会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | (項)河川等災害復旧事業費 |
部局等 | 滋賀県 | ||
補助の根拠 | 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号) | ||
補助事業者 (事業主体) |
滋賀県 | ||
事業の委託先 | 高島市 | ||
補助事業 | 国道367号道路災害復旧 | ||
補助事業の概要 | 大型車両の通行を可能にするために、平成18年度に橋りょうの床版を補強するもの | ||
事業費 | 39,180,750円 | (うち国庫補助対象額31,456,950円) | |
上記に対する国庫補助金交付額 | 20,981,785円 | ||
不当と認める事業費 | 31,456,950円 | ||
不当と認める国庫補助金交付額 | 20,981,785円 |
この補助事業は、滋賀県が、平成18年3月の地滑り災害により寸断された国道367号の災害復旧事業の一環として、高島市朽木(くつき)村井地内を通る市道八幡谷線1,065mの区域を国道367号に変更して、大型車両の通行を可能にするために、18年度に、一級河川安曇(あど)川に架かる村井橋(橋長69.8m、幅員4.7m)の床版補強工等を工事費39,180,750円(うち国庫補助対象額31,456,950円、国庫補助金20,981,785円)で高島市に委託して実施したものである。
本件床版補強工は、炭素繊維を一方向に配列した幅50cmのテープ状の炭素繊維シート(以下「シート」という。)を床版上面及び下面に樹脂により接着するなどしてシートと床版とを一体化させて、曲げ耐力の増大を図り、昭和44年に設計自動車荷重(以下「設計荷重」という。)14tで設計して築造された床版を、通行を見込んでいる大型観光バス等の車両の規格に合わせて、設計荷重17tに対応できる構造に補強するものである。
本件床版補強工の設計に当たっては、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)に基づき、床版の橋軸直角方向及び橋軸方向に配置されている鉄筋に生ずる応力度等について照査を行った上、「既設橋梁の耐震補強工法事例集」(財団法人海洋架橋・橋梁調査会発行)等を参考にして、所定の規格のシートにより橋軸直角方向を補強すれば応力計算上安全であるとして、これにより施工していた(参考図
参照)。
本院は、滋賀県において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して、会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面、設計計算書等の書類により検査したところ、床版補強工の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、床版補強工の設計に当たり、同設計の基礎となっている設計計算書によると、車両の荷重により床版下面の橋軸方向に配置されている鉄筋に生ずる応力度について、引張応力度(注1)
を157.2N/mm2
、許容引張応力度(注1)
を140N/mm2
としていて、引張応力度が許容引張応力度を上回っていて応力計算上安全とされる範囲に収まっていないのに、誤って、下回っていて安全であるとしていた。 また、示方書によると、床版については、横げた(参考図
参照)の影響を考慮して橋軸直角方向及び橋軸方向に配置されている床版上面の鉄筋に生ずる引張応力度等について照査することとされているほか、終局荷重作用時(注2)
の部材断面に生ずる曲げモーメント(注3)
が、部材断面の破壊抵抗曲げモーメント(注3)
を下回っていることを照査することとされているが、同県は、これらの照査を行っていなかった。
そこで、本件床版について、示方書に基づく再計算等の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどした。その計算結果によると、横げた上の床版上面の橋軸方向に配置されている鉄筋に生ずる引張応力度は157.2N/mm2
となり許容引張応力度140N/mm2
を上回ることとなり、さらに、終局荷重作用時の部材断面に生ずる曲げモーメントは37.6kN・mとなり部材断面の破壊抵抗曲げモーメント31.0kN・mを大幅に上回っていて、いずれも応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
このような事態が生じていたのは、高島市が委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する同市の検査が十分でなかったこと及び同県における上記の成果品に対する確認が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件床版補強工(工事費31,456,950円)は、設計が適切でなかったため、床版の所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金20,981,785円が不当と認められる。
(参考図)