会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | |
(項)揮発油税等財源都市環境整備事業費 | |||
(項)都市環境整備事業費 | |||
部局等 | 国土交通本省、13都府県 | ||
交付の根拠 | 都市再生特別措置法(平成14年法律第22号) | ||
交付金事業者(事業主体) | 市25、特別区1、町7 計33事業主体 | ||
交付金事業の概要 | まちづくり交付金により、市町村が都市再生整備計画に基づき公共公益施設等の整備事業や同事業の効果を増加させるために必要なイベント等の事務又は事業を行うもの | ||
市町村によって交付対象事業の適否に対する理解が異なるなどの事業に係る交付対象事業費 | 44億9860万余円 | (平成16年度〜19年度) | |
上記に対する交付金相当額 | 15億7349万円 | (背景金額) |
国土交通省は、都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)に基づき、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が都市再生整備計画(以下「整備計画」という。)を定めて、整備計画に基づく事業等を実施する場合に、その経費に充てるために、平成16年度から、予算の範囲内で当該市町村に対してまちづくり交付金を交付しており、19年度までに交付された地区は、773市区町村の1,355地区、その交付金は約7670億円に上っている。
整備計画は、都市の再生に必要な公共公益施設の整備等を重点的に実施すべき土地の区域における当該公共公益施設の整備等に関する計画とされており、16年に閣議決定された都市再生基本方針等に基づき作成するものとされている。そして、同基本方針によれば、整備計画は、身の回りの生活の質の向上と地域経済・社会の活性化を推進することとし、市町村の自主性を尊重して、地域の特性に応じて、地域の有形・無形の資源を活用した創意工夫を最大限発揮することを目指すものとするとされている。
また、地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づき、国の考え方、留意点等を示した「都市再生特別措置法に基づき創設された全国都市再生の支援のための基本的枠組みについて(技術的助言)」(平成16年国都まち第10号、国道政第5号、国住備第27号国土交通事務次官通知)では、整備計画の目標は、市町村が自由に設定するとされ、整備計画に基づいて交付されるまちづくり交付金は、市町村の自主性・裁量性を大幅に拡大した財政支援措置で、市町村の提案する幅広い事業を対象にできるとされている。そして、計画の目標として、街なかの賑(にぎ)わいの再生、歴史的な街並みの再生による観光まちづくり、安全で安心できるまちづくり、良好な居住環境による人口定着、街なか居住の再生等の例が示されている。
まちづくり交付金交付要綱(平成16年国都事第1号、国道企第6号、国住市第25号国土交通事務次官通知。以下「交付要綱」という。)によれば、まちづくり交付金の交付対象事業は、基幹事業と提案事業に大別されている。基幹事業は、整備計画の目標を達成するために必要な施設等の整備事業とされ、国土交通省が従来、個別の補助制度において支援してきた道路、公園、下水道等の公共施設のほか、地域交流センター、観光交流センター等の整備事業を交付対象としてメニュー化したもので、交付要件は従来の補助制度と同じ又は面積や事業費の基準によるなどとされている。
また、提案事業は、基幹事業と一体となってその効果を増大させるために必要な事務又は事業で、市町村の自由な発想・提案に基づいて地域の実情を反映した幅広い事業の実施が可能となっていて、交付要件も整備計画の目標を達成するために必要な事業等とされている。この提案事業では、補助制度がない施設や、既存の補助制度の採択基準を満たしていない施設も対象にでき、また、いわゆるソフト事業も対象になっている。
そして、国土交通省都市・地域整備局都市総合事業推進室が監修して市町村の参考図書となっている「まちづくり交付金ハンドブック」(以下「ハンドブック」という。)には、事業の具体的な例示や交付対象事業の適否等について同省の考えの一端が示されている。
市町村は、まちづくり交付金を充てて整備計画に基づく事業を実施しようとするときは、都市再生特別措置法により、当該整備計画を国土交通大臣に提出しなければならないこととなっている。そして、国土交通大臣は、交付要綱により、当該整備計画に対するまちづくり交付金の交付及び交付限度額について判断して、その結果を当該市町村に通知することとなっており、その交付額は交付対象事業費の合計額のおおむね4割、交付期間は整備計画ごとにおおむね3年から5年となっている。
