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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 補助金

食生活健全化・食料消費改善対策事業等の実施に当たり、仕入税額控除した消費税額に係る補助金等を返還していないもの


(720)−(723) 食生活健全化・食料消費改善対策事業等の実施に当たり、仕入税額控除した消費税額に係る補助金等を返還していないもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)総合食料対策費
      (項)牛肉等関税財源畜産振興費
      (項)農村振興費
部局等 農林水産本省、2農政局
補助等の根拠 予算補助
補助事業者等
(1)
 社団法人農山漁村文化協会(事業主体)

 
(2)
 協同組合エイケイアール食品小売共栄会(事業主体)

 
(3)
 福島県双葉郡富岡町

 
(4)
 群馬県

間接補助事業者等
(3)
 株式会社タカヤマ(事業主体)

 
(4)
 群馬県利根郡昭和村、堆肥生産組合エコオーガニック(事業主体)

補助事業等
(1)
 食生活健全化・食料消費改善対策

 
(2)
 食品流通高度化緊急プロジェクト

 
(3)
 バイオマス利活用施設整備

 
(4)
 家畜排せつ物利活用施設整備

補助事業等の概要
(1)
 地域の食を通じた食育推進イベント等を開催したり、食育推進の実証研究への支援等を行ったりするもの

 
(2)
 食品流通の高度化・効率化を緊急かつ加速的に促進するために食品流通モデルの開発等を行うもの

 
(3)
 食品廃棄物等のバイオマスを利活用して堆(たい)肥を製造するために堆肥化施設等の整備を行うもの

 
(4)
 家畜排せつ物の野積みなどを解消し、畜産農家と耕種農家の連携により、良質堆肥を製造して地力の増進や農作物の安全性向上を図るために堆肥施設等を整備するもの

事業費 1,168,182,773円 (平成13年度〜18年度)
上記に対する国庫補助金等交付額 672,479,000円  
不当と認める事業費 50,145,854円 (平成13年度〜18年度)
不当と認める国庫補助金等交付額 27,908,542円 (平成13年度〜18年度)

1 補助事業等の概要

(1) 補助事業等の概要

 これらの補助事業及び交付金事業(以下「補助事業等」という。)は、平成13年度から18年度までに、次のとおり施設等を整備するなどしたものである。

補助事業等名 補助事業等の概要
(1) 食生活健全化・食料消費改善対策(平成13年度〜17年度補助事業) 地域の食を通じた食育推進イベント等を開催したり、食育推進の実証研究への支援等を行ったりするもの
(2) 食品流通高度化緊急プロジェクト(15年度補助事業) 食品流通の高度化・効率化を緊急かつ加速的に促進するために食品流通モデルの開発等を行うもの
(3) バイオマス利活用施設整備(18年度交付金事業) 食品廃棄物等のバイオマスを利活用して堆肥を製造するために堆肥化施設等の整備を行うもの
(4) 家畜排せつ物利活用施設整備(16年度補助事業、17年度交付金事業) 家畜排せつ物の野積みなどを解消し、畜産農家と耕種農家の連携により、良質堆肥を製造して地力の増進や農作物の安全性向上を図るために堆肥施設等を整備するもの

 そして、事業主体は、これらの補助事業等を消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)を含めて事業費計1,168,182,773円(国庫補助金等計672,479,000円)で実施している。

(2) 補助事業等における消費税の取扱い

 消費税は、事業者が課税対象となる取引を行った場合に納税義務が生ずるが、生産、流通の各段階で重ねて課税されないように、確定申告において、課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除(以下、この控除を「仕入税額控除」という。)する仕組みが採られている。
 そして、補助事業等の事業主体が補助対象の施設等を取得することなども課税仕入れに該当して、上記の仕組みにより確定申告の際に補助事業等で取得した施設等に係る消費税額を仕入税額控除した場合には、事業主体は当該施設等に係る消費税額を実質的に負担していないことになる。
 また、事業主体が社団法人等の公益法人等である場合は、消費税の確定申告において、補助金収入など資産の譲渡等の対価以外の収入(以下「特定収入」という。)の額を特定収入とそれ以外の収入の合計額で除した割合(以下「特定収入割合」という。)が100分の5以下の場合、特定収入により賄われる消費税額は、課税仕入れに係る消費税額として仕入税額控除できることとなっている。そして、この場合、上記と同様に、事業主体は当該消費税額を実質的に負担していないことになる。
 さらに、事業主体が民法(明治29年法律第89号)上の組合契約による組合(以下「民法上の組合」という。)である場合は、民法上の組合を構成する事業者にその持分等に応じて納税義務が生ずることとなることから、事業者が持分等に応じた課税仕入れに係る消費税額を仕入税額控除した場合、上記と同様に、事業者は当該消費税額を実質的に負担していないことになり、事業主体である民法上の組合も同様に負担していないことになる。
 このため、補助事業等の事業主体は、「総合食料対策事業関係補助金交付要綱」(平成12年12食流第324号農林水産事務次官依命通知。16年4月1日以降は「総合食料対策事業関係補助金等交付要綱」(平成16年15消安第7340号))等により、実績報告書の提出後に消費税の申告をして仕入税額控除した消費税額に係る補助金等の額が確定したときには、その金額を速やかに報告するとともに、当該金額を返還しなければならないこととなっている。

