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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの


(89) 雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等 厚生労働本省(支給庁)
119公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 314人
失業等給付金の支給額の合計 求職者給付 166,933,419円 (平成16年度〜20年度)
就職促進給付 16,984,990円 (平成17年度〜19年度)
183,918,409円
不適正支給額 求職者給付 61,979,152円 (平成17年度〜20年度)
就職促進給付 16,984,990円 (平成17年度〜19年度)
78,964,142円

1 保険給付の概要

(1) 雇用保険

 雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者として、被保険者が失業した場合及び被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合などに、その生活及び雇用の安定を図るなどのために失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業等を行う保険である。

(2) 失業等給付金の種類

 失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。
ア 求職者給付には7種の手当等があり、このうち基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めており、失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。
イ 就職促進給付には5種の手当等があり、このうち再就職手当は、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上残して安定した職業に就いた場合に支給される。

 受給資格者  被保険者が、離職し労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上(平成19年9月30日以前に離職した者については、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上)あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者

(3) 失業等給付金の支給

 上記の手当は、公共職業安定所が次のように支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省が支給することとなっている。
ア 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認して、失業の認定を行った上、支給決定を行う。
イ 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入年月日等について調査確認の上、支給決定を行う。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、全国47都道府県労働局(以下、都道府県労働局を「労働局」という。)の461公共職業安定所(平成20年3月末現在)のうち、20労働局管内の203公共職業安定所に係る会計実地検査を行い、15年度から20年度までの間に失業等給付金の支給を受けた者(以下、失業等給付金の支給を受けた者を「受給者」という。)のうち10,163人を選定して、合規性等の観点から、これらの受給者に対する失業等給付金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、受給者から提出された失業認定申告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該公共職業安定所に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 不適正支給の事態

 検査の結果、20労働局の119公共職業安定所管内における16年度から20年度までの間の受給者314人に対する失業等給付金(支給額183,918,409円)のうち、17年度から20年度までの間の支給に係る78,964,142円が適正に支給されておらず、不当と認められる。これを給付の種別に示すと次のとおりである。

ア 求職者給付

 118公共職業安定所管内の受給者307人に対する基本手当(支給額166,933,419円)のうち、61,979,152円が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職していながらその事実を失業認定申告書に記載していないなどのため、同申告書の内容が事実と相違するなどしていたのに、上記の118公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。

イ 就職促進給付

 55公共職業安定所管内の受給者74人に対する再就職手当の支給額16,984,990円全額が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入年月日を記載していたのに、上記の55公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 A公共職業安定所は、受給資格者Bから、平成18年12月から就職することとした失業認定申告書及び再就職手当支給申請書の提出を受けて、これに基づき、基本手当512,316円及び再就職手当163,806円の支給決定を行っていた。
 しかし、実際には、受給資格者Bは同年11月から就職していたことから、上記の基本手当の一部335,445円及び再就職手当163,806円、計499,251円が適正に支給されていなかった。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 公共職業安定所 本院の調査に係る受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不適正失業等給付金
千円 千円
秋田 秋田 等6 443 14 9,083 2,173
湯沢 64 1 303 303
小計 9,386 2,476
福島 郡山 3 3 1,092 892
小計 1,092 892
茨城 水戸 等6 230 12 9,661 2,617
土浦 等2 37 2 563 563
小計 10,225 3,180
埼玉 川口 等7 186 14 7,210 5,076
所沢 等2 37 2 563 563
小計 7,774 5,639
千葉 千葉 等5 428 14 7,315 3,780
千葉 等2 98 3 585 585
小計 7,901 4,366
東京 上野 等11 739 23 14,862 5,840
品川 等5 226 7 1,596 1,596
小計 16,459 7,437
神奈川 鶴見 等7 379 10 5,797 3,978
戸塚 等4 162 4 1,085 1,085
小計 6,882 5,063
新潟 新潟 等3 148 4 1,288 589
4 1 67 67
小計 1,355 656
愛知 名古屋中 等9 448 22 13,806 5,400
名古屋中 等8 213 12 2,463 2,463
小計 16,270 7,863
三重 四日市 等7 356 18 10,252 2,769
四日市 等3 49 3 477 477
小計 10,729 3,246
京都 京都西陣 等7 586 29 12,766 4,645
京都西陣 等6 274 10 2,717 2,717
小計 15,484 7,363
大阪 大阪東 等10 718 21 10,940 2,118
大阪東 等5 143 7 1,372 1,372
小計 12,312 3,491
兵庫 神戸 等8 332 21 8,601 3,922
神戸 等5 99 10 2,694 2,694
小計 11,295 6,616
鳥取 鳥取 等3 223 12 4,576 892
鳥取 等2 95 2 430 430
小計 5,006 1,322
広島 福山 等5 211 11 5,258 1,664
甘日市 24 1 428 428
小計 5,686 2,092
徳島 徳島 等4 119 7 5,792 2,186
徳島 等2 39 3 493 493
小計 6,285 2,680
愛媛 松山 等3 92 6 5,009 2,907
小計 5,009 2,907
高知 高知 等3 265 20 11,916 3,101
高知 等2 76 2 573 573
小計 12,490 3,675
福岡 福岡中央 等6 295 15 7,843 2,704
飯塚 等2 43 2 411 411
小計 8,255 3,116
鹿児島 鹿児島 等7 496 31 13,857 4,716
加世田 等2 34 2 156 156
小計 14,014 4,873
求職者給付計 118か所 6,697 307 166,933 61,979
就職促進給付計 55か所 1,717 74 16,984 16,984
合計 183,918 78,964

注(1)  上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
注(2)  公共職業安定所数及び不適正受給者数については、各給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ119か所、314人である。

 上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、同省において、受給資格者に対する指導を強化するとともに受給資格者から提出された失業認定申告書等に係る調査確認の強化を図る必要があると認められる。