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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成19年9月

政府開発援助(ODA)に関する会計検査の結果について


3 検査の結果

(1) 3箇国に対するノンプロ無償資金協力事業の概要

ア ノンプロ無償資金協力事業の制度的枠組み

 我が国は、今回の津波等災害の甚大さ及び緊急性にかんがみ、津波等災害による損害に対処するための事業の実施に迅速に貢献することを目的として、昭和62年度から行われてきたノンプロ無償資金協力事業の枠組みにより資金供与を実施することにした。そして、その際、迅速な調達を行うことを可能にするため、従来認められていなかった被援助国内における現地調達を認めることにした。また、ノンプロ無償資金協力事業は原則として物品の調達を対象としていたが、被災状況に応じた柔軟かつ的確な支援を行うことを可能にするため、施設の建設のほか輸送、医療活動など役務の調達を認めることにした。さらに、ノンプロ無償資金協力事業で調達した物品が無償で被災者等に配布されたり、公共事業に使われたりすることを想定して、調達した資機材を相手国内で売却するなどして得た対価を積み立てる見返り資金の積立義務を免除するなど枠組みに変更を加えた。

イ 事業の実施手順

 平成17年1月17日に閣議決定され、外務省が、同日に3箇国と取り交わした交換公文及び附属文書によれば、資金は、相手国政府が開設した日本国内の銀行口座(以下「政府口座」という。)に、17年3月末までに円貨で支払うこととなっている。
 そして、相手国政府は、この資金(この資金から発生した利息を含む。以下同じ。)による必要な資機材等の調達に当たっては、附属文書の規定によって、事業の円滑な実施と適切な調達の実施が確保できるように、調達代理機関を選定することとなっている。 そして、相手国政府と調達代理機関とが締結した契約(以下「調達代理契約」という。)に基づき、調達代理機関が相手国政府に代わって資機材等の調達に必要な業務を行い、相手国政府は調達代理手数料を支払うこととなっている。
 ノンプロ無償資金協力事業は、特定の事業の実施を前提として資金を供与するものではなく、また、より迅速な援助を実施するとの観点から、一般プロジェクト無償資金協力事業で行われている事前調査としてのJICAによる基本設計調査は行われていない。しかし、今回のノンプロ無償資金協力事業では、多くの施設の設置や修復案件を対象にしていることから、JICAは、別途実施していた緊急開発調査等において、相手国政府の要請を受けて必要に応じ、ノンプロ無償資金協力事業で対象としている施設の設計等を取り込んで実施した。
 外務省は、調達代理機関として財団法人日本国際協力システム(Japan International Cooperation System。以下「JICS」という。)を推薦し、17年1月及び2月に3箇国はJICSと調達代理契約を締結し、このうち、インドネシア共和国は19年2月に変更契約を締結した。そして、JICSは、相手国政府から調達を希望する資機材等の品目の提示を受けた後、資機材等の代金の支払に必要な資金を政府口座から調達代理機関であるJICSの口座(以下「調達口座」という。)に受け入れ、調達口座から、業者に代金を支払うこととなっている。そして、JICSは、調達代理機関として行ったすべての支払や調達口座における資金の残高についての定期報告書、資金の使用がすべて終わった後の最終報告書を相手国政府と我が国外務省に提出することとなっている。また、外務省は、JICSから上記の報告書の提出を受けるほか、事業の進ちょく状況や契約の実績についても報告を受けることとなっている。これらを通じて、相手国政府及び外務省は、契約の履行や事業の進ちょく状況を確認することができることになっている。

ウ 援助の実施

 外務省は、3箇国から我が国に対して援助の要請を受けたとして、16年度予算一般会計の(項)経済協力費(目)政府開発援助経済開発等援助費から、246億円を17年1月19日に支出し、表5のとおり、同日に3箇国の政府口座に資金の供与を行った。

表5 ノンプロ無償資金協力事業による支援
(単位:億円)

国名
内訳
インドネシア共和国
モルディブ共和国
スリランカ共和国
供与額
146
20
80
246
送金完了時期
17年1月19日
17年1月19日
17年1月19日

(2) ノンプロ無償資金協力事業の実施状況

ア インドネシア共和国

(ア) 事業の概要

 我が国政府が援助したノンプロ無償資金協力事業の実施に当たっては、インドネシア共和国政府側から国家開発企画庁、アチェ・ニアス復旧・復興庁、財務省、各実施機関などの関係機関が、我が国政府側から在インドネシア日本国大使館が、それぞれ参加して設置された政府間協議会において、インドネシア共和国政府からの要請、案件の選定、資金の配分、案件の実施状況の確認等が行われており、この実施体制については18年報告後の変更はない。
 そして、インドネシア共和国政府に供与された146億円について、外務省から提出された資料に基づき、会計検査院が把握した19年3月末現在の事業の概要を、18年報告において示した18年3月末現在と同一の形式で、分野(実施機関)、資金の配分(概算額)、案件名、調達品目、事業内容の別に整理して示すと、表6のとおりである。

