会計名及び科目 | 国立高度専門医療センター特別会計 | (款)病院収入 | |
(項)診療収入 | |||
平成15年度以前は、 | |||
国立病院特別会計(病院勘定) | (款)病院収入 | ||
(項)診療収入 | |||
部局等 | 国立がんセンター中央病院 | ||
不適正な会計経理の内容 | 会計窓口で診療に要した費用として納入される現金の収納事務 | ||
不適正な会計経理により国庫に納付されなかった診療収入の額 | 30,409,050円 | (平成13年度〜19年度) |
国立がんセンター(以下「センター」という。)は、がんその他の悪性新生物に関して、診断・治療、調査・研究及び技術者の研修を行うために設置された機関であり、このうち中央病院は、がんについての診断、治療及び臨床研究のための高度で専門的な機能と設備を持ち、患者の診断、治療等(以下「診療」という。)を行っている。
中央病院において、診療を行ったときは、その診療に要した費用を診療収入として収納して、これを日本銀行歳入代理店に払い込むことにより国庫に納付している。
中央病院の会計窓口では、出納員が、診療に要した費用として保険診療に係る患者自己負担分、保険診療外の医療相談料、文書料等の診療収入を現金で収納しており、この場合の現金収納事務は、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)、「出納員の設置について」(昭和32年医発第573号厚生省医務局長通知)等(以下、これらを「会計法令等」という。)に基づき、次のとおり行うこととされている。
〔1〕 出納員は、会計窓口で診療に要した費用として現金を収納したときは、費用の算定、収納した現金に係るデータ(以下「収納データ」という。)の登録等のために使用するコンピュータシステム(以下「医事会計システム」という。)により出力した領収証書を患者に交付するとともに、その控えを収納の事実を確認する証拠書類として保管する。そして、領収証書の出力後に請求内容に誤りなどがあった場合は、出納員が、当該領収証書に係る収納データを削除する。
〔2〕 出納員は、会計窓口での現金収納事務の終了後、医事会計システムから当日収納した現金に係る集計表(以下「収納速報リスト」という。)を出力して、これと突合することにより会計窓口で収納した現金の額を確認する。そして、当該現金の額等を記載した現金払込書を作成して、収納速報リスト等を添えて、現金を収入官吏に払い込む。
〔3〕 収入官吏は、出納員から払い込まれた現金の額を収納速報リスト、領収証書控等により確認して、当日又はその翌日に当該現金を日本銀行歳入代理店に払い込むとともに、歳入徴収官に領収済報告を行う。
本院は、中央病院において、合規性等の観点から、現金収納事務が適切に行われているかなどに着眼して、平成18、19両年度の診療収入を対象として、収納速報リスト、領収証書控等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、18年度中の無作為に抽出した日の収納速報リストの金額が領収証書控の合計額より少なくなっていて、その差額が国庫に納付されていないおそれがある事態が見受けられた。このため、センターに対して事態の詳細について報告を求めるとともに、その報告内容を確認するなどして更に検査を行ったところ、次のような事態が判明した。
中央病院では、13年5月から本院が会計実地検査を行った19年5月までの間に現金収納事務に従事していた複数の出納員が、請求内容に誤りなどがないにもかかわらず、不正に収納データの一部を削除することにより収納速報リストの金額を改ざんして本来収納すべき額より少なくするなどの処理を行った上、改ざん後の収納速報リストと同額の現金を収入官吏に払い込んでいた。
また、収入官吏は、収納速報リストの金額と領収証書控とを突合するなどの点検を怠っていたため、これらの不符合に気付かず、出納員から払い込まれた現金の額を改ざん後の収納速報リストにより確認して、これを日本銀行歳入代理店に払い込んでいた。
これらのため、次表のとおり、13年5月から19年5月までの間に不正に削除された収納データに係る診療収入計2,708件、30,409,050円が国庫に納付されていなかった。
年度 | 件数 | 金額 |
平成13 | 324件 | 2,553,600円 |
14 | 476件 | 4,846,800円 |
15 | 818件 | 10,314,150円 |
16 | 295件 | 3,287,550円 |
17 | 312件 | 3,388,350円 |
18 | 431件 | 5,336,100円 |
19 | 52件 | 682,500円 |
計 | 2,708件 | 30,409,050円 |
なお、本院は、上記の不適正な会計経理により国庫に納付されなかった現金の行方等について、これまでセンターで調査を行っている職員から事情聴取するなどして検査してきたものの、事実を裏付ける資料等が存在しないため確認できていない。
前記の事態は国の会計経理として著しく適正を欠くものであり、13年5月から19年5月までの間に国庫に納付されなかった診療収入計30,409,050円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、センターにおいて、中央病院の現金収納事務に従事していた出納員に国の会計経理は会計法令等に従って適正に行わなければならないとの認識が著しく欠けていたこと、収入官吏が日々の現金収納事務の現状を把握しておらず、また、関係書類の点検を十分に行っていなかったこと、歳入徴収官等の監督者の指導監督が十分でなかったこと、内部監査が十分でなかったことなど、内部統制が機能していなかったことなどによると認められる。