会計名 | 労働保険特別会計、年金特別会計(平成18年度以前は、厚生保険特別会計、国民年金特別会計) |
部局等 | 3公共職業安定所、28社会保険事務所等 |
不正行為期間 | 昭和38年5月〜平成20年2月 |
損害金の種類 | 雇用保険の失業等給付金、厚生年金保険の老齢年金等 |
損害額 | 45,647,216円 |
本院は、3公共職業安定所及び28社会保険事務所等における不正行為について、会計検査院法第27条の規定に基づく厚生労働大臣からの報告及び会計法(昭和22年法律第35号)第42条の規定に基づく同大臣からの通知を受けるとともに、1労働局及び12社会保険事務局等(注1)
において、合規性等の観点から不正行為の内容がどのようなものであるかなどに着眼して会計実地検査を行った。
上記の不正行為により損害が生じたものは29件、損害額で45,647,216円あり、いずれも不当と認められる。
このうち、平成20年9月末現在で損害の補てんが終わっていないものが2件、損害額で18,255,533円(うち補てん済みの額701,696円)、補てん状況が確認できないものが1件、損害額で669,695円及び損害額のすべてが補てん済みとなっているものが26件、損害額で26,721,988円となっている。
この29件を上記の補てん状況別に分けて示すと、次のとおりである。
部局等 | 不正行為期間 | 損害額 | |
年月 | 円 |
ア 平成20年9月末現在で損害の補てんが終わっていないもの
(684) | 水戸、土浦、常陸鹿嶋各公共職業安定所 | 平成12.9から19.12まで | 15,113,465 |
本件は、上記の各部局において、厚生労働事務官(平成13年1月5日以前は労働事務官)蔀某が、雇用保険給付調査官等として雇用保険の給付等の事務に従事中、雇用保険の適用給付関係業務を処理するシステムの端末装置を使用して、架空の雇用保険被保険者の失業等給付金の受給資格等決定データの入力を行うなどして、自ら開設した架空の被保険者名義の金融機関口座等に振り込ませて、失業等給付金計15,113,465円を領得したものである。
なお、本件損害額については、20年9月末までに177,362円が同人から返納されている。
(685) | 瀬戸社会保険事務所及び名古屋西社会保険事務所 | 平成3.2から20.2まで | 3,142,068 |
本件は、上記の両部局において、厚生労働事務官(平成13年1月5日以前は厚生事務官、12年3月31日以前は地方事務官)服部某が、年金専門官等として厚生年金保険の被保険者資格の確認等の事務に従事中、社会保険オンラインシステムの端末装置を使用して、自らの親族と同姓同名の者の年金記録(注2)
を親族の生年月日に改ざんした上、これを親族の年金記録に不正に統合する手続を行うことにより親族の年金を不正に増額して、親族名義の金融機関口座に振り込ませて、厚生年金保険の老齢年金等計3,142,068円を領得したものである。
なお、本件損害額については、20年9月末までに524,334円が同人の家族から返納されている。
アの計 | 2件 | 18,255,533 |
イ 平成20年9月末現在で補てん状況が確認できないもの
(686) | 仙台南社会保険事務所 | 昭和51.7から52.12まで | 669,695 |
本件は、上記の部局において、社会保険給付専門官が、政府管掌健康保険の被保険者資格の確認事務に従事中、虚偽の高額療養費等の請求書を作成するなどして、知人名義の金融機関口座に振り込ませて、高額療養費等計669,695円を領得したものである。
なお、本件損害額については、現存する関係書類からは補てん状況が確認できない。
ウ 平成20年9月末現在で損害額のすべてが補てん済みとなっているもの
部局等 | 不正行為者の職務 | 不正行為期間 | 損害金の種類 | 損害額 | 補てん済み | |
年月 | 円 | 年月 | ||||
(687) | 社会保険庁年金保険部 | 業務第二課厚生年金第三班支払第十二係長 | 昭和60.7から 61.2まで |
厚生年金保険の老齢年金等未支給年金 | 518,400 | 61.2 |
(688) | 社会保険庁年金保険部 | 業務第二課厚生年金第三班支払第九係員 | 60.9から 60.12まで |
厚生年金保険の遺族年金未支給年金 | 1,599,000 | 61.2 |
(689) | 社会保険業務センター | 業務管理課債権管理室債権管理第三係員 | 平成元.7から 元.11まで |
加給年金等返納金 | 294,332 | 2.6 |
(690) | 旭川社会保険事務所 | 業務第一課業務第二係員 | 昭和55.9から 56.9まで |
出産手当金等 | 2,790,584 | 56.9 |
(691) | 青森県生活福祉部国民年金課 | 国民年金課福祉年金第二係長 | 62.8から 62.11まで |
福祉年金 | 1,646,000 | 62.12 |
(692) | 平社会保険事務所 | 業務第一課適用係長 | 44.8から 57.2まで |
厚生年金保険の遺族年金等 | 5,012,229 | 57.3 |
(693) | 埼玉県民生部国民年金課 | 国民年金課記録係員 | 43.9から 44.8まで |
