会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)林野庁 | (項)治山事業費 |
部局等 | 林野庁 | ||
補助の根拠 | 森林法(昭和26年法律第249号) | ||
補助事業者 (事業主体) |
岩手県 | ||
補助事業 | 地域防災対策総合治山 | ||
補助事業の概要 | 既設の谷止工の貯砂容量を増大させるとともに、それにより発生した土砂を処理するために、平成19年度に排土工及び盛土工を施工するもの | ||
事業費 | 18,501,000円 | ||
上記に対する国庫補助金交付額 | 10,175,550円 | ||
不当と認める事業費 | 4,828,126円 | ||
不当と認める国庫補助金相当額 | 2,655,469円 |
この補助事業は、岩手県が、総合的な山地災害危険地対策を緊急に実施することにより、山崩れ、土石流等の山地災害を未然に防止することを目的とした地域防災対策総合治山事業の一環として、八幡平市松尾寄木地内において、平成19年度に、土石流防止施設として築造された既設の谷止工の貯砂容量を増大させるとともに、それにより発生した土砂(火山灰質の粘性土)を処理するために、排土工及び盛土工を工事費18,501,000円(国庫補助金10,175,550円)で実施したものである。
このうち、排土工は、既設の谷止工の貯砂容量を増大させるために、上流側の両岸等を掘削して、それにより発生した土砂を搬出するものであり、また、盛土工は、本件現場が広大な森林公園内に位置していて近隣に土砂の処理場を求めることが困難であることから現場内で処理することとして、当該搬出土砂2,362m3
のうち1,916m3
を、谷止工に隣接する工事用道路敷跡に台形の断面形状で盛土(延長96m、高さ約2m〜3m)するものである(参考図1
参照)。
同県は、排土工における切土法(のり)面の勾(こう)配(以下「切土勾配」という。)及び盛土工における盛土法面の勾配(以下「盛土勾配」という。)について、次のとおり設計して、これにより施工していた。
ア 排土工については、「道路土工のり面工・斜面安定工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)に基づいて切土勾配を1:1.2とする。
イ 盛土工については、工事用道路敷跡の幅が狭い一方で、森林公園内の景観等に配慮して盛土高を3m程度に抑える必要があることから、盛土量を確保するために、指針によることなく、盛土勾配を1:1.0とする(参考図2
参照)。
本院は、岩手県において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面、設計計算書等の書類により検査したところ、本件盛土工の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、指針によると、盛土材が火山灰質の粘性土で、かつ、盛土高が5m以下である場合には、盛土法面の標準勾配は1:1.8から1:2.0の範囲とすることとされているが、同県では、本件盛土工において、前記のとおり、指針によることなく、現場条件のみを考慮して盛土勾配を1:1.0としていた。
このため、本件盛土勾配は、標準勾配の範囲のうち最も急勾配の1:1.8と比べても著しく急な勾配となっており、法面の安定が確保されておらず、降雨等により盛土法面が崩壊するおそれがあると認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、盛土工における法面勾配の設計の検討が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件盛土工(工事費相当額4,828,126円)は、設計が適切でなかったため、降雨等により盛土が崩壊して、既設の谷止工上流側や森林公園内に土砂が流出するおそれがあり、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額2,655,469円が不当と認められる。