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児童保護費等負担金の経理が不当と認められるもの


(131)−(178) 児童保護費等負担金の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)児童保護費
部局等 21道府県
国庫負担の根拠 児童福祉法(昭和22年法律第164号)
補助事業者
(事業主体)
48市
国庫負担対象事業 保育所運営事業
国庫負担対象事業の概要 保護者の労働や疾病等により保育に欠ける児童の保育の実施を民間保育所に委託するもの
上記に対する国庫負担金交付額の合計 76,934,262,173円 (平成14年度〜18年度)
不当と認める国庫負担金交付額 120,358,015円 (平成14年度〜18年度)

1 負担金の概要

 児童保護費等負担金(保育所運営費国庫負担金に係る分)は、保護者の労働又は疾病等の事由により保育に欠ける児童の保育の実施を、社会福祉法人等が設置する保育所(以下「民間保育所」という。)に委託した市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対して、その委託に要した費用の一部を国が負担するものである。
 そして、この負担金の交付額は、次のとおり算定することとなっている。

費用の額-徴収金の額=国庫負担対象事業費、国庫負担対象事業費×1/2=交付額

 この費用の額及び徴収金の額は、次のとおり算定することとなっている。
〔1〕  費用の額は、民間保育所の所在地域、入所定員、児童の年齢等の別に1人当たり月額で定められている保育単価に、各月の入所児童数を乗ずるなどして算出した年間の額による。
  この保育単価については、民間施設給与等改善費として、当該民間保育所に勤務するすべての常勤職員(勤務形態が1日6時間以上かつ月20日以上の職員)を対象として算出した当該年度の4月1日現在における職員1人当たりの平均勤続年数に応じた加算率の区分ごとに設定された額を加算している。
  さらに、当該民間保育所が母子世帯の母等を非常勤職員(勤務形態が民間施設給与等改善費の加算率の算定対象となる職員を除く。)として雇用して、その総雇用人員の累積年間総雇用時間が400時間以上となる場合に、入所児童(者)処遇特別加算費として、年間総雇用時間数の区分ごとに設定された額を加算している。
〔2〕  徴収金の額は、児童の扶養義務者の前年分の所得税額又は前年度分の市町村民税の課税の有無等に応じて階層別に児童1人当たり月額で定められている徴収金基準額等から算出した年間の額による。この階層区分の認定については、その児童と同一世帯に属して生計を一にしている父母及びそれ以外の扶養義務者(家計の主宰者である場合に限る。)のすべてについて、それらの者の課税額の合計額により行う。なお、児童の属する世帯が母子世帯等の場合等には、階層に応じて徴収金の額を軽減する。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、市町村が民間保育所に委託して実施する保育事業について、合規性等の観点から、保育単価等の費用の額及び徴収金の額の算定は法令等に従って適切なものとなっているかに着眼して、22道府県の102市町において、事業実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、更に事業主体に事態の詳細について報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、21道府県の48事業主体では、児童の扶養義務者の所得税額等を誤認するなどして徴収金の額を過小に算定したり、保育単価の適用を誤るなどして費用の額を過大に算定したりしていた。
 このため国庫負担対象事業費が過大に精算されていて、国庫負担金120,358,015円が不当と認められる。
 上記の徴収金の額を過小に算定していた事態及び費用の額を過大に算定していた事態について、それぞれ一例を示すと次のとおりである。

<事例1>  扶養義務者の所得税額を誤認して徴収金の額を過小に算定していたもの

 A事業主体は、平成18年度に、児童B(2歳)について、その扶養義務者である母の17年分の所得税額及び17年度分の市町村民税額はないこと、母子世帯であることから、徴収金の額を0円と算定していた。しかし、実際は、母のほかに児童Bの扶養義務者として祖父がいることから、祖父の17年分の所得税329,900円を基に算定すべきであり、これにより計算すると徴収金の額は732,000円となり、同額が過小となっていた。
 そして、A事業主体ではこのように扶養義務者の所得税額を誤認していた事態が上記を含め、15年度児童2人1,494,000円、16年度児童4人2,493,000円、17年度児童10人5,252,000円、18年度児童16人6,860,090円見受けられ、徴収金の額が15年度から18年度までの間において、計16,099,090円過小となっていた。

<事例2>  入所児童(者)処遇特別加算費の加算を誤って費用の額を過大に算定していたもの

 C事業主体は、平成18年度に、社会福祉法人Dが設置するE保育園が母子世帯の母を非常勤の作業員として雇用していたことから、その年間総雇用時間数の区分に該当する額を入所児童(者)処遇特別加算費として保育単価に加算して、同園に係る費用の額に990,280円加算していた。
 しかし、当該職員は1日6時間以上かつ月20日以上の勤務形態であり、民間施設給与等改善費の加算率の算定対象となる職員に該当するため、入所児童(者)処遇特別加算費の対象とならないことから、同園に係る費用の額が990,280円過大となっていた。
 そして、C事業主体では、上記の保育園で、同様の事態が15年度1,016,340円、16年度1,003,310円、17年度1,015,560円見受けられて、費用の額が15年度から18年度までの間において、計4,025,490円過大となっていた。
 このような事態が生じていたのは、事業主体において徴収金の額又は費用の額の算定に当たっての調査確認が十分でなかったこと、また、道府県において適正な事務処理の執行についての指導が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを道府県別・事業主体別に示すと次のとおりである。

