会計名及び科目 | 一般会計 (組織)文部科学本省 (項)科学技術振興調整費 | |
部局等 | 文部科学本省 | |
契約名 | 科学技術総合研究委託 | |
委託契約の概要 | 白色LED製造技術について、民間企業と国立大学法人との共同研究を効果的に推進するもの | |
契約の相手方 | 国立大学法人東北大学 | |
支払額 | 381,788,916円 | (平成16年度〜18年度) |
不当と認める委託費の支払額 | 7,465,142円 | (平成16年度〜18年度) |
文部科学省は、「科学技術振興調整費の活用に関する基本方針」(平成13年3月総合科学技術会議決定)に基づき、科学技術の振興に必要な重要事項の総合推進調整を図るために、〔1〕 優れた成果の創出・活用のための科学技術システム改革、〔2〕 将来性の見込まれる分野・領域への戦略的対応、〔3〕 科学技術活動の国際化の推進等を目的として、国立大学法人等との間で委託契約を締結している。
文部科学省が作成している「科学技術・学術政策局委託業務事務処理要領」(平成16年文部科学省科学技術・学術政策局制定。以下「事務処理要領」という。)等によると、委託費は、直接経費と間接経費とから構成されている。直接経費は、試作品を製造するための試作品費、設備備品費、消耗品費、人件費等の経費で業務の実施に直接必要な経費とされており、間接経費は、業務の実施には直接的にかかわらない経費で、直接経費に一定比率を乗じて算定されることとされている。
本院は、合規性等の観点から、委託費が事務処理要領等に従って適切に管理されているかなどに着眼して、文部科学省及び受託者である10国立大学法人等において会計実地検査を行った。そして、これらの受託者が行っている17委託業務について納品書、請求書等の書類により検査するとともに、委託費の管理が適切でないと思われる事態があった場合には、同省及び受託者に報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
文部科学省は、省エネルギー、環境への対応等の見地から世界的な開発競争が展開されている白色LED(注)
製造技術について、我が国が国際的な開発競争に勝つことを目標として、民間企業と国立大学法人東北大学(以下「東北大学」という。)との共同研究を効果的に推進するための科学技術総合研究業務に係る委託契約を、平成16年度から18年度まで東北大学との間で締結している。
本件委託契約に係る委託費の支払額は、契約により定められた金額の範囲内で、東北大学が委託業務の実施に要した経費の額とすることとされている。そして、東北大学は、本件委託業務の実施に要した経費の額を16年度から18年度まで計381,788,916円とする委託業務完了報告書等を提出しており、文部科学省は、これらに基づき委託業務の実施に要した経費の額を確認して、各年度に委託業務完了報告書の額と同額を支払っていた。
検査したところ、東北大学は、本件委託業務の研究担当者である多元物質科学研究所A教授等20名から、16年度から18年度まで試作品を製造するための物品及び消耗品(以下「物品等」という。)を計147,082,342円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受けて、その購入代金を業者に支払っていた。
しかし、実際に上記の物品等を購入した額は、16年度から18年度まで計141,339,925円となっていて、差額の5,742,417円については、A教授が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させて、これにより東北大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものである。そして、同教授は、5,742,417円全額を業者に預けて別途に経理していた。このため、上記の差額5,742,417円は本件委託業務に要した経費とは認められず、これに係る間接経費相当額1,722,725円も含めた7,465,142円が過大に支払われていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、東北大学において、物品等の納品検査等が十分でなかったこと、研究者において、委託費の原資が税金であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、文部科学省において、受託者に対して委託費の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことによると認められる。