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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

政府所有米穀の変形加工において、変形加工単価の算定を工場加工経費の実態に即したものとすることなどにより変形加工に係る支払額の節減を図ったり、指示歩留りを加工の実態に即したものとすることにより加工会社に引き渡す米穀数量の低減を図ったりするよう改善させたもの


(6) 政府所有米穀の変形加工において、変形加工単価の算定を工場加工経費の実態に即したものとすることなどにより変形加工に係る支払額の節減を図ったり、指示歩留りを加工の実態に即したものとすることにより加工会社に引き渡す米穀数量の低減を図ったりするよう改善させたもの

会計名及び科目 食料安定供給特別会計(米管理勘定) (項)米管理費
部局等 農林水産本省
委託契約の概要 政府が所有する外国産米を加工原材料用に販売するに当たり、当該米穀を破砕して、破砕精米に変形加工するもの
契約の相手方 27会社
米国産米及び豪州産米の変形加工に対する支払額 3億5393万余円 (平成19年度)  
上記のうち節減できた支払額(1) 2482万円    
加工会社に引き渡した米国産米及び豪州産米の数量 151,555t (平成19年度)  
上記のうち低減できた数量 654t    
上記の低減数量に対する評価額(2) 3139万円    
(1)、(2)の計 5621万円 (平成19年度)  

1 政府所有米穀の変形加工の概要

(1) 変形加工の概要

 農林水産省は、「政府所有米穀の委託変形加工実施要領」(平成19年18総食第1161号)等に基づき、政府が所有する外国産米(以下「政府所有米穀」という。)を味噌、しょう油等の加工原材料用として販売するに当たり、主食用への横流れの防止等その適正な流通を確保するために、当該米穀を破砕し破砕精米にするための変形加工を実施している。そして、この変形加工を実施する会社(以下「加工会社」という。)と政府所有米穀の原材料用委託変形加工契約を締結して、平成19年度に、加工会社に政府所有米穀151,555t(米国産米118,908t及び豪州産米32,647t)を計134,223tの破砕精米にする変形加工を実施させて、その変形加工賃として3億5393万余円を加工会社に対して支払っている。
 この変形加工の実施に当たり、農林水産省は、12年9月から変形加工後に破砕されずに残る米穀の完全粒の割合が製品全体の10%までは合格とする90%破砕精米を実施していたが、18年10月以降は90%破砕精米を取りやめてすべて100%破砕精米としている。

(2) 変形加工賃の算出方法

 農林水産省は、上記の加工会社に対して支払う変形加工賃を、産地国別に定められた破砕精米30kg当たりの基準変形加工単価(以下「基準変形加工単価」という。)に産地国別の破砕精米の数量を乗じて算出している。
 そして、基準変形加工単価及びその加算額については、次のア、イにより、それぞれ算定している。

ア 基準変形加工単価の算定について

 農林水産省は、100%破砕精米の変形加工の実施に当たり、基準変形加工単価を、次の〔1〕 、〔2〕 式に基づき米国産米で94円、豪州産米で127円と算定している。

〔1〕  破砕精米1t当たりの変形加工賃(A)

   =政府所有米穀1tの変形加工に要する工場加工経費(a)
       ÷指示歩留り(b)−副産物収入(c)+製品包装代(d)

〔2〕 基準変形加工単位(B)=(A)×30/100

 上記〔1〕 式のうち、政府所有米穀1tの変形加工に要する工場加工経費(a)については、農林水産省が加工工場に対して16年10月に実施した90%破砕精米の工場加工経費(動力費、人件費等)等の調査(以下「実態調査」という。)の結果を基に算出している。
 指示歩留り(b)については、農林水産省が、加工会社に対して変形加工の基準となる歩留りとして指示するものであり、米穀の産地国により、米質が異なったり、稲わらの混入率が異なったりなどするため産地国別に定めている。そして、農林水産省は、17年7月から9月までに実施した100%破砕精米の加工試験の結果を基に指示歩溜りを算出して、これを米国産米で87.0%、豪州産米で89.3%としている。
 副産物収入(c)については、上記の加工試験の結果を基に、加工途中に副産物として発生する微細米及びぬかの発生率を算出して、これにそれぞれの売却単価を乗ずるなどして、破砕精米1tの生産に伴い加工会社が得られる収入額相当を算出している。
 製品包装代(d)については、破砕精米1tの包装に必要となる紙袋等の額としている。

イ 基準変形加工単価の加算額について

 上記のアにより求めた基準変形加工単価については、農林水産省は、変形加工の実績歩留りが指示歩留り(b)を上回る場合には、その上回る分に応じて副産物の発生率が低下することから加工会社が得られる副産物収入が減少するなどとしている。そこで、それを補てんするために、実績歩留りが指示歩留りを0.1%上回るごとに、米国産米で1.5円、豪州産米で1.4円の一定額を基準変形加工単価に加算している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 近年、加工会社において工場稼働率が向上したり、加工技術が習熟したりするなどして変形加工を経済的及び効率的に実施することが可能となっている。そこで、本院は、経済性等の観点から、基準変形加工単価及び指示歩留りが100%破砕精米における加工の実態に即した適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。そして、前記の19年度における変形加工に係る支払額3億5393万余円を対象として、管内に加工会社がある20地方農政事務所等のうち12事務所等(注) において会計実地検査を行い、各事務所等の担当者から変形加工の実施状況を聴取した。
 また、上記の12事務所等管内に所在する15加工会社に赴いて変形加工の実態等を調査するとともに、19年度に変形加工を受託した27加工会社を対象に、工場加工経費等に関する調書の作成を農林水産省に依頼して、提出された調書を分析するなどして検査を実施した。

(検査の結果)