道府県名 事業主体 年度 国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金 摘要
千円 千円 千円 千円
(131) 北海道 函館市 17、18 3,687,919 1,843,959 5,745 2,872 扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(132) 苫小牧市 15〜18 2,886,018 1,443,009 9,562 4,781 扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(133) 千歳市 16〜18 695,685 347,842 4,281 2,140
(134) 北広島市 18 140,788 70,394 1,233 616
(135) 青森県 青森市 17、18 8,377,744 4,188,872 6,196 3,098 扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(136) 弘前市 16〜18 8,668,371 4,334,185 4,554 2,277 扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(137) 五所川原市 15〜18 3,695,204 1,847,602 8,751 4,375 扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(138) 平川市 16〜18 2,217,594 1,108,797 5,619 2,809 保育単価の適用を誤っていたものなど
(139) 岩手県 盛岡市 18 2,021,612 1,010,806 2,004 1,002 扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(140) 一関市 15〜18 1,868,285 934,142 2,378 1,189 扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(141) 奥州市 18 1,077,788 538,894 1,879 939
(142) 秋田県 秋田市 15〜18 7,359,030 3,679,515 4,061 2,030 保育単価の適用を誤っていたもの
(143) 能代市 18 277,733 138,866 1,592 796 保育単価の適用を誤っていたものなど
(144) 山形県 山形市 16〜18 2,838,758 1,419,379 3,462 1,731
(145) 福島県 いわき市 16〜18 4,106,803 2,053,401 6,753 3,376 扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(146) 南相馬市 18 191,185 95,592 2,717 1,358 扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(147) 栃木県 鹿沼市 17、18 918,806 459,403 3,007 1,503 保育単価の適用を誤っていたものなど
(148) 矢板市 17、18 432,972 216,486 4,637 2,318 扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(149) 神奈川県 川崎市 15〜18 8,709,203 4,354,601 8,669 4,334 保育単価の適用を誤っていたもの
(150) 横須賀市 17、18 2,700,197 1,350,098 2,173 1,086 扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(151) 鎌倉市 16〜18 847,457 423,728 9,780 4,890 扶養義務者の所得税額等を誤認していたもの
(152) 三浦市 18 206,936 103,468 2,091 1,045 扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(153) 岐阜県 関市 17、18 626,298 313,149 3,232 1,616 扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(154) 静岡県 菊川市 14〜18 1,564,425 782,212 7,132 3,566 保育単価の適用を誤っていたもの
(155) 滋賀県 東近江市 15〜18 768,865 384,432 3,893 1,946 保育単価の適用を誤っていたものなど
(156) 京都府 舞鶴市 16〜18 1,436,616 718,308 3,038 1,519
(157) 綾部市 16〜18 1,088,476 544,238 5,118 2,559 扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(158) 亀岡市 16〜18 1,505,749 752,874 6,550 3,275 扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(159) 長岡京市 18 217,536 108,768 1,141 570 保育単価の適用を誤っていたものなど
(160) 和歌山県 和歌山市 15〜18 9,530,519 4,765,259 17,298 8,649 扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(161) 岡山県 津山市 18 1,359,092 679,546 4,198 2,099
(162) 赤磐市 16〜18 1,540,656 770,328 8,278 4,139 扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(163) 山口県 山口市 15〜18 2,463,930 1,231,965 4,438 2,219 扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(164) 岩国市 16〜18 1,723,484 861,742 4,328 2,164 扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(165) 徳島県 徳島市 16〜18 5,354,540 2,677,270 4,898 2,449
(166) 香川県 高松市 15〜18 8,851,525 4,425,762 19,146 9,573
(167) 丸亀市 16〜18 1,610,984 805,492 3,745 1,872 扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(168) 坂出市 16〜18 1,363,780 681,890 4,351 2,175
(169) 福岡県 福岡市 17、18 21,700,149 10,850,074 4,064 2,032 保育単価の適用を誤っていたもの
(170) 行橋市 18 458,777 229,388 2,326 1,163 扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(171) 古賀市 18 311,241 155,620 2,729 1,364 扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(172) 熊本県 熊本市 18 6,389,096 3,194,548 3,948 1,974 保育単価の適用を誤っていたもの
(173) 八代市 17、18 4,514,756 2,257,378 4,451 2,225 保育単価の適用を誤っていたものなど
(174) 山鹿市 17、18 1,234,154 617,077 2,178 1,089 扶養義務者の所得税額を誤認していたもの
(175) 大分県 宇佐市 17、18 1,945,872 972,936 1,473 736
(176) 鹿児島県 鹿児島市 16〜18 11,112,951 5,556,475 9,868 4,934 保育単価の適用を誤っていたものなど
(177) 枕崎市 16〜18 872,825 436,412 5,805 2,902 扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(178) 出水市 18 396,118 198,059 1,923 961 扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(131)−(178)の計 153,868,524 76,934,262 240,716 120,358

 上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、同省において、都道府県を通じて事業主体に対する指導を一層徹底して、補助事業の適正な執行に万全を期する必要があると認められる。