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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
  • 不当事項|
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生涯職業能力開発事業等に係る委託事業の実施に当たり、委託事業とは関係のない他法人が負担すべき経費を含めて委託費から支払う経費を算出するなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの


(85) 生涯職業能力開発事業等に係る委託事業の実施に当たり、委託事業とは関係のない他法人が負担すべき経費を含めて委託費から支払う経費を算出するなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)厚生労働本省
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)雇用安定等事業費
部局等 厚生労働本省
契約名 生涯職業能力開発事業等9事業に係る委託(平成14年度〜18年度)
契約の概要 実際に仕事をする上で必要な能力の習得に資するビジネス・キャリア試験、技能が尊重される社会の形成を推進する青年技能者技能競技大会等の事業の実施
契約の相手方 中央職業能力開発協会、島根県職業能力開発協会及び広島県職業能力開発協会
契約 平成14年4月ほか 随意契約
支払額 12,061,651,410円 (平成14年度〜18年度)
過大になっている支払額 25,455,705円 (平成14年度〜18年度)

1 委託事業の概要

(1) 委託事業の概要

 厚生労働本省(以下「本省」という。)は、職業に必要な労働者の能力を開発して、向上させることを促進することにより、職業の安定と労働者の地位の向上を図ることなどを目的として、中央職業能力開発協会(以下「中央協会」という。)及び都道府県職業能力開発協会(以下「都道府県協会」という。)に対して、生涯職業能力開発事業等9事業(注1) (以下、これらの9事業を合わせて「生涯職業能力開発事業等」という。)の実施を委託している。
 生涯職業能力開発事業等は、実際に仕事をする上で必要な能力の習得に資するビジネス・キャリア試験、技能が尊重される社会の形成を推進する青年技能者技能競技大会等の事業を実施するものである。

(2) 委託費の交付、精算等の手続

 生涯職業能力開発事業等に係る委託費の交付、精算等の手続は、本省が定めた「生涯職業能力開発事業(中央職業能力開発協会分)の委託について」(平成18年3月能発第0331015号厚生労働省職業能力開発局長通知)等によると、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕  本省は、事業の実施に当たり、中央協会又は都道府県協会から委託事業実施計画書の提出を受けて、その内容が適当と認めるときは、中央協会又は都道府県協会との間で委託契約を締結する。そして、当該委託契約に基づき、概算払により委託費を交付する。
〔2〕  中央協会又は都道府県協会は、事業が終了したときは、事業の成果を記載した委託事業実施結果報告書・委託事業費精算報告書(以下「精算報告書」という。)を本省に提出する。
〔3〕  本省は、中央協会又は都道府県協会から提出された精算報告書の内容を審査して、適当と認めるときは委託費の額を確定して精算する。
 そして、生涯職業能力開発事業等に係る委託費の対象経費は、事業の実施に必要な人件費、謝金、旅費、庁費等の経費となっている。

