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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

地域バイオマス利活用交付金に係る施設整備事業等において、事業実施の確実性に係る審査等の充実を図るよう改善させたもの


(1) 地域バイオマス利活用交付金に係る施設整備事業等において、事業実施の確実性に係る審査等の充実を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項) 農村振興費
部局等 農林水産本省、3農政局
補助等の根拠 予算補助
補助事業者等 県6、町1
間接補助事業者等 市3
間接補助事業者等 (事業主体) 市3、組合2、会社3、計8事業主体
補助事業等 バイオマス利活用フロンティア整備、バイオマスの環づくり交付金、地域バイオマス利活用交付金
補助事業等の概要 地域における効果的なバイオマスの利活用を図るために必要なバイオマス変換施設等の一体的な整備等
意向調査等が十分でないため、バイオマス資源の受入量が確保できず、運営初年度の利用率が低調となっていた施設 8施設(平成15年度〜18年度)
上記の施設に係る事業費
33億7306万余円
 

上記に対する国庫補助金等交付額
15億1719万円
 

1 事業の概要

 農林水産省は、平成14年12月に「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定されたことを踏まえて、環境と調和のとれた循環型社会の構築を図るために、15、16両年度に、バイオマス利活用フロンティア整備事業実施要綱(平成15年14農振第2414号農林水産事務次官依命通知)等に基づきバイオマス利活用フロンティア整備事業を、また、17、18両年度に、バイオマスの環づくり交付金実施要綱(平成17年16環第299号農林水産事務次官依命通知)等に基づきバイオマスの環づくり交付金に係る施設整備事業を実施している。そして、18年3月に新たな「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定されたことを踏まえて、19年度から、地域バイオマス利活用交付金実施要綱(平成19年18環第275号農林水産事務次官依命通知)等に基づき地域バイオマス利活用交付金に係る施設整備事業を実施している(以下、バイオマス利活用フロンティア整備事業、バイオマスの環づくり交付金に係る施設整備事業及び地域バイオマス利活用交付金に係る施設整備事業を総称して「バイオマス施設整備事業」という。)。
 バイオマス施設整備事業は、地域における効果的なバイオマス(注1) の利活用を図るために必要なバイオマス変換施設、バイオマス発生施設・利用施設等の一体的な整備、新技術等を活用したバイオマス変換施設のモデル的な整備等を行う事業である。そして、都道府県、市町村、農林漁業者の組織する団体、民間事業者等が事業実施主体となって事業を行うこととされている。また、都道府県又は市町村は計画主体として、事業実施主体に対して事業実施計画の作成の指導及び審査、事業実施のために必要な指導、調整等を行うこととされている。
 事業実施に当たり、都道府県及び市町村を除く事業実施主体は、事業実施計画を作成して、計画主体となる市町村の長に提出するなどとされている。そして、市町村長は、事業実施主体から提出された事業実施計画について、前記のバイオマス施設整備事業に係る実施要綱等(以下「事業実施要綱等」という。)に基づき、採択要件を満たしているかなどの点について審査を行った上で、指導及び調整を行い、これを都道府県知事に提出することなどとされている。また、都道府県知事は、市町村長から提出された事業実施計画について、市町村長と同様の審査を行った上で、指導及び調整を行い、これを地方農政局長等に提出して、協議することなどとされている。
 そして、地方農政局長等は、都道府県知事から提出されて協議を受けた事業実施計画について、事業実施要綱等に基づき、バイオマスの利活用を図るための具体的な目標は妥当なものとなっているか、その達成の可能性が十分なものとなっているかなどの点について審査を行い、指導及び調整を行うことなどとされている。

 バイオマス  再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものであり、その種類により廃棄物系バイオマス、未利用バイオマス、資源作物に区分されている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、有効性等の観点から、バイオマス施設整備事業により整備された施設は計画どおり順調に運営されているかなどに着眼して、農林水産本省、6農政局(注2) 及び20道県(注3) において会計実地検査を行った。そして、15年度から19年度までの間に61事業実施主体が施設整備を実施した60事業(事業費計318億5417万余円、国庫補助金等交付額計150億8356万余円)を対象として、事業実施計画等の書類及び現地の状況を検査するとともに、事業実施主体等に対して施設の運営状況等についての報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、整備された施設の運営状況について次のような事態が見受けられた。
 すなわち、バイオマス施設整備事業により整備された施設の運営状況については、施設の運営を開始した翌年度に事業実施主体が地方農政局長等に報告することとされている。そして、前記の60事業を検査したところ、15年度から19年度までに運営を開始していたのは31施設であり、これらの施設の運営開始年度は、17年度が5施設、18年度が8施設、19年度が18施設となっていて、31施設の過半数が19年度に運営を開始したものであった。
 そこで、31施設について、運営初年度におけるバイオマス資源の計画受入量に対する実績受入量の割合(以下「利用率」という。)をみたところ、次表のとおり、利用率が50%を下回っているものが11施設見受けられた。