表6 事業の概要(インドネシア共和国)
分野
(実施機関)
資金の配分
(概算額)
案件名
調達品目
事業内容
医療・保健(保健省)
約7.7億円
<約11.2億円>
〔1〕緊急支援物資(医薬品・医療器具)供与事業
医薬品、医療器具、医薬品のモニタリングに係るコンサル選定、救急車、巡回治療用車両等、研究所用ラボ機材、保健所の再建
医薬品及び医療器具を保健省の地方倉庫に供与する。
〔2〕保健所復旧事業
医療キットなど機材の供与と保健所の修復
放送(通信情報技術省)
約9.3億円
<約10.6億円>
〔3〕ラジオ・テレビ放送支援事業
ラジオ放送機材、ラジオ放送局の修復、テレビ放送機材
ラジオ局、テレビ局のそれぞれにつき、機材を供与し建物を修復する。
輸送(公共事業省)
社会基盤(公共事業省)
約50.4億円
<約58.3億円>
〔4〕西海岸道路復旧事業
建設機械、蛇籠、コルゲートパイプ、道路復旧工事、土嚢袋、車両、移動式排水ポンプ、掘削機、小規模工事、大規模工事
建設機械などの機材、資材の調達と道路工事
〔5〕放水路(護岸工事)復旧事業
井戸の掘削機などの機材と堤防の修復工事
生活(公共事業省)
約11.8億円
<約10.6億円>
〔6〕水道・衛生施設復旧事業
建設機械、輸送役務、バキュームカー、ゴミ収集用アームロールトラック、消防車、トラック、水道管敷設工事
建設機械などの機材と配管の敷設工事
コミュニティ(社会省)
約3.5億円
<約4.1億円>
〔7〕孤児院再建事業
孤児院修復・再建工事、孤児院向け備品の調達
政府系の孤児院その他修復、機材供与
産業(漁業省、商業省)
約5.5億円
<約5.9億円>
〔8〕漁業支援事業
養殖施設向けピックアップトラック・建設機械・車両・機材の調達、養殖施設工事、漁獲総局向け漁具・漁船エンジン・漁船・ワークショップ機材・施設の建設工事・アイスプラント機材
魚市場に併設する冷凍装置を保管する建物の建設及び機材の供与等
約3.0億円
<約3.5億円>
〔9〕市場復旧整備事業
度量衡機材、再建工事のコンサル選定、再建工事
バンダアチェ周辺及びニアスの市場修復
教育(教育省、宗教省)
約16.0億円
<約16.9億円>
〔10〕大学復旧等支援事業
アラニリ・イスラム大学向け機材、大学施設の改修・再建工事のコンサル選定、大学施設の改修・再建工事、シャクアラ大学向け機材
アラニリ・イスラム大学とシャクアラ大学に機材の供与と工事
教育(労働・移住省)
〔11〕職業訓練センター支援事業
移動訓練車、職業訓練機材、職業訓練センターの修復工事
移動訓練車を含む訓練機材と建物の修復、再建
教育(教育省、宗教省)
〔12〕イスラム学校等に対する支援事業
マドラッサ・ペサントレン向け学校機材、教育省管轄学校向け教育機材、学校の修復・再建工事のコンサル選定、学校の修復・再建工事
公立校・イスラム校ともに教育機材を供与、公立校については建物の修復
コミュニティ(労働・移住省・国家土地庁)
約1.9億円
<約2.4億円>
〔13〕土地台帳の修復事業
土地台帳修復のための役務、凍結乾燥機を設置する建物の建築、土地台帳を保管している冷凍倉庫の賃貸料の支払、台帳・地図の保管庫。デジタル保存するための機材一式
水没した土地権利台帳を修復するための凍結乾燥機の貸与、建物の建築、冷凍倉庫の保管料、デジタル化機材の調達
社会基盤・コミュニティ(アチェ・ニアス復旧・復興庁)
約17.9億円
<約19.3億円>
〔14〕排水施設緊急復旧事業・モデルエリア開発事業
排水路、排水ポンプ場、貯水池設置、避難道路・避難塔工事に係るコンサルタントの選定・施工業者の選定
バンダアチェ市内に排水路、排水ポンプ場及び貯水池を設置。ウレレ地区に避難道路・避難用塔を建設
生活・社会基盤産業・医療・健康・輸送(アチェ・ニアス復旧・復興庁)
約15.4億円
〔15〕追加復旧復興事業
放水路護岸、水道、病院、市場、橋梁の建設工事に係るコンサルタントの選定・施工業者の選定及び仮設橋
バンダアチェ市内に放水路の護岸、水道管敷設、総合病院、大型市場を建設、仮設橋の調達
 
約3.6億円
<約3.1億円>
調達代理手数料
 
上記全案件に係る調達手続の進ちょく状況に応じて随時支出される。
 
援助額146億円
 
 
 
 「資金の配分」欄の< >内の金額は、18年報告において示した18年3月末現在のものである。


 19年3月末現在の事業の概要を18年3月末現在と比べると、分野ごとの資金の配分が増減していたり、生活・社会基盤産業・医療・健康・輸送の分野において追加復旧復興事業が加えられたりしている。これは、政府間協議会において、当初の個別案件の進ちょく状況やインドネシア共和国政府のニーズを勘案するなどして、供与された資金の配分及び残余金の使途について協議し、見直しをした上で決定されたものである。

(イ) 資金の執行状況

 我が国政府からインドネシア共和国の政府口座に支払われた資金146億円は、17年4月18日から18年1月18日までの間に、4回にわたってJICSの管理する調達口座に受け入れられた。そして、調達口座から19年3月末までに支払われた額は、表7のとおり、91億5643万余円であり、19年3月末の調達口座における残高は54億4362万余円となっている。この残高は、18年報告において記述した18年3月末の調達口座における残高116億0938万余円と比べて、61億6575万余円減少している。

表7 資金の月別執行状況(インドネシア共和国)
年月
政府口座から調達口座への受入金額(円)
調達口座での資金の執行状況
契約
支払
支払後の残高(円)
件数
金額(円)
契約締結率(%)
金額(円)
支払率(%)
17.1
0
310,784,313
2.1
0
0.0
0
2
0
0
0
2.1
0
0.0
0
3
0
0
0
2.1
0
0.0
0
4
3,765,000,000
0
0
2.1
0
0.0
3,765,000,000
5
0
6
235,006,983
3.7
0
0.0
3,765,000,000
6
8,475,000,000
10
400,915,255
6.5
41,187,240
0.3
12,198,812,760
7
0
12
664,407,542
11.0
116,640,850
1.1
12,082,171,910
8
0
4
80,546,072
11.6
312,542,771
3.2
11,769,629,139
9
0
5
115,213,724
12.4
155,171,252
4.3
11,614,457,887
10
25,000,000
14
781,778,944
17.7
76,581,586
4.8
11,562,876,301
11
0
3
2,719,301,933
36.4
199,107,360
6.2
11,363,768,941
12
0
23
1,803,096,482
48.7
1,193,699,831
14.3
10,170,069,110
18.1
2,335,059,325
10
333,288,986
51.0
79,097,351
14.9
12,426,031,084
2
0
11
510,378,842
54.5
429,451,394
17.8
11,996,579,690
3
0
9
572,240,166
58.4
387,192,635
20.5
11,609,387,055
小計
14,600,059,325
108
8,526,959,242
58.4
2,990,672,270
20.5
 
18.4
0
7
59,211,996
58.8
105,039,156
21.2
11,504,347,899
5
0
3
△52,758,201
58.4
274,532,637
23.1
11,229,815,262
4
10,157,799
△1
△62,916,000
6
0
2
783,451,273
63.8
671,978,364
27.7
10,557,836,898
7
0
5
823,157,460
69.5
314,162,744
29.8
10,243,674,154
8
0
7
302,093,584
71.5
300,284,406
31.9
9,943,389,748
9
0
2
183,509,798
72.8
1,093,437,143
39.4
8,849,952,605
10
0
8
861,527,929
78.7
235,008,132
41.0
8,614,944,473
11
0
5
292,435,690
80.7
872,739,040
47.0
7,742,205,433
12
0
9
332,622,394
83.0
892,181,688
53.1
6,850,023,745
19.1
0
5
471,275,461
86.2
19,334,596
53.2
6,830,689,149
2
0
3
95,780,637
86.8
311,256,446
55.3
6,519,432,703
3
0
5
427,119,715
89.8
1,075,804,649
62.7
5,443,628,054
小計
0
61
4,579,427,736
89.8
6,165,759,001
62.7
 
