会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生労働本省 | (項)精神保健費 | |
(項)生活保護費 | |||
(項)身体障害者保護費 | |||
(項)老人医療・介護保険給付諸費 | |||
(項)児童保護費 | |||
(項)国民健康保険助成費 | |||
(項)障害者自立支援給付諸費 | |||
年金特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費 | ||
(項)老人保健拠出金 | |||
(項)退職者給付拠出金 | |||
平成18年度以前は、 | |||
厚生保険特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費 | ||
(項)老人保健拠出金 | |||
(項)退職者給付拠出金 | |||
船員保険特別会計 | (項)保険給付費 | ||
(項)老人保健拠出金 | |||
(項)退職者給付拠出金 | |||
部局等 | 社会保険庁、27都道府県 | ||
国の負担の根拠 | 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、老人保健法(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)等 | ||
医療給付の種類 | 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、老人保健法、生活保護法等に基づく医療 | ||
実施主体 | 国、都道府県26、市539、特別区23、町451、村78、広域連合1、国民健康保険組合87、計1,206実施主体 | ||
医療機関及び薬局 | 医療機関211、薬局70 | ||
過大に支払われた医療費に係る診療報酬等 | 入院基本料、入院基本料等加算、調剤報酬等 | ||
過大に支払われた医療費の件数 | 550,320件 | (平成15年度〜19年度) | |
過大に支払われた医療費の額 | 1,371,158,253円 | (平成15年度〜19年度) | |
不当と認める国の負担額 | 764,104,116円 | (平成15年度〜19年度) |
厚生労働省の医療保障制度には、老人保健制度(平成20年4月以降は「後期高齢者医療制度」)、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。
ア 老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法、国民健康保険法等(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して行う医療
イ 医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者(老人を除く。)に対して行う医療
ウ 公費負担医療制度の一環として、都道府県又は市町村が、生活保護法に基づき被保護者に対して行う医療等
これらの医療給付においては、被保険者(上記ウの被保護者等を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け、又は薬局で薬剤の支給等を受けた場合、市町村、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)及び患者がこれらの費用を医療機関又は薬局(以下「医療機関等」という。)に診療報酬又は調剤報酬(以下「診療報酬等」という。)として支払う。
診療報酬等の支払の手続は、次のとおりとなっている(図1
参照)。
ア 診療等を担当した医療機関等は、診療報酬等として医療に要する費用を所定の診療点数又は調剤点数に単価(10円)を乗ずるなどして算定する。
イ 医療機関等は、上記診療報酬等のうち、患者負担分を患者に請求して、残りの診療報酬等(以下「医療費」という。)については、老人保健法に係るものは市町村に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、生活保護法等に係るものは都道府県又は市町村に請求する。
このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。
(ア) 医療機関等は、診療報酬請求書又は調剤報酬請求書(以下「請求書」という。)に診療報酬等の明細を明らかにした診療報酬明細書又は調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、これらを、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に毎月1回送付する。
(イ) 審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関等ごと、保険者等ごとの請求額を算定して、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。
ウ 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認の上、審査支払機関を通じて医療機関等に医療費を支払う。
保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。
ア 老人保健法に係る医療費(以下「老人医療費」という。)については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うものであるが、この費用は国、都道府県、市町村及び保険者が以下のように負担している(図2
参照)。
(ア) 老人保健法により、老人医療費については、原則として、国は12分の4を、都道府県及び市町村はそれぞれ12分の1ずつを負担しており、残りの12分の6については各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。
(イ) 国民健康保険法により、国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の納付に要する費用の額の一部を負担している。
