会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)林野庁 | (項) | 森林環境保全整備事業費 |
(項) | 森林居住環境整備事業費 | |||
部局等 | 林野庁 | |||
補助の根拠 | 森林法(昭和26年法律第249号) | |||
補助事業者 | 11県 | |||
間接補助事業者 (事業主体) |
町1、森林組合54、計55事業主体 | |||
補助事業 | 森林環境保全整備、森林居住環境整備 | |||
補助事業の概要 | 森林の有する多面的機能の維持・増進を図るなどのために、植栽、下刈、間伐等の事業を実施するもの | |||
受託造林の趣旨に沿わないものとなっていて不適切な事業実施件数 | 8,344件(平成17、18両年度) | |||
上記に係る事業費 | 11億9358万余円
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上記に対する国庫補助金交付額 | 3億5880万円
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林野庁は、森林法(昭和26年法律第249号)等に基づき、森林の有する多面的機能の維持・増進を図り、森林環境の保全に資するなどのために、森林環境保全整備事業等の一環として、植栽、下刈、間伐等の事業を実施した森林所有者、森林組合等の事業主体に対して都道府県が補助する場合等に、その費用の一部として、都道府県に森林環境保全整備事業費補助金及び森林居住環境整備事業費補助金(以下、これらを合わせて「補助金」という。)を交付している。
そして、林野庁は、本件補助事業の実施に当たり、森林環境保全整備事業実施要領(平成14年13林整整第885号林野庁長官通知)等を定めており、これによれば、事業主体は、事業の終了後、都道府県に対して補助金の交付申請を行い、都道府県は、交付申請を受けて当該事業のしゅん工検査を行い、これに基づいて補助金の査定を行い、補助金の交付決定及び額の確定を同時に行うこととなっている。
本件補助事業の実施方法としては、〔1〕 森林所有者が事業主体となり、自ら又は他の林業者(林業を営む個人又は会社等をいう。以下同じ。)に請け負わせて作業を実施して、補助金の交付申請及び受領を森林組合等に委任して行う方法(以下「代理申請」という。)、〔2〕 森林組合等が森林所有者から事業を受託して事業主体となり、自ら又は他の林業者に請け負わせて作業を実施して、補助金の交付申請及び受領を自ら行う方法(以下「受託造林」という。)等がある。
補助金の額は、植栽、下刈、間伐等の事業区分ごとに定められた標準単価に事業実施面積を乗ずるなどして算出した補助対象事業費に補助率を乗じて算定することとなっている。そして、受託造林の場合には、標準単価にその10%から32%までの範囲内の額で、事業に携わる作業員の社会保険料等の経費相当額である諸掛費を加算することができるが、代理申請の場合には、諸掛費を加算できないこととなっている。
また、一部の事業では、受託造林の場合は、森林所有者ごとの事業実施面積が0.5ha未満であっても当該森林組合による事業実施面積の合計が4ha以上であれば補助対象となることとなっているが、代理申請の場合は、当該森林所有者による事業実施面積の合計が0.5ha以上でないと補助対象とならないこととなっている。
林野庁は、本件補助事業の実施に当たり、個々の森林所有者に任せておいては必要な森林整備が計画的に行われ難いことから、森林組合等が森林所有者から事業を受託して事業主体となり積極的に事業を集積することによって、労務や資材の調整、専門的技術の活用を行い、効率的・計画的な事業の実施を図ることとしている。
しかし、森林組合に事業を委託した森林所有者が、森林組合に臨時作業員として雇用されて自ら所有する森林で作業を実施するなど、代理申請と受託造林が明確に区分されずに運営されている事態が見受けられたことから、林野庁は、受託造林における事業主体の考え方について、都道府県の担当者を対象とした森林整備事業担当者会議(平成15年1月開催)で参考として配布した資料(以下「会議資料」という。)において、次のように示している。
それによれば、受託造林は、〔1〕 森林所有者と森林組合等の間で受託契約が締結され、森林組合等が作業員の労働者災害補償保険等の保険料等を支払っていること、〔2〕 当該森林所有者のみが、本事業において当該所有森林に係る事業すべてを実行するものではないこと(他の所有森林に係る森林整備も併せて行っている場合を除く。)などとなっている。
林野庁は、森林の多面的機能の持続的な発揮を図ることなどを目的として実施している森林環境保全整備事業等を効率的・計画的に推進することとしている。そして、前記のとおり、代理申請と受託造林について、補助制度上異なった取扱いを設けている。
そこで、有効性等の観点から、受託造林で実施した事業において補助金の交付申請の内容が実態に即した適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。
17、18両年度に18県(注1) 管内の174森林組合等が受託造林により実施した本件補助事業111,082件(事業費計346億3433万余円、国庫補助金計105億4292万余円)を対象に、補助金交付申請書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、更に県に事態の詳細について調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
11県(注2)
管内の55森林組合等は、森林所有者から事業を受託して、臨時作業員を雇用したり、林業者に請け負わせたりするなどして作業を実施し、受託造林として41,731件の補助金交付申請を県に対して行い、事業費計143億1189万余円に対して、国庫補助金計43億0245万余円の交付を受けていた。
これらの事業について、前記の会議資料を参考に、事業の実施状況を検査したところ、効率的・計画的に事業を実施するという受託造林の趣旨に沿わないと認められる事業が8,344件(事業費計11億9358万余円、国庫補助金計3億5880万余円)見受けられた。
これらの事業では、森林所有者と森林組合等との間で受託契約が締結されて、受託代金も支払われており、労働者災害補償保険にも加入していた。
しかし、作業の実施状況をみると、森林組合等に事業を委託した森林所有者が、森林組合の臨時作業員となるなどして、所有する森林に係る作業のみを自ら実施しており、他の森林所有者が所有する森林においては作業を全く実施していなかった。
したがって、これらの8,344件については、受託造林の体裁をとっているものの、作業の実態は代理申請で実施する内容と変わらないものとなっており、森林組合等により効率的・計画的に事業を実施するという受託造林の趣旨に沿わないものとなっていた。
A森林組合は、平成17年度に森林所有者Bから下刈0.88haに係る事業を受託して、受託造林として補助金の交付申請を行い、事業費248,300円に対して、国庫補助金74,490円の交付を受けていた。
この事業の実施状況についてみると、同組合は森林所有者Bを臨時作業員として雇用していたが、森林所有者Bは、所有する森林に係る作業のみを自ら実施しており、他の森林所有者が所有する森林においては作業を全く実施しておらず、作業の実態は代理申請で実施する内容と変わらないものとなっていた。
上記のように、受託造林の体裁をとりながら森林所有者が所有する森林に係る作業のみを自ら実施しているのは、森林組合等に事業を集積して労務や資材の調整等を行い、効率的・計画的に事業を実施するという受託造林の趣旨に沿わない事態であり適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア. 林野庁において
(ア) 受託造林の採択に係る判断基準を明確に定めていなかったこと
(イ) 県に対して、受託造林による補助金交付申請に係るしゅん工検査に当たり、森林所有者の所有する森林に係る作業の実施状況について審査するよう指導していなかったこと
イ. 県、森林組合等において、受託造林による事業の趣旨についての理解が十分でなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、林野庁は、効率的・計画的に事業が実施されるよう20年6月に都道府県に対して発した通知において、受託造林の採択に係る判断基準を定めた。そして、この基準において、原則として森林所有者が所有する森林に係る作業を自ら実施している場合には採択しない旨を明確にするとともに、都道府県が行う補助金交付申請に係るしゅん工検査に当たり、森林所有者の所有する森林に係る作業の実施状況について審査するよう指導する処置を講じた。