ページトップ
  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 補助金

農業用施設災害復旧事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、ブロック積擁壁の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの


(724) 農業用施設災害復旧事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、ブロック積擁壁の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業施設災害復旧事業費
部局等 北陸農政局    
補助の根拠 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和37年法律第150号)
補助事業者 新潟県
間接補助事業者
(事業主体)
新潟県岩船郡朝日村(平成20年4月1日以降は村上市)
補助事業 農業用施設災害復旧
補助事業の概要 被災した農業用排水路の機能回復を図るために、平成17、18両年度に擁壁工等を施工するもの
事業費 5,975,550円    
上記に対する国庫補助金交付額 5,850,063円    
不当と認める事業費 5,975,550円    
不当と認める国庫補助金交付額 5,850,063円    

1 補助事業の概要

 この補助事業は、新潟県岩船郡朝日村(平成20年4月1日以降は村上市)が、農業用施設災害復旧事業の一環として、同村大須戸地区において、豪雨により被災した農業用排水路の機能回復を図るために、17、18両年度に、擁壁工及び土工を工事費5,975,550円(国庫補助金5,850,063円)で実施したものである。
 このうち擁壁工は、農業用排水路の護岸4か所の安定を図るために、ブロック積擁壁(高さ2.3m〜2.7m、延長計49.0m。)を築造するものである。
 そして、本件擁壁については、擁壁背後の地面が水平であるとして、「災害復旧事業の復旧工法」(農林水産省農村振興局防災課監修)に示されたブロック積工法選定表等に基づき安全性について検討を行ったところ、擁壁の高さが安全とされる範囲に収まっていたことなどから、設計上安全であるとして、これにより施工していた。

2 検査の結果

 本院は、新潟県村上市において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面等の書類により検査したところ、擁壁の設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、実際の擁壁背後の地形は、擁壁が築造された全区間にわたり、擁壁の天端から傾斜をつけて高さ0.8mから2.0m盛土していた(参考図 参照)。そして、このような場合には、擁壁に作用する土圧が擁壁背後の地面が水平である場合より増加することとなる。
 そこで、実際の地形に基づき擁壁背後を傾斜地として改めて安定計算等の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどしたところ、滑動に対する安定について、土圧が増加することにより安全率が全区間にわたり0.37から0.59となり、許容値である1.5を大幅に下回っていて、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
 このような事態が生じていたのは、朝日村において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったこと、また、新潟県において、同村に対する指導及び監督が十分でなかったことなどによると認められる。
 したがって、本件擁壁等(工事費5,975,550円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金5,850,063円が不当と認められる。

(参考図)

ブロック積擁壁概念図