合計
14,600,059,325
169
13,106,386,978
89.8
9,156,431,271
62.7
注(1)
 1件はJICSとの調達代理契約を示し、310,784,313円は同契約により調達口座からJICSに支払うことになる調達代理手数料として計算された額の概算額(上限額)を示す。なお、この概算額は19年2月に変更契約により355,589,398円に変更されている。
注(2)
 「政府口座から調達口座への受入金額」には我が国から供与された資金の他に、政府口座において発生し調達口座に入金された利息59,325円を含む。
注(3)
 「契約」欄の件数、金額の△(マイナス)表示は契約解除に係るものである。
注(4)
 「契約締結率(%)」及び「支払率(%)」は小数点第2位以下を四捨五入している。

 そして、19年3月末現在の資金の執行状況についてみると、契約締結済額は169件、131億0638万余円で、資金供与額146億円に対する契約締結済額の割合である契約締結率は89.8%となっており、18年3月末現在の契約締結率58.4%と比べて上昇している。これは、18年4月以降、契約を中途で解除したものが1件、新規に契約を締結したものが62件あるなどのため、契約締結額が45億7942万余円増加したことによるものである。また、支払済額は91億5643万余円で、資金供与額146億円に対する支払済額の割合である支払率は62.7%となっており、18年3月末現在の支払率20.5%と比べて約3倍に上昇している。これは施設の建設工事に係る契約において、工事の施工が進ちょくし、この工事の進ちょくに応じて出来高払いを行っているなどのため、支払済額が61億6575万余円増加したことによるものである。

(ウ) 案件に係る契約の進ちょく状況

 各案件に係る契約の進ちょく状況についてみると、表8のとおり、19年3月末現在で、予定契約件数は174件であり、このうち、契約相手方の選定を開始したものは171件、業者との契約の締結を終了したものは168件、締結した契約に基づく業者の給付が完了したものは129件となっている。これらは、18年報告において記述した18年3月末現在の件数と比べて、予定契約件数が51件、契約相手方の選定を開始したものが60件、業者との契約の締結を終了したものが61件、締結した契約に基づく業者の給付が完了したものが84件、それぞれ増加している。

表8 案件に係る契約の進ちょく状況(インドネシア共和国)
19年3月末現在
案件名
予定契約件数
a
契約進ちょくの段階
契約相手方の選定開始
契約締結の終了
契約に基づく給付の完了
件数
b
割合(%)
b/a
件数
c
割合(%)
c/a
件数
d
割合(%)
d/a
〔1〕 緊急支援物資(医薬品・医療器具)供与事業
5
<4>
5
<3>
100.0
<75.0>
5
<3>
100.0
<75.0>
3
<2>
60.0
<50.0>
〔2〕 保健所復旧事業
8
<8>
8
<8>
100.0
<100.0>
8
<8>
100.0
<100.0>
8
<0>
100.0
<0.0>
〔3〕 ラジオ・テレビ放送支援事業
15
<7>
15
<7>
100.0
<100.0>
15
<6>
100.0
<85.7>
11
<4>
73.3
<57.1>
〔4〕 西海岸道路復旧事業
17
<16>
17
<16>
100.0
<100.0>
17
<16>
100.0
<100.0>
17
<13>
100.0
<81.3>
〔5〕 放水路(護岸工事)復旧事業
22
<17>
22
<17>
100.0
<100.0>
22
<17>
100.0
<100.0>
21
<9>
95.5
<52.9>
〔6〕 水道・衛生施設復旧事業
13
<13>
13
<13>
100.0
<100.0>
13
<13>
100.0
<100.0>
11
<10>
84.6
<76.9>
〔7〕 孤児院再建事業
4
<4>
4
<3>
100.0
<75.0>
4
<3>
100.0
<75.0>
0
<0>
0.0
<0.0>
〔8〕 漁業支援事業
16
<15>
16
<12>
100.0
<80.0>
16
<12>
100.0
<80.0>
12
<4>
75.0
<26.7>
〔9〕 市場復旧整備事業
5
<6>
5
<3>
100.0
<50.0>
5
<3>
100.0
<50.0>
2
<0>
40.0
<0.0>
〔10〕 大学復旧等支援事業
27
<13>
27
<12>
100.0
<92.3>
27
<9>
100.0
<69.2>
24
<0>
88.9
<0.0>
〔11〕 職業訓練センター支援事業
6
<4>
6
<4>
100.0
<100.0>
6
<4>
100.0
<100.0>
5
<0>
83.3
<0.0>
〔12〕 イスラム学校等に対する支援事業
12
<7>
12
<6>
100.0
<85.7>
12
<6>
100.0
<85.7>
8
<1>
66.7
<14.3>
〔13〕 土地台帳の修復事業
9
<6>
9
<6>
100.0
<100.0>
9
<6>
100.0
<100.0>
7
<2>
77.8
<33.3>
〔14〕 排水施設緊急復旧事業・モデルエリア開発事業
8
<3>
8
<1>
100.0
<33.3>
7
<1>
87.5
<33.3>
0
<0>
0.0
<0.0>
〔15〕 追加復旧復興事業
7
<->
4
<->
57.1
<->
2
<->
28.6
<->
0
<->
0.0
<->
15案件合計
174
<123>
171
<111>
 
