会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生労働本省 | (項)職業転換対策事業費 | |
労働保険特別会計 | (労災勘定) | (項)労働福祉事業費 | |
(雇用勘定) | (項)雇用安定等事業費 | ||
部局等 | 23労働局 | ||
契約名 | 地域求職活動援助事業等15事業に係る委託(平成14年度〜18年度) | ||
契約の概要 | 地域内に所在する事業所に係る求人情報の収集・提供、就職を容易にするための職業講習、企業説明会の実施等 | ||
契約の相手方 | 88団体 | ||
契約 | 平成14年4月ほか随意契約 | ||
支払額 | 3,904,366,255円 | (平成14年度〜18年度) | |
過大になっている支払額 | 170,177,450円 | (平成14年度〜18年度) |
都道府県労働局(以下「労働局」という。)は、地域の特性に即した雇用構造の改善、働きやすい快適な職場環境の形成等を図ることを目的として、都道府県内の商工会議所、経営者協会、労働基準協会等の団体に対して、地域求職活動援助事業、快適職場形成促進事業等(注1)
(以下、これらを合わせて「委託事業」という。)の実施を委託している。
このうち、地域求職活動援助事業は、地域内に所在する事業所の求人情報の収集・提供、就職を容易にするための職業講習、事業所の業務内容についての理解を深めるための企業説明会等を実施するものである。また、快適職場形成促進事業は、快適な職場環境の形成についての普及啓発を行うとともに、事業場から申請された快適職場推進計画の認定に係る技術的審査等を実施するものである。
委託事業に係る委託費の交付、精算等の手続は、各事業の委託要綱等によると、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕 労働局は、委託事業の実施に当たり、受託者から事業実施計画書の提出を受けて、その内容が適当と認めるときは、当該受託者との間で委託契約を締結する。そして、当該委託契約に基づき、概算払により委託費を交付する。
〔2〕 受託者は、委託事業が終了したときは、事業の成果を記載した事業実施結果・精算報告書(以下「精算報告書」という。)を労働局に提出する。
〔3〕 労働局は、受託者から提出された精算報告書の内容を審査して、適当と認めるときは委託費の額を確定して精算する。
本院は、労働局が委託した事業について、平成19年次に27労働局を検査して、17労働局が37団体に委託した事業において、委託費から不正な支払を行ってこれを別途に経理して、委託事業の目的外の用途に使用するなどしていた事態を平成18年度決算検査報告に不当事項として掲記したところである。20年次は、合規性等の観点から、委託費が事業の目的に沿って適正に使用されているかに着眼して、23労働局(注2) 及び163団体において会計実地検査を行い、14年度から18年度までの間に163団体に支払われた委託費を対象として、精算報告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
23労働局は、88団体(注3)
が14年度から18年度までの間に実施した委託事業について、各団体から提出された精算報告書に基づき、委託費の支払額を計3,904,366,255円と確定して精算していた。
しかし、88団体は、委託費から、不正な支払を行い、これを別途に経理するなどしたり、委託事業の対象外の経費を支払ったり、委託事業に係る費用の全部又は一部を参加者等から徴収するなどしているにもかかわらず、これを考慮することなく委託事業に係る費用を過大に計上したり、謝金、旅費、郵券購入代等を過大に支払ったりするなどして、計170,177,450円を委託事業の目的外の用途に使用するなどしていた。
上記の事態について、態様別に事例を示すと次のとおりである(労働局数については重複しているものがある。)。
ア 委託費から不正な支払を行い、これを別途に経理するなどしていたもの
A労働局は、平成14年度から18年度までの間に、団体Bに対して、地域求職活動援助事業の実施を委託している。
そして、団体Bは、委託事業で使用するパンフレットの印刷費、委託事業の広告掲載料等として計11,136,920円を委託費から印刷会社等に支払ったとしていた。
