会計名及び科目 | 年金特別会計 | (業務勘定) | (款)雑収入 |
(項)雑収入 | |||
平成18年度は | |||
厚生保険特別会計(業務勘定) | (款)雑収入 | ||
(項)雑収入 | |||
船員保険特別会計 | (款)雑収入 | ||
(項)雑収入 | |||
部局等 | 社会保険庁、34地方社会保険事務局 | ||
国有財産の使用許可等の概要 | 患者等の利用者の利便に資する食堂等の施設等の運営を受託している民間業者等に対して、国有財産である病院の建物等を使用させてその対価を徴収するもの | ||
徴収できた使用料 | 1億4555万円 | (平成18、19両年度) |
社会保険庁は、健康保険法(大正11年法律第70号)、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)及び船員保険法(昭和14年法律第73号)に基づき、これら各種社会保険の被保険者等から徴収した保険料を財源として、被保険者等の健康の保持、福祉の増進を図るため、全国において53社会保険病院、10厚生年金病院及び3船員保険病院(以下、上記3形態の病院を合わせて「社会保険病院等」という。)、計66社会保険病院等を設置している。
社会保険庁は、これらの経営を、社会保険病院については社団法人全国社会保険協会連合会(以下「全社連」という。)等5団体(注1)
、厚生年金病院については財団法人厚生年金事業振興団等2団体(注2)
及び船員保険病院については財団法人船員保険会(以下、これらを合わせて「経営受託団体」という。)にそれぞれ委託している。そして、国有財産のうち行政財産である土地、建物等を利用させて、病院の設置者である国が行うべき事務、事業である外来患者、入院患者等への医療の提供等を行わせるとともに、その一環として患者給食用の厨(ちゅう)房を設置して入院患者に食事を提供したり、療養上必要な寝具類を提供したりするなどの業務を実施させている。
(注1) | 5団体 全社連、社団法人地域医療振興協会、岡谷市、公立紀南病院組合、財団法人平成紫川会
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(注2) | 2団体 財団法人厚生年金事業振興団及び全社連
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社会保険庁は、経営受託団体との経営委託契約書において、「運営の原則」等として、経営受託団体は、各種社会保険の被保険者、年金受給者等を優先して診療又は施設療養等を行うこと、また、社会保険庁長官又は地方社会保険事務局長(以下「社会保険事務局長等」という。)は、病院の帳簿、書類を検査し、又は病院の経営の状況について実地に監査を行うことができることなどを定めている。
また、社会保険庁は、全社連等4団体(注3)
と締結している56社会保険病院等に係る経営委託契約書において、全社連等は、上記の「運営の原則」等の達成を妨げない限度において、委託した事業以外の事業(以下「委託外事業」という。)を行うことができること及びその場合にはあらかじめ社会保険庁に届け出ることを定めているが、どのような事業が委託外事業となるかについては具体的に定めていない。残余の10社会保険病院等に係る経営委託契約書においては、委託外事業についての規定が設けられていない。
社会保険病院等の土地、建物等は、前記のとおり行政財産であり、国有財産法(昭和23年法律第73号)において、その用途又は目的を妨げない限度において、その使用又は収益を許可する(以下「使用許可」という。)ことができるとされており、その場合、財政法(昭和22年法律第34号)により、原則として、適正な対価として使用料を徴収することとなる。また、使用許可の基準等は、「国の庁舎等の使用又は収益を許可する場合の取扱いの基準について」(昭和33年蔵管第1号大蔵省管財局長通達。平成19年1月以降は「行政財産を使用又は収益させる場合の取扱いの基準について」(平成19年1月財理第243号)。以下「蔵管1号」という。)に示されており、使用許可ができるのは、職員、来庁者や国の施設の利用者等の利便に資するための食堂、売店、理髪店、現金自動預払機(以下「ATM」という。)等の施設等とされている。
そして、厚生労働省所管国有財産取扱規程(平成13年厚生労働省訓第29号)により、厚生労働省の所管する国有財産の管理等の事務を分掌する社会保険事務局長等は、その所属の国有財産の維持、保存及び運用について、常に状況を把握すべきこととされている。また、社会保険庁は、「施設に係る国有財産及び国有物品の取扱いについて」(昭和59年庁保発第36号)により、施設の経営受託団体が施設の一部を第三者に使用させる必要が生じたときは、当該施設の施設長は事前に社会保険事務局長等にその旨を申し出なければならず、社会保険事務局長等は、国有財産の管理上支障がないと認めて、当該第三者に国有財産の使用許可を行う必要がある場合は、当該第三者に使用許可申請書を提出するよう施設長を経由して指示することとしている。
本院は、合規性等の観点から、行政財産である病院の建物等を使用させるに当たり適正な使用料を徴収しているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、18、19両年度に経営受託団体が第三者に病院の建物等を使用させている66社会保険病院等を対象として、社会保険庁、21社会保険事務局及び21社会保険病院等において、国有財産使用許可書等の書類により会計実地検査を行うとともに、残余の16社会保険事務局及び45社会保険病院等については、書類の提出を受けるなどして検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