 
168
<107>
 
 
129
<45>
 
 
18年3月末現在と比べた増加件数
51
60
 
61
 
84
 
(注)
 下段< >書きは18年報告において示した18年3月末現在のものである。


 これを案件別にみると、〔14〕排水施設緊急復旧事業・モデルエリア開発事業及び〔15〕追加復旧復興事業を除く13案件で契約の締結が終了している。これは、18年報告において記述した18年3月末現在の契約締結が終了した6案件に比べて、7案件増加している。
 予定契約件数に対して契約に基づく給付が完了した件数の割合(以下「給付完了率」という。)が100%となっている案件は、〔2〕保健所復旧事業及び〔4〕西海岸道路復旧事業の2案件、給付完了率が50%以上100%未満となっている案件は、〔1〕緊急支援物資(医薬品・医療器具)供与事業等9案件である。また、給付完了率が50%未満となっている案件は〔9〕市場復旧整備事業等4案件であり、このうち、〔7〕孤児院再建事業、〔14〕排水施設緊急復旧事業・モデルエリア開発事業及び〔15〕追加復旧復興事業の3案件は、給付完了率が0%であった。
 19年3月末現在の給付完了率の状況は、18年報告において記述した18年3月末現在と比べて、100%となっている案件が2件、50%以上100%未満となっている案件が4件、それぞれ増加し、また、0%となっている案件が3件減少している。
 給付完了率が高くなっている案件では、被災住民に必要な医療関連などの資機材の調達、道路や河川護岸の復旧などの生活、社会基盤の施設に係る建設工事の契約が多い。また、給付完了率が低くなっている案件では、生活、社会基盤の施設の復旧後に必要となる資機材の調達や被災地の中長期的な復興のために必要な施設の建設工事の契約が多い。
 給付完了率が100%となっている案件に係る契約の内容は、〔2〕保健所復旧事業では、保健所庁舎の再建工事、保健所に配備する救急車等の車両及び医療機材の調達、〔4〕西海岸道路復旧事業では、アチェ特別州北スマトラ西部の国道である西海岸道路の橋梁の修復・建設を含む道路復旧工事及びこの工事に使用される各種の建設機械等の調達に係る契約であった。この西海岸道路復旧工事契約では、外務省の説明によれば、JICAが津波等災害の発生直後に緊急開発調査を実施し、設計作業と入札図書の技術的資料の作成作業を行ったことにより契約が早期に締結され、施工が順調に進み、完了したとしている。
 また、給付完了率が50%未満となっている案件に係る契約の内容は、次のとおりである。〔14〕排水施設緊急復旧事業・モデルエリア開発事業は、バンダアチェ市内の排水施設の整備及び災害避難施設の建設等を行うものであり、18年3月に1件、同年4月以降に6件の契約が締結されている。〔15〕追加復旧復興事業は、バンダアチェ市の中心部にあるアチェ市場を再建するための設計、施工監理等であるが、この案件は、〔1〕から〔13〕までの案件の実施状況を勘案して資金の使用配分を見直し、18年4月以降に新たに追加して実施されることとなったものである。これら2案件では、給付完了率が0%となっている。〔7〕孤児院再建事業は、バンダアチェ市内6箇所の孤児院の再建工事(契約2件)、再建工事の設計監理及びこれらの孤児院に配備する備品の調達契約からなっている。備品は、孤児院の再建工事が完了した後に納入されることとなっているため、6箇所の孤児院の再建工事が完了していない19年3月末現在、案件として給付完了率が0%となっている。相手国政府の実施機関の説明によれば、再建工事が完了していないのは、被災後バンダアチェ市内では建設労働者が不足しており、孤児院の再建工事に着工後、業者が必要な建設労働者を十分に確保することが困難な状況にあることなどによるとしている。なお、上記孤児院の再建工事に係る2件の契約のうちの1件の契約は、およそ80%程度の進ちょくであるとしている。〔9〕市場復旧整備事業は、市場設備の修復及び建設工事、市場に配備する度量衡機材の調達を行うものであるが、この給付完了率が40%となっているのは、相手国政府の実施機関の説明によれば、市場建設予定地の周辺住民が建設に反対し、交渉に手間取り、実施案件の選定に日時を要したことなどによるとしている。
 このほか、〔12〕イスラム学校等に対する支援事業では、契約の給付完了率が66.7%となっているが、この案件に係る「マドラッサ、ペサントレン向け学校機材〔2〕」の契約は、契約相手方の業者が学校機材を納入することができなくなり、18年5月に契約の解除が行われた。その後、同年6月に別の業者と新規に契約が締結され、同年9月に学校機材が納入された。
 そして、会計検査院は、これらの案件の工事に係る契約で給付が完了しているもののうち、〔4〕西海岸道路復旧事業で実施された西海岸道路、〔5〕放水路復旧事業で実施された放水路、〔12〕イスラム学校等に対する支援事業で実施された中学校校舎について実地に調査を実施し、これらの施設が完成していることを確認した。また、資材及び機械の調達で給付が完了しているもののうち、〔3〕ラジオ・テレビ放送支援事業で調達したテレビ放送車両、〔4〕西海岸道路復旧事業で調達したブルドーザーや振動ローラー、〔11〕職業訓練センター支援事業で調達した移動職業訓練車、〔12〕イスラム学校等に対する支援事業で調達した学校機材等について実地に調査を実施し、これらの資機材が被災地に届いていることを確認した。
 これら15案件に係る契約の実施状況について、19年3月末現在、締結された契約168件の契約内容等を契約別に整理して示すと、別表1 のとおりとなる。

イ モルディブ共和国

(ア) 事業の概要

 我が国政府が援助したノンプロ無償資金協力事業の実施に当たっては、モルディブ共和国政府側から外務省、国家開発計画省、財務省及び各実施機関などの関係機関が、我が国政府側から同国を所轄する在スリランカ日本国大使館が、それぞれ参加して設置された政府間協議会において、モルディブ共和国政府からの要請、案件の選定、資金の配分、案件の実施状況の確認等が行われており、この実施体制については18年報告後の変更はない。
 そして、モルディブ共和国政府に供与された20億円について、我が国外務省から提出された資料に基づき、会計検査院が把握した19年3月末現在の事業の概要を、18年報告において示した18年3月末現在と同一の形式で、分野(実施機関)、資金の配分(概算額)、案件名、調達品目、事業内容の別に整理して示すと、表9のとおりであり、18年3月末現在と比べて変更点はない。

表9 事業の概要(モルディブ共和国)
分野(実施機関)
資金の配分(概算額)
案件名
調達品目
事業内容
漁業(漁業・農業省)
約5億円
漁業関連設備整備計画
無線機、GPS、魚網、エンジン、発電機、ポンプ、漁船修理用機材、漁船用エンジンオーバーホール用スペアパーツ、漁船用プロペラ及びシャフト、85フィート漁船
漁船積載用無線機の調達、漁船積載用各種漁具の調達、津波で被災した漁船のエンジン、スペアパーツ、プロペラ・シャフト等の調達、カツオ一本釣り用漁船(新造)の現地調達
社会基盤・行政
(環礁開発省、運輸省、環境・エネルギー・水省)
約12億円
公共施設・設備整備計画
ガン島行政合同庁舎建設、フォナドー島行政事務所再建、行政事務所用太陽光発電システム、コーズウェイの復旧と再建、ラームアトール配電網復旧計画、下水処理システム改善計画
コーズウェイ建設、多目的防災ビル建設、アイランドオフィス建設、配電設備設置、下水システム整備
農業(漁業・農業省)
約2.4億円
農業関連機材供与
トラクター、ピックアップトラック、背負い式スプレーヤー、シュレッダー、温室冷却システム、浸透乾燥機、船舶、発電機、芝刈り機、スペアパーツ等
津波で被災した農業機材の調達
 
約0.6億円
調達代理手数料
 
上記全案件に係る調達手続きの進ちょく状況に応じて随時支出される。
 
援助額20億円
 
 
 

