ページトップ
  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 予算経理

国の施設等機関における受託事業に係る会計経理が会計法令に違背しているもの


(56)−(58) 国の施設等機関における受託事業に係る会計経理が会計法令に違背しているもの

会計名及び科目 一般会計  (部)雑収入  (款)諸収入  (項)雑入
部局等 国立保健医療科学院、国立感染症研究所及び国立身体障害者リハビリテーションセンターの各施設等機関
受託事業の概要 上記の3施設等機関において、独立行政法人国際協力機構から受託して研修を実施するもの
不当と認める委託費の件数及び金額 15件 37,808,799円 (平成18、19両年度)

1 受託事業の概要等

(1) 受託事業の概要

 厚生労働省の施設等機関である国立保健医療科学院、国立感染症研究所及び国立身体障害者リハビリテーションセンター(以下、これらを合わせて「3機関」という。)は、それぞれ、独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency。以下「JICA」という。)から委託を受けて、開発途上国の行政官等に対する研修を実施している。
 この研修は、JICAが、政府開発援助における技術協力の一つとして実施しているものであり、開発途上国から国造りの担い手となる行政官や技術者を研修員として受け入れて、人材育成支援や課題解決支援を目的として、各分野の技術研修、訓練等を行い開発途上国に対して技術の移転を行うものである。
 そして、3機関は、JICAとそれぞれ研修委託契約を締結して、平成18年度8研修コース、19年度7研修コース、計15研修コースの研修を実施しており、JICAから18年度計22,656,817円、19年度計15,151,982円、合計37,808,799円の委託費の支払を受けている。

(2) 国の会計制度

 国の予算については、財政法(昭和22年法律第34号)第14条により、「歳入歳出は、すべて、これを予算に編入しなければならない」として総計予算主義の原則が定められている。そして、予算の執行については、会計法(昭和22年法律第35号)第2条により、各省各庁の長は、「その所掌に属する収入を国庫に納めなければならない。直ちにこれを使用することはできない」として収入支出統一の原則が定められている。

2 検査の結果

 本院は、合規性等の観点から、3機関がJICAから委託を受けて実施している研修に係る会計経理が適切に行われているかなどに着眼して、厚生労働本省、国立保健医療科学院及び国立感染症研究所において会計実地検査を行うとともに、国立身体障害者リハビリテーションセンターについては、厚生労働本省における会計実地検査の際に検査を行ったほか同センターから資料の提出を受けて検査を行った。
 そして、3機関が18、19両年度にJICAから委託を受けて実施した研修を対象として、研修委託契約書、業務完了報告書等の関係書類により検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、3機関はいずれも、JICAから支払を受けた委託費を国庫に納付せず、市中銀行に会計課長等の名義の口座を開設してこれを別途に経理して、当該口座から研修に必要となる外部講師謝金等の経費を直接支払っていた。
 しかし、当該受託業務は、国の施設等機関としての3機関が主体となって実施されているものであることから、3機関は、JICAからの受託収入を国庫に納付し、また、受託業務に係る支出を歳出予算から支出すべきであった。

<事例>

 国立保健医療科学院は、JICAから委託を受けて、集団研修「保健衛生管理」等の研修業務を平成18年度に4件(委託費計10,600,075円)、19年度に4件(委託費計8,667,250円)、合計8件(委託費計19,267,325円)実施している。
 しかし、同院は、JICAから支払を受けた委託費を市中銀行に同院会計課長等の名義の口座を開設してこれを別途に経理して、必要な費用を当該口座から直接支払うなどしていた。
 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 一般会計では、業務の受託により受託収入があっても、直ちに当該業務に要する経費に係る予算の増額が可能となるわけではないという事情があるとしても、委託費を国の歳入歳出とは別途に経理することが会計法令に違背していて認められないということを、3機関において十分に認識していなかったこと
イ 厚生労働省において、これらの受託研修に係る3機関の会計経理の状況を把握しておらず、3機関を十分に指導していなかったこと
 したがって、3機関における前記の取扱いは、総計予算主義を定めた財政法や収入支出統一の原則を定めた会計法に違背するものであり、別途に経理していた委託費計37,808,799円が不当と認められる。
 これを部局別に示すと、次のとおりである。

部局名 年度 研修コース数 契約件数 別途に経理していた委託費の金額
千円
(56) 国立保健医療科学院 18、19 8 8 19,267
(57) 国立感染症研究所 18、19 5 5 9,292
(58) 国立身体障害者リハビリテーションセンター 18、19 2 2 9,248
(56)−(58)の計 15 15 37,808

 なお、3機関は、JICAと協議して、20年7月以降に実施する受託研修から、研修に必要な経費はJICAから支払われるようにした。