しかし、実際には、団体Bは、計11,136,920円を印刷会社等に支払っておらず、印刷会社等から入手した領収書を不正に使用して、取引が行われたかのように偽装するなどして委託費から不正に支払い、これを別途に経理していた。
また、団体Bは、虚偽の内容の関係書類を作成して、嘱託職員を雇用した事実がないのにこれを雇用したこととして委託費から謝金等計271,130円を不正に支払い、これを別途に経理していた。
そして、団体Bは、これらの不正な支払によりねん出した別途経理資金及びこれに係る預金利息計11,408,241円を、委託契約上認められていない職員手当、懇親会費等に使用していた。
C労働局は、平成14年度から18年度までの間に、団体Dに対して、地域求職活動援助事業の実施を委託している。
そして、団体Dは、15、16、18各年度に、委託事業で開設するホームページの構築業務委託代金等として計21,241,500円を委託費から業者Eに支払っていた。
しかし、実際には、ホームページの構築業務委託代金等を業者Eに水増し請求させて、この請求に基づき委託費から水増し額計1,774,500円を不正に支払い、さらに、この水増し額を業者Eから別の業者Fに支払わせて、業者Fから水増し額に相当するパソコン等を団体Dに納入させて委託事業外に使用していた。
また、団体Dは、14、15両年度に、プリンタトナー代を業者Fに架空請求させて、この架空請求に基づき委託費から計2,963,100円を不正に支払い、業者Fから架空請求に基づく支払額に相当するパソコン等を団体Dに納入させて委託事業外に使用していた。
イ 委託費から委託事業の対象外の経費を支払っていたもの
G労働局は、平成14年度から17年度までの間に、団体Hに対して、快適職場形成促進事業及びパートタイム労働者の労働災害防止事業の実施を委託している。
そして、団体Hは、快適職場形成促進事業において、年間を通して委託事業の業務に専念して従事することを前提として常勤アドバイザーを置いており、その人件費として計18,165,827円を委託費から支払っていた。
しかし、このアドバイザーは、委託事業以外の業務にも従事しており、上記の人件費には、当該委託事業以外の業務に係る人件費計8,187,983円が含まれていた。
また、団体Hは、両委託事業において、委託事業の対象外の経費である団体本務の印刷費や技能講習のための経費等を委託費から支払っていたために、計3,941,128円が過大となっていた。
ウ 委託事業に係る費用の全部又は一部を参加者等から徴収するなどしているにもかかわらず、これを考慮することなく委託事業に係る費用を過大に計上していたもの
I労働局は、平成14年度から18年度までの間に、団体Jに対して、地域求職活動援助事業、若年者地域連携事業等の実施を委託している。
そして、団体Jは、委託事業で企業説明会、研修会及びセミナー(以下、これらを合わせて「企業説明会等」という。)を開催して、企業説明会等の開催に要した経費として計7,706,458円を委託費から支払っていた。
しかし、団体Jは、企業説明会等の参加者等から参加料等を徴収していたことから、これを考慮して企業説明会等の開催に要した経費を算出すると計531,638円となり、上記の7,706,458円との差額計7,174,820円については費用を過大に計上していると認められた。
エ 委託費から謝金、旅費、郵券購入代等を過大に支払うなどしていたもの
K労働局は、平成14年度から17年度までの間に、団体Lに対して、地域求職活動援助事業の実施を委託している。
そして、団体Lは、14、15、17各年度に、委託事業で使用する郵券の購入費として計2,006,000円を委託費から支払っていた。
しかし、実際には、14年度以降に148,900円分の郵券しか使用しておらず、購入費との差額1,857,100円が過大となっており、会計実地検査実施時(20年4月)において同額分の郵券を保有していた。
したがって、次表のとおり、23労働局において、88団体が14年度から18年度までの間に実施した委託事業に係る適正な委託費の額は計3,734,188,805円となり、前記の委託費の支払額計3,904,366,255円との差額計170,177,450円が過大に支払われており、委託費の経理が適正を欠いていて、不当と認められる。
表 | 地域求職活動援助事業等15事業における過大な支払額 | (単位:円) |
