会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | (項)揮発油税等財源道路整備密接関連事業費 |
道路整備特別会計(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)) | |||
(項)道路事業費 | |||
部局等 | 6地方整備局等 | ||
契約の概要 | 高速道路料金を割引する社会実験の実施に伴う高速道路株式会社の減収分を国が負担するもの | ||
契約の相手方 | 2高速道路株式会社 | ||
契約 | 12件 | 平成20年3月 | |
上記の契約に係る国の負担額 | 49億4870万円 | (平成19年度) | |
上記のうち過大に支払われた負担額 | 3億2301万円 |
国土交通省は、平成18年12月に閣議決定された「道路特定財源の見直しに関する具体策」を踏まえて、20年度以降に、既存高速道路ネットワークの効率的活用・機能強化を目的とする高速道路料金の引下げなどの新たな措置を講ずるために、料金引下げが交通量に与える効果・影響等を調査する高速道路料金社会実験(以下「社会実験」という。)を実施している。
この社会実験は、9地方整備局等(注1)
が6高速道路株式会社(注2)
が管理する高速道路等において、地域活性化の支援等として、一般道路に並行する高速道路を有効活用して一般道路の慢性的な渋滞を解消・緩和するなどのために、ETC(有料道路自動料金収受システム)車載器を取り付けた車両を対象に、特定区間において高速道路料金の深夜割引、通勤割引、平日夕方割引等を行うものである。
9地方整備局等は、19年度にそれぞれの管内の路線を管理する6高速道路株式会社と「平成19年度東北地方整備局管内高速道路の料金社会実験の実施に係る協定」等(以下「協定」という。)を締結して、東北自動車道等57自動車道において社会実験を実施している。
そして、9地方整備局等では、協定に定める「高速道路の収入に影響を生じさせないための措置」として、社会実験による高速道路料金の割引に伴う高速道路株式会社の料金収入の減収分について負担している。
国土交通省は、社会実験による高速道路料金の割引に伴う負担額の具体的な算定方法について協定等で定めることとしていなかったことから、9地方整備局等はそれぞれの管内の路線について6高速道路株式会社と協議して以下のような算定方法により、19年度の負担額を算出することとしている。
9地方整備局等は、6高速道路株式会社と上記の算定方法による負担額について確認書を取り交わした上、23件の契約を締結して、負担額の総額198億5455万円を支払っている。
本院は、合規性等の観点から、社会実験の実施に伴う負担額の算定方法は適切なものとなっているかに着眼して、9地方整備局等において、会計実地検査を行った。そして、19年度の社会実験に伴う上記23件の契約、契約金額198億5455万円を対象として、契約書、確認書等の書類により検査した。
検査したところ、9地方整備局等のうち6地方整備局等(注3)
が契約を締結している東日本高速道路株式会社及び中日本高速道路株式会社における社会実験の実施に伴う負担額(12契約、契約金額計49億4870万円)の算定方法について、次のような事態が見受けられた。
負担額の算定に当たっては、前記のとおり、社会実験がなかった場合に想定される料金収入から、社会実験期間中の料金収入を差し引いて算定することとしているが、このうち社会実験がなかった場合に想定される料金収入は、社会実験期間中の実績交通量に、割引前の料金を乗じて算出していた。
しかし、通常、社会実験を行った場合に、一般道路を利用していた車両が料金割引に誘発されて一般道路から高速道路に乗り換えることにより、社会実験がなかった場合に比べて交通量が増加する(以下、この増加する交通量を「誘発交通量」という。)と想定されて、その増加分については料金収入が多く算定されることとなる。
したがって、社会実験がなかった場合に想定される料金収入は、誘発交通量を考慮した交通量により算出すべきであり、その交通量は、社会実験期間中の実績交通量と誘発率(注4)
を用いて次式により算定すべきであると認められた(参考図
参照)。
A地方整備局では、B高速道路株式会社と「平成19年度A地方整備局管内高速道路の料金社会実験の実施に係る協定」を締結して、これに基づき、「A地方における深夜割引に関する社会実験」等3種類の社会実験を行っていた。そして、20年3月に両者で、負担額を4億7600万円と算定することについての確認書を取り交わして、同額を支払っていた。しかし、負担額4億7600万円の算定に当たっては、社会実験がなかった場合に想定される料金収入が、社会実験期間中の実績交通量と誘発率を用いて算定されたものとなっておらず、誘発交通量が考慮されていなかった。そこで、誘発交通量を考慮して負担額を算定すると、4億7600万円は4億3720万余円となり、3879万余円が過大に支払われていた。
このように、社会実験の負担額の算定に当たって、社会実験がなかった場合に想定される料金収入について、誘発交通量を考慮することなく算定していた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記により、12件の契約に係る負担額49億4870万円を修正計算すると、46億2568万余円となり、この差額3億2301万余円が過大に支払われていたと認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、地方整備局等が負担額を算定する際の具体的な算定方法を明確にしていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、20年9月に、地方整備局等に対して通知を発して、社会実験の負担額を算定する際の具体的な算定方法を明確にして地方整備局等に周知徹底するとともに、20年度契約からこれを適用することとする処置を講じた。
ア 誘発交通量を考慮していない算定方法
「負担額」=「社会実験がなかった場合に想定される料金収入」(Q2×R1)−「社会実験期間中の料金収入」(Q2×R2)
イ 誘発交通量を考慮した算定方法
「負担額」=「社会実験がなかった場合に想定される料金収入」(Q1×R1)−「社会実験期間中の料金収入」(Q2×R2)