会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)経済産業本省 | (項)産業技術振興費 |
部局等 | 経済産業本省 | ||
補助の根拠 | 予算補助 | ||
補助事業者 (事業主体) |
5会社 | ||
補助事業 | 特定大学技術移転事業 | ||
補助事業の概要 | 大学等における技術に関する研究成果を特許権の譲渡等によって民間事業者に移転するもの | ||
事業費の合計 | 487,680,749円 | (平成15年度〜18年度) | |
上記に対する国庫補助金交付額の合計 | 322,164,186円 | ||
不当と認める事業費 | 18,294,560円 | (平成15年度〜18年度) | |
不当と認める国庫補助金交付額 | 12,132,950円 | (平成15年度〜18年度) |
経済産業本省は、平成15年度から18年度までの間に、大学等における技術に関する研究成果を民間事業者に移転する事業を実施した5事業主体に対して、大学等技術移転促進費補助金を交付している。
この補助金は、大学等における技術に関する研究成果について、特許権の譲渡等によって、研究成果の活用を行うことが適切かつ確実と認められる民間事業者に移転する事業(特定大学技術移転事業)の実施に必要な経費の一部を補助するものである。
「大学等技術移転促進費補助金交付要綱」(平成11年財産第2号。以下「要綱」という。)等により、補助金の交付の対象となる経費のうち技術移転スペシャリスト人件費には、事業主体の職員等が行った大学等の技術に関する研究成果を民間企業へ提供する活動(以下「技術開示活動」という。)に係る人件費相当分を計上することとされている。
そして、事業主体各社は、15年度から18年度までの各年度において、本件補助事業を事業費計487,680,749円(補助対象事業費同額)で実施したとして、経済産業本省に実績報告書を提出して、これにより国庫補助金計322,164,186円の交付を受けていた。
消費税は、事業者が課税対象となる取引を行った場合に納税義務が生ずるが、生産、流通の各段階で重ねて課税されないように、確定申告において、課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除(以下、この控除を「仕入税額控除」という。)する仕組みが採られている。
そして、補助事業の事業主体が補助対象の物品等を取得することも課税仕入れに該当して、上記の仕組みにより確定申告の際に補助事業で取得した物品等に係る消費税額を仕入税額控除した場合には、事業主体は当該物品等に係る消費税額を実質的に負担していないことになる。
このため、補助事業の事業主体は、要綱により、補助事業完了後に消費税の申告により仕入税額控除した消費税額に係る補助金の額が確定したときには、その金額を速やかに経済産業大臣に報告するとともに、当該金額を返還しなければならないこととされている。
本院は、経済産業本省及び事業主体各社において、合規性等の観点から、事業が要綱等に基づき適切に実施され、適正に経理されているかに着眼して、実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、同省等に事態の詳細について報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、5事業主体において、仕入税額控除した消費税額に係る補助金を返還していなかったり、さらに、このうち1事業主体において、補助事業以外の業務に従事していた時間数を含めて人件費を算定していたため補助対象事業費の精算が過大となっていたりしていた。このため、補助対象事業費計18,294,560円が過大になっていて、これに係る国庫補助金計12,132,950円が不当と認められる。
上記の事態を態様別に示すと次のとおりである。
ア 仕入税額控除した消費税額に係る補助金を返還していないもの
5事業主体は、15年度から18年度までの間の消費税の確定申告を行い、本件補助事業に係る消費税額計9,852,515円を仕入税額控除していた。しかし、5事業主体は、これに係る国庫補助金計6,504,920円を報告、返還していなかった。
イ 補助事業以外の業務に従事していた時間数を含めて人件費を算定していたため、補助対象事業費の精算が過大となっているもの
株式会社長崎TLOは、16年度から18年度までの間に、技術移転スペシャリスト人件費として、技術開示活動に従事した職員16年度2名、17、18両年度各3名の給与、賞与等の全額計24,979,336円を計上していた。
しかし、上記の職員のうち16年度1名、17、18両年度各2名は技術開示活動以外の業務を兼務していたことから、実際に技術開示活動に従事していた時間を算出すると計2,095.25時間となり、これらの者の全労働時間計7,149.5時間のうち計5,054.25時間が過大となっていた。このため、16年度から18年度までの適正な技術移転スペシャリスト人件費を算定すると計16,537,291円となり、前記の24,979,336円との差額計8,442,045円が過大に精算されていて、これに係る国庫補助金計5,628,030円が同会社に過大に交付されていた。
このような事態が生じていたのは、5事業主体において補助事業における消費税の取扱いについての理解が十分でなかったこと、株式会社長崎TLOにおいて技術移転スペシャリスト人件費の算定方法についての理解が十分でなかったこと及びこれらについての経済産業本省の指導、審査、確認が十分でなかったことによると認められる。
上記のア及びイの事態を事業主体別に示すと次のとおりである。