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次世代育成支援対策交付金の経理が不当と認められるもの


(179)−(188) 次世代育成支援対策交付金の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)児童保護費
部局等 厚生労働本省
交付の根拠 次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)
補助事業者
(事業主体)
市9、町1、計10市町
交付対象事業 次世代育成支援対策事業
交付対象事業の概要 市町村が策定した行動計画により実施する地域の子育て支援、母性及び乳幼児の健康の確保・増進等に資する事業
上記に対する交付金交付額の合計 922,948,000円 (平成17年度)
不当と認める交付金交付額 47,276,000円 (平成17年度)

1 交付金の概要

(1) 次世代育成支援対策交付金

 次世代育成支援対策交付金(以下「交付金」という。)は、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)に基づき、地域における子育ての支援、母性及び乳幼児の健康の確保等の次世代育成支援対策の着実な推進を図ることを目的として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が5年を一期として策定する次世代育成支援対策の実施に関する計画により、毎年度策定する事業計画に掲げる延長保育促進事業や育児支援家庭訪問事業等の事業を対象として、これらの事業の実施に要する経費について、その一部を国が交付するものである。
 なお、上記の交付対象事業であっても、国が別途定める国庫補助金等の交付の対象となる事業やこれまでに国庫補助金等の改革で一般財源化された事業は、交付金の交付の対象にならないこととなっている。

(2) 延長保育促進事業の概要

 交付対象事業のうち延長保育促進事業は、国が少子化社会対策のために策定した「子ども・子育て応援プラン」において重点的に推進する事業の一つであり、市町村が、就労形態の多様化等に伴う延長保育の需要に対応するために、保育所の通常の開所時間である11時間を超えて、更に延長保育を実施するなどのものである。
 この事業には、次の二つの事業がある。

〔1〕  延長保育推進事業

 延長保育を行う保育所が、11時間の開所時間の始期及び終期前後の保育需要に対応するために、11時間の開所時間内に児童福祉施設最低基準(昭和23年厚生省令第63号)及びその他の補助金等の配置基準の規定により最低限配置しなければならない保育士のほかに、別途保育士を1名以上配置する事業

〔2〕  延長保育事業

 延長保育を行う時間帯に保育士を2名以上配置する事業
 そして、市町村が自ら設置する保育所(以下「公立保育所」という。)で延長保育促進事業を実施する場合には、上記〔1〕 の延長保育推進事業が平成17年度に一般財源化されたことから交付金の交付対象とならなくなり、上記〔2〕 の延長保育事業に要する延長保育時間帯に係る保育士の人件費等の経費のみが交付対象事業費となる。

(3) 交付金の算定方法

 交付金の交付額は、市町村が事業計画に掲げる事業について、事業ごとの事業量に応ずるなどして定められた基準点数により算出された合計点数を基に厚生労働大臣が認めた額と、市町村が実施した各事業の総事業費の合計額から寄付金その他の収入額の合計額を控除した額に2分の1を乗じた額(以下「国庫補助基本額」という。)とを比較して、少ない方の額とすることとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、交付金の算定が適切に行われているかに着眼して、10県の51市町において、事業実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、17年度に交付金が交付された6県の10市町において、公立保育所の延長保育促進事業の事業費を算定するに当たり、交付の対象とならない通常の開所時間内の人件費を含めていたことなどから、事業費が過大となっていた。
 このため国庫補助基本額が過大に算定されていて、適正な国庫補助基本額に基づいて交付金の交付額を算定すると計875,672,000円となり、交付金交付額計922,948,000円との差額計47,276,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 上記の事態について、一例を示すと次のとおりである。

<事例>

 静岡市は、市立A保育園において、7時から18時までの通常の開所時間に加えて、18時から19時までの延長保育を実施して、延長保育を行った常勤保育士2名と非常勤保育士1名の人件費の合計額等を基に、当該保育園の延長保育促進事業の事業費を4,100,400円と算定していた。
 しかし、実際は、上記の3名は18時から19時までの延長保育だけでなく通常の開所時間内の保育も行っていて、上記の事業費には、これに係る人件費を含めていた。
 したがって、上記3名の人件費を、延長保育に従事した時間数と通常の開所時間の保育に従事した時間数とで案分するなどして、適正な事業費を算出すると1,575,364円となり、2,525,036円が過大となっていた。
 そして、静岡市は、上記を含めて17か所の市立保育園について、このように延長保育促進事業の事業費の算定を誤っていたなどの事態が見受けられて、総事業費が21,041,920円過大となっており、これに係る交付金交付額9,367,000円が過大に交付されていた。
 このような事態が生じていたのは、事業主体において延長保育促進事業の事業費の算定についての理解が十分でなかったこと、また、厚生労働省において事業主体から提出された事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを県別・事業主体別に示すと次のとおりである。

県名 事業主体 国庫補助基本額 厚生労働大臣が認めた額 交付金 不当と認める交付対象事業費 適正な国庫補助基本額 適正な交付金 不当と認める交付金
千円 千円 千円 千円 千円 千円 千円
(179) 栃木県 那須塩原市 23,805 14,840 14,840 24,250 11,680 11,680 3,160
(180) 高根沢町 14,451 12,560 12,560 4,814 12,044 12,044 516
(181) 静岡県 静岡市 142,045 140,891 140,891 21,041 131,524 131,524 9,367
(182) 伊東市 15,754 15,754 15,754 4,519 13,494 13,494 2,260
(183) 御殿場市 36,417 33,370 33,370 14,174 29,329 29,329 4,041
(184) 和歌山県 橋本市 11,473 13,090 11,473 5,774 8,585 8,585 2,888
(185) 岡山県 岡山市 229,674 221,920 221,920 28,222 215,562 215,562 6,358
(186) 総社市 38,328 33,390 33,390 15,927 30,364 30,364 3,026
(187) 山口県 下関市 96,994 96,910 96,910 12,871 90,558 90,558 6,352
(188) 熊本県 熊本市 345,787 341,840 341,840 26,509 332,532 332,532 9,308
(179)−(188)の計 954,730 924,565 922,948 158,106 875,677 875,672 47,276