表 運営初年度の利用率の状況
利用率 10%未満 10%以上20%未満 20%以上30%未満 30%以上40%未満 40%以上50%未満 50%以上60%未満 60%以上70%未満 70%以上80%未満 80%以上90%未満 90%以上100%未満 100%以上
施設数 0 3 2 4 2 6 3 2 3 1 5 31
11 20

 そして、このうち8事業実施主体が整備した8施設(事業費計33億7306万余円、国庫補助金等交付額計15億1719万余円)については、事業実施計画作成時におけるバイオマス資源の施設への搬入に係る関係者に対する意向の調査及び確認や食品廃棄物の分別等に対する意識の喚起が十分行われていなかったことなどのために、事業実施計画で予定していたバイオマス資源の受入量が十分に確保できていないものとなっていた。

<事例1>

 A市は、B地区において、平成16年度に、せん定枝からたい肥を生産して果樹農家に無償で提供することを目的として、バイオマス利活用フロンティア整備事業によりたい肥化施設を事業費1億6415万余円(国庫補助金8189万余円)で整備している。
 事業実施計画によれば、果樹農家及び造園業者から発生するせん定枝を年間900t受け入れて、たい肥を450t製造することとしていた。
 しかし、同市は、同地区内の果樹農家及び造園業者から年間900tのせん定枝が発生していることは調査していたが、同施設へせん定枝を搬入する意向があるかどうかの確認等を個々の果樹農家及び造園業者に対して十分行っていなかった。このため、同施設の運営初年度である17年度のせん定枝の受入実績は257t(利用率28.6%)と計画を大きく下回っていた。

<事例2>

 C組合は、D市において、平成18年度に、食品廃棄物から家畜用飼料を生産して販売することを目的として、バイオマスの環づくり交付金に係る施設整備事業により飼料化施設を事業費2億8195万余円(交付金1億4097万余円)で整備している。
 事業実施計画によれば、同組合は、飼料の品質確保のために地元のスーパーマーケット等から発生する食品廃棄物を分別した状態で年間4,140t受け入れて、養豚用飼料を828t製造することとしていた。
 しかし、同組合及び計画主体である同市は、食品廃棄物を分別するようにスーパーマーケット等に依頼していたが、その承諾を個別に確認していなかった。このため、同施設の運営初年度である19年度の分別された食品廃棄物の受入実績は、年間換算で667t(利用率16.1%)と計画を大きく下回っていた。そして、スーパーマーケット等は、食品廃棄物の大半を分別せずに廃棄処分していた。また、受け入れた食品廃棄物の種類に偏りがあり品質が確保できなかったために、生産した養豚用飼料97tは販売されていなかった。
 このように、事業実施計画作成時における調査、確認が十分行われていないことなどのために、事業実施計画で予定したバイオマス資源の受入量が確保できずに運営初年度の利用率が低調となっている事態は、事業実施計画作成時等の早期の段階において今後の問題点への対応策を検討して、運営初年度における施設の利用率の向上を図ることが、その後の円滑な施設の運営の点から重要であること、また、バイオマス施設整備事業が「バイオマス・ニッポン総合戦略」に基づき引き続き実施されていくことなどを考慮すると適切ではなく、改善を図る必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 農林水産省において、都道府県等に対して、バイオマス資源の施設への搬入に係る関係者に対する意向調査の実施状況の確認等、事業実施の確実性に係る審査等の具体的な方法を示していなかったこと
イ 地方農政局等において、事業実施の確実性に係る審査及び確認が必ずしも十分行われていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、20年9月に各地方農政局等に対して通知を発して、地方農政局等、都道府県及び市町村における関係者に対する意向調査の実施状況の確認等、事業実施の確実性に係る審査等の充実を図ることなどにより事業実施主体等において施設の運営初年度からの利用率の向上に努めることについて周知徹底を図るとともに、事業実施の確実性に係る審査等の具体的な方法を示したマニュアルを新たに作成して、これを地方農政局等を通じて都道府県及び市町村に対して周知するなどの処置を講じた。

 6農政局  東北、関東、北陸、近畿、中国四国、九州各農政局

 20道県  北海道、岩手、宮城、福島、栃木、千葉、神奈川、新潟、富山、長野、静岡、兵庫、奈良、島根、岡山、福岡、熊本、大分、宮崎、鹿児島各県