国土交通大臣がまちづくり交付金の交付を判断するに当たっては、「まちづくり交付金に係る客観的評価基準について」(平成16年国都事第8号、国道地環第9号、国住市第71号国土交通省都市・地域整備局まちづくり推進課長、道路局地方道・環境課長、住宅局市街地建築課長通知)に基づいて、整備計画が効果的・効率的かどうかなどの観点から、整備計画の目標と事業内容の整合性が確保されているかなどの項目について評価することとされている。また、まちづくり交付金交付申請等要領(平成16年国都まち第43号、国住市第82−2号国土交通事務次官通知)によれば、市町村は、都道府県知事に交付金交付申請書を提出し、都道府県知事は、交付金事業の目的及び内容が適正であるかなどを審査して、交付金を交付すべきものと認めたときは、交付金交付申請書とともに交付金交付申請(市町村)報告書を地方整備局長等に提出することとされている(政令指定都市は、地方整備局長等に直接提出して、同局長等が審査する。)。
まちづくり交付金は、国土交通省の重要な施策を推進するものとして、16年度の制度創設以来毎年度多額の交付がされている。
その中で、前記のとおり、整備計画の作成及び交付対象事業の内容については、市町村の提案で幅広い事業等が実施できるなど、市町村の自主性・裁量性が高いものになっている。そして、交付要綱におけるまちづくり交付金の交付要件は、基幹事業については一定の採択基準等が定められているものの、提案事業については整備計画の目標を達成するために必要な事業等に要する費用とされているなど、基本的な要件が定められるにとどまっている。
そこで、効率性等の観点から、市町村の間で交付対象事業の範囲の取扱いが異なっていないか、整備計画の目標達成に資するものとなっているかなどの点に着眼して検査した。
28都道府県(注) 管内の527市区町村が16年度以降整備計画を作成した949地区のうち、提案事業の割合が多いなどの324市区町村の567地区(交付対象事業費計6950億9142万余円、交付金相当額計3122億6234万余円)を検査の対象とした。そして、これらの事業主体において、整備計画、交付申請書等の内容を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、交付対象事業について次のような事態が見受けられた。
1町1地区では町の庁舎を、8市町8地区では消防署等の整備事業をそれぞれ提案事業として交付対象としており、その交付対象額は計39億0539万余円、これに対する交付金相当額は計13億3810万余円となっていた。
そして、上記の9市町が、庁舎又は消防署等の整備事業を交付対象としていたのは、庁舎については、旧庁舎のあった場所に観光交流センターを建設することとしたために庁舎を他の場所に整備する必要があったものであること、また、消防署等については、安全・安心なまちづくりに必要なものであることなど、いずれも整備計画の目標達成に資するものであることによるとしていた。
しかし、市町村の庁舎や消防署等は、基本的に市町村固有の基礎的行政サービスを提供するための施設である。そして、これらの施設は、まちづくり交付金による事業を行わなくても必要となるものであるとともに、一般に、これらの施設の大部分は、執務室や書庫又は通信室や機械室、車庫、訓練室など地域住民等の利用に供するためのものでないことからすると、まちづくり交付金制度の主眼である身の回りの生活の質の向上と地域経済・社会の活性化に寄与する度合いには限りがあると考えられる。したがって、これらの施設全体を交付対象とすることについては検討の余地があるものと思料される。
この点について、ハンドブックでは、基幹事業で整備される地域交流センター等に併設される形での生活利便施設としての市役所窓口については提案事業として計上できるとしているが、市町村の庁舎や消防署等の取扱いについては明記されていない。
そして、上記9地区のほかに、整備計画の地区内において計画期間中に庁舎又は消防署を整備する地区が16市区町の16地区あったが、これら市区町は、自己財源(一般財源)で設置すべきものであるなどとして、その整備事業を交付金の対象にはしておらず、市町村の間で庁舎や消防署等の整備を交付対象事業としたりしていなかったりしていて、取扱いに差異がある状況となっていた。
A市のB地区では、常時各種講習会等を行うことができ、自主防災組織への支援の強化が図られ、地域住民が主体となる安全・安心なまちづくりの実現につながるとして、消防拠点の新設事業を実施することとしている。この新設事業は、平成18、19両年度に、基幹事業で防災備蓄倉庫、耐震性貯水槽及び防災広場を整備するとともに、提案事業で消防署の整備を行うものである。これらの工事費1,523,865,000円のうち、消防署の整備に係る工事費は1,390,877,017円で、同市は、この全額を交付対象としていた。
