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相続税等の還付に当たり、還付金に係る支払事務処理が著しく適切を欠いたため、支払う必要のない還付加算金を支払う結果となり損害が生じたもの


(31) 相続税等の還付に当たり、還付金に係る支払事務処理が著しく適切を欠いたため、支払う必要のない還付加算金を支払う結果となり損害が生じたもの

会計名及び科目 一般会計 (款)還付金
  (項)各税還付金
部局等 足立税務署
還付加算金の内容 相続税等の還付に当たり、法定の起算日から支払決定日までの期間に応じて還付金の額に所定の率を乗じて計算した金額を加算するもの
還付加算金の支払額 5,653,200円 (平成19年度)
不当と認める還付加算金の額 5,145,100円 (平成19年度)

1 還付加算金の概要等

(1) 還付加算金の概要

 税務署は、申告書等に基づき納税者が納付した金額が、確定した納付すべき税額より過大である場合には、過大に納付された金額を国税通則法(昭和37年法律第66号)に基づき遅滞なく納税者に還付する(以下、この金額を「還付金」という。)こととなっている。そして、還付金を還付する場合には、更正処分(注) 又は賦課決定処分が行われたものについては、国税の納付があった日の翌日から還付のための支払決定の日までの期間の日数に応じて、還付金の金額に所定の率を乗じて計算した金額(以下「還付加算金」という。)を加算して支払うこととなっている。

 更正処分  申告書に記載された税額等が税務署長等の調査したところと異なるときなどに税務署長により行われる税額等を確定する処分

(2) 異議申立てに対する決定があった場合における還付金に係る支払事務処理

 税務署長による更正処分又は賦課決定処分に不服のある納税者は、税務署長に対して異議申立てができることとなっている。相続税に係る更正処分等に対する異議申立てについての審理事務は、税務署の資産税部門の異議審理事務の担当者(以下「担当者」という。)が行うこととなっている。そして、異議申立てに対する税務署長の決定(以下「異議決定」という。)により還付金の支払が必要となるときは、次のような手順で還付金を支払うこととなっている。
〔1〕  担当者は、異議決定書(処分用)及び各納税者の還付金の額を記載した徴収決定集計票(管理部門用)(以下「集計票」という。)を作成して、徴収部門に回付する。
〔2〕  徴収部門は、上記の異議決定書(処分用)が回付されると未納付の国税の有無を確認して、集計票を管理部門に回付する。
〔3〕  管理部門は、回付を受けた集計票に基づき、遅滞なく還付金を支払う。

(3) 足立税務署における還付金の支払

 足立税務署は、被相続人の配偶者及びその子等(以下「相続人」という。)から、平成15年5月21日に相続税の申告書、16年1月13日に修正申告書の提出をそれぞれ受けた。そして、修正申告の内容になお誤りがあるとして、足立税務署長は、同年2月26日に相続税を増額する更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った。
 これに対して、相続人は相続税及び重加算税を同年4月1日(延滞税は同月30日)に納付するとともに、同月20日に同税務署長に対して異議申立てを行った。
 同税務署長は、この異議申立てについて審理した結果、上記の更正処分等の一部を取り消す旨の異議決定を同年7月9日に行った。この異議決定により、同税務署は相続人のうち一部の者に対して、相続税、重加算税及び延滞税(以下「相続税等」という。)計38,433,400円を還付することとなった。
 そして、その後19年9月28日に相続人から相続税等の還付を受けていない旨の問い合わせがあり、同税務署で調査したところ、相続税等を還付していない事実が判明した。このため、同税務署は、同年10月12日に、上記の還付すべき相続税等に、相続人が相続税等を納付した日の翌日である16年4月2日又は5月1日から19年10月12日までの期間の日数に応じて計算した還付加算金5,653,200円を加算して支払った。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、還付金に係る支払事務処理が適切に行われたかなどに着眼して、足立税務署における上記還付金の支払について異議決定関係の書類等により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、本件還付金に係る支払事務処理において、次のような適切とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、担当者は16年7月9日の異議決定に基づき異議決定書(処分用)を作成して徴収部門に回付していたものの集計票を作成していなかった。このため、徴収部門から回付される集計票に基づいて還付を行うこととなっている管理部門は、相続人に対して相続税等を還付することができなかった。その後、異議決定がなされた16年7月9日から相続人から問い合わせのあった19年9月28日までの3年3か月間にわたり、本件還付金に係る支払事務処理は、行われないままとなっていた。
 そして、集計票が作成されていれば、相続人に対する相続税等の還付は、本件異議決定後の同税務署における最初の還付金支払日である16年7月27日に行うことができたと認められる。この場合、還付加算金の額は508,100円となり、同月28日以降の期間に係る還付加算金5,145,100円は支払う必要のなかったもので、これを支払う結果となり損害が生じたことは不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同税務署において、異議決定を行っていながら集計票を作成しておらず、本件還付金に係る支払事務処理が著しく適切を欠いたことなどによると認められる。