(イ) 資金の執行状況

 我が国政府からモルディブ共和国の政府口座に支払われた資金20億円は、17年3月8日にJICSの管理する調達口座に受け入れられた。そして、モルディブ共和国は、為替相場の変動に対処するために調達口座として新たに米ドル口座を設け、同年11月29日に、16億0108万余円の邦貨額を1334万余米ドルに交換し管理していた。また、残りの1億4730万余円の邦貨額は引き続き円口座で管理していた。
 調達口座から19年3月末までに支払われた額は、表10のとおり、16億1710万余円(米ドル貨による支払額を邦貨に換算した額を含む。)であり、19年3月末の調達口座における残高は563万余円及び3,182,777.54米ドル(邦貨換算額3億8193万余円)、計3億8756万余円となっている。この残高は、18年報告において記述した18年3月末の調達口座における残高1億3606万余円及び10,504,212.91米ドル(邦貨換算額12億6050万余円)、計13億9657万余円と比べて、10億0900万余円減少している。

表10 資金の月別執行状況(モルディブ共和国)
年月
政府口座から調達口座への受入金額(円)
調達口座での資金の執行状況
契約
支払
支払後の残高(無単位は円、$は米ドルを示す)
件数
金額(円)
契約締結率(%)
金額(円)
支払率(%)
17.1
0
59,628,543
3.0
0
0.0
0
2
0
0
0
3.0
0
0.0
0
3
2,000,002,235
0
0
3.0
0
0.0
2,000,002,235
4
0
1
481,328
3.0
0
0.0
2,000,002,235
5
0
1
43,746,125
5.2
0
0.0
2,000,002,235
6
0
0
0
5.2
16,715,537
0.8
1,983,286,698
7
0
1
102,304,000
10.3
0
0.8
1,983,286,698
8
0
4
107,054,272
15.7
0
0.8
1,983,288,013
9
0
2
51,217,802
18.2
20,744,314
1.9
1,962,543,699
10
0
5
185,830,600
27.5
14,449,006
2.6
1,948,094,693
11
0
3
1,175,007,036
86.3
199,702,220
12.6
147,304,001
$13,342,403.94
12
0
1
148,596,805
93.7
311,835,398
28.2
147,304,001
$10,743,775.62
18.1
0
0
0
93.7
1,506,157
28.2
147,304,001
$10,731,224.31
2
0
0
0
93.7
34,554,007
30.0
136,066,407
$10,543,396.94
3
0
1
82,802,775
97.8
4,702,084
30.2
136,066,407
$10,504,212.91
邦貨換算額計
1,396,571,956
小計
2,000,002,235
20
1,956,669,286
97.8
604,208,723
30.2
 
18.4
0
0
0
97.8
77,827,876
34.1
102,822,264
$10,132,681.80
5
0
0
0
97.8
27,095,147
35.5
102,822,264
$9,906,888.91
6
0
0
0
97.8
44,812,491
37.7
102,822,264
$9,533,451.48
7
0
△1
△138,554,625
90.9
264,003,131
50.9
102,822,264
$7,333,425.39
8
0
1
55,042,492
93.7
63,034,645
54.0
102,822,264
2
137,845,267
$6,829,400.92
△1
△82,802,775
9
0
0
0
93.7
109,084,579
59.5
102,822,264
$5,920,362.76
10
0
0
0
93.7
217,508,648
70.4
102,822,264
$4,107,790.70
11
0
0
0
93.7
0
70.4
102,822,264
$4,107,790.70
12
0
2
124,566,686
99.9
186,888,116
79.7
5,633,264
$3,360,298.06
19.1
0
△1
△124,109,425
93.7
8,395,889
80.1
5,633,264
$3,290,332.32
2
0
0
0
93.7
△13,398,012
79.5
5,633,264
$3,413,115.80
3
0
0
18,072,244
94.6
27,640,591
80.9
5,633,264
$3,182,777.54
邦貨換算額計
387,566,568
小計
0
1
△64,982,628
94.6
1,012,893,101
80.9
 
合計
2,000,002,235
21
1,891,686,658
94.6
1,617,101,824
80.9
注(1)
 1件はJICSとの調達代理契約を示し、59,628,543円は同契約により調達口座からJICSに支払うことになる調達代理手数料として計算された額の概算額(上限額)を示す。
注(2)
 「政府口座から調達口座への受入金額」には我が国から供与された資金の他に、政府口座において発生し調達口座に入金された利息2,235円を含む。
注(3)
 「支払後の残高」には調達口座において発生した利息が含まれているため、「政府口座から調達口座への受入金額」から「支払」欄の金額を差し引いた金額とは一致しない。
注(4)
 「契約」、「支払」各欄の件数、金額の△(マイナス)表示は契約解除に係るものである。
注(5)
 「契約締結率(%)」及び「支払率(%)」は小数点第2位以下を四捨五入している。

 そして、19年3月末現在の資金の執行状況についてみると、契約締結済額は21件、18億9168万余円で、資金供与額20億円に対する契約締結済額の割合である契約締結率は94.6%となっており、18年3月末現在の契約締結率97.8%と比べて低下している。これは、18年4月以降、契約を中途で解除したものが3件、これに代わり新規に契約を締結したものが4件あるなどのため、契約締結額が6498万余円減少したことによるものである。また、支払済額は16億1710万余円で、資金供与額20億円に対する支払済額の割合である支払率は80.9%となっており、18年3月末現在の支払率30.2%と比べて大幅に上昇している。これは施設の建設工事に係る契約において、工事の施工が進ちょくし、この工事の進ちょくに応じて出来高払いを行っているなどのため、支払済額が10億1289万余円増加したことによるものである。

(ウ) 案件に係る契約の進ちょく状況

 各案件に係る契約の進ちょく状況についてみると、表11のとおり、19年3月末現在で、予定契約件数は20件であり、このうち、契約相手方の選定を開始したものは20件、業者との契約の締結を終了したものは20件、締結した契約に基づく業者の給付が完了したものは15件となっている。これらは、18年報告において記述した18年3月末現在の件数と比べて、予定契約件数が1件、契約相手方の選定を開始したものが1件、業者との契約の締結を終了したものが1件、締結した契約に基づく業者の給付が完了したものが7件、それぞれ増加している。

表11 案件に係る契約の進ちょく状況(モルディブ共和国)
19年3月末現在

案件名
予定契約件数
a
契約進ちょくの段階
契約相手方の選定開始
契約締結の終了
契約に基づく給付の完了
件数
b
割合(%)
b/a
件数
c
割合(%)
c/a
件数
d
割合(%)
d/a
〔1〕漁業関連設備整備計画
10
<9>
10
<9>
100.0
<100.0>
10
<9>
100.0
<100.0>
6
<6>
60.0
<66.7>
〔2〕公共施設・設備整備計画
5
<5>
5
<5>
100.0
<100.0>
5
<5>
100.0
<100.0>
5
<0>
100.0
<0.0>
〔3〕農業関連機材供与
5
<5>
5
<5>
100.0
<100.0>
5
<5>
100.0
<100.0>
4
<2>
80.0
<40.0>
3案件合計
20
<19>
20
<19>
 