25市区町の29地区では、既存の施設の管理運営委託に係る経費、公園の植栽等の維持管理に係る経費や、従前から行われているお祭りや各種イベント等の経費を提案事業の交付対象としていて、その交付対象額は計5億9321万余円、これに対する交付金相当額は2億3538万余円となっていた。
上記の25市区町が、これらの経費について交付対象としていたのは、規模や内容を拡充するなどしていて、整備計画の目標に合致するものであること、目標達成のための調査・実験と位置付けられるものであることなどによるとしていた。
この点について、ハンドブックでは、維持管理費や従前から行われているお祭り・イベント等の経費等、まちづくり交付金による事業を実施しない場合でも必要となる経常的な経費については、整備計画の目標達成に資するものと認められないため、まちづくり交付金による事業の対象外となるとしている。そして、規模や内容を拡充するなどした場合の取扱いについては明記されていないが、そのような場合に当該経費の全額を交付対象とすることについては、上記のハンドブックの記述の趣旨を踏まえて検討する必要があると思料される。
そして、190市区町村の260地区では、上記のハンドブックの記述等から、既存の施設の維持管理費や従前から行われているお祭り・イベント等の経費はまちづくり交付金の対象にしておらず、市町村の間でこれらの経費を交付対象事業費としたりしていなかったりしていて、取扱いに差異がある状況となっていた。
C市は、物産展示、観光案内等を行うふるさと館を平成15年度に設けて、その管理運営業務を同市の観光協会に委託している。そして、同市は、17年度からのD地区の整備計画において、このふるさと館の管理運営業務について、物産の紹介等にとどまらず、新たにコンサートなどのイベントも行うこととして、同業務を提案事業に含めて、17年度から19年度までの間にその委託費計34,389,000円(交付金相当額13,755,600円)の全額を交付対象としていた。
このように、まちづくり交付金制度は幅広い事業等の実施が可能ではあるが、市町村の間で交付対象事業の適否に対する理解が異なり、交付対象の範囲に差異が生じたり、整備計画の目標達成への寄与度が必ずしも高くないと考えられる事業等があったりしている事態は、限られた予算の範囲内で交付されるまちづくり交付金の公平かつ効率的な執行を阻害することになるもので、適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、まちづくり交付金が市町村の自主性・裁量性を尊重する新しい交付金制度であることや、制度創設当初よりどのような事業が提案されるか予測することが困難であったことから、これまで交付要綱等で交付対象の範囲に係る明確な基準等を示しておらず、ハンドブックで記述されているものも、その記述の位置付けや根拠は必ずしも明確でなく、内容的にも部分的なものとなっていること、地方整備局等や都道府県が整備計画に対するまちづくり交付金の交付及び交付限度額の判断や交付申請に対する審査を行う際に、上記の基準等が示されていないこともあって、整備計画に盛り込まれた事業の内容等について、十分検討しないまま適切と判断してきたことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、市町村によって交付対象の適否に対する理解が区々とならないよう、また、交付対象事業が整備計画の目標達成により資するものとなるよう、20年9月に、次のとおり、市町村の庁舎又は消防署等の整備事業費、施設の維持管理費及びお祭り・イベント等の経費について、交付対象事業費として計上できる範囲をより明確にした基準等を取りまとめるとともに、その基準等を明示した通知を発して、地方整備局等及び都道府県並びに市町村に周知・徹底する処置を講じた。
ア 市町村の庁舎又は消防署等の整備事業費について
基礎的行政サービスを提供するための施設として通常有すべき水準を超える利便性等の確保に要するものである場合に限り、その水準を超える整備等を行うのに要する費用を交付対象事業費に計上できる。
イ 施設の維持管理費及びお祭り・イベント等の経費について
既存の施設に対して新たな機能の導入、拡張、強化等を図るために行う改修に要する経費については交付対象事業費に計上できるが、単に施設等の経年的な劣化に対応するための原状回復を行う維持・修繕に要する経費や日常的な施設の管理・運営に係る人件費等の維持管理費については、交付対象事業費に計上できない。
また、従前から定例的に実施しているお祭り・イベント等の経費については、経済性や集客性等、新たなものとして実施するよりも従前からのものに一部を活用することがより有利と考えられる合理的な理由がある場合には、その全体経費のうち、従前から定例的に実施している内容と同一の部分に係る経費以外の部分を交付対象事業費に計上できる。