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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 役務

緊急サポートネットワーク事業に係る委託事業の実施に当たり、委託事業に従事していなかった期間に係る職員の賃金を委託費から支払うなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの


(86) 緊急サポートネットワーク事業に係る委託事業の実施に当たり、委託事業に従事していなかった期間に係る職員の賃金を委託費から支払うなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)雇用安定等事業費
部局等 厚生労働本省
契約名 緊急サポートネットワーク事業委託(平成17、18両年度)
契約の概要 育児に係る臨時的、突発的、専門的な支援を要望している労働者に対する看護師等のあっせん事業等の実施
契約の相手方 5団体
契約 平成17年9月ほか 随意契約
支払額 102,943,809円 (平成17、18両年度)
過大になっている支払額 8,159,662円 (平成17、18両年度)

1 委託事業の概要

(1) 委託事業の概要

 厚生労働本省(以下「本省」という。)は、育児等をしながら働く労働者を支援することにより、労働者の失業予防、雇用の安定を図ることを目的として、平成17年度から、公益法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人の団体に対して、緊急サポートネットワーク事業(以下「委託事業」という。)の実施を委託している。
 この委託事業は、育児に係る臨時的、突発的、専門的な支援を要望している労働者に対する看護師、保育士、介護福祉士等のあっせんなどを実施するものである。
 そして、17、18両年度に計39団体に対して、本件委託事業の実施を委託している。

(2) 委託費の交付、精算等の手続

 委託事業に係る委託費の交付、精算等の手続は、本省が定めた「緊急サポートネットワーク事業委託要綱」(平成17年8月雇児発第0810002号雇用均等・児童家庭局長通知)等によると、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕  本省は、委託事業の実施に当たり、受託者から委託事業実施計画書の提出を受けて、その内容が適当と認めるときは、当該受託者との間で委託契約を締結する。そして、当該委託契約に基づき、概算払により委託費を交付する。
〔2〕  受託者は、委託事業に係る経理について、その内容を明らかにするために、他の経理と区分して会計帳簿その他の証拠書類等を備え付ける。そして、委託事業が終了したときは、委託事業費精算報告書(以下「精算報告書」という。)を本省に提出する。
〔3〕  本省は、受託者から提出された精算報告書の内容を審査して、適当と認めるときは委託費の額を確定して精算する。
 そして、委託事業に係る委託費の対象経費は、人件費、旅費、物品購入費、事務所借料等委託事業に要した額となっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、本省及び10団体において会計実地検査を行い、17、18両年度に10団体に支払われた委託費を対象として、合規性等の観点から、委託費が事業の目的に沿って適正に使用されているかに着眼して、精算報告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に本省等に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 本省は、5団体(注) が17、18両年度に実施した委託事業について、5団体から提出された精算報告書に基づき、委託費の支払額を計102,943,809円と確定して精算していた。
 しかし、5団体において、委託事業に従事していなかった期間に係る職員の賃金を委託費から支払っていたり、領収書等による支払の事実の裏付けがなく委託事業に要したとは認められない経費を精算報告書に計上したりなどしていたものが計8,159,662円あった。
 したがって、5団体が17、18両年度に実施した委託事業に係る適正な委託費の額は計94,784,147円となり、前記の委託費の支払額計102,943,809円との差額計8,159,662円が過大に支払われており、委託費の経理が適正を欠いていて、不当と認められる。
 上記について、一例を示すと次のとおりである。

<事例>

 本省は、平成17、18両年度において、団体Aから提出された精算報告書に基づき、委託費の支払額を計56,312,203円と確定して精算していた。
 しかし、団体Aは、17年度に、職員6名が他の事業に従事していて委託事業に従事していなかった2か月間に係る賃金等計1,745,699円を委託費から支払っていた。また、17、18両年度に、領収書等による支払の事実の裏付けがなく本件委託事業に要したと認められない経費等計2,831,667円を精算報告書に計上していた。
 したがって、委託事業に係る適正な委託費の額は計51,734,837円となり、前記の委託費の支払額計56,312,203円との差額計4,577,366円が過大に支払われていた。
 このような事態が生じていたのは、5団体において、委託事業の適正な執行及び委託費の適正な会計経理に関する認識が欠けていたこと、また、本省において、精算報告書の内容の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
 上記の事態については、本省において、委託先に対する経理指導を徹底するとともに、委託費の精算に当たっては、委託先から提出された精算報告書に係る審査の徹底を図るなど再発防止に努める必要があると認められる。

 5団体  特定非営利活動法人やまがた育児サークルランド、財団法人神奈川県児童医療福祉財団(平成20年3月31日に解散)、社会福祉法人長野県社会福祉協議会、財団法人徳島県勤労者福祉ネットワーク、社団法人愛媛県労働者福祉協議会