労働局名 | 委託先数 | 委託事業名 | 年度 | 委託費の支払額 | 適正な委託費の額 | 過大な支払額 | 摘要 | |
(62) | 岩手 | 5団体 | 65歳雇用導入プロジェクト等 | 平成 14〜18 |
229,372,701 | 221,299,721 | 8,072,980 | イ、エ |
(63) | 宮城 | 4団体 | 地域林業雇用改善促進事業等 | 14〜18 | 143,644,008 | 141,889,706 | 1,754,302 | ア、イ、エ |
(64) | 秋田 | 4団体 | 地域求職活動援助事業等 | 14〜18 | 182,442,622 | 179,267,363 | 3,175,259 | ア、イ、エ |
(65) | 福島 | 5団体 | 地域求職活動援助事業等 | 14〜18 | 492,238,940 | 479,194,710 | 13,044,230 | ア、イ、ウ、エ |
(66) | 栃木 | 4団体 | 地域求職活動援助事業等 | 14〜18 | 294,672,643 | 279,130,783 | 15,541,860 | ア、イ、エ |
(67) | 埼玉 | 3団体 | 快適職場形成促進事業等 | 14〜18 | 87,606,606 | 83,271,933 | 4,334,673 | イ、エ |
(68) | 神奈川 | 3団体 | 65歳雇用導入プロジェクト等 | 15〜18 | 74,160,124 | 62,029,215 | 12,130,909 | ア、イ、エ |
(69) | 新潟 | 5団体 | 快適職場形成促進事業等 | 14〜18 | 310,992,416 | 303,529,747 | 7,462,669 | イ、ウ、エ |
(70) | 石川 | 2団体 | 地域求職活動援助事業 | 14〜17 | 147,266,912 | 142,490,557 | 4,776,355 | イ、エ |
(71) | 福井 | 7団体 | 地域求職活動援助事業等 | 14〜18 | 223,856,524 | 211,872,846 | 11,983,678 | ア、イ、ウ、エ |
(72) | 長野 | 7団体 | 快適職場形成促進事業等 | 14〜18 | 170,081,124 | 149,240,842 | 20,840,282 | ア、イ、エ |
(73) | 岐阜 | 1団体 | 快適職場形成促進事業等 | 14〜16 | 30,595,000 | 26,808,594 | 3,786,406 | イ |
(74) | 愛知 | 1団体 | 65歳雇用導入プロジェクト | 17、18 | 14,247,449 | 12,604,821 | 1,642,628 | イ |
(75) | 三重 | 9団体 | 地域求職活動援助事業等 | 14〜18 | 514,012,281 | 490,410,912 | 23,601,369 | イ、ウ、エ |
(76) | 滋賀 | 5団体 | 快適職場形成促進事業等 | 14〜18 | 154,584,998 | 147,909,758 | 6,675,240 | イ、エ |
(77) | 和歌山 | 5団体 | 若年者地域連携事業等 | 14〜18 | 355,695,516 | 348,184,014 | 7,511,502 | イ、ウ、エ |
(78) | 鳥取 | 2団体 | 地域高齢者能力活用職域開発支援事業等 | 14、15 18 |
100,820,136 | 98,345,643 | 2,474,493 | ア、イ、エ |
(79) | 島根 | 4団体 | ジュニア・インターンシップ推進事業等 | 14〜18 | 89,426,022 | 86,668,516 | 2,757,506 | イ、エ |
(80) | 広島 | 4団体 | 快適職場形成促進事業等 | 14〜18 | 122,627,619 | 119,004,860 | 3,622,759 | イ、エ |
(81) | 徳島 | 1団体 | パートタイム労働者の労働災害防止事業等 | 14〜18 | 18,599,789 | 18,272,773 | 327,016 | ア、エ |
(82) | 高知 | 1団体 | 65歳雇用導入プロジェクト | 16〜18 | 18,950,596 | 18,028,396 | 922,200 | エ |
