会計名及び科目 | 一般会計 (組織)文化庁 (項)文化庁 | |
部局等 | 文化庁 | |
契約名 | アジア太平洋地域世界遺産等文化財保護協力推進事業 | |
契約の概要 | 文化遺産の保護に資する研修の開催等を行うもの | |
契約の相手方 | 財団法人ユネスコ・アジア文化センター | |
契約 | 平成15年7月、16年7月、17年7月、18年6月、19年7月随意契約 | |
契約金額 | 2億7521万余円 | (平成15年度〜19年度) |
精算されていなかった契約金額と実績額との差額 | 2623万円 | (平成15年度〜18年度) |
文化庁は、平成15年度から19年度までの間に、アジア太平洋地域の世界遺産等の文化財保護に関する国際協力を充実させることを目的として、アジア太平洋地域世界遺産等文化財保護協力推進事業を随意契約により財団法人ユネスコ・アジア文化センター(以下「センター」という。)に請け負わせて実施している。
この事業のうち文化遺産の保護に資する研修は、アジア太平洋地域の文化遺産保護に携わる専門家や実務担当者を研修生として我が国に招へいして研修を行うものであり、研修生の専門的要求に応じて個別に実施する個人研修と、文化庁の定めた研修内容に基づき1回当たり15名程度の研修生を対象に実施する集団研修がある。
文化庁は、本件請負契約の締結に当たり、研修の予定等を基に仕様書を作成しており、これに基づき個人研修、集団研修等の項目ごとに事業費を積算している。事業費のうち、研修生の宿泊費等については研修生の人数に宿泊数及び単価を、研修の際の通訳謝金については通訳の人数に必要日数及び単価をそれぞれ乗ずるなどして算出した上で、これらを合算するなどして予定価格を算定している。そして、文化庁は、上記の仕様書をセンターに提示して見積書を徴した上で、この予定価格を上限として契約金額を決定しており、契約金額は、15年度5517万余円、16年度5517万余円、17年度5517万余円、18年度5517万余円、19年度5449万余円、計2億7521万余円となっている。
本院は、経済性等の観点から、契約金額が適切なものとなっているか、事業の実績が積算とかい離していないかなどに着眼して、文化庁及びセンターにおいて会計実地検査を行った。そして、15年度から19年度までの契約を対象として、契約書、会計帳簿等の書類により検査を行った。
検査したところ、次のとおり、個人研修における研修生の宿泊数や通訳の必要日数等の実績が積算とかい離していた。
本件契約の仕様書によれば、個人研修の開催期間は「おおむね数週間から2ヶ月を目途とする」とされていた。そこで、文化庁は、15年度から18年度までの予定価格の積算に当たり、研修生の宿泊数を仕様書記載の最大値である2か月とするなどして、これに研修生の人数を乗じて延べ宿泊数を171泊から240泊(平均192.7泊)と算出するなどして宿泊費等の額を積算していた。
しかし、15年度から18年度までの延べ宿泊数の実績は、82泊から156泊(平均123.5泊)となっていて、積算を大きく下回っていた。
文化庁は、16年度から18年度までの予定価格の積算に当たり、個人研修に通訳謝金を計上しており、前記(1)と同様に研修の開催期間を2か月とするなどして、これに想定される研修生の使用言語、語学能力等に応じた通訳者数を乗じて通訳の人日数を61人日から183人日(平均121.3人日)と算出するなどして通訳謝金の額を積算していた。
しかし、16年度から18年度までの通訳の人日数の実績は、38.5人日から48.5人日(平均45.0人日)となっていて、積算を大きく下回っていた。
そこで、15年度から18年度までの契約金額とセンターが実際に支払った実績額を比較したところ、次表のとおり、毎年度、契約金額が実績額とかい離しており、両者の差額は15年度から18年度までで計2623万余円となっていた。
しかし、文化庁は、本件各請負契約を精算条項を付さない確定契約として締結していたため、実績額に基づいた契約金額の精算が行われていなかった。
表 | 契約金額と実績額との比較 | (単位:千円) |
年度 | 契約金額(A) | 実績額(B) | 差額(C=A−B) |
平成15 | 55,179 | 48,327 | 6,851 |
16 | 55,179 | 47,053 | 8,125 |
17 | 55,179 | 48,087 | 7,091 |
18 | 55,179 | 51,015 | 4,163 |
計 | 220,716 | 194,483 | 26,232 |
このように、文化庁が本件各請負契約を確定契約として締結していることは、実績額が契約金額を下回った場合にもその差額が精算されない結果となり、適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、仕様書の作成及び予定価格の算定の段階においては研修の開催期間及び研修生の使用言語、語学能力等が確定していないことなどから、契約金額と実績額に大きなかい離が生ずることが十分予測されるにもかかわらず、文化庁において、契約金額と実績額にかい離が生じていることについて調査・把握せずに、本件各請負契約を確定契約として締結していたことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、文化庁は、20年9月に契約を締結した20年度契約から契約書に精算条項を加えるなどして、契約相手方から収支計算書等を徴して実績額を確認した上で、事業の実績額により契約金額の精算を行うこととする処置を講じた。