会計名及び科目 | 国債整理基金特別会計 (項)国債整理基金支出 | |
部局等 | 財務本省 | |
契約名 | 国債証券の製造に関する請負契約 | |
契約の概要 | 第八回特別弔慰金国庫債券の証券の調達 | |
契約の相手方 | 独立行政法人国立印刷局 | |
契約 | 平成19年4月 随意契約 (単価契約) | |
調達枚数 | 平成19年8月 400,000枚 | |
支払額 | 199,600,000円 | (平成19年度) |
適切でない調達枚数 | 400,000枚 | (平成19年度) |
上記に係る支払額 | 199,600,000円 |
財務省は、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法(昭和40年法律第100号。以下「法」という。)等に基づき発行する「第八回特別弔慰金国庫債券」(額面金額40万円、償還期間10年。以下「八弔国債」という。)の交付等に関する事務を行っている。そして、同省は、八弔国債の証券の調達に関して、平成17年度から19年度までの各年度にそれぞれ、独立行政法人国立印刷局(以下「印刷局」という。)と、いずれも証券1枚当たり499円の単価契約により製造請負契約を締結している。
この八弔国債は、17年4月1日から20年3月末日までの間に戦没者等の遺族等が行った請求に基づき、都道府県知事等が基準日である17年4月1日において法に定める受給要件を満たすと裁定した者に対して交付されるものである。
前記の製造請負契約に基づき、同省は、17年度は17年6月に一括して594,300枚、18年度は18年6月に500,000枚及び19年1月に205,700枚、19年度は19年8月に一括して400,000枚の証券の製造を発注して、計1,700,000枚の証券を調達している。そして、この1,700,000枚の証券をすべて日本銀行本店に納入させていて、印刷局に対して、17年度は296,555,700円、18年度は352,144,300円、19年度は199,600,000円、計848,300,000円を支払っている。
なお、この証券は、八弔国債の名称や額面金額等が印刷されて、ミシン目が加工されているなどのために、八弔国債以外の国債の証券等に転用できないものとなっている。
本院は、経済性等の観点から、八弔国債の証券の調達が適切かなどに着眼して、財務本省、厚生労働本省及び日本銀行本店において、前記の印刷局との製造請負契約に基づいて財務省が17年度から19年度までの間に行った八弔国債の証券の調達を対象として、証券の受払状況に係る報告書等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、八弔国債の証券の交付が開始された17年11月以降に、実際に戦没者等の遺族等に交付されるなどした証券は20年6月の会計実地検査の時点において1,202,029枚となっていて、前記の調達枚数計1,700,000枚との差497,971枚が日本銀行本店に在庫として保管されていた。そして、八弔国債の証券は、同年3月末までに請求が行われたが未交付のものなどに対しては引き続き交付されるものが残るが、新たな請求が行われることはない。
また、財務省が調達枚数を計1,700,000枚とした根拠についてみると、八弔国債の発行のために法が改正された16年度に、厚生労働省が八弔国債の対象件数の予定を17年度分397,500件、18年度分715,500件、19年度分397,500件、20年度分79,500件、計1,590,000件と見積もった件数(以下「交付見込件数」という。)を用いて次のとおり算定したものであった。
すなわち、
〔1〕 17年度は、交付見込件数の17年度分に18年度分のうち2か月分を加えた516,750件を15%増しした594,300枚を調達枚数とした。
〔2〕 18年度は、17、18両年度分の交付見込件数の合計件数を15%増しした1,300,000枚から、〔1〕 の17年度の調達枚数594,300枚を差し引いた705,700枚を調達枚数とした。
〔3〕 19年度は、17年度分から19年度分までの交付見込件数の合計件数を14%増しした1,700,000枚から、〔1〕 及び〔2〕 の17、18両年度の調達枚数計1,300,000枚を差し引いた400,000枚を調達枚数とした。
一方、厚生労働省は毎月、都道府県が市町村等を通じて戦没者等の遺族等から受理した八弔国債に係る請求件数の実績を把握しており、財務省は厚生労働省から当該請求受理件数の実績を入手して、証券の調達枚数の決定に当たり、これを考慮することが可能な状況となっていた。そして、財務省が19年度に製造を発注した19年8月時点における上記の請求受理件数の実績は1,121,667件にとどまっていた。しかし、同省はこれを入手しておらず、調達に当たってこれを考慮しなかったために、同月における調達済の証券が既に1,300,000枚となっていたにもかかわらず、前記のとおり400,000枚を調達していた。
このように八弔国債は、交付対象となる遺族等の人数をあらかじめ特定し難い面があることから発行当初においては交付見込件数を用いて調達枚数を定める必要があったとしても、19年度においては請求受理件数の実績等を考慮して、必要以上の在庫を保有しないように調達枚数を的確に決定するとともに、調達に当たっては段階的に発注する必要があったと認められる。
したがって、19年度に、証券の調達枚数を400,000枚と決定してこれを一括して発注したことは適切ではなく、これに係る支払額199,600,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、財務省において、調達枚数の算定方法を17年度から19年度まで見直すことなく、交付見込件数のみにより決定する方法を続けていたことなどによると認められる。