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小規模企業者等設備導入資金の貸付けが不当と認められるもの


(773)−(778) 小規模企業者等設備導入資金の貸付けが不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)中小企業庁 (項)中小企業対策費
部局等 3経済産業局
国の貸付金 小規模企業者等設備導入資金貸付金
貸付けの根拠 小規模企業者等設備導入資金助成法(昭和31年法律第115号)
貸付けの内容 設備資金貸付事業を行う貸与機関に対して小規模企業者等設備導入資金の貸付けを行う都道府県に対する資金の貸付け
貸付先 3府県
府県の貸付先
(貸与機関)
3財団法人
貸与機関の貸付件数 6件(6小規模企業者等)
貸与機関の貸付金額の合計 98,551,000円 (国の貸付金相当額49,275,500円)
貸与機関の不当貸付金額 69,184,302円  
貸付けの目的に沿わない国の貸付金相当額 34,592,151円  

1 貸付金の概要

 中小企業庁は、小規模企業者等設備導入資金助成法(昭和31年法律第115号)に基づき、小規模企業者(注1) 等の創業及び経営基盤の強化に必要な設備の導入の促進に資するための資金の貸付けを行う都道府県に対して、当該貸付けに必要な資金の2分の1以内の額を小規模企業者等設備導入資金貸付金として無利子、無期限で貸し付けている(注2)
 都道府県は、国の貸付金に自己資金等を合わせて資金を造成して、当該資金を、小規模企業者等設備導入資金として、各都道府県に設置されている貸与機関(注3) に貸し付けている。そして、貸与機関は、信用力や資金調達力がぜい弱である小規模企業者等に対して設備の設置に必要な資金を無利子で貸し付ける事業(以下「設備資金貸付事業」という。)を行っている。設備資金貸付事業による貸付金額は、設備の設置に必要と認めた資金の額の2分の1以内の額で50万円以上4000万円以下(中小企業経営革新支援法(注4) (平成11年法律第18号)に基づき都道府県知事等の承認を受けた経営革新に関する計画に従って設置される設備については3分の2以内の額で66万円以上6000万円以下)となっており、その償還期間は原則として7年となっている。また、借主は、貸与機関から貸付金を受け取った後、貸付対象設備の代金のうち貸付金相当額を、1か月以内に購入先へ支払うことなどとされている。
 そして、借主は事業完了後に完了報告書を提出して、貸与機関はこれに基づいて事業の実施状況を確認することとなっている。

 小規模企業者  常時使用する従業員の数が20人(商業・サービス業の場合は5人)以下の事業者

 「中小企業の事業活動の活性化等のための中小企業関係法律の一部を改正する法律」(平成11年法律第222号。以下「改正法」という。)により中小企業近代化資金等助成法(以下「旧法」という。)が小規模企業者等設備導入資金助成法に改正される平成11年度以前において、中小企業庁は、旧法に基づき、都道府県に対して中小企業設備近代化補助金を交付していた。そして、改正法附則第5条の規定により、旧法により交付された補助金等で都道府県が保有している資金は小規模企業者等設備導入資金助成法に基づき国が都道府県に対して貸し付けた資金とみなすこととされており(以下、この資金を「みなし貸付金」という。)、19年度末において国が都道府県に貸し付けている資金はすべてみなし貸付金である。

 貸与機関  民法(明治29年法律第89号)第34条の規定により設立された法人であって、設備資金貸付事業等を行うものをいう。

 中小企業経営革新支援法  中小企業経営革新支援法は「中小企業経営革新支援法の一部を改正する法律」(平成17年法律第30号)により「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」に改正された。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、事業が関係法令等に基づき適切に実施されて、その経理は適正に行われているかに着眼して、25都道府県の25貸与機関が設備資金貸付事業として実施した2,016件のうち256件の貸付けについて、都道府県、貸与機関及び借主において、完了報告書等の書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、3府県において、3貸与機関が実施した6小規模企業者等に対する6件計98,551,000円の貸付けについて、借主が、貸付対象設備の代金のうち貸付金相当額を所定の期限までに支払っていなかったり、設備を貸付対象事業費より低額で設置したりなどしていた。このため、69,184,302円の貸付けが貸付けの目的に沿わない結果となっており、国の貸付金相当額34,592,151円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、借主の本貸付制度に対する認識が十分でなかったこと、貸与機関の審査・確認及び府県の貸与機関に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを府県別・貸与機関別・貸付先別に示すと次のとおりである。

