会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)農林水産技術会議 | (項)農林水産技術振興費 |
部局等 | 農林水産本省 | ||
補助の根拠 | 予算補助 | ||
補助事業者 (事業主体) |
高梨乳業株式会社 | ||
補助事業 | 地域食料産業等再生のための研究開発等支援 | ||
補助事業の概要 | 食品関連の産業界が直面している緊急的な諸問題を解決するために、平成17年度に、民間企業等の研究機関が行う短期集中的な研究開発等を支援するもの | ||
事業費 | 29,341,951円 | ||
上記に対する国庫補助金交付額 | 14,220,000円 | ||
不当と認める事業費 | 3,504,858円 | ||
不当と認める国庫補助金相当額 | 1,713,556円 |
この補助事業は、高梨乳業株式会社(横浜市)が、地域食料産業等再生のための研究開発等支援事業として、平成17年度に、スギ花粉症等のアレルギー体質を改善することを目的とした商品性の高い次世代機能性食品(注1)
を、複合乳酸菌発酵(注2)
により製造するための技術の開発を行ったものである。
同会社は、本件補助事業を消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)を含めて、事業費29,341,951円(国庫補助対象事業費同額、国庫補助金14,220,000円)で実施したとして、18年4月に農林水産本省に実績報告書を提出して、これにより国庫補助対象事業費の精算を受けていた。
「地域食料産業等再生のための研究開発等支援事業費補助金交付要綱」(平成17年16農会第1494号農林水産事務次官依命通知)等によると、補助事業の事業主体は、実績報告書の提出後に、消費税の申告をして仕入税額控除(注3) した消費税額に係る補助金の額が確定したときには、その金額を速やかに農林水産本省に報告するとともに、当該金額を返還しなければならないこととなっている。
本院は、農林水産本省及び高梨乳業株式会社において、合規性等の観点から、事業の経理等は適正に実施されているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件補助事業について、実績報告書等の書類により検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア 農林水産省は、本件補助事業において、事業主体が事業の一部を大学、独立行政法人等に委託して行なわせる場合には、補助事業に係る経費を明確にするために、精算条項を明記した契約書により委託契約を締結するよう事業主体に指導しているが、同会社は、精算条項のない契約書により委託契約を締結していた。このため、委託先の独立行政法人は、委託契約に係る経費について精算の必要がないと判断して、他の経費との区分経理を行っていなかった。その結果、当該独立行政法人へ委託費として支払った2,000,000円(消費税込み)について、一部の経費(採血に伴う謝礼金15,000円)を除いた1,985,000円が本件補助事業のために使用されていたかどうか確認できない状況となっていたにもかかわらず、同会社は、この経費を補助対象事業費に含めていた。
また、同会社は、別の委託先から返金を受けており実際には負担していなかった経費や、研究員が本件補助事業に従事していない時間に係る人件費を補助対象事業費に含めていた。
これらのため、補助対象事業費が、消費税相当額を除き2,393,700円過大に精算されていた。
イ 同会社は、17年11月及び18年11月に消費税の確定申告を行い、本件補助事業に係る消費税額1,111,158円を仕入税額控除していたが、これに係る補助金の額554,666円を報告、返還していなかった。 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 同会社において、補助事業の適正な実施に対する認識が欠けていたこと及び補助事業における消費税の取扱いについての理解が十分でなかったこと
イ 農林水産本省において、本件補助事業の審査、確認及び同会社に対する指導が十分でなかったこと
したがって、適正な国庫補助対象事業費は、前記の事業費29,341,951円から仕入税額控除した消費税額1,111,158円及び過大に精算された額2,393,700円を除いた25,837,093円となり、前記の国庫補助対象事業費29,341,951円との差額3,504,858円が過大に精算されるなどしていて、これに係る国庫補助金相当額1,713,556円が不当と認められる。