(83) | 佐賀 | 4団体 | 地域産業保健センター事業等 | 14〜18 | 89,704,358 | 79,168,478 | 10,535,880 | ア、イ、ウ、エ |
(84) | 鹿児島 | 2団体 | 65歳雇用導入プロジェクト等 | 15〜18 | 38,767,871 | 35,564,617 | 3,203,254 | イ、エ |
23局 | 88団体 | 計 | 3,904,366,255 | 3,734,188,805 | 170,177,450 |
このような事態が生じていたのは、受託者において、委託事業の適正な執行及び委託費の適正な会計経理に関する認識が欠けていたこと、また、労働局において、精算報告書の内容の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
上記の事態については、労働局は、従来委託先に対して、委託費の適正な会計処理を行うよう事務指導を行ってきたところであるが、さらに、労働局において、経理指導を徹底するとともに、委託費の精算に当たっては、委託先から提出された精算報告書に係る審査の徹底を図るなど再発防止に努める必要があると認められる。
(注2) | 23労働局 岩手、宮城、秋田、福島、栃木、埼玉、神奈川、新潟、石川、福井、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀、和歌山、鳥取、島根、広島、徳島、高知、佐賀、鹿児島各労働局
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(注3) | 88団体 財団法人岩手労働基準協会、釜石商工会議所、花巻商工会議所、岩手県中小企業団体中央会、財団法人ふるさといわて定住財団、財団法人みやぎ林業活性化基金、宮城県地域労使就職支援機構、社団法人宮城県高齢・障害者雇用支援協会、社団法人宮城県塩釜医師会、社団法人秋田県労働基準協会、財団法人秋田県ふるさと定住機構、秋田県中小企業団体中央会、社団法人秋田市医師会、郡山商工会議所、福島県中小企業団体中央会、社団法人福島市医師会、相馬商工会議所、社団法人福島県雇用開発協会、社団法人栃木県経営者協会、鹿沼機械金属工業協同組合、社団法人栃木県労働基準協会連合会、宇都宮商工会議所、社団法人埼玉労働基準協会連合会、社団法人大宮医師会、社団法人埼玉県雇用開発協会、協同組合高津工友会、社団法人神奈川労務安全衛生協会、財団法人神奈川県雇用開発協会、社団法人新潟県労働基準協会連合会、財団法人新潟県雇用環境整備財団、社団法人新潟市医師会、加茂商工会議所、新津商工会議所、財団法人石川県産業創出支援機構、石川県商工会議所連合会、福井商工会議所、福井県経営者協会、社団法人福井県労働基準協会、武生商工会議所、財団法人福井県林業従事者確保育成基金、社団法人福井市医師会、福井県商工会連合会、社団法人長野県労働基準協会連合会、特定非営利活動法人長野県NPOセンター、長野商工会議所、財団法人長野県林業労働財団、社団法人長野県経営者協会、松本商工会議所、長野県中小企業団体中央会、社団法人岐阜県労働基準協会連合会、刈谷商工会議所、四日市商工会議所、津商工会議所、上野商工会議所、社団法人津地区医師会、社団法人三重労働基準協会連合会、三重県中小企業団体中央会、財団法人三重県農林水産支援センター、財団法人三重県労働福祉協会、鈴鹿商工会議所、社団法人滋賀労働基準協会、社団法人滋賀経済産業協会、草津商工会議所、社団法人大津市医師会、滋賀県中小企業団体中央会、和歌山県経営者協会、社団法人和歌山県労働基準協会、海南商工会議所、社団法人和歌山市医師会、社団法人わかやま森林と緑の公社、社団法人鳥取県経営者協会、財団法人ふるさと鳥取県定住機構、社団法人島根県経営者協会、社団法人島根県林業公社、社団法人松江市医師会、島根県中小企業団体中央会、社団法人広島県労働基準協会、社団法人広島市医師会、呉商工会議所、広島県中小企業団体中央会、社団法人徳島県労働基準協会連合会、高知県中小企業団体中央会、社団法人佐賀市医師会、佐賀県経営者協会、佐賀商工会議所、社団法人佐賀県労働基準協会、出水商工会議所及び鹿児島県中小企業団体中央会
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