(ウ) 健康保険法等により、国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。
イ 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕 政府管掌健康保険等の被保険者である場合の医療費は保険者としてその全額を、〔2〕 市町村が行う国民健康保険の一般被保険者である場合の医療費は市町村が支払った額の43%を、〔3〕 国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。
ウ 生活保護法等に係る医療費については、国は都道府県又は市町村が支払った医療費の4分の3又は2分の1を負担している。
国民医療費は11年度以降毎年度30兆円を超えており、このうち老人医療費は18年度では約34%を占めており、高齢化が急速に進展する中でその占める割合は高くなっている。このような状況の中で医療費に対する国の負担も多額に上っていることから、本院は従来老人医療費を中心に、合規性等の観点から、診療報酬等の請求が適正に行われているかに着眼して検査を行っている。
そして、近年では医療機関において、医師、看護師等の医療従事者が不足していて要件を満たしていなかったり、必要な各種届出を行っていなかったりしているのにこれらを満たすことが要件とされている診療報酬を請求したり、別途介護保険制度の介護給付等として行われるものを診療報酬として請求したりしている不適正と認められる事態が多く見受けられる。また、昨今の医薬分業の進展に伴い増加傾向にある調剤報酬についても、算定要件を満たしていないのに請求しているなど不適正と認められる事態が多く見受けられる。そこで、本年の検査に当たっても、合規性等の観点から、これらの点を中心に検査することとした。
本院は、社会保険庁の27社会保険事務局及び27都道府県において、保険者等の実施主体による医療費の支払について、レセプト、各種届出書、報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、医療費の支払について疑義のある事態が見受けられた場合は、地方社会保険事務局及び都道府県に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
検査の結果、27都道府県に所在する211医療機関及び70薬局に対して1,206実施主体が行った15年度から19年度までの間における医療費の支払が、550,320件で1,371,158,253円過大となっていて、これに対する国の負担額764,104,116円が不当と認められる。
これを診療報酬等の別に整理して示すと、次のとおりである。
診療報酬等 | 実施主体 (医療機関等数) |
過大に支払われた医療費の件数 | 過大に支払われた医療費 | 不当と認める国の負担額 |
件 | 千円 | 千円 | ||
〔1〕 入院基本料 | 288市区町村等 (43) |
12,817 | 279,473 | 153,543 |
〔2〕 入院基本料等加算 | 442市区町村等 (59) |
40,476 | 437,386 | 244,078 |
〔3〕 在宅医療料 | 109市区町村等 (44) |
14,310 | 226,345 | 128,147 |
〔4〕 初診料・再診料 | 238市区町村等 (29) |
33,657 | 124,337 | 69,208 |
〔5〕 処置料 | 125市区町村等 (14) |
5,649 | 35,257 | 18,931 |
〔6〕 医学管理料 | 28市町村等 (7) |
5,796 | 22,061 | 12,327 |
〔7〕 検査料等 | 234市区町村等 (15) |
21,971 | 52,605 | 29,574 |
〔1〕 −〔7〕 の計 | 893実施主体 (211) |
134,676 | 1,177,467 | 655,811 |
〔8〕 調剤報酬 | 682市区町村等 (70) |
415,644 | 193,690 | 108,292 |
〔1〕 −〔8〕 の計 | 1,206実施主体 (281) |
550,320 | 1,371,158 | 764,104 |
注(1) | 複数の診療報酬について不適正と認められる請求があった医療機関については、最も多額な診療報酬で整理した。 |
注(2) | 計欄の実施主体数は、各診療報酬等の間で実施主体が重複することがあるため、各診療報酬等の実施主体数を合計したものとは符合しない。 |
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 実施主体及び審査支払機関において、医療機関等から不適正と認められる診療報酬等の請求があったのにこれに対する審査点検が十分でなく、特に、診療報酬請求上の各種届出についての確認が必ずしも十分でなかったこと
イ 地方社会保険事務局及び都道府県において、医療機関の医療従事者が不足していることを把握できる資料があるにもかかわらずその活用が必ずしも十分でなかったこと
ウ 地方社会保険事務局及び都道府県において、医療機関等に対する指導が十分でなかったこと
上記の医療費の支払が過大となっていた事態について、診療報酬等の別に、その算定方法及び検査の結果の詳細を示すと次のとおりである。
〔1〕 入院基本料
入院基本料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。入院基本料のうち療養病棟入院基本料2は、患者の疾患、状態等について厚生労働大臣が定める五つの区分に従い、所定の点数を算定することとされている。
また、医療機関において、医師の数が医療法(昭和23年法律第205号)に定める標準となる数(以下「標準人員」という。)に100分の70を乗じて得た数以下である場合(以下「著しい医師不足」という。)の入院基本料については、所定の減額をして算定することとされている。