 
20
<19>
 
 
15
<8>
 
 
18年3月末現在と比べた増加件数
1
1
 
 
1
 
 
7
 
 
(注)
 下段< >書きは18年報告において示した18年3月末現在のものである。


 これを案件別にみると、上記3案件は、18年報告における18年3月末現在と同様、すべての契約の締結が終了している。
 また、給付完了率が100%となっている案件は〔2〕公共施設・設備整備計画の1案件であり、〔3〕農業関連機材供与では80.0%、〔1〕漁業関連設備整備計画では60.0%の給付完了率となっている。
 19年3月末現在の給付完了率の状況は、18年報告において記述した18年3月末現在と比べて、100%となっている案件が1件、50%以上100%未満となっている案件が1件、それぞれ増加している。
 給付完了率が100%となっている〔2〕公共施設・設備整備計画に係る契約の内容は、コーズウェイ(海岸の土手道)、行政庁舎、下水処理システム及び電力配電網の公共的な生活基盤施設の建設契約であった。そして、外務省の説明によれば、この〔2〕公共施設・設備整備計画では、JICAが津波等災害の発生直後に緊急開発調査を実施し、設計作業と入札図書の技術的資料の作成作業を行ったことにより契約が早期に締結され、施工が順調に進み、完了したとしている。
 このほか、〔1〕漁業関連設備整備計画では、契約の給付完了率が60.0%となっているが、この案件に係る85ft漁船の建造契約については、当初締結した契約3件が契約相手方の造船会社の事情により漁船の建造を続けることができないことが判明したため、政府間協議会において契約解除の可否及び解除後の対応策が協議された。その結果、85ft漁船の建造契約3件は18年7月、8月及び19年1月に契約の解除が行われ、前払金が支払われていた1件は全額が返還されることとなっている。そして、別の造船会社2社と契約4件が18年8月及び12月に締結された。これにより漁船の引渡しは19年6月から12月までに行われることとなった。
 そして、会計検査院は、これらの案件の工事に係る契約で給付が完了しているもののうち、〔2〕公共施設・設備整備計画で実施されたコーズウェイ、行政庁舎、下水処理システム及び電力配電網について実地に調査を実施し、これらの施設が完成していることを確認した。また、資材及び機械の調達で給付が完了しているもののうち、〔1〕漁業関連設備整備計画等で調達した漁船排水用ポンプ、発電機等について、配布されたディフシ島の漁民の漁船を実地に調査し、これらの資機材が被災地に届いていることを確認した。
 これら3案件に係る契約の実施状況について、19年3月末現在、締結された契約20件の契約内容等を契約別に整理して示すと、別表2 のとおりとなる。

ウ スリランカ共和国

(ア) 事業の概要

 我が国政府が援助したノンプロ無償資金協力事業の実施に当たっては、スリランカ共和国政府側から財務計画省、各実施機関などの関係機関が、我が国政府側から在スリランカ日本国大使館が、それぞれ参加して設置された政府間協議会において、スリランカ共和国政府からの要請、案件の選定、資金の配分、案件の実施状況の確認等が行われており、この実施体制については18年報告後の変更はない。
 そして、スリランカ共和国政府に供与された80億円について、外務省から提出された資料に基づき、会計検査院が把握した19年3月末現在の事業の概要を、18年報告において示した18年3月末現在と同一の形式で、分野(実施機関)、資金の配分(概算額)、案件名、調達品目、事業内容の別に整理して示すと、表12のとおりであり、18年3月末現在と比べて変更点はない。

表12 事業の概要(スリランカ共和国)
分野(実施機関)
資金の配分(概算額)
案件名
調達品目
事業内容
衛生・生活(都市開発・水供給省)
約16億円
〔1〕中古バキュームカーの輸送及び高圧洗浄機の購入計画
バキュームカーの輸送、スペアパーツ、高圧洗浄機、技術者の派遣、し尿処理施設
被災地住民の衛生管理
生活(都市開発・水供給省、電力省、住宅建設工業省)
〔2〕給水車及び貯水タンクの購入計画
給水車、貯水タンク
被災地住民の生活用水確保
〔3〕上水道の再整備(水管橋他の整備)
水管橋、メーター、パイプ
被災地住民の飲料水供給体制の整備
〔4〕発電機(100台)購入計画
発電機配布・設置
被災地住民の電力改善
〔5〕被災者用住宅
住宅
被災地住民の住宅供給改善
輸送(ハイウェイ省、住宅建設工業省)
約16億円
〔6〕建設用重機械及び既存機械のスペアパーツの購入計画
建設機械スペアパーツ、建設機械
被災地域の道路等の改善
〔7〕橋梁工事計画(Galle-Matara)
南部5橋梁等修復工事に関する役務
被災地域の橋梁等復旧
治安(警察庁)
約3億円
〔8〕警察署建設計画(6箇所)
建設工事、施工監理
被災地域の警察署復旧
教育(教育省)
約15億円
〔9〕小中学校再建計画(14校)
再建に関する役務
被災地域の学校復旧
漁業(漁業水産資源省)
約21億円
〔10〕漁業用資機材購入計画
船外機用コンテナワークショップ、コンテナタイプ製氷機、冷蔵庫、漁船補修材料、漁具、船外機、漁船、船外機スペアパーツ、漁船修復人件費、港湾施設、日本型訓練船、現地型マルチデーボート
被災地域の漁業改善
医療(保健省)
約2億円
〔11〕医療関連機材購入計画
病院機材、回診車、狂犬病対策用機材
被災地の医療レベルの回復及び向上
行政(行政・国内問題省)
約2億円
〔12〕津波被災地巡回車両調達計画
ピックアップトラック(4WD)、ピックアップトラック(4WD)アクセサリー、ピックアップトラック(4WD)レンタカー借上げ
被災地域の復興活動支援
治安(警察庁)
約2億円
〔13〕災害時緊急通報用機材調達計画
車載用サイレン、メガホン、救命胴衣
今後の災害時における緊急通報機能の改善
生活(住宅建設工業省)
約1億円
〔14〕地質調査・建設資材強度検査・環境検査用機材調達計画
地質調査機材一式、土質検査機材一式、環境検査機材一式
被災地の建築物建設技術の向上と品質の確保
 
約2億円
調達代理手数料
 
上記全案件に係る調達手続の進ちょく状況に応じて随時支出される。
 
援助額80億円
 
 
 

(イ) 資金の執行状況

 我が国政府からスリランカ共和国の政府口座に支払われた資金80億円は、17年3月10日にJICSの管理する調達口座に受け入れられた。そして、調達口座から19年3月末までに支払われた額は、表13のとおり、62億0112万余円であり、19年3月末の調達口座における残高は17億9889万余円となっている。この残高は、18年報告において記述した18年3月末の調達口座における残高45億7636万余円と比べて、27億7747万余円減少している。