 検査したところ、次の(1)、(2)のとおり、変形加工賃の算出及び加工会社に引き渡す政府所有米穀の数量の算出が、それぞれ実態とかい離するなどしていた。

(1) 変形加工賃の算出について

ア 基準変形加工単価について

 本院において、前記の調書を基に19年度における政府所有米穀1tの変形加工に要する工場加工経費(前記〔1〕 式(a))を算出したところ、農林水産省が16年10月に実施した 前記の実態調査による工場加工経費に比べて低額だった。
 そして、その結果を基にして基準変形加工単価を算定すると、前記の米国産米の94円、豪州産米の127円は、それぞれ89.7円、122.9円に低減すると認められた。

イ 基準変形加工単価の加算額について

 本院において、実績歩留りが指示歩留り(前記〔1〕 式(b))を0.1%上回るごとの基準変形加工単価の加算額を算定したところ、次表のとおり、加算額は、農林水産省の算定した額とは異なり、実績歩留りが指示歩留りを0.1%上回るごとに増加する額は一定額ではなかった。
 したがって、実績歩留りが指示歩留りを0.1%上回る都度、それぞれに応じた加算額を算出する必要があると認められた。

表 農林水産省算定の加算額と本院修正加算額との比較
実績歩留りが指示歩留りを上回る率 米国産破砕精米 豪州産破砕精米
  農林水産省 本院 農林水産省 本院
0.1% 1.5円
(1.5円)
1.5円
(1.5円)
1.4円
(1.4円)
1.4円
(1.4円)
0.2% 3.0円
(1.5円)
2.9円
(1.4円)
2.8円
(1.4円)
2.7円
(1.3円)
0.3% 4.5円
(1.5円)
4.3円
(1.4円)
4.2円
(1.4円)
4.1円
(1.4円)
0.4% 6.0円
(1.5円)
5.7円
(1.4円)
5.6円
(1.4円)
5.4円
(1.3円)
0.5% 7.5円
(1.5円)
7.1円
(1.4円)
7.0円
(1.4円)
6.7円
(1.3円)
0.6% 9.0円
(1.5円)
8.5円
(1.4円)
8.4円
(1.4円)
8.1円
(1.4円)
(以下略)
(注)
 上段は、基準変形加工単価に対する加算額。下段は、実績歩留りが指示歩留
りを0.1% 上回るごとに増加する額

(2) 加工会社に引き渡す米穀の数量について

 加工会社に引き渡す米穀の数量は、指示歩留り(前記〔1〕 式(b))が高いほど低減する。そこで、本院において、標準的な加工会社の実績歩留りを分析したところ、米国産米で87.4%、豪州産米で89.6%となり、農林水産省の定めた前記の指示歩留りの米国産米で87.0%、豪州産米で89.3%を、それぞれ0.4%及び0.3%上回っていた。
 したがって、このような実績歩留りを指示歩留りとすることにより、加工会社に引き渡す米穀の数量を低減することが可能であると認められた。
 このように、近年の加工数量の増加に伴って、加工会社の加工技術が習熟して工場稼働率が向上したことにより、生産性が向上しているにもかかわらず、農林水産省において、その把握が十分でなく、基準変形加工単価や指示歩留りを改定していなかったことや基準変形加工単価に加算する額の算出をそれぞれの実績歩留りに応じて行っていなかったことなどの事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(節減できた変形加工賃及び低減できた米穀に係る評価額)

 前記の(1)、(2)により、19年度契約における政府所有米穀の変形加工賃及び低減できた米穀に対する評価額を計算すると、次のとおり計5621万余円を節減できたと認められた。
 (1)の加工会社に対する変形加工賃については、実態に基づいた適切な基準変形加工単価及び加算額により、これを算定すると、前記の変形加工賃3億5393万余円は3億2911万余円となり、2482万余円が節減できたと認められた。
 (2)の加工会社に引き渡す政府所有米穀の数量については、前記のとおり指示歩留りを米国産米で87.4%、豪州産米で89.6%として、これを算定すると、前記の米穀の数量151,555tは150,901tとなり、654tが低減でき、これに対する評価額3139万余円が節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、農林水産省において、前記のとおり加工会社の生産性が向上していたのに、その把握が十分でなかったこと、また、基準変形加工単価の加算額についての認識が適切でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、20年9月に政府所有米穀の委託変形加工実施要領を改正して、実態に即した基準変形加工単価の算定、基準変形加工単価の加算額の見直し、変形加工の実態に即した指示歩留りの改正等を行い、これに基づき、同年10月の委託変形加工契約から新たな基準変形加工単価等を適用するとともに、加工会社における変形加工の実態把握に努めることとする処置を講じた。

 12事務所等  東北、東海、九州各農政局、北海道、福島、栃木、新潟、兵庫、奈良、徳島、佐賀、鹿児島各農政事務所

 なお、外国産米を含む政府米の販売に当たっては、主食用、加工用、援助用等の用途にかかわらず、食品たる米穀の安全性に最重点で留意し、安全性に問題のある事故米穀の混入がないことを確保すべきである。そして、特に、外国産米については、その輸入に当たり、食品衛生法に反する米穀の買入れ及び国内持込みを絶対に行わないこと、買入れ後、保管上の問題等によりカビ等が発生した場合には直ちに廃棄することとする処置を徹底する必要がある。
 本院は、上記の視点から、20年9月に発覚した事故米穀の不正規流通問題も踏まえて、外国産米を含む政府米の購入、管理、販売等について、引き続き検査を行っていくこととする。

(参考図)政府が所有する外国産米の用途別販売数量(平成19年度)

(参考図)政府が所有する外国産米の用途別販売数量(平成19年度)

(注)
数量については、小数点以下第2 位を四捨五入している。