さらに、精神病棟に入院している患者の身体障害の状態等が厚生労働大臣の定める基準に適合している場合に算定する重度認知症加算は、患者の身体障害の状態及び認知症の状態を評価することなどが算定要件とされている。
検査の結果、19都道府県に所在する43医療機関において、入院基本料等の請求が不適正と認められるものが12,817件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 療養病棟入院基本料2に定められた区分のうち、より低い点数の区分の状態等にある患者に対して高い区分の点数で算定していた。
イ 著しい医師不足等であるのに、入院基本料についての所定の減額をしないで算定していた。
ウ 患者の身体障害の状態及び認知症の状態についての評価を行うなどの算定要件を満たしていないのに、重度認知症加算を算定していた。
このため、上記12,817件の請求に対して288市区町村等が支払った医療費が279,473,033円過大となっていて、これに対する国の負担額153,543,613円は負担の必要がなかったものである。
〔2〕 入院基本料等加算
入院基本料等加算には、療養病棟療養環境加算、超重症児(者)入院診療加算、難病患者等入院診療加算、特殊疾患入院施設管理加算等がありそれぞれ所定の点数が定められている。
そして、これらの加算の多くは、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、その基準に掲げる区分に従い所定の点数を算定することとされている。ただし、療養病棟療養環境加算等は、医師等の数が標準人員を満たしていないなどの場合には算定できないこととされている。
また、超重症児(者)入院診療加算等は、厚生労働大臣が定める超重症等の状態にある患者に対して算定することとされている。ただし、これらの加算は、一般病棟に入院している老人の患者に対しては、算定できないこととされている。
さらに、難病患者等入院診療加算は、厚生労働大臣が定める難病等の疾患を主病として医療機関に入院している患者に対して算定することとされている。ただし、この加算は療養病棟入院基本料2を算定している患者に対しては、算定できないこととされている。
検査の結果、17都道府県に所在する59医療機関において、入院基本料等加算等の請求が不適正と認められるものが40,476件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 医師の数が標準人員を満たしていないのに、療養病棟療養環境加算等を算定していた。
イ 届け出た区分より高い区分の療養病棟療養環境加算等を算定していた。
ウ 一般病棟に入院している老人の患者に対して、超重症児(者)入院診療加算等を算定していた。
エ 療養病棟入院基本料2を算定している患者に対して、難病患者等入院診療加算等を算定していた。
オ 地方社会保険事務局長への届出を行っていないのに、特殊疾患入院施設管理加算等を算定していた。
このため、上記40,476件の請求に対して442市区町村等が支払った医療費が437,386,150円過大となっていて、これに対する国の負担額244,078,254円は負担の必要がなかったものである。
〔3〕 在宅医療料
在宅医療料のうち在宅患者訪問看護・指導料等は、医療機関が、居宅において療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、看護師等を訪問させて看護又は療養上必要な指導を行った場合等に算定することとされている。また、歯科診療の訪問歯科衛生指導料等は、歯科医師が歯科訪問診療を行った患者等に対して、歯科医師の指示に基づき、歯科衛生士等が訪問して、療養上必要な実地指導を行った場合等に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては、これらの診療が別途介護保険制度の介護給付として行われるものであることから、在宅患者訪問看護・指導料、訪問歯科衛生指導料等は算定できないこととされている。
また、在宅酸素療法指導管理料等は、医師が、居宅等において在宅酸素療法を行っている患者に対して、在宅酸素療法に関する指導管理を行った場合等に算定することとされている。ただし、特別養護老人ホーム等11施設(注)
(以下「老人ホーム等」という。)に配置されている医師(以下「配置医師」という。)がこれら施設の入所者に対して行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから、在宅酸素療法指導管理料等は算定できないこととされている。
さらに、在宅時医学総合管理料は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、所定の点数を算定することとされている。
このほか、在宅患者訪問診療料等は、医療機関が、居宅において療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行った場合等に算定することとされている。ただし、老人ホーム等に入所している患者に対しては、在宅患者訪問診療料等は算定できないこととされている。
検査の結果、19都道府県に所在する44医療機関において、在宅医療料等の請求が不適正と認められるものが14,310件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して、在宅患者訪問看護・指導料又は訪問歯科衛生指導料等を算定していた。
イ 配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行った診療について、在宅酸素療法指導管理料等を算定していた。
ウ 地方社会保険事務局長への届出を行っていないのに、在宅時医学総合管理料を算定していた。
エ 特別養護老人ホームの入所者に対して行った診療について、在宅患者訪問診療料等を算定していた。
このため、上記14,310件の請求に対して109市区町村等が支払った医療費が226,345,908円過大となっていて、これに対する国の負担額128,147,796円は負担の必要がなかったものである。
〔4〕 初診料・再診料
