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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成19年9月

政府開発援助(ODA)に関する会計検査の結果について


4 検査の結果に対する所見

ア 会計検査院は、我が国が17年1月にインドネシア共和国に対して146億円、モルディブ共和国に対して20億円、スリランカ共和国に対して80億円の資金を供与したノンプロ無償資金協力事業の実施状況について、18年次に引き続き19年次においても、施設の建設や機材の調達のために供与された資金の執行状況を中心に、有効性等の観点から検査した。
 案件実施のために締結した契約についてみると、表15のとおり、資金供与額に対する契約締結済額の割合である契約締結率は、19年3月末現在、モルディブ共和国及びスリランカ共和国では18年3月末現在と同様に90%以上となっており、インドネシア共和国では18年3月末現在の58.4%から89.8%に上昇していた。
 資金供与額に対する支払済額の割合である支払率は、19年3月末現在、インドネシア共和国では62.7%、モルディブ共和国では80.9%、スリランカ共和国では77.5%となっていた。これは、ノンプロ無償資金による事業の内容は、施設の工事に係る契約が多く、契約締結後も工事の完了までに相応の工期を要し、工事の進ちょくに応じて資金を支払うことになっているため、18年3月末現在に比べて工事が進ちょくし、3箇国の19年3月末現在の支払率が上昇したことによるものである。そして、調達口座における残高は、19年3月末において、インドネシア共和国では約54億円、モルディブ共和国では約4億円、スリランカ共和国では約18億円に減少していた。

表15 3箇国の資金の執行状況の推移
国名
年月
政府口座から調達口座への受入金額(円)
調達口座での資金の執行状況
契約
支払
支払後の残高(無単位は円、$は米ドル)
件数
金額(円)
契約締結率(%)
金額(円)
支払率(%)
インドネシア共和国
18年3月末
14,600,059,325
108
8,526,959,242
58.4
2,990,672,270
20.5
11,609,387,055
19年3月末
14,600,059,325
169
13,106,386,978
89.8
9,156,431,271
62.7
5,443,628,054
モルディブ共和国
18年3月末
2,000,002,235
20
1,956,669,286
97.8
604,208,723
30.2
136,066,407
$10,504,212.91
邦貨換算額計
1,396,571,956
19年3月末
2,000,002,235
21
1,891,686,658
94.6
1,617,101,824
80.9
5,633,264
$3,182,777.54
邦貨換算額計
387,566,568
スリランカ共和国
18年3月末
8,000,009,316
86
7,506,743,290
93.8
3,423,649,226
42.8
4,576,364,911
19年3月末
8,000,009,316
96
7,778,198,010
97.2
6,201,120,890
77.5
1,798,893,247
注(1)
契約件数にはJICSとの調達代理契約が含まれ、契約金額にはその概算額(上限額)が含まれる。
注(2)
「政府口座から調達口座への受入金額」には我が国から供与された資金の他に、政府口座において発生し調達口座に入金された利息(インドネシア共和国59,325円、モルディブ共和国2,235円、スリランカ共和国9,316円)を含む。
注(3)
モルディブ共和国及びスリランカ共和国における「支払後の残高」は、調達口座において発生した利息が含まれているため、「政府口座から調達口座への受入金額」から「支払」欄の金額を差し引いた金額とは一致しない。
注(4)
インドネシア共和国及びモルディブ共和国については、一部の案件において締結された既存の契約が解除され、これに代わり新規に契約を締結するなどしているものがあり、モルディブ共和国では、18年3月末現在と比べ、契約締結率は低下している。
注(5)
「契約締結率(%)」及び「支払率(%)」は小数点第2位以下を四捨五入している。

イ ノンプロ無償資金協力事業の中には、契約が締結されたが給付が完了に至っていない案件や、一部の案件において締結された既存の契約が解除され、これに代わり新規に契約を締結するなどしているものも見受けられる。これらの案件については、外務省において、被災地における需要等に応じた的確な実施や給付の早期完了に向けて相手国政府と一層連携し、また、相手国政府に働きかけを継続して行うことが必要である。
 ノンプロ無償資金協力事業は、津波等災害に対する緊急援助として実施されたものであるため、相手国において、速やかに必要な施設が建設され機材が調達されて、これらの施設や機材が被災地等で災害復旧・復興のために使用されることが必要である。
 したがって、会計検査院としては、本件ノンプロ無償資金協力事業によって施設が建設され、機材が調達されて完了することとなる事業に係る資金の執行状況について引き続き検査し、取りまとめが出来次第報告することとする。

 また、事業が更に進ちょくし、ノンプロ無償資金協力事業が完了することとなった場合には、中長期的な事業効果が期待される災害復興のための施設の案件も含まれていることなどから、外務省においては、事業効果の評価を的確に行うことが必要である。
 そして、会計検査院としては、緊急援助の最終受益者である被災地の住民に援助が届き、また、中長期的な事業効果が発現されるかどうか、外務省が行う本件ノンプロ無償資金協力事業に対する評価を踏まえた上で、今後の利活用の状況について引き続き検査していくこととする。