福祉年金 | 1,167,100 | 44.11 |
(694) | 日本橋社会保険事務所及び港社会保険事務所 | 社会保険調査官 | 49.3から 53.9まで |
出産手当金等 | 2,764,928 | 53.10 |
(695) | 京橋社会保険事務所 | 国民年金業務課長(収入官吏) | 平成8.10から 8.11まで |
国民年金保険料 | 648,500 | 8.12 |
(696) | 大森社会保険事務所 | 社会保険調査官 | 昭和60.11から 61.2まで |
厚生年金保険の老齢年金 | 2,221,680 | 62.4 |
(697) | 八王子社会保険事務所 | 徴収課徴収第二係長(分任収入官吏) | 60.9から 61.4まで |
厚生年金保険料等 | 541,903 | 61.5 |
(698) | 石川県厚生部国民年金課 | 国民年金課裁定係員 | 38.12から 39.2まで |
福祉年金 | 301,200 | 不明 |
(699) | 七尾社会保険事務所 | 徴収課員 | 56.7から 56.8まで |
出産手当金等 | 363,680 | 56.9 |
(700) | 福井社会保険事務所 | 徴収課員 | 平成13.9から 13.11まで |
健康保険任意継続保険料 | 739,341 | 14.3 |
(701) | 大月社会保険事務所 | 適用指導官(分任収入官吏) | 4.2から 4.4まで |
国民年金保険料 | 441,600 | 4.5 |
(702) | 岐阜社会保険事務所 | 徴収課収納係長(分任収入官吏) | 昭和47.1から 49.4まで |
返納金等 | 532,618 | 49.8 |
(703) | 沼津社会保険事務所 | 徴収課徴収係員 | 42.9から 43.4まで |
傷病手当金等 | 78,143 | 44.5 |
(704) | 三重県民生部国民年金課 | 国民年金課記録係長 | 38.5から 38.8まで |
福祉年金 | 178,000 | 38.12 |
(705) | 玉出社会保険事務所 | 健康保険給付第一課健康保険給付第一係員 | 平成4.7から 4.8まで |
分べん費 | 960,000 | 4.10 |
(706) | 奈良県民生部国民年金課 | 国民年金課裁定第一係員 | 昭和57.4から 57.11まで |
福祉年金 | 1,794,300 | 58.2 |
(707) | 鳥取社会保険事務局鳥取社会保険事務室 | 国民年金推進員(分任収入官吏) | 平成19.5 | 国民年金保険料 | 122,790 | 19.5 |
(708) | 下関社会保険事務所 | 国民年金調査官 | 12.9から 13.6まで |
老齢厚生年金 | 358,500 | 15.10 |
(709) | 福岡県民生部国民年金課 | 国民年金課福祉年金第一係員 | 昭和46.10から 46.11まで |
福祉年金 | 569,000 | 47.1 |
(710) | 唐津社会保険事務所 | 適用指導官(分任収入官吏) | 平成元.11から 2.9まで |
国民年金保険料 | 368,840 | 2.11 |
(711) | 大分社会保険事務所 | 業務第一課員 | 昭和46.2から 46.7まで |
出産手当金等 | 210,320 | 46.9 |
(712) | 石垣社会保険事務所 | 社会保険調査官(分任収入官吏) | 平成3年頃 | 厚生年金保険料等の延滞金 | 499,000 | 5.3 |
ウの計 | 26件 | 26,721,988 | ||||
ア、イ、ウの計 | 29件 | 45,647,216 |
(なお、「部局等」については、不正行為当時の部局等名を表示している。)
なお、不正行為の発覚後、相当期間が経過しているにもかかわらず、社会保険庁が本院に対して、会計検査院法に基づく厚生労働大臣(13年1月5日以前は厚生大臣)報告等を行っていないものが見受けられたことから、平成18年度決算検査報告においてその旨を記述したところ、同庁は、19年10月から20年8月までの間に、前記のとおり、遅滞していた26件を含めた28件の報告等を行った。
上記28件の中には、不正行為が年金受給者等の年金記録に影響を及ぼしているものがあるが、いずれも年金記録の訂正、回復の措置が執られている。
本院としては、社会保険庁における保険料の徴収及び年金の支給が適正に行われているか検査するとともに、特に年金受給者等の年金記録に影響を及ぼすおそれのある不正行為の再発防止策の実施状況等について、引き続き検査していくこととする。
(注1) | 1労働局及び12社会保険事務局等 茨城労働局、社会保険庁、北海道、青森、宮城、福島、埼玉、東京、石川、愛知、大阪、奈良、佐賀各社会保険事務局
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(注2) | 年金記録 社会保険庁における国民年金、厚生年金保険等の年金受給者等の氏名、生年月日、性別、被保険者期間、保険料の納付等に関する記録
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