表13 資金の月別執行状況(スリランカ共和国)
年月
政府口座から調達口座への受入金額(円)
調達口座での資金の執行状況
契約
支払
支払後の残高(円)
件数
金額(円)
契約締結率(%)
金額(円)
支払率(%)
17.1
0
0
0
0.0
0
0.0
0
2
0
193,749,430
2.4
0
0.0
0
3
8,000,009,316
14
176,541,376
4.6
0
0.0
8,000,009,316
4
0
5
377,535,876
9.3
3,051,583
0.0
7,996,957,733
5
0
5
235,616,377
12.3
116,928,023
1.5
7,880,029,710
6
0
6
330,411,199
16.4
133,248,835
3.2
7,746,780,875
7
0
11
2,221,225,803
44.2
283,134,162
6.7
7,463,646,713
8
0
6
184,634,444
46.5
666,834,761
15.0
6,796,816,773
9
0
7
1,018,080,012
59.2
233,520,494
18.0
6,563,296,279
10
0
11
696,027,925
67.9
296,584,053
21.7
6,266,712,226
11
0
7
310,143,594
71.8
371,582,055
26.3
5,895,130,171
12
0
10
1,522,903,073
90.8
524,355,556
32.9
5,370,774,615
18.1
0
0
0
90.8
297,187,831
36.6
5,073,586,784
2
0
1
69,810,747
91.7
225,489,861
39.4
4,848,096,923
3
0
1
170,063,434
93.8
271,732,012
42.8
4,576,364,911
小計
8,000,009,316
86
7,506,743,290
93.8
3,423,649,226
42.8
 
18.4
0
0
△26,139,326
93.5
163,268,848
44.8
4,413,096,063
5
0
0
6,275,130
93.6
158,920,200
46.8
4,254,175,863
6
0
6
△21,904,806
93.3
131,171,143
48.5
4,123,004,720
7
0
1
1,041,540
93.3
281,495,508
52.0
3,841,509,212
8
0
0
52,785,621
94.0
163,627,710
54.0
3,677,881,502
9
0
0
△17,241
94.0
224,469,573
56.8
3,453,411,929
10
0
1
77,424,298
95.0
41,380,960
57.3
3,412,030,969
11
0
1
177,918,108
97.2
372,377,272
62.0
3,039,653,697
12
0
1
61,780,310
97.9
76,785,175
63.0
2,962,868,522
19.1
0
0
10,992,986
98.1
226,683,830
65.8
2,736,184,692
2
0
0
△68,701,900
97.2
434,979,352
71.2
2,301,205,340
3
0
0
0
97.2
502,312,093
77.5
1,798,893,247
小計
0
10
271,454,720
97.2
2,777,471,664
77.5
 
合計
8,000,009,316
96
7,778,198,010
97.2
6,201,120,890
77.5
注(1)
 件数2件のうち1件はJICSとの調達代理契約を示し、193,749,430円は同契約により調達口座から、JICSに支払うことになる調達代理手数料として計算された額の概算額(上限額)191,780,822円を含む。
注(2)
 「政府口座から調達口座への受入金額」には我が国から供与された資金の他に、政府口座において発生し調達口座に入金された利息9,316円を含む。
注(3)
 「支払後の残高」には調達口座において発生した利息が含まれているため、「政府口座から調達口座への受入金額」から「支払」欄の金額を差し引いた金額とは一致しない。
注(4)
 「契約」欄の金額の△(マイナス)表示は、契約の減額変更及び現地通貨建ての契約金額の邦貨換算に用いるレートの見直しに係るものである。
注(5)
 「契約締結率(%)」及び「支払率(%)」は小数点以下第2位を四捨五入している。

 そして、19年3月末現在の資金の執行状況についてみると、契約締結済額は96件、77億7819万余円で、資金供与額80億円に対する契約締結済額の割合である契約締結率は97.2%となっており、18年3月末現在の契約締結率93.8%と比べて上昇している。これは、18年4月以降、新規に契約を締結したものが10件あるなどのため、契約締結額が2億7145万余円増加したことによるものである。また、支払済額は62億0112万余円で、資金供与額80億円に対する支払済額の割合である支払率は77.5%となっており、18年3月末現在の支払率42.8%と比べて上昇している。これは施設の建設工事に係る契約において、工事の施工が進ちょくし、この工事の進ちょくに応じて出来高払いを行っているなどのため、支払済額が27億7747万余円増加したことによるものである。

(ウ) 案件に係る契約の進ちょく状況

 各案件に係る契約の進ちょく状況についてみると、表14のとおり、19年3月末現在で、予定契約件数は96件であり、このうち、契約相手方の選定を開始したものは96件、業者との契約の締結を終了したものは95件、締結した契約に基づく業者の給付が完了したものは54件となっている。これらは、18年報告において記述した18年3月末現在の件数と比べて、予定契約件数が2件、契約の相手方の選定を開始したものが11件、業者との契約の締結を終了したものが10件、締結した契約に基づく業者の給付が完了したものが28件、それぞれ増加している。

