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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
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地域労使就職支援事業に係る委託事業の実施に当たり、委託事業の経費に架空の経費を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの


(61) 地域労使就職支援事業に係る委託事業の実施に当たり、委託事業の経費に架空の経費を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの

会計名及び科目 一般会計  (組織)厚生労働本省  (項)職業転換対策事業費
部局等 厚生労働本省
契約名 地域労使就職支援事業委託(平成15年度〜18年度)
契約の概要 求人・求職ニーズ調査、各種の就職支援事業及び地域における失業者等の再就職の促進に資すると認められる事業の実施
契約の相手方 23機構
契約 平成15年4月ほか随意契約
支払額 2,803,901,175円 (平成15年度〜18年度)
過大になっている支払額 38,011,056円 (平成15年度〜18年度)

1 委託事業の概要

(1) 委託事業の概要

 厚生労働本省(以下「本省」という。)は、地域の労使団体が協力して、労使の創意工夫により就職支援のための事業を効果的に行うことにより、地域の雇用の改善を図ることを目的として、各都道府県に設立された都道府県地域労使就職支援機構(以下「機構」という。)に対して、地域労使就職支援事業(以下「委託事業」という。)の実施を委託している。
 委託事業の内容は、求人・求職ニーズ調査、各種の就職支援事業及び地域における失業者等の再就職の促進に資すると認められる事業の実施となっている。

(2) 機構の概要

 平成14年12月の政労使雇用対策会議において「雇用問題に関する政労使合意」が成立して、労使団体は「相互理解に立って経営の安定と雇用の維持・確保に一致協力して取り組む」こととされた。そして、各都道府県に、都道府県レベルの民間の経営者団体及び労働者団体を構成員とした機構が設立されて、国は、機構に対して、15年度から委託事業の実施を委託して、効果的な地域の雇用改善を図ることとした。
 機構には、委託事業に関する事務を行うために事務局が設置されており、当該事務局には、事業の企画及び実施並びに関係行政機関及び関係団体との連絡調整等に当たる者としてコーディネーターが置かれている。

(3) 委託費の交付、精算等の手続

 委託事業に係る委託費の交付、精算等の手続は、「地域労使就職支援事業委託要綱」(平成15年3月厚生労働事務次官通知)等によると、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕  本省は、委託事業の実施に当たり、機構から事業実施計画書の提出を受けて、その内容が適当と認めるときは、当該機構との間で委託契約を締結する。そして、当該委託契約に基づき、概算払により委託費を交付する。
〔2〕  機構は、委託事業が終了したときは、事業の成果を記載した地域労使就職支援事業実施結果・精算報告書(以下「精算報告書」という。)を本省に提出する。
〔3〕  本省は、機構から提出された精算報告書の内容を審査して、適当と認めるときは委託費の額を確定して精算する。

(4) 委託費の対象経費

 委託費の対象経費は、〔1〕 委託事業に従事するコーディネーターや事務補助者の人件費(通勤手当、超過勤務手当等は除く。)、旅費、物品購入費、事務所借料等の管理費、〔2〕 各種セミナーの実施に係る会場費、講師謝金、テキスト・ポスター等の作成費、広告料等の事業費となっている

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、本件委託事業について、19年次に、22機構に支払われた委託費を対象として検査した。その結果、17機構において、委託費から不正な支払を行ってこれを別途に経理して、委託事業の目的外の用途に使用するなどしていた事態を平成18年度決算検査報告に不当事項として掲記したところである。20年次は、合規性等の観点から、委託費が事業の目的に沿って適正に使用されているかに着眼して、本省及び19年次に検査を実施した22機構を除いた25機構(注1) において会計実地検査を行い、15年度から18年度までの間に25機構に支払われた委託費を対象として、精算報告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に本省等に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 本省は、23機構(注2) が15年度から18年度までの間に実施した委託事業について、各機構から提出された精算報告書に基づき、委託費の支払額を計2,803,901,175円と確定して精算していた。
 しかし、23機構は、委託費から、不正な支払を行ってこれを別途に経理したり、懇親会に係る経費を支払ったりするなどして、計38,011,056円を委託事業の目的外の用途に使用するなどしていた。
 これを態様別に示すと、次のとおりである(機構数については重複しているものがある。)。

