。)を提出しなければならない。また、契約金額の精算については、受注者は、精算報告書の提出と同時に必要な証拠書類一式を発注者に提出し、発注者の確定を求めなければならない。
〔4〕 発注者は、精算報告書を検査の上、契約金額の範囲内において契約金額を精算することにより、金額を確定し、これを受注者に通知しなければならない。
(イ) 軽微な金額の変更の場合を除き、コンサルタントの裁量による流用は認めない取扱いとされている。ただし、再委託契約については、17年12月に制定した「コンサルタント等契約における現地再委託契約手続きガイドライン」(JICA調達部制定。以下「ガイドライン」という。)において、一つの業務実施契約内で複数の再委託を行う場合、再委託契約の締結前であれば、コンサルタントの裁量で、再委託契約経費の総額内において流用を認めることとされている。
JICAの事業担当部は、事前調査において、本格調査の内容の検討を行っており、本格調査で業務の一部を再委託する必要性が認められる場合は、業務実施能力等の視点から再委託先を検討し、可能な範囲で価格調査等を行っている。そして、事前調査の結果や類似業務の実績に基づき、必要に応じて再委託業務の経費の見積りを行い、本格調査の実施計画書を作成している。また、再委託を認める業務については、その旨を業務指示書に明記し、これをコンサルタントに配付している。その後コンサルタントが再委託を希望する場合は技術提案書において再委託を提案することになる。
コンサルタントが契約書の附属書である共通仕様書に基づき作成する業務計画書には、業務の実施方針のうち、その他項目として再委託業務の仕様を示すこととされている。この仕様書に示されていない再委託業務は、精算の際に経費の対象と認められない。
発注者であるJICAは、契約の適正な履行を確保するため、監督職員、分任監督職員を定めることとされている。そして、この監督職員等は、JICAが定める「コンサルタント等契約に係る監督・検査に関する取扱要領」により、「発注者があらかじめ権限を与えた範囲における業務計画書の変更及び再委託契約についての協議」や「緊急時における業務計画書の変更及び再委託契約についての協議」を行うことができることとされている。
JICAは、受注者が調査業務の一部の実施を第三者に委託し又は請け負わせる場合には、受注者に対して、受託者又は下請負人の名称その他必要な事項の通知を求めることができることとされている。
そして、以前は、開発調査を受注したコンサルタントは、調査の一部を再委託する場合、仕様書を作成し、JICAの承認を得た後に3社の見積りを徴し、技術力(業務実施能力)及び価格を考慮して再委託先を選定し、JICAにその結果を報告するとともに、現地再委託契約書の案を提出して、JICAから承認を得た後に再委託契約を締結することとされていた。
その後、17年12月に制定されたガイドラインにおいて、上記のコンサルタントは、再委託契約のための仕様書の作成、再委託先の選定、再委託契約の締結等を自らの責任の下で行うこととされた。
なお、現地に適切な再委託先がなくコンサルタントが自ら調査を行うこととなったり、当初予定していなかった新たな調査の必要が生じたりしたなどの場合には、JICAと協議の上、再委託に関し契約の変更を行うこととなる。
JICAに提出する精算報告書には、再委託契約の精算書類として、再委託契約書(写し)、再委託先からの請求書及び領収書を添付することとされている。JICAは、精算報告書の確認時にこれらの内容を審査確認し、再委託契約書に基づきコンサルタントから再委託先に支払がなされたかを確認することとなっている。