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空港の場周柵強化工事の実施に当たり、場周柵の設計が適切でなかったため、工事の目的を達していないもの


(780) 空港の場周柵強化工事の実施に当たり、場周柵の設計が適切でなかったため、工事の目的を達していないもの

会計名及び科目 空港整備特別会計(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(空港整備勘定))
      (項) 災害対策等緊急事業推進費
部局等 東京航空局
工事名 (1) 新千歳空港場周柵(さく)強化工事
  (2) 函館空港場周柵強化工事
  (3) 新潟空港場周柵強化工事
工事の概要 空港の保安対策の一環として、平成18、19両年度に、既存の空港場周柵の強化工事等を施工するもの
工事費 (1) 208,530,000円  
  (2) 330,304,696円  
  (3) 146,790,000円  
  685,624,696円  
請負人 (1) 東亜道路工業株式会社
  (2) 株式会社NIPPOコーポレーション
  (3) 本間道路株式会社
契約 (1) 平成19年3月 一般競争契約
  (2) 平成19年3月 一般競争後の随意契約
  (3) 平成19年3月 一般競争契約
支払 (1) 平成19年8月、平成20年2月 2回
  (2) 平成20年2月  
  (3) 平成20年3月  
不適切な設計となっている工事費 (1) 32,286,000円  
  (2) 30,717,000円  
  (3) 36,742,000円  
  99,745,000円  

1 工事の概要

 国土交通省東京航空局(以下「東京局」という。)は、新千歳、函館、新潟各空港の保安対策の一環として、既存の場周柵(さく)を強化するなどのために、平成18、19両年度に、新千歳空港場周柵強化工事(以下「(1)工事」という。)、函館空港場周柵強化工事(以下「(2)工事」という。)、新潟空港場周柵強化工事(以下「(3)工事」という。)をそれぞれ工事費208,530,000円、330,304,696円、146,790,000円、計685,624,696円で実施している。
 これらの工事は、16年4月に東京国際空港で発生した不法侵入事件を契機として、外部から空港内の制限区域への不法侵入を防止するために、既設の菱(ひし)形金網製の場周柵を、切断等に強い鋼線を格子状に溶接組みした面材を使用した場周柵(以下「強化型場周柵」という。)に改修等するものである。
 国土交通省航空局は、上記の不法侵入事件を受けて、16年9月に「空港における不法侵入対策の実施について」(国空管第74−2号。以下「通知」という。)を発するなどしている。この通知等によると、強化型場周柵は、菱形金網製の場周柵に比べて、支柱等に対する風荷重等が大きくなるため、既設支柱の強度計算をして強度上問題がある場合は、支柱等を強化する必要があるとしている。
 そこで、東京局は、本件各工事について、下表のとおり、既設支柱の状況に応じて、〔1〕 既設支柱を使用する区間、〔2〕 既設支柱の基礎を補強する区間、〔3〕 既設支柱に補助支柱を増設(以下、補助支柱を増設した場周柵を「補助支柱付場周柵」という。)する区間、〔4〕 支柱を新設する区間に分類して、強化型場周柵の設計を行っている。

表 本件各工事における場周柵の延長及び区間内訳
(単位:m)

工事名 場周柵延長 総延長
〔1〕 既設支柱 〔2〕 既設支柱基礎補強 〔3〕 補助支柱付場周柵 〔4〕 支柱新設
外径 60.5mm 外径 48.6mm
(1)工事 326.1 1,500.2 4,524.4 6,350.7
(2)工事 727.4 1,317.7 5,189.8 7,234.9
(3)工事 1,285.6 1,794.6 1,133.0 1,182.3 5,395.5
1,611.7 727.4 4,612.5 1,133.0 10,896.5 18,981.1

 東京局は、本件各工事の設計図書において、参考として強化型場周柵の構造図を請負人に示している。この中で補助支柱付場周柵については、既設支柱と補助支柱を水平の継ぎ材で結合することとしており、補助支柱の外径が60.5mmの補助支柱付場周柵については、継ぎ材と補助支柱を接続する部材(以下「接続部材」という。)を継ぎ材側と補助支柱側の2か所でそれぞれボルト締めして、既設支柱と一体化する構造としていた(参考図 参照)。そして、東京局は、本件各工事の特記仕様書において、強化型場周柵の施工に先立ち請負人に施工図を提出させて監督職員の承諾を得させることとしていた。この承諾された施工図は、空港土木工事共通仕様書(国土交通省航空局監修)によると、設計図書に含まれることとされている。

2 検査の結果

 本院は、東京局において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件各工事について、設計図書等の書類により検査したところ、補助支柱付場周柵の設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、東京局は、接続部材を有する構造の補助支柱付場周柵(補助支柱の外径が60.5mmのもの。以下同じ。)について、前記のとおり、接続部材を継ぎ材側と補助支柱側の2か所でそれぞれボルト締めすることにより一体化する構造として設計して、構造図を請負人に示しているが、請負人から提出された補助支柱付場周柵の施工図では、構造図とは異なり、接続部材を継ぎ材側の1か所のみボルト締めすることとしていた。そして、東京局は、上記の施工図を承諾して、これにより請負人に施工させていた。
 このため、本件各工事の補助支柱付場周柵は、接続部材の補助支柱側がボルト締めされていないことから、容易に外れる状態となっており、風等の振動により、接続部材が補助支柱から外れて、補助支柱付場周柵の安定が損なわれるおそれがあると認められた(参考図 参照)。
 このような事態が生じていたのは、請負人から構造図と異なる施工図が提出されたのに、これに対する東京局の監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。
 したがって、本件各工事の補助支柱付場周柵は、設計が適切でなかったため、その安定が損なわれるおそれがあり、工事の目的を達しておらず、補助支柱等に係る工事費相当額(1)工事32,286,000円、(2)工事30,717,000円、(3)工事36,742,000円、計99,745,000円が不当と認められる。

(参考図)

補助支柱付場周作の構造図(東京局が請負人に示したもの)、施工図(請負人が示して承諾されたもの)