ア 構成員である団体等に架空の領収書を発行させるなどして、委託費から不正な支払を行い、これを別途に経理して委託事業の目的外の用途に使用するなどしていたもの

7機構 19,337,098円

<事例1>

 A機構において、次のような事態が見受けられた。

(ア) A機構は、平成15年度から18年度までの間に、構成員である2団体に架空の領収書を発行させるなどして、会報掲載料等を支払った事実がないのに支払ったこととしたり、15、17、18各年度に、虚偽の内容の関係書類を作成して、アルバイトを雇用した事実がないのに雇用したこととしたりするなどして、委託費から計7,756,720円を不正に支払い、これを別途に経理して委託事業の目的外の用途に使用するなどしていた。

(イ) 同機構は、15年度に、業者Bに架空の領収書を発行させて、テレビCMスポット料を支払った事実がないのに支払ったこととして、委託費から1,050,000円を不正に支払い、これを翌年度に同機構職員2名の個人口座に入金していた。
 このように、A機構は、構成員である団体に架空の領収書を発行させるなどして、15年度から18年度までの間に、委託費から計9,970,619円を不正に支払い、このうち、3,758,709円を別途に経理して委託事業の目的外の用途に使用したり、同機構職員の個人口座に入金したりするなどしていた。そして、差額の6,211,910円については使途が不明となっている。

イ 職員の懇親会に係る飲食費、土産品代等を委託費から支払っていたもの

15機構 5,711,971円

<事例2>

 C機構は、平成16年度に、運営委員会等の会議費として、計277,140円を委託費から支払っていたが、この会議費の中には、委託事業の対象外の経費である運営委員会後の懇親会費等計256,515円が含まれていた。
 このように、C機構は、会議費に懇親会に係る経費を含めて支払うなどして、15年度から17年度までの間に、計1,196,185円を委託事業の目的外の用途に使用していた。

ウ 委託事業に従事していない日数分の謝金をコーディネーターに支払ったり、委託事業では認められていない通勤手当を支給したりするなどして、委託費から委託事業の対象外の経費を支払うなどしていたもの

8機構 6,398,017円

エ 事務室の賃借料に、入居時等の改装に要した工事費を上乗せして支払っていたが、工事費の支払が完了した後もこの上乗せ分を支払い続けていたり、再委託先から過大に請求された経費を支払っていたりなどしていて、委託費から賃借料、再委託費等を過大に支払っていたもの

13機構 6,563,970円

 したがって、次表のとおり、23機構が15年度から18年度までの間に実施した委託事業に係る適正な委託費の額は計2,765,890,119円となり、前記の委託費の支払額計2,803,901,175円との差額計38,011,056円が過大に支払われており、委託費の経理が適正を欠いていて、不当と認められる。

 地域労使就職支援事業における過大な支払額  (単位:円)
年度 委託費の支払額 適正な委託費の額 過大な支払額
平成
15
905,871,562 893,251,543 12,620,019
16 895,688,291 885,710,428 9,977,863
17 706,197,184 697,446,047 8,751,137
18 296,144,138 289,482,101 6,662,037
2,803,901,175 2,765,890,119 38,011,056

 このような事態が生じていたのは、機構において、委託事業の適正な執行及び委託費の適正な会計経理に関する認識が欠けていたこと、また、本省において、精算報告書の内容の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
 上記の事態については、本省は、従来委託費の適正な執行に努めてきたところであるが、さらに、本省において、委託先に対する経理指導を徹底するとともに、委託費の精算に当たっては、委託先から提出された精算報告書に係る審査の徹底を図るなど再発防止に努める必要があると認められる。

(注1)
 25機構  岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、埼玉県、神奈川県、新潟県、石川県、福井県、長野県、三重県、滋賀県、和歌山県、鳥取県、島根県、広島県、徳島県、愛媛県、高知県、熊本県、鹿児島県各地域労使就職支援機構、佐賀県及び宮崎県両雇用支援機構
(注2)
 23機構  宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、埼玉県、神奈川県、石川県、福井県、長野県、三重県、滋賀県、和歌山県、鳥取県、島根県、広島県、徳島県、愛媛県、高知県、熊本県、鹿児島県各地域労使就職支援機構、佐賀県及び宮崎県両雇用支援機構