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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金

空港整備事業の実施に当たり、物件移転補償に要する費用の算定が適切でなかったため、補償費が過大となっているもの


(803) 空港整備事業の実施に当たり、物件移転補償に要する費用の算定が適切でなかったため、補償費が過大となっているもの

会計名及び科目 空港整備特別会計(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(空港整備勘定))
    (項)沖縄空港整備事業費
部局等 国土交通本省
補助の根拠 空港整備法(昭和31年法律第80号。平成20年6月18日以降は空港法)
補助事業者
(事業主体)
沖縄県
補助事業 物件移転補償
補助事業の概要 新石垣空港を整備するために必要となる土地の取得に当たり、平成18年度に、支障となる建物等の移転に伴う損失補償を行うもの
補償費 2,411,440,200円 (うち国庫補助対象額2,184,764,821円)
上記に対する国庫補助金交付額 1,966,288,339円    
不当と認める事業費 7,603,836円 (うち国庫補助対象額6,889,076円)
不当と認める国庫補助金相当額 6,200,168円  

1 補助事業の概要

 この補助事業は、沖縄県が、新石垣空港整備事業の一環として、新空港建設に必要となる土地の取得に当たり、支障となる石垣市内のゴルフ場を移転させるために、平成18年度に、2,411,440,200円(うち国庫補助対象額2,184,764,821円、国庫補助金1,966,288,339円)で、ゴルフ場の経営者に建物等の移転に伴う損失補償を行ったものである。
 同県は、公共事業の施行に伴う損失補償を、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年閣議決定)に基づき同県が制定した「沖縄県の公共事業の施行に伴う損失補償基準」(昭和50年沖縄県訓令第9号)及び「沖縄県の公共事業の施行に伴う損失補償基準の実施細則」(昭和51年4月1日施行)(以下、これらを「損失補償基準等」という。)に基づいて行うこととしている。
 損失補償基準等によれば、土地等の取得に伴い通常生ずる損失の補償費として、建物等の移転料(工作物の移転料を含む。)、営業補償費、立木補償費等を計上することとされている。
 そして、同県は、本件損失補償費(以下「補償費」という。)の算定等に係る業務(営業補償費の算定は除く。)を補償コンサルタントに委託して、その成果品を検査、受領して、この成果品等を基に補償費を算定していた。

2 検査の結果

 本院は、沖縄県において、合規性等の観点から、補償費の算定が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件損失補償について、物件移転補償契約書等の書類により検査したところ、補償費のうち、営業補償費及び工作物の移転料の算定が適切でない事態が次のとおり見受けられた。

(1) 営業補償費の算定について

 損失補償基準等によれば、土地等の取得に伴い通常営業の継続が不能となり、転業が相当と認められる場合は、新たな営業を開始するために継続して雇用する必要がある従業員に係る休業手当相当額を営業補償費に計上することとされている。
 そこで、同県は、従業員30名に係る休業手当相当額を67,371,092円と算定して、営業補償費に計上していたが、この中には、一時限りの臨時に雇用された従業員8名に係る休業手当相当額4,620,396円が含まれていた。
 しかし、損失補償基準等では、従業員が一時限りの臨時に雇用されているときは、その額を補償しないものとされていることから、上記の従業員8名に係る休業手当相当額は補償の対象とはならず、営業補償費4,620,340円が過大となっていた。

(2) 工作物の移転料の算定について

 損失補償基準等によれば、建物に付随する工作物(大規模な工作物を除く。)については、原則として、建物の移転料として建物の耐用年数等を基に算定することとされている。
 そこで、同県は、委託した業務の成果品に基づき、防球ネット、花壇、金網フェンス等の工作物をゴルフ場のクラブハウス等に付随するものとして、鉄筋コンクリート造であるクラブハウス等の建物の耐用年数(65年又は90年)等を基に、工作物の移転料を108,577,900円と算定していた。
 しかし、建物に付随する工作物とは、電気設備、給排水設備等の建物と構造上一体となっているものが該当するとされており、上記の防球ネット等は、建物から完全に分離している独立した工作物であることから、これらの工作物の移転料を、クラブハウス等の建物の耐用年数等を基に算定しているのは適切とは認められない。
 そこで、防球ネット等について、それぞれの工作物ごとの耐用年数(10年から50年)等を基に工作物の移転料を算出すると、その合計額は105,594,404円となり、前記の移転料との差額2,983,496円が過大となっていた。
 このような事態が生じていたのは、同県において、損失補償基準等の理解が十分でなかったこと、委託した業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
 したがって、本件物件移転に係る適正な補償費は2,403,836,364円となり、前記の補償費2,411,440,200円との差額7,603,836円(国庫補助対象額6,889,076円)が過大となっており、これに係る国庫補助金相当額6,200,168円が不当と認められる。