会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)林野庁 | (項)山林施設災害復旧事業費 |
部局等 | 林野庁 | ||
補助の根拠 | 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)等5 | ||
補助事業者 | 三重県 | ||
間接補助事業者 (事業主体) |
三重県多気郡大台町(平成18年1月9日以前は多気郡宮川村) | ||
補助事業 | 林道施設災害復旧 | ||
補助事業の概要 | 台風で被災した林道を復旧するために、平成16、17両年度に排水施設工等を施工するもの | ||
事業費 | 11,862,900円 | ||
上記に対する国庫補助金交付額 | 11,542,601円 | ||
不当と認める事業費 | 2,098,097円 | ||
不当と認める国庫補助金相当額 | 2,041,448円 |
この補助事業は、三重県多気郡大台町(平成18年1月9日以前は多気郡宮川村)が、林道施設災害復旧事業の一環として、同町栗谷地内において、台風で被災した林道中木屋線を復旧するために、16、17両年度に、排水施設工、盛土工、擁壁工等を工事費11,862,900円(国庫補助金11,542,601円)で実施したものである。
このうち排水施設工は、台風により流出した林道の路体を盛土で再構築する際に、被災前にあった排水施設の効用を回復するために、林道の山側に集水路及び集水桝(ます)を設置するとともに、林道の下部に管渠(きよ)(管内径900mmの高密度ポリエチレン管、延長12m)を敷設して、これを上記の集水桝に接続することによって、管渠を通して林道の山側から谷側へ流水等を排水するものである(参考図1
参照)。
そして、同町は、排水施設工を次のとおり設計して、これにより施工していた。
ア 被災した林道を一時的に通行できるよう、林道敷地の所有者が林道の山側に設置した迂(う)回路の下部に仮設の排水管として敷設していたパイプカルバート(以下「仮設カルバート」という。)を活用することとして、仮設カルバートと管渠とを集水路及び集水桝を介して接続することとする。
イ 集水桝設置予定箇所の山側からの湧(ゆう)水が確認されたことから、集水路を鋼製のかごに石を詰めたふとんかごで築造することにより、仮設カルバートからの流水を集水路を介して集水桝に導くとともに、山側からの湧水もふとんかごの網目により集水路に集めて集水桝へと流下させる構造とする。
ウ 集水桝本体の構造は、路側擁壁(高さ2.5m、幅2.4m、天端幅0.4m)、その山側の左右に側面壁(高さ2.5m、幅1.8m、厚さ0.3m)をそれぞれ設置して、底面をコンクリート張り(厚さ0.2m)にする。また、集水路との境界面は、集水路で流水等を集める際の障害となるため壁を設けずに開口部とする(参考図2
参照)。
エ 集水桝から管渠への接続に当たっては、林野庁制定の「林道技術基準」等に基づき、土砂の沈殿等を想定して管渠接続部(呑(のみ)口)を集水桝底面より0.7m上部に設置する。
本院は、三重県及び多気郡大台町において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について設計図書等の書類及び現地の状況を検査したところ、排水施設工の設計が、次のとおり適切でなかった。
すなわち、「林道技術基準」等が想定する集水桝は、コンクリートで底面及び壁面を囲う直方体の形状を前提に流水等を滞留させて、管渠接続部の水位にまで上昇させて流下させるものである。
しかし、前記のとおり、本件集水桝は、集水路との境界面が開口部となっていて、直方体の形状となっていないこと、流水等が途中で集水路のふとんかごの網目から漏水することから、滞留すべき流水等が管渠接続部の水位にまで達することが難しい構造となっていた。
また、ふとんかごは路体に接しているため、ふとんかごから漏水した流水等が路体に浸透しやすい構造となっていた。
そこで、現地において流水等の路体谷側への排水状況を確認したところ、流水等は管渠から排水されることなく集水路のふとんかごの網目から路体内部に浸透して、谷側の擁壁上部の路体部等から流出していて、路体の一部が水分を多く含んだ軟弱な状態となっていた。
このような事態が生じていたのは、同町において、排水施設工の設計に当たり、集水桝の構造に対する理解が十分でなく、流水等を安全に流下させることについての検討が十分でなかったこと、また、三重県において、同町に対する指導及び監督が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件排水施設工は設計が適切でなかったため、流水等が林道の路体内部へ浸透することにより、路体の土砂が流出するなど、林道としての機能を損なうおそれがあり、排水施設工、盛土工等(これらの工事費相当額2,098,097円)は工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額2,041,448円が不当と認められる。