表14 案件に係る契約の進ちょく状況(スリランカ共和国)
19年3月末現在

案件名
予定契約件数
a
契約進ちょくの段階
契約相手方の選定開始
契約締結の終了
契約に基づく給付の完了
件数
b
割合(%)
b/a
件数
c
割合(%)
c/a
件数
d
割合(%)
d/a
〔1〕中古バキュームカーの輸送及び高圧洗浄機の購入計画
8
<8>
8
<8>
100.0
<100.0>
8
<8>
100.0
<100.0>
4
<4>
50.0
<50.0>
〔2〕給水車及び貯水タンクの購入計画
2
<2>
2
<2>
100.0
<100.0>
2
<2>
100.0
<100.0>
2
<2>
100.0
<100.0>
〔3〕上水道の再整備(水管橋他の整備)
4
<4>
4
<4>
100.0
<100.0>
4
<4>
100.0
<100.0>
4
<2>
100.0
<50.0>
〔4〕発電機(100台)購入計画
2
<2>
2
<2>
100.0
<100.0>
2
<2>
100.0
<100.0>
2
<1>
100.0
<50.0>
〔5〕被災者用住宅
5
<5>
5
<5>
100.0
<100.0>
5
<5>
100.0
<100.0>
0
<0>
0.0
<0.0>
〔6〕建設用重機械及び既存機械のスペアパーツの購入計画
4
<4>
4
<4>
100.0
<100.0>
4
<4>
100.0
<100.0>
4
<4>
100.0
<100.0>
〔7〕橋梁工事計画(Galle-Matara)
5
<4>
5
<4>
100.0
<100.0>
4
<4>
80.0
<100.0>
2
<0>
40.0
<0.0>
〔8〕警察署建設計画(6箇所)
14
<12>
14
<12>
100.0
<100.0>
14
<12>
100.0
<100.0>
8
<0>
57.1
<0.0>
〔9〕小中学校再建計画(14校)
24
<22>
24
<22>
100.0
<100.0>
24
<22>
100.0
<100.0>
4
<2>
16.7
<9.1>
〔10〕漁業用資機材購入計画
14
<14>
14
<14>
100.0
<100.0>
14
<14>
100.0
<100.0>
10
<6>
71.4
<42.9>
〔11〕医療関連機材購入計画
3
<3>
3
<3>
100.0
<100.0>
3
<3>
100.0
<100.0>
3
<0>
100.0
<0.0>
〔12〕津波被災地巡回用車両調達計画
5
<5>
5
<5>
100.0
<100.0>
5
<5>
100.0
<100.0>
5
<5>
100.0
<100.0>
〔13〕災害時緊急通報用機材調達計画
2
<3>
2
<0>
100.0
<0.0>
2
<0>
100.0
<0.0>
2
<0>
100.0
<0.0>
〔14〕地質調査・建設資材強度検査・環境検査用機材調達計画
4
<6>
4
<0>
100.0
<0.0>
4
<0>
100.0
<0.0>
4
<0>
100.0
<0.0>
14案件合計
96
<94>
96
<85>
 
 
95
<85>
 
 
54
<26>
 
 
18年3月末現在と比べた増加件数
2
11
 
 
10
 
 
28
 
 
(注)
 下段< >書きは18年報告において示した18年3月末現在のものである。


 これを案件別にみると、〔7〕橋梁工事計画を除く13案件で契約の締結が終了している。これは、18年報告において記述した18年3月末現在の契約締結が終了した12案件に比べて、1案件増加している。
 給付完了率が100%となっている案件は〔2〕給水車及び貯水タンクの購入計画等8案件、50%以上100%未満となっている案件は〔1〕中古バキュームカーの輸送及び高圧洗浄機の購入計画等3案件である。また、給付完了率が50%未満となっている案件は〔7〕橋梁工事計画等3案件であり、このうち、〔5〕被災者用住宅は給付完了率が0%であった。
 19年3月末現在の給付完了率の状況は、18年報告において記述した18年3月末現在と比べて、100%となっている案件は5件増加し、また、0%となっている案件は5件減少している。
 給付完了率が高くなっている案件では、被災住民に必要な医療や水道関連の資機材の調達契約が多い。また、給付完了率が低くなっている案件では、被災者用住宅の建設、小中学校の再建、橋梁の修復等の工事契約が多い。
 給付完了率が100%となっている案件に係る契約の内容は、〔2〕給水車及び貯水タンクの購入計画では給水車及び貯水タンク、〔4〕発電機購入計画では発電機、〔6〕建設用重機械及び既存機械のスペアパーツの購入計画では建設用重機械、〔11〕医療関連機材購入計画では医療関連機材などの機械及び機材の調達契約であり、〔3〕上水道の再整備では水管橋修復工事の契約であった。この水管橋修復工事契約では、外務省の説明によれば、JICAが津波等災害の発生直後に緊急開発調査を実施し、設計作業と入札図書の技術的資料の作成作業を行ったことにより契約が早期に締結され、施工が順調に進み、完了したとしている。
 また、給付完了率が50%未満となっている案件に係る契約の内容は、〔5〕被災者用住宅では住宅、〔7〕橋梁工事計画ではコーズウェイ、〔9〕小中学校再建計画では小中学校校舎の建設工事に係る契約であり、工事に係る給付が完了していないものが多い。これらの案件のうち、〔5〕被災者用住宅、〔7〕橋梁工事計画、〔9〕小中学校再建計画の各案件には、国土の北部・東部地域において実施する施設の修復、建設に係る契約で給付が完了していないものがある。これは、相手国政府の実施機関の説明等によれば、18年4月頃から治安状況が急激に悪化したため、工事関係者の安全確保及び円滑な工事の実施が困難な状況にあることなどによるとしている。なお、そのうちの〔7〕橋梁工事計画に係る東部コーズウェイ修復工事契約は、70%程度の進ちょくであるとしている。
 このほか、〔8〕警察署建設計画では、契約の給付完了率が57.1%となっているが、この案件に係るクッチャベリ警察署の再建工事契約は、工事の実施場所が治安の一段と悪化した北部地域に存在するため、18年5月に政府間協議会においてその実施が困難であると判断され、同年7月にスリランカ共和国政府が本件工事を中止した。
 そして、会計検査院は、これらの案件の工事に係る契約で給付が完了しているもののうち、〔3〕上水道の再整備で実施したマータラ水管橋、〔7〕橋梁工事計画で実施したシーニガマ橋及びマッガラ橋、〔8〕警察署建設計画で実施したラトガマ警察署、〔9〕小中学校再建計画で実施したクダウェラ校について実地に調査を実施し、これらの施設が完成していることを確認した。また、資材及び機械の調達で給付が完了しているもののうち、〔2〕給水車及び貯水タンクの購入計画で調達した貯水タンク、〔4〕発電機購入計画で調達した発電機、〔6〕建設用重機械及び既存機械のスペアパーツの購入計画で調達したブルドーザー、〔10〕漁業用資機材購入計画で調達した漁船エンジン等について実地に調査を実施し、これらの資機材が被災地に届いていることを確認した。
 これら14案件に係る契約の実施状況について、19年3月末現在、締結された契約95件の契約内容等を契約別に整理して示すと、別表3 のとおりとなる。

エ 外務省におけるノンプロ無償資金協力事業の実施に関する評価等

 外務省は、18年報告で記述したように、津波等災害の発生から1年後の17年12月に、「スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害2国間無償資金協力に係る中間評価報告書」を公表し、その報告書において、ノンプロ無償資金協力事業の案件の進ちょく状況、案件の妥当性、施設及び機材の活用度、案件完了後に期待される効果等についての中間評価を行った。外務省は、ノンプロ無償資金協力事業が完了していないことから、その後、事後評価を行っていないが、事業の完了後において事後評価を実施する予定であり、その具体的な時期、内容等について検討中であるとしている。
 会計検査院としては、19年3月末現在、ノンプロ無償資金協力事業が実施中であり、外務省による事後評価が行われていないため、援助の対象となった施設及び機材は当初決定された事業内容に即し被災地においてその趣旨に沿って使用されているかについて検査する段階にないが、同事業が完了した後において、中長期的な事業効果が発現されるかどうか、外務省が実施する事後評価を踏まえて、今後の利活用の状況について検査していくこととする。