  府県名 貸与機関 貸付先 貸付年月 貸付対象事業費 貸付対象として適切でない事業費 貸付けの目的に沿わない国の貸付金相当額 摘要
(同上に対する貸付金額) (同上に対する貸付金相当額)
          千円 千円 千円  
(773) 秋田県 財団法人あきた企業活性化センター 製材業者 17.8
31,395
(20,930)
31,395
(20,930)
10,465 貸付対象外

 この貸付けは、油圧式全自動送材車、帯鋸(のこ)盤2台の設置に必要な資金31,395,000円(貸付対象事業費同額)の一部として、20,930,000円を貸し付けたものである。借主は、新品の油圧式全自動送材車、帯鋸盤2台を設置したとしているが、実際は、これらの設備は、すべて中古品であり貸付対象にならないものであった。
 したがって、本件貸付金20,930,000円は貸付けの必要がなかった。

(774) 財団法人あきた企業活性化センター 食料品製造業者 18.7
19,998
(13,331)
4,149
(2,764)
1,382 低額設置及び貸付対象外

 この貸付けは、クリーンルーム、きりたんぽ串(くし)入れ缶(注5) 等の設置に必要な資金19,998,300円(貸付対象事業費同額)の一部として、13,331,000円を貸し付けたものである。借主は、クリーンルームを15,010,800円、きりたんぽ串入れ缶を1,312,500円でそれぞれ設置したとしているが、実際は、値引きを受けてこれより低額な11,760,000円、1,207,500円で設置していた。また、この11,760,000円には貸付対象とならない修繕費793,203円が含まれていた。
 したがって、適切な貸付金額を計算すると10,566,198円となるので、本件貸付金額との差額2,764,802円が過大な貸付けとなっている。

 きりたんぽ串(くし)入れ缶  ステンレス製の串を殺菌消毒する容器

(775) 大阪府 財団法人大阪産業振興機構 プラスチック製容器製造業者 15.8
29,000
(14,000)
18,624
(9,312)
4,656 無断処分

 この貸付けは、真空成形機1台の設置に必要な資金29,000,000円(貸付対象事業費同額)の一部として、14,000,000円を貸し付けたものである。借主は、この設備を平成15年7月に設置したとして上記の貸付けを受けていたが、18年8月に、貸与機関に無断で別の企業に譲渡していた。
 したがって、この設備に係る貸付金のうち譲渡時点での貸付金残高9,312,000円は、貸付けの目的を達成していない。

(776) 福岡県 財団法人福岡県中小企業振興センター 食堂・レストラン業者 15.7
54,596
(27,290)
54,596
(27,290)
13,645 貸付対象外

 この貸付けは、厨(ちゅう)房機器等の設置に必要な資金54,596,435円(貸付対象事業費同額)の一部として、27,290,000円を貸し付けたものである。借主は、上記設備の代金を平成15年8月31日までに支払うことにしていたが、実際は、同年7月から19年6月までの長期の割賦販売契約(48回払い)により設置するなどしており、貸付対象にならないものであった。
 したがって、本件貸付金27,290,000円は貸付けの必要がなかった。

(777) 財団法人福岡県中小企業振興センター 製版業者 16.5
21,525
(10,000)
6,300
(2,387)
1,193 低額設置

 この貸付けは、プレートセッター(注6) 1台等の設置に必要な資金21,525,000円(貸付対象事業費同額)の一部として、10,000,000円を貸し付けたものである。借主は、この設備を貸付対象事業費どおりの額で設置したとしているが、この額は契約額を水増ししたもので、実際は、15,225,000円で設置していた。
 したがって、適切な貸付金額を計算すると7,612,500円となるので、本件貸付金額との差額2,387,500円が過大な貸付けとなっている。

 プレートセッター  製版機器の一種で、パソコンで作成された原稿データを直接アルミプレートなどに焼き付けて印刷版を作成するもの

(778) 財団法人福岡県中小企業振興センター 産業廃棄物処理業者 16.10
26,890
(13,000)
13,890
(6,500)
3,250 低額設置

 この貸付けは、一括投入式焼却炉一式の設置に必要な資金26,890,500円(貸付対象事業費同額)の一部として、13,000,000円を貸し付けたものである。借主は、この設備を貸付対象事業費どおりの額で設置したとしているが、この額は契約額を水増ししたもので、実際は、13,000,000円で設置していた。
 したがって、適切な貸付金額を計算すると6,500,000円となるので、本件貸付金額との差額6,500,000円が過大な貸付けとなっている。

(773)−(778)の計
183,405
(98,551)
128,954
(69,184)
34,592