ア 民間業者等に業務委託して使用させている施設等について使用料を徴収していない事態
経営受託団体は、病院を利用する患者等の利便に資するために、民間業者等に委託するなどして外来患者等用食堂(以下「食堂」という。)、売店、飲料等自動販売機(以下「自販機」という。)、理髪店、ATM、テレビ等を設置するための床頭台(注4)
(以下、単に「床頭台」という。また、これらを合わせて以下「食堂等6施設等」という。)等を設置して、建物等の一部を使用させていた。そして、食堂は33病院のうち4病院、売店は59病院のうち3病院、自販機は60病院のうち9病院、理髪店は22病院のうち4病院、ATMは40病院のうち2病院、床頭台は50病院のうち45病院において、食堂等6施設等の運営業務を第三者に委託していたが、これらの病院を管理する34社会保険事務局等は、これらの施設等の運営に必要な建物等について使用許可を行っていなかった。
しかし、食堂等6施設等の運営は、本来的な委託内容である医療業務等には含まれない委託外事業であるから、使用許可を行った上で適正な対価を徴収する必要があると認められた。
上記について事例を示すと次のとおりである。
社会保険庁からA病院の経営を委託されている全社連は、病院内の売店、自販機、ATM及び床頭台の各施設等(面積計67m2 )を民間業者に業務委託して運営させている。しかし、同病院に係る国有財産の管理を行っているB社会保険事務局は、これらの施設等について使用許可を行っておらず、使用料を徴収していなかった。そして、蔵管1号により適正な使用料の額を算定すると、平成18、19両年度ともに91万余円になると認められた。
イ 食堂において厨房部分のみを使用料徴収の対象としている事態
社会保険事務局等は、食堂を有する33病院のうち18年度13病院、19年度12病院における食堂の運営に際して、厨房部分のみを使用許可の対象として、利用者が飲食する部分を使用許可の対象に含めておらず、これに係る使用料を徴収していなかった。
しかし、一般に、食堂の運営は厨房部分と利用者が飲食する部分とを合わせた全体の面積を使用して実施されるものであり、使用許可は全体の面積を対象として行う必要があると認められた。
上記について事例を示すと次のとおりである。
社会保険庁からC病院の経営を委託されている全社連は、病院内の食堂を民間業者に業務委託して運営させている。しかし、同病院に係る国有財産の管理を行っているD社会保険事務局は、当該施設を運営させるに当たり、厨房部分(67.7m2
)についてのみ使用許可を行い、利用者が飲食する部分(140.0m2
)については使用許可の対象としていなかった。そして、利用者が飲食する部分も含めて適切に使用許可を行っていれば、平成18年度268万余円、19年度319万余円の使用料を徴収できたと認められた。
社会保険病院等に係る国有財産の管理に当たっては、社会保険事務局長等は、病院施設の運営状況について常に注意を払い、使用許可がないのに経営受託団体が施設の一部を第三者に使用させている状況が見受けられる場合には、経営受託団体の各施設長を経由して当該第三者に使用許可申請書の提出を促すことが求められる。
したがって、前記のように、病院内において食堂等6施設等を第三者に委託して運営させているにもかかわらず、当該施設等について使用許可を行っていなかったり、食堂の運営に際して厨房部分のみを使用許可の対象としたりしていて、適正な使用料を徴収していない事態は、国有財産の管理を行う上で適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記のア及びイのとおり使用許可を行っていない施設等について適切に使用許可を行い、蔵管1号に基づき使用料を算定していれば、18年度7210万余円、19年度7345万余円、計1億4555万余円の使用料を徴収できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、経営受託団体の各施設長が、食堂等6施設等を設置するに当たり社会保険事務局長等に対して申出を行わなかったことにもよるが、社会保険庁が、社会保険病院等の経営を委託する場合に、病院内における施設等の運営についてどのような場合に使用許可が必要となるか具体的に定めて社会保険事務局等に周知していなかったこと、社会保険事務局等において、監査の際等に、社会保険病院等の施設等の運営状況等について十分に把握していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、社会保険庁は、20年9月に、各社会保険事務局長に対して通知を発して、社会保険事務局等に、使用許可のないまま食堂等6施設等を運営していた民間業者等に対してそ及して使用料相当額の徴収を行わせることとするとともに、次のような処置を講じた。
ア 各社会保険事務局等が使用許可を行う施設等を具体的に定めて、各社会保険事務局長等にその内容を周知した。
イ 社会保険事務局等が定期的に現地確認を行いその運営状況を適切に把握するために、監査を厳格に行うよう指導した。
なお、3船員保険病院を除く53社会保険病院及び10厚生年金病院の施設は、20年10月1日に、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(以下「機構」という。)に出資されて、機構が引き続き経営受託団体に委託することにより運営されているが、機構においても、社会保険庁により今回執られた措置と同様に、資産の利活用を図り施設等に係る使用料を適切に徴収する必要があることから、社会保険庁は、出資に先立って、同年9月に機構に対して、病院財産の使用許可の取扱いを適正に行うよう通知した。