ページトップ
  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 経済産業省|
  • 不当事項|
  • 補助金

電源立地地域対策交付金の交付を受けた事業の実施に当たり、離岸堤設置工事の施工が設計と相違していたため、工事の目的を達していないもの


(772) 電源立地地域対策交付金の交付を受けた事業の実施に当たり、離岸堤設置工事の施工が設計と相違していたため、工事の目的を達していないもの

会計名及び科目 電源開発促進対策特別会計(電源立地勘定)(平成19年度以降はエネルギー対策特別会計(電源開発促進勘定))
    (項)電源立地対策費
部局等 近畿経済産業局
交付の根拠 予算補助
補助事業者
(事業主体)
福井県大飯郡高浜町
交付金 電源立地地域対策交付金
交付金の概要 発電用施設の設置等の円滑化に資することを目的に、発電用施設が所在する市町村等に対して交付されるもの
交付対象事業 上瀬漁港(日引)離岸堤設置工事
事業費 5,302,500円 (平成18年度)
上記に対する交付金交付額 4,500,000円    
不当と認める事業費 5,302,500円 (平成18年度)
不当と認める交付金交付額 4,500,000円 (平成18年度)

1 事業の概要

 この事業は、福井県大飯郡高浜町が、電源立地地域対策交付金(以下「交付金」という。)の交付を受けて、上瀬漁港(日引地区)において、海岸に隣接する区域の住民の安全を確保するために、平成18年度に離岸堤(注1) 設置工事を事業費5,302,500円(全額交付金交付対象、これに対する交付金4,500,000円)で実施したものである。
 上記工事の実施に当たり、同町は、上瀬漁港(日引地区)区域内に海岸と並行に左右1基ずつ、計2基設置されている4t型の消波ブロックを用いた既設離岸堤の開口部(幅約20m)から来襲する波を防ぐために、同型の消波ブロック96個を用いて一方の離岸堤の堤長を所要の堤体断面を確保した上で、可能な限り延ばして、開口部を狭くすることにしていた(参考図1参照)
 離岸堤の堤体断面は、既設離岸堤の標準断面と同等として、発注図面において、朔(さく)望平均干潮位(注2) (以下「LWL」という。)から天端までの高さを、LWLから朔望平均満潮位(注3) までの0.6m、設計波高1.1m及び余裕高0.3m、計2mとして、これに水深2.4mを加えて堤高を4.4m、天端幅を4mなどとしていた。そして、請負業者は、所要の堤体断面で延長9.5mを施工したとしていた。

2 検査の結果

 本院は、福井県大飯郡高浜町において、合規性等の観点から、施工が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図書、現地の状況等を検査したところ、施工が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、同町は、LWLから天端までの高さが消波効果に影響するにもかかわらず、その出来形等について、検査及び確認を行っていなかった。  そこで、本件離岸堤について、2m間隔で6断面において堤体断面の形状等を確認したところ、1断面当たり天端の両端部及び中央部の3か所、計18か所で測定したLWLから天端までの高さは、0.5mから2.3mとなっており、本件工事において必要とされる2mを満たしていない箇所が18か所中16か所あり、中には、余裕高0.3mを除いた1.7mの高ささえも満たしていない箇所が14か所ある状況となっていた(参考図2参照)
 このような事態が生じていたのは、離岸堤に係る施工が設計と相違したものとなっていたのに、これに対する同町の監督及び検査が適切でなかったことなどによると認められる。
 したがって、本件離岸堤設置工事(工事費5,302,500円)は、施工が設計と相違していたため、来襲する波を防ぐための所要の堤体断面が確保されていない状態になっており、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金4,500,000円が不当と認められる。

 離岸堤  海岸背後にある人命、資産を高潮及び波浪から防護することなどを目的として、海岸線の沖側に設置する天端高が海面よりも高い海岸保全施設で、消波することにより越波を減少させるなどの機能を有するもの

 朔望平均干潮位  新月、満月の日から前2日後4日以内に現れる各月の最低干潮位を平均した水面高

 朔望平均満潮位  新月、満月の日から前2日後4日以内に現れる各月の最高満潮位を平均した水面高

(参考図1)

離岸堤位置関係概念図

(参考図2)

堤体の施工断面図(例)