初診料は、患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があったときに、再診料はその後の診療行為の都度、それぞれ算定することとされている。ただし、配置医師が老人ホーム等の入所者に対して行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから、初診料、再診料は算定できないこととされている。
検査の結果、14道府県に所在する29医療機関において、初診料、再診料等の請求が不適正と認められるものが33,657件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行った診療について、初診料、再診料を算定していた。
イ 配置医師でない医師が、定期的に特別養護老人ホーム等の入所者の診療に当たっている場合、その医師は実質的には配置医師とみなすべきであるのに、初診料、再診料を算定していた。
このため、上記33,657件の請求に対して238市区町村等が支払った医療費が124,337,512円過大となっていて、これに対する国の負担額69,208,367円は負担の必要がなかったものである。
〔5〕 処置料
処置料には、一般処置料、栄養処置料等があり、それぞれの処置の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、老人ホーム等の職員が入所者に対して行った処置については、処置料を算定できないこととされている。
また、処置に当たって薬剤を使用した場合は、実際に使用した薬剤の総量に基づいた薬剤料の点数を合算して算定することとされている。
検査の結果、11道県に所在する14医療機関において、処置料等の請求が不適正と認められるものが5,649件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 特別養護老人ホーム等の職員が入所者に対して行った鼻腔(くう)栄養等について処置料を算定していた。
イ 人工腎(じん)臓の処置に使用される薬剤について、実際に使用した量よりも多い量により薬剤料を算定していた。
このため、上記5,649件の請求に対して125市区町村等が支払った医療費が35,257,836円過大となっていて、これに対する国の負担額18,931,694円は負担の必要がなかったものである。
〔6〕 医学管理料
医学管理料のうち特定疾患療養管理料等は、生活習慣病等を主病とする患者に対して、治療計画に基づき療養上必要な管理を行った場合等に算定することとされている。ただし、配置医師が老人ホーム等の入所者に対して行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから、特定疾患療養管理料等は算定できないこととされている。
検査の結果、7府県に所在する7医療機関において、医学管理料等の請求が不適正と認められるものが5,796件あった。その主な態様は、配置医師が特別養護老人ホームの入所者に対して行った診療について、特定疾患療養管理料等を算定していたものである。
このため、上記5,796件の請求に対して28市町村等が支払った医療費が22,061,757円過大となっていて、これに対する国の負担額12,327,075円は負担の必要がなかったものである。
〔7〕 検査料等
検査料には、血液化学検査等の検体検査料等があり、それぞれの検査の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、診療の具体的方針として、検査は、診療上必要があると認められる範囲内において行うこと、同一の検査はみだりに反復して行ってはならないこととされている。
注射料は、点滴注射等の注射の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、老人ホーム等の職員が入所者に対して行った注射については、注射料を算定できないこととされている。
検査の結果、9都道県に所在する15医療機関において、検査料等の請求が不適正と認められるものが21,971件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 特別養護老人ホームの多くの入所者に対して血液化学検査等を画一的に実施して検査料を算定していた。
イ 特別養護老人ホームの職員が入所者に対して行った点滴注射等について注射料を算定していた。
このため、上記21,971件の請求に対して234市区町村等が支払った医療費が52,605,772円過大となっていて、これに対する国の負担額29,574,785円は負担の必要がなかったものである。
〔8〕 調剤報酬
調剤報酬のうち薬剤服用歴管理料の服薬指導加算は、処方された薬剤について、直接患者又はその家族等から服薬状況等の情報を収集して薬剤服用歴に記録して、これに基づき薬剤の服用等に関して必要な指導を行った場合に算定することとされている。
また、在宅患者訪問薬剤管理指導料は、居宅で療養を行っている患者に対して、医師の指示に基づき、薬剤師が患家を訪問して薬学的管理指導を行った場合に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては、この指導が別途介護保険制度の介護給付として行われるものであることから、在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できないこととされている。
検査の結果、18都道府県に所在する70薬局において、調剤報酬の請求が不適正と認められるものが415,644件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 薬剤服用歴の記録に基づき薬剤の服用等に関して必要な指導を行うことなどの算定要件を満たしていないのに、服薬指導加算等を算定していた。
イ 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定していた。
このため、上記415,644件の請求に対して682市区町村等が支払った医療費が193,690,285円過大となっていて、これに対する国の負担額108,292,532円は負担の必要がなかったものである。
