会計名及び科目 | 国有林野事業特別会計 | (項)国有林野事業費 | |
部局等 | 林野庁、7森林管理局 | ||
被災職員に対する離職後における休業補償等の支給の概要 | 公務上の災害を受けた被災職員に対して、療養のために医療機関等への通院に要する時間を対象に、休業補償等の支給を行うもの | ||
被災職員に対する離職後における休業補償等の支給額 | 18億3772万余円 | (平成18、19両年度) | |
上記のうち検査の対象とした支給額 | 17億2397万余円 | ||
上記について平成20年4月の実態に基づく通院時間が18、19両年度も同様であると仮定した上で算出した額 | 16億2637万余円 | ||
開差額 | 9759万円 | (平成18、19両年度) |
林野庁は、国家公務員災害補償法(昭和26年法律第191号。以下「法」という。)に基づき、公務上の災害(以下「公務災害」という。)を受けた職員(以下「被災職員」という。)に対して補償として療養補償、休業補償の支給等を、また、福祉事業として休業援護金の支給等を行っている。
林野庁におけるこれらの公務災害補償に要する経費は、平成18年度27億2311万余円、19年度25億9820万余円となっている。
上記のうち休業補償は、法第12条の規定により、被災職員が療養のため勤務することができない場合において、給与を受けないときに、その勤務ができない期間につき支給することとなっている。また、休業援護金は、人事院規則16−3(災害を受けた職員の福祉事業)により、休業補償を受ける被災職員に対して、休業補償と併せて支給することとなっている。
そして、法第7条の規定により、補償を受ける権利は離職後も影響を受けないものとされていることから、公務災害補償に要する経費には、離職後に療養補償を受ける被災職員(以下「離職者」という。)に対する休業補償及び休業援護金(以下「休業補償等」という。)も含まれている。
林野庁は、「災害補償制度の運用について」(昭和48年職厚−905人事院事務総長通達)に基づき、離職者に対する休業補償等の支給額を、離職者が公務災害の療養のために医療機関及び薬局(以下「医療機関等」という。)に通院するのに要する時間(以下「通院時間」という。)を対象として、次のとおり算定することとしている。
そして、離職者は、上記の計算式により算定される休業補償及び休業援護金を、休業補償請求書及び休業援護金支給申請書(以下「請求書等」という。)により、1月ごとに森林管理局、森林管理署若しくは支署又は森林管理事務所(以下「森林管理署等」という。)へ請求及び申請することとなっている。
請求書等の提出を受けた森林管理署等は、人事院規則16−4(補償及び福祉事業の実施)に基づき、それらを審査した上で、休業補償等の支給額を決定することとしている。
林野庁は、上記の支給手続に基づき、離職者に対する休業補償等を18年度1,537人9億4237万余円、19年度1,458人8億9535万余円、計18億3772万余円支給している。
本院は、合規性等の観点から、離職者に対する休業補償等の支給額の算定が適切に行われているかなどに着眼して、98森林管理署等に20年4月分の休業補償等を請求及び申請した離職者(以下「請求者」という。)1,196人に対する休業補償等18年度8億6451万余円、19年度8億5945万余円、計17億2397万余円について検査した。検査に当たっては、37森林管理署等において会計実地検査を行うとともに、その他の61森林管理署等について、森林管理局に請求書等の書類を提出させて検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
森林管理署等は、請求者が根拠資料を保有していなかったり、算定方法が複雑で個人で行うことが困難であったりするなどの理由から、請求者の平均給与額を森林管理署等で保有している根拠資料に基づき算定していた。
その際、森林管理署等は、請求者に、療養のために医療機関等へ通院した日数、通院時間及びこれにより算定した休業補償等の額を請求者に代わって記載した請求書等を送付するなどしており、請求者はそれに押印して森林管理署等へ毎月提出していた。
しかし、一部の森林管理署等では、休業補償等の額を算定する際に、過去に調査した際の通院時間を用いていて、その後の状況を十分に確認していなかった。
また、通院時間については、林野庁から森林管理署等に対して明確に示していなかったため、請求者個人の事情により往復の間で休憩した時間を含めているものがあるなど取扱いが区々となっていた。
そこで、通院時間について、林野庁を通じて人事院に確認したところ、次のように取り扱うこととなっていた。
ア 通院時間については、医療機関における診療に係る時間と交通機関等を用いた移動時間等の合計とする。
イ 医療機関における診療に係る時間については、請求者個人ごと、医療機関ごとの実際の時間とし、診療の待ち時間等診療に直接関係するものについては含めるが、請求者個人の事情による休憩時間等は除外する。
ウ 移動時間については、合理的な経路の公共交通機関を利用することを基本とし、乗換え時間等については必要最小限とする。また、自家用車、タクシー等を用いるのはやむを得ない場合に限り、その際にも合理的な算定方法を用いることとする。
したがって、これに基づき、すべての森林管理署等に対して、請求者の20年4月分の通院の実態について、医療機関での診療時間の状況、通院に使用する交通機関の状況等を請求者本人から聴取するとともに、医療機関や公共交通機関等に対して問合せをするよう求めて、その結果を確認した。さらに、交通機関等については、時刻表等の刊行物によっても確認した。
これによれば、請求者1,196人のうち335人については、18、19両年度に休業補償等を算定した際に用いられた通院時間が、20年4月分の通院の実態に基づく通院時間よりも1日当たり1時間から6時間多い状況となっていた。
以上のことから、今回確認した20年4月分の請求者の通院の実態に基づく通院時間が18、19両年度も同様であると仮定した上で算出した休業補償等の額は、18年度8億1545万余円、19年度8億1092万余円、計16億2637万余円となり、18、19両年度の支給額に比較して18年度4906万余円、19年度4853万余円、計9759万余円の開差を生ずることとなる。
このように、休業補償等の支給に当たり、森林管理署等において、通院の実態に基づく通院時間とは異なる時間数を用いて休業補償等の額を算定して支給している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のようなことなどによると認められた。
ア 林野庁において、森林管理署等に対して通院時間について取扱いを明確に示していなかったこと
イ 森林管理署等において、請求書等の提出を受けた時の通院時間の審査、確認が十分でなく、休業補償等を支給する時点の医療機関での診療時間の状況、交通機関の状況等が支給額の算定に反映されていなかったこと
ウ 林野庁及び森林管理署等において、離職者に対して、休業補償等の制度及びその算定方法についての周知が十分でなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、林野庁は20年9月に通知を発して、離職者に対する休業補償等の支給を適切なものとするよう、次のような処置を講じた。
ア 森林管理署等に対して、通院時間の取扱いを明確にした上で、離職者に対してもその内容を含めた休業補償等の制度について周知させることとした。
イ 森林管理署等に対して、離職者から請求書等の提出を受ける都度、通院時間の審査、確認を厳正に実施させるとともに、通院時間に関して離職者、医療機関等への一斉確認を毎年度行わせることにより、医療機関での診療時間の状況、交通機関の状況等が反映されるようにした。
ウ 離職者に対して、休業補償等の制度についての理解を求める通知を送付することとした。