2 検査の結果

 本院は、農林水産省、1県、1町、1村及び4事業主体において、合規性等の観点から、事業の経理等は適正に実施されているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、前記の補助事業等について、実績報告書等の書類により検査したところ、上記の4事業主体は、消費税の確定申告を行い、補助事業等に係る消費税額計50,145,854円を仕入税額控除していた。
 しかし、4事業主体は、上記の仕入税額控除した消費税額計50,145,854円に係る補助金等の額計27,908,542円を報告、返還しておらず、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業主体において、補助事業等における消費税の取扱いについての理解が十分でなかったこと、農林水産省、県、町及び村において、本件補助事業等の消費税の取扱いについての指導及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを、補助事業者等別、間接補助事業者等別に示すと次のとおりである。

  補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等
         
(720) 社団法人農山漁村文化協会
(事業主体)
食生活健全化・食料消費改善対策 13〜17 401,138,000, 349,858,000 14,935,594 13,168,728

 上記の協会は、本件補助事業を消費税を含めて事業費計401,138,000円(国庫補助金計349,858,000円)で実施して、平成13年度から17年度までの各年度とも農林水産本省に実績報告書を提出して、これにより国庫補助対象事業費の精算を受けていた。
 そして、同協会は14年5月から18年5月までに各事業年度の消費税の確定申告を行い、特定収入割合がいずれも100分の5以下であることから、本件補助事業に係る消費税額計14,935,594円を仕入税額控除していた。
 しかし、同協会は、上記の仕入税額控除した消費税額計14,935,594円に係る補助金の額計13,168,728円を報告、返還していなかった。

(721) 協同組合エイケイアール食品小売共栄会
(事業主体)
食品流通高度化緊急プロジェクト 15 50,417,921 50,000,000 2,400,853 2,380,952

 上記の組合は、本件補助事業を消費税を含めて事業費50,417,921円(国庫補助金50,000,000円)で実施して、平成16年2月に農林水産本省に実績報告書を提出して、これにより国庫補助対象事業費の精算を受けていた。
 そして、同組合は16年5月に消費税の確定申告を行い、本件補助事業に係る消費税額2,400,853円を仕入税額控除していた。
 しかし、同組合は、上記の仕入税額控除した消費税額2,400,853円に係る補助金の額2,380,952円を報告、返還していなかった。

(722) 福島県双葉郡富岡町 株式会社タカヤマ
(事業主体)
バイオマス利活用施設整備 18 483,304,352 155,960,000 22,809,873 7,359,174

 上記の会社は、本件交付金事業を消費税を含めて事業費483,304,352円(交付金155,960,000円)で実施して、平成18年12月及び19年3月に富岡町に実績報告書を提出して、これにより交付対象事業費の精算を受けていた。
 そして、同会社は19年11月に消費税の確定申告を行い、本件交付金事業に係る消費税額22,809,873円を仕入税額控除していた。
 しかし、同会社は、上記の仕入税額控除した消費税額22,809,873円に係る交付金の額7,359,174円を報告、返還していなかった。

(723) 群馬県 利根郡昭和村 家畜排せつ物利活用施設整備 16、17 233,322,500 116,661,000 9,999,534 4,999,688
    堆肥生産組合エコオーガニック
(事業主体)
           

 上記の組合は、本件補助事業等を消費税を含めて事業費計233,322,500円(国庫補助金等計116,661,000円)で実施して、平成16年11月及び18年2月に昭和村に実績報告書を提出して、これにより国庫補助対象事業費等の精算を受けていた。
 そして、同組合は民法上の組合に該当することから、同組合を構成する事業者3者のうち、簡易課税制度(注) の適用を選択した1者を除いた2者は、それぞれ17年5月及び18年5月、18年2月及び19年2月に消費税の確定申告を行い、本件補助事業等に係る消費税額計9,999,534円を仕入税額控除していた。
 しかし、同組合は、上記の仕入税額控除した消費税額計9,999,534円に係る補助金等の額計4,999,688円を報告、返還していなかった。

 簡易課税制度  実際の課税仕入れに係る消費税額にかかわらず、課税売上高に対する消費税額に業種ごとに定められた率を乗じて得られた金額を課税仕入れに係る消費税額とみなして納付税額を計算する方法

(720)−(723)の計     1,168,182,773 672,479,000 50,145,854 27,908,542