会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)科学研究費 | |
部局等 | 厚生労働本省 | |
補助の根拠 | 予算補助 | |
補助金の交付先 | 10研究者 | |
補助事業 | 厚生労働科学研究費補助 | |
補助事業の概要 | 厚生労働科学研究の振興を促し、もって、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関して、行政施策の科学的な推進を確保して、技術水準の向上を図ることを目的とする研究事業を行うもの | |
上記に対する国庫補助金交付額の合計 | 1,403,455,000円 | (平成14年度〜19年度) |
不当と認める国庫補助金交付額 | 95,268,000円 | (平成14年度〜19年度) |
厚生労働省は、厚生労働科学研究の振興を促し、もって、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関して、行政施策の科学的な推進を確保して、技術水準の向上を図ることを目的とする研究助成費として厚生労働科学研究費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。
厚生労働科学研究費補助金取扱規程(平成10年厚生省告示第130号。以下「取扱規程」という。)、厚生労働科学研究費補助金取扱細則(平成10年厚科第256号厚生科学課長決定。以下「取扱細則」という。)等によると、補助金は、研究計画に基づき遂行される研究事業に関してすべての責任を負う研究者(以下「主任研究者」という。)等に交付されることとなっている。
そして、取扱細則等により、主任研究者が当該研究を他の研究者と共同で実施する場合は、〔1〕 主任研究者、〔2〕 主任研究者と研究項目を分担して研究を実施する分担研究者、〔3〕 主任研究者の研究計画の遂行に協力する研究協力者により研究組織を構成するものとされている。そして、補助金の交付を受けた主任研究者は、交付された補助金の一部を分担研究者に配分することができることとなっている。
取扱規程によると、研究事業に係る補助金の交付の対象となる経費は、〔1〕 直接研究に必要な経費(消耗品費等)、〔2〕 研究事業の一部を他の機関に委託して行うための経費(以下、〔1〕 と〔2〕 を合わせて「直接研究費等」という。)、〔3〕 研究に必要な間接経費とされている。このうち間接経費は研究事業の実施には直接的にかかわらない経費で、直接研究費等に一定の比率を乗じて算定されることとなっている。
「厚生労働科学研究費補助金における事務委任について」(平成13年厚科第332号厚生科学課長決定)等により、直接研究費等に係る事務は、主任研究者及び分担研究者の事務に係る負担を軽減するなどのため、原則として、主任研究者及び分担研究者の所属機関の長に委任されることとなっている。そして、委任を受けた所属機関の長は、直接研究費等に係る事務を適正に執行することなどとなっている。
また、間接経費に係る事務は、主任研究者が次のように行うこととなっている。
〔1〕 主任研究者は、間接経費を所属機関の長が受け入れる意思があることを確認した上で、厚生労働省に対して交付申請書を提出する。
〔2〕 主任研究者は、厚生労働省から間接経費の交付を受けた後、所属機関の長へ納付する。
本院は、合規性等の観点から、交付された補助金が取扱規程等に従って適切に管理されているかなどに着眼して、厚生労働省及び35研究機関において会計実地検査を行った。そして、これらの研究機関に所属する研究者298名が実施している407研究事業について納品書、請求書等の書類により検査するとともに、補助金の管理等が適切でないと思われる事態があった場合には、研究者の所属機関に報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
なお、本院は、平成19年次の獨協医科大学における文部科学省所管の科学研究費補助金等の会計実地検査の結果、同大学に所属する複数の研究者が、同大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたため、同補助金等が過大に交付されていた事態について平成18年度決算検査報告
に掲記した。その際、同大学に対して、同大学の他の研究者及び他の研究資金についても調査を求めていたところ、19年11月に同大学から本件補助金に関する調査結果の報告を受けたので、その報告内容の確認も行った。
検査したところ、6研究機関に所属する10研究者が実施している36研究事業において、次のような事態が見受けられた。
〔1〕 研究者が業者に架空の取引を指示して研究用物品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させて、これにより研究者の所属機関に架空の取引に係る購入代金を支払わせるなどしていた。そして、研究者は、架空の取引に係る購入代金を業者に預けて別途に経理していた。
〔2〕 補助対象経費に補助対象とは認められない経費を含めていた。また、補助対象経費に所属機関の長に納付することとなっている間接経費が含まれていたにもかかわらず、これを所属機関の長に納付せず、自らの研究事業に係る直接研究費等として使用していた。
このため、14年度から19年度までの補助金交付額計1,403,455,000円のうち計95,268,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、〔1〕 研究者において、補助金の原資は税金であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、〔2〕 研究者の所属機関において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、〔3〕 研究者及び所属機関において、補助対象経費として認められる経費の範囲についての理解が十分でなかったことや間接経費の交付の目的等についての理解が十分でなかったこと、〔4〕 厚生労働省において、研究者及び研究機関に対して補助金の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。
これを所属機関別・研究者別に示すと次のとおりである。
所属機関名 | 研究者 | 年度 | 事業数 | 補助金交付額 | 不当と認める補助金額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | ||||||
(100) | 獨協医科大学 | A | 14〜18 | 15 | 504,420 | 44,731 | 補助金の過大交付 |
(101) | 同 | B | 14〜17 | 4 | 257,500 | 3,585 | 同 |
(102) | 同 | C | 15 | 2 | 60,800 | 3,076 | 同 |
(103) | 同 | D | 17、18 | 2 | 95,000 | 2,408 | 同 |
(104) | 同 | E | 15、16 | 2 | 44,000 | 1,843 | 同 |
(105) | 昭和大学 | F | 15〜17 | 4 | 262,760 | 12,032 | 同 |
上記6名の研究者は、業者に架空の取引を指示して研究用物品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させて、これにより研究者の所属機関に架空の取引に係る購入代金を支払わせるなどしていた。そして、研究者は、架空の取引に係る購入代金を業者に預けて別途に経理していた。
(106) | 福岡大学 | G | 17〜19 | 3 | 72,000 | 3,498 | 補助の対象外 |
(107) | 筑波大学 | H | 18 | 1 | 4,500 | 1,461 | 同 |
(108) | 帝京大学 | I | 17 | 1 | 9,000 | 1,100 | 同 |
上記3名の研究者は、各年度の補助対象経費に、補助対象とは認められないリース料(研究者G)、消耗品費(研究者H)、印刷製本費(研究者I)を含めていた。
(109) | 杏林大学 | J | 17、18 | 2 | 93,475 | 21,534 | 補助の対象外 |
上記の研究者は、両年度の補助対象経費に、所属機関の長に納付することとなっている間接経費が含まれていたにもかかわらず、これを所属機関の長に納付せず、自らの研究事業に係る直接研究費等として使用していた。
(100)−(109)の計 | 36 | 1,403,455 | 95,268 |