(3) 中央協会が都道府県協会に再委託していた生涯職業能力開発事業等

 中央協会は、生涯職業能力開発事業等のうち各都道府県内で実施される企業内キャリア形成支援推進事業等4事業(注2) (以下、これらの4事業を合わせて「企業内キャリア形成支援推進事業等」という。)の一部について、平成14、15両年度に(企業内キャリア形成支援推進事業等のうち外国人基礎技能研修生受入事業等は16年度まで)、各都道府県協会に対して再委託していた。そして、外国人基礎技能研修生受入事業等を除く企業内キャリア形成支援推進事業等は、16年度以降、本省から都道府県協会への直接の委託契約に変更されている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、本省、中央協会及び8都道府県協会(注3) において会計実地検査を行い、14年度から18年度までの間に、中央協会及び8都道府県協会に支払われた委託費を対象として、合規性等の観点から、委託費が事業の目的に沿って適正に支払われているかに着眼して、精算報告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に本省、中央協会及び8都道府県協会に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
 また、中央協会は、14年度から16年度までの間に、企業内キャリア形成支援推進事業等の一部を8都道府県協会に再委託していたことから、これらの再委託した事業の実施に要した支払額についても同様に検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 本省は、中央協会、島根県職業能力開発協会(以下「島根県協会」という。)及び広島県職業能力開発協会(以下「広島県協会」という。)が14年度から18年度までの間に実施した生涯職業能力開発事業等について、中央協会、島根県協会及び広島県協会から提出された精算報告書に基づき、委託費の支払額を計12,061,651,410円と確定して精算していた。
 しかし、中央協会、島根県協会及び広島県協会において、次のとおり、委託費が過大に支払われていた。
ア 中央協会は、14年度から18年度までの各年度に、事務所の一部を生涯職業能力開発事業等とは関係のない社団法人A及び有限会社Bの2法人にそれぞれ事務所として使用させていたにもかかわらず、これらの2法人が負担すべき事務所借料、共益費、清掃料、電気料金及び電話料金(以下、これらの経費を「事務所借料等」という。)の一部を含めて委託費から支払う事務所借料等を算出していた。このため、委託費計20,867,603円が過大に支払われていた。
イ 中央協会から企業内キャリア形成支援推進事業等の一部を再委託されていた8都道府県協会が、懇親会に係る飲食費等を支払ったり、旅費を不正に支払ってこれを別途に経理したりなどしていたにもかかわらず、中央協会は、14年度から16年度までの各年度に、これらの経費を含めて再委託による事業の実施に要した経費としていた。このため、委託費計3,828,000円が過大に支払われていた。
ウ 島根県協会及び広島県協会は、16年度から18年度までの間に、生涯職業能力開発事業等に関連して実施した研修会の参加者受講料を収入として得ているにもかかわらず、これを考慮することなく委託費から支払う経費を算出するなどしていた。このため、委託費計760,102円が過大に支払われていた。
 したがって、次表のとおり、中央協会、島根県協会及び広島県協会が14年度から18年度までの間に実施した生涯職業能力開発事業等に係る適正な委託費の額は計12,036,195,705円となり、前記の委託費の支払額計12,061,651,410円との差額計25,455,705円が過大に支払われており、委託費の経理が適正を欠いていて、不当と認められる。

 生涯職業能力開発事業等における過大な支払額 (単位:円)
年度 委託費の支払額 適正な委託費の額 過大な支払額
平成
14
3,769,016,805 3,762,076,784 6,940,021
15 3,418,893,067 3,412,127,938 6,765,129
16 1,751,732,655 1,747,102,131 4,630,524
17 1,621,741,131 1,617,820,661 3,920,470
18 1,500,267,752 1,497,068,191 3,199,561
12,061,651,410 12,036,195,705 25,455,705

 このような事態が生じていたのは、中央協会、島根県協会及び広島県協会において、委託費の適正な会計経理に対する認識が欠けていたこと、また、中央協会において、再委託先である8都道府県協会から提出された精算報告書の審査が十分でなかったこと、さらに、本省において、中央協会、島根県協会及び広島県協会から提出された精算報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
 上記の事態については、本省において、委託先に対する経理指導を徹底するとともに、委託費の精算に当たっては、委託先から提出された精算報告書に係る審査の徹底を図るなど再発防止に努める必要があると認められる。

(注1)
 生涯職業能力開発事業等9事業  生涯職業能力開発事業、企業内キャリア形成支援推進事業、生涯教育開発業務、高度熟練技能基盤強化支援事業、技能啓発等推進事業、教育訓練講座受講環境整備事業、幅広い職種を対象とした包括的な職業能力評価制度の整備事業、外国人基礎技能研修生受入事業等及び技能評価システム移転促進事業
(注2)
 企業内キャリア形成支援推進事業等4事業  企業内キャリア形成支援推進事業、生涯教育開発業務、高度熟練技能基盤強化支援事業及び外国人基礎技能研修生受入事業等
(注3)
 8都道府県協会  岩手、宮城、栃木、新潟、石川、福井、島根、広島各県職業能力開発協会