会計名及び科目 | 港湾整備特別会計(港湾整備勘定)(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(港湾勘定)) | |
(項)離島港湾事業費 | ||
部局等 | 九州地方整備局 | |
補助の根拠 | 港湾法(昭和25年法律第218号) | |
補助事業者(事業主体) | 長崎県 | |
補助事業 | 曽根港改修 | |
補助事業の概要 | 臨港道路を改良するために、平成17年度に、路盤工、排水工、スイングゲートの製作、設置等を行うもの | |
事業費 | 24,022,950円 | (うち国庫補助対象額23,155,650円) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 11,577,825円 | |
不当と認める事業費 | 2,398,000円 | (全額国庫補助対象額) |
不当と認める国庫補助金相当額 | 1,199,000円 |
この補助事業は、長崎県が、曽根港改修事業の一環として、南松浦郡新上五島町の曽根港において、臨港道路(延長371.5m)を改修するために、平成17年度に、路盤工、排水工、スイングゲートの製作、設置等を工事費24,022,950円(うち国庫補助対象額23,155,650円、国庫補助金11,577,825円)で実施したものである。
このうち、陸閘(こう)(注1)
の一種であるスイングゲートは、臨港道路と海岸の間に築造されている護岸の胸壁の開口部(高さ1.4m、幅2.0m)を台風等の異常時に閉鎖できるように、平鋼(1,450mm×2,150mm、厚さ6mm)に外枠として溝形鋼(150mm×75mm、厚さ6mm)、扉全体の強度の補強のための横桁(けた)として上から48.2cmの位置に山形鋼(75mm×75mm、厚さ6mm。以下「上段の横桁」という。)及び下から48.5cmの位置に溝形鋼(150mm×75mm、厚さ6mm)等(以下、これらの鋼材を「各部材」という。)を溶接するなどして製作するステンレス製の回転式の扉である(参考図参照)
。
スイングゲートの設計に当たっては、本件工事の発注前に同港を利用する地元住民から設置の要望があり、その設置箇所及び大きさが確定していなかったため、暫定的に形状を設定していた。そして、同県は、本件工事の施工中に決定したスイングゲートの設置箇所、大きさ及び材質を設計変更の際に設計条件として請負人に示して、請負人から提出されたスイングゲートの構造図等に基づき施工させていた。
本院は、長崎県において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面、構造図等の書類により検査したところ、スイングゲートの設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、護岸の胸壁を築造する際に適用することとなっている「海岸保全施設の技術上の基準・同解説」(海岸保全施設技術研究会編。以下「技術基準」という。)によれば、スイングゲートの構造型式や構造諸元の決定に当たっては、潮位、波浪等を考慮することとされており、本件スイングゲートは、設置箇所が海に面していることから、波浪による波力が作用することとして各部材の応力計算を行った上でその構造を決定すべきであるのに、同県は、応力計算を行っていなかった。 そこで、実際に設置されたスイングゲートについて、技術基準に基づく応力計算等の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどした。その計算結果によると、本件スイングゲートに作用する波力は、その上端部で8.6kN/m2
から下端部で18.1kN/m2
、上段の横桁に作用する波力は11.8kN/m2
となることから、上段の横桁に生ずる曲げ引張応力度(注2)
は334N/mm2
となり、許容曲げ引張応力度(注2)100N/mm2
を大幅に上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
このような事態が生じていたのは、同県において、スイングゲートの設計変更の際に、その設置箇所、大きさ及び材質を示したのみで、波浪による波力の作用について、設計に当たって検討を行っていなかったことなどによると認められる。
したがって、本件スイングゲート(工事費相当額2,398,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額1,199,000円が不当と認められる。
(参考図)