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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金

道路改築事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋台の胸壁等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの


(802) 道路改築事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋台の胸壁等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 道路整備特別会計(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定))
    (項)沖縄道路事業費
部局等 沖縄県
補助の根拠 沖縄振興特別措置法(平成14年法律第14号)
補助事業者
(事業主体)
沖縄県島尻郡久米島町
補助事業 奥武島1号線道路改築
補助事業の概要 橋りょうを新設するために、平成15年度から19年度までの間(17年度を除く。)に橋台の築造、コンクリート桁の製作、架設等を行うもの
事業費 390,369,630円 (うち国庫補助対象額390,369,580円)
上記に対する国庫補助金交付額 312,295,664円    
不当と認める事業費 265,932,000円 (全額国庫補助対象額)
不当と認める国庫補助金相当額 212,745,600円  

1 補助事業の概要

 この補助事業は、沖縄県島尻郡久米島町が、奥武島1号線の道路改築事業の一環として、同町宇根地内と奥武地内との間において、橋りょう(橋長170.0m、幅員5.4m)を新設するために、平成15年度から19年度までの間(17年度を除く。)に、下部工として橋台2基(以下、宇根地内側橋台を「A1橋台」、奥武地内側橋台を「A2橋台」という。)の築造等、上部工としてポストテンション方式5径間連結コンクリート桁(けた)(以下「コンクリート桁」という。)の製作、架設等を工事費計390,369,630円(うち国庫補助対象額390,369,580円、国庫補助金312,295,664円)で実施したものである。
 この橋りょうについては、地震発生時におけるコンクリート桁の落下による落橋を防止するために、橋台の胸壁とコンクリート桁をPC鋼材で連結する落橋防止装置をA1橋台及びA2橋台の胸壁にそれぞれ4か所、計8か所に設置することとしていた。そして、胸壁に配置する斜引張鉄筋(注1) については、配筋図によると、径13mmの鉄筋を使用することとして、これにより施工していた(参考図参照)

2 検査の結果

 本院は、沖縄県島尻郡久米島町において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面、設計計算書等の書類により検査したところ、胸壁の設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、胸壁の設計の基礎となっている設計計算書によれば、胸壁に配置する斜引張鉄筋については、径19mmの鉄筋を使用することとしていたのに、配筋図を作成する際に、誤って径13mmの鉄筋を使用することとして、これにより施工していた(参考図参照)
 そこで、胸壁の斜引張鉄筋を径13mmとして応力計算を行うと、斜引張鉄筋が許容するせん断力(注2) は、A1橋台で596.0kN、A2橋台で609.2kNとなり、それぞれの斜引張鉄筋が負担するせん断力(注2) 1,248.5kN、1,366.3kNを大幅に下回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
 このような事態が生じていたのは、同町において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件胸壁は設計が適切でなかったため、同胸壁及びこれと落橋防止装置で連結されているコンクリート桁等(これらの工事費相当額265,932,000円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額212,745,600円が不当と認められる。

 斜引張鉄筋  せん断力(材を切断しようとする力)により材に斜めに生ずる引張力に抵抗するため、胸壁等の前面側と背面側の主鉄筋をつなぐ鉄筋

 斜引張鉄筋が許容するせん断力・斜引張鉄筋が負担するせん断力  「斜引張鉄筋が負担するせん断力」とは、材に生ずるせん断力のうち、コンクリートが負担するせん断力を差し引いた値をいう。この数値が設計上許される上限を「斜引張鉄筋が許容するせん断力」という。

参考図

橋りょう概念図、胸壁の斜引張鉄筋の配置概念図