以上を医療機関等の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。
都道府県名 | 実施主体(医療機関等数) | 過大に支払われた医療費の件数 | 過大に支払われた医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
件 | 千円 | 千円 | |||
北海道 | 102市区町村等(16) | 25,126 | 110,777 | 61,816 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔7〕 〔8〕 |
青森県 | 17市町村等(2) | 802 | 26,584 | 15,241 | 〔1〕 〔2〕 |
岩手県 | 21市町村等(7) | 5,800 | 38,604 | 21,443 | 〔2〕 〔3〕 〔6〕 〔7〕 〔8〕 |
山形県 | 50市区町等(7) | 33,553 | 13,043 | 7,491 | 〔4〕 〔8〕 |
栃木県 | 21市町等(2) | 1,050 | 2,457 | 1,345 | 〔2〕 〔3〕 |
群馬県 | 152市区町村等(9) | 21,139 | 39,866 | 22,405 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔6〕 〔7〕 |
埼玉県 | 139市区町村等(16) | 35,558 | 67,360 | 37,132 | 〔1〕 〔2〕 〔4〕 〔5〕 〔6〕 〔8〕 |
千葉県 | 53市区町村等(9) | 5,920 | 27,039 | 14,737 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔6〕 〔8〕 |
東京都 | 178市区町村等(15) | 35,274 | 94,163 | 52,123 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔7〕 〔8〕 |
神奈川県 | 23市区町等(8) | 4,422 | 31,660 | 17,515 | 〔3〕 〔4〕 〔6〕 〔8〕 |
新潟県 | 58市区町村等(11) | 6,024 | 63,454 | 34,284 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔6〕 〔7〕 |
福井県 | 11市区町等(2) | 314 | 7,760 | 4,295 | 〔1〕 〔2〕 |
山梨県 | 31市区町村等(3) | 14,272 | 11,330 | 5,962 | 〔3〕 〔5〕 〔8〕 |
岐阜県 | 46市区町等(7) | 37,178 | 15,672 | 8,662 | 〔2〕 〔5〕 〔8〕 |
愛知県 | 95市区町村等(18) | 11,522 | 133,954 | 72,081 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔7〕 〔8〕 |
三重県 | 25市町村等(6) | 1,302 | 11,877 | 6,611 | 〔1〕 〔4〕 〔5〕 |
京都府 | 130市区町村等(7) | 31,215 | 17,198 | 9,368 | 〔1〕 〔3〕 〔8〕 |
大阪府 | 185市区町村等(42) | 127,809 | 176,125 | 102,255 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔6〕 〔8〕 |
兵庫県 | 64市区町村等(20) | 7,681 | 107,139 | 59,128 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔8〕 |
鳥取県 | 30市町村等(4) | 11,370 | 8,641 | 4,933 | 〔1〕 〔3〕 〔8〕 |
岡山県 | 5市町等(1) | 206 | 2,219 | 1,243 | 〔1〕 |
広島県 | 73市区町等(19) | 36,588 | 118,078 | 66,933 | 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔7〕 〔8〕 |
高知県 | 3市(2) | 102 | 6,314 | 3,478 | 〔1〕 〔3〕 |
熊本県 | 63市町村等(17) | 37,770 | 57,509 | 32,655 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔7〕 〔8〕 |
宮崎県 | 11市区町等(4) | 1,050 | 35,408 | 19,689 | 〔1〕 〔3〕 〔5〕 |
鹿児島県 | 120市区町村等(22) | 52,663 | 131,306 | 72,678 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔7〕 〔8〕 |
沖縄県 | 41市町村等(5) | 4,610 | 15,607 | 8,588 | 〔2〕 〔5〕 〔8〕 |
計 | 1,206市区町村等(281) | 550,320 | 1,371,158 | 764,104 |
注(1) | 計欄の実施主体数は、都道府県の間で実施主体が重複することがあるため、各都道府県の実施主体数を合計したものとは符合しない。 |
注(2) | 摘要欄の〔1〕 〜〔8〕 は、本文の過大となっていた支払の事態の診療報酬等の別 に対応している。 |
上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、同省において、地方社会保険事務局(20年10月以降は医療指導監査業務を引き継ぐ地方厚生局及び地方厚生支局)及び都道府県に対して、把握した情報を有効に活用しながら医療機関等に対する指導を実施するよう努めるとともに、審査支払機関、保険者等に対する指導の徹底を図るよう助言等を行う必要があると認められる。