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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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まちづくり交付金による地域生活基盤施設事業の実施に当たり、練石積工の施工が設計と著しく相違していたため、工事の目的を達していないもの


(795) まちづくり交付金による地域生活基盤施設事業の実施に当たり、練石積工の施工が設計と著しく相違していたため、工事の目的を達していないもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国土交通本省 (項)都市環境整備事業費
部局等 山梨県
交付の根拠 都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)
交付金事業者(事業主体) 山梨県南都留郡富士河口湖町
交付金事業 地域生活基盤施設
交付金事業の概要 観光施設の園路等を整備するために、平成17年度に、練石積工等を施工するもの
事業費 82,215,000円    
上記に対する交付金交付額 36,111,949円    
不当と認める事業費 7,998,000円    
不当と認める交付金相当額 3,513,024円    

1 交付金事業の概要

 この交付金事業は、山梨県南都留郡富士河口湖町が、西湖地区の魅力をいかした「いやしとふれあいの里づくり」による地域活性化を目標に、まちづくり交付金により茅葺(かやぶき)集落の再生による新たな観光拠点の形成、インフラ整備等を行う地域生活基盤施設事業等の一環として、同町西湖根場地内において、茅葺集落の園路等を整備するために、平成17年度に、練石積工、土工等を、工事費82,215,000円(交付金36,111,949円)で実施したものである。
 このうち、練石積工は、園路等の土留めとして築造するものであり、当該地区が観光拠点となることから、周囲の景観に配慮して、自然石(以下「石材」という。)を用いて施工するものである(参考図参照)
 設計図面によれば、練石積工(高さ0.3m〜3.3m、施工面積1,008.9m )は、径35cm内外の石材を積み上げて、石材と石材の間には、コンクリートを打設するなどして、石材とコンクリートを一体化させる構造としている。
 上記の設計図面によると、石材と石材のすき間は、ほとんど生じないこととなっているものの、実際の施工においては、大きさの異なる石材をそのまま用いることからすき間が生じることとなる。そこで、同町は、練石積工が景観に配慮したものであることから、コンクリートを露出させないように、石材を積み上げる際に、すき間にはその幅に合うような石材を使用するように請負人に指示していた。

2 検査の結果

 本院は、山梨県南都留郡富士河口湖町において、合規性等の観点から、施工が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図書等の書類及び現地の状況を検査したところ、練石積工の施工が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、練石積工の現場において、すき間の石材が手で容易に動いたり、コンクリートが露出したりしている箇所が見受けられた。そこで、施工面積1,008.9m について、70cm(石材の径の約2倍)四方の1,916か所に区切るなどして、それぞれの箇所で出来形の状況を確認したところ、〔1〕 石材はコンクリートと一体化させなければならないのに、すき間の石材が手で容易に動くもののある区画が446か所、208.0m あったり、〔2〕 コンクリートは石材と石材のすき間から露出させないように施工することになっているのに、石材の表面付近までコンクリートが露出している区画が123か所、56.5m あったりなどしていた。
 上記のような状況となっている箇所の重複分を除いた合計は、499か所、231.1m であり、これらの箇所では、すき間の石材がコンクリートと一体化しておらず落石のおそれがあることから通行者等に対する安全性が確保されていなかったり、石材の表面付近までコンクリートが露出していることから周囲の茅葺集落の景観に配慮されていなかったりなどしていた。
 このような事態が生じていたのは、請負人が設計図書等についての理解が十分でないまま粗雑な施工をしていたのに、これに対する同町の監督及び検査が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件練石積工231.1m (工事費相当額7,998,000円)は、施工が設計と著しく相違しており、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額3,513,024円が不当と認められる。

(参考図)

練石積工の概念図、練石積工の断面図(当局の設計図面)