会計名及び科目 | 道路整備特別会計(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)) | ||
(項)道路事業費 | |||
(項)北海道道路事業費 | |||
(項)沖縄道路事業費 | |||
(項)道路環境整備事業費 | |||
(項)北海道道路環境整備事業費 | |||
(項)沖縄道路環境整備事業費 | |||
部局等 | 7地方整備局等、20国道事務所等 | ||
業務の概要 | 国道の維持、修繕等の道路管理に必要な道路施設の諸元、図面等のデータを登録した道路管理データベースシステムの更新を行わせるもの | ||
国道事務所等で管理している電気通信設備台数 | 8,228台 | ||
上記のうちデータベースシステムに登録されていない台数 | 3,480台 | ||
データ更新業務の全契約件数及び業務費 | 50件 | 14億9680万円 | (背景金額)(平成18、19両年度) |
上記のうち管理している電気通信設備の過半数が登録されていない国道事務所等におけるデータ更新業務の契約件数及び業務費 | 11件 | 3億1055万円 |
国土交通省は、道路法(昭和27年法律第180号)に基づき、一般国道のうち政令で指定された区間の道路について、維持、修繕、災害復旧その他の管理(以下、これらを「道路管理」という。)を行っている。
道路管理は、道路整備事業の継続的な実施に伴い、橋りょう、トンネル、道路照明等の施設(以下、これらの施設を「道路施設」という。)数が増加していることから、その経済的、効率的な実施が重要な課題となっている。
また、近年、道路施設においては、道路管理に必要な施設として、異常気象等の状況を的確に把握する気象観測設備や災害、交通等の状況を常時観測できるCCTVシステム(注1)
等の高度なIT技術を活用した電気通信設備の整備が進められており、これらの整備及び管理に要する費用も多額なものとなっている。
ア 道路管理データベースシステムの概要
国土交通省は、道路施設に関する情報の一元化及び共有化を図るとともに、道路管理の効率化及び高度化を図ることにより、災害時等において迅速な対応ができるように、昭和63年度から、全国的に統一した基本仕様による道路管理データベースシステム(以下「道路管理DBS」という。)を地方整備局等及び国道事務所等に導入している。
道路管理DBSは、財団法人道路保全技術センター(以下「保全センター」という。)が開発したシステムであり、道路施設の最新データを登録しておくことにより、地方整備局等及び国道事務所等において、必要な道路施設の諸元、図面、写真等のデータの検索等を瞬時に行い、道路施設の状況や道路防災に関する的確な情報を把握することができるようになっている。
上記の道路管理DBSに登録する道路施設には、気象観測設備、CCTVシステム等の電気通信設備が含まれている。
イ 道路管理DBSのデータ更新業務
道路管理DBSの機能を活用して迅速かつ的確な道路管理を行うためには、道路管理DBSに常に最新の道路施設のデータが登録されている必要がある。そこで、地方整備局等及び国道事務所等は、道路整備事業の実施に伴い整備された道路施設のうち、新たに道路管理DBSに登録する必要のある道路施設のデータ(以下「基本データ」という。)の更新業務について、毎年度保全センター等と契約している。そして、その主な業務内容は次のとおりである。
(ア) 基本データ作成支援業務
保全センター等は、工事請負業者等が作成する基本データの数値、文字等の入力形式や道路施設の構造、延長、面積等の入力内容と工事完成図書との整合性等についての審査及び補正を行い、工事請負業者等が国道事務所等に基本データを成果品として納品するまでの支援を行う。
(イ) データ更新業務
保全センター等は、工事請負業者等から国道事務所等に納品された基本データを取りまとめて、関連する道路施設のデータと整合性が保たれているかなどを総合的に審査した上、地方整備局等及び国道事務所等のサーバに蓄積されているデータの更新業務を行う。
近年、IT化の進展に伴い、気象観測設備、CCTVシステム等の高度な電気通信設備が道路管理のために多数導入されている。そこで、有効性等の観点から、これらの電気通信設備の基本データが道路管理DBSに確実に登録されて、道路管理DBSが効率的、効果的に運用されているかなどに着眼して検査を行った。
本院は、7地方整備局等(注2) 及び20国道事務所等(注3) において、平成18、19両年度に実施した道路管理DBSのデータ更新業務50件、これに係る業務費計14億9680万余円及び20国道事務所等が19年度末現在で管理している電気通信設備8,228台(注4) を対象として、会計実地検査を行った。検査に当たっては、地方整備局等及び国道事務所等と保全センター等との間で締結された契約書等の書類により検査するとともに、必要に応じて現場に赴いて、道路管理DBSの登録状況等、電気通信設備の管理状況等について検査を行った。
検査したところ、20国道事務所等が管理している電気通信設備8,228台の道路管理DBSへの登録状況等について、次のような事態が見受けられた。
すなわち、電気通信設備を整備する際の工事請負契約等においては、特記仕様書等により、工事請負業者が基本データを作成することなどとされている。
しかし、基本データ作成の対象となる電気通信設備が明確でなかったことなどから、国道事務所等の電気通信設備担当部局等において、道路管理の点から道路管理DBSに登録する必要があると認められる電気通信設備についての判断が区々となっていた。
一方、データ更新業務担当部局においても、電気通信設備担当部局等との連絡調整を十分行っていなかったことから、支援業務及び更新業務の対象となる電気通信設備の整備状況を把握していなかった。このため、電気通信設備の中に、道路管理DBSに登録されていないものが多数見受けられた。
これらの結果、前記の電気通信設備計8,228台のうち、基本データが道路管理DBSに登録されていない電気通信設備は計3,480台(注5)
に上っていた。
そして、前記20国道事務所等のうち、5国道事務所等(注6)
においては、管理している電気通信設備の過半数が道路管理DBSに登録されておらず、これらの5国道事務所等における18、19両年度のデータ更新業務の契約件数及び業務費は、11件、3億1055万余円となっていた。
A国道事務所のデータ更新業務担当部局は、平成18年度に道路管理DBSデータ更新業務を23,205,000円で実施しており、一方、同事務所の電気通信設備担当部局は、同年度に、凍結情報表示設備設置工事を工事費34,965,000円で実施していた。同設備設置工事の基本データについて電気通信設備担当部局は、凍結情報表示設備は道路管理DBSに登録する対象に該当しないとして、工事請負業者に対して基本データを作成するよう指示していなかった。また、データ更新業務担当部局は、同設備設置工事の詳細を把握していなかった。このため、工事請負業者は、データ更新業務に基づく基本データ作成のための支援を受けておらず、凍結情報表示設備については、道路管理DBSに登録されていなかった。
しかし、凍結情報表示設備は、事故防止等の観点から、道路管理に必要な電気通信設備であり、道路管理DBSに登録する必要があると認められた。
このように、国道事務所等で管理している電気通信設備が、データ更新業務によって道路管理DBSに登録されずにデータが最新のものとなっていない事態は、その機能が十分発揮されないことから道路管理に支障が生ずるおそれがあり、道路管理DBSの効率的、効果的な運用上、適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 国土交通省において、道路管理DBSに登録する電気通信設備について対象を明確にしていなかったこと
イ 国道事務所等において、
(ア) 電気通信設備の整備に当たり、基本データ作成の対象となる電気通信設備を特記仕様書等に明記していなかったこと
(イ) データ更新業務の実施に当たり、データ更新業務担当部局と電気通信設備担当部局等との間の連絡調整が十分でなく、データ更新業務担当部局が業務の対象となる電気通信設備の整備状況等について十分に把握していなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、20年9月に地方整備局等に対して通知を発して、道路管理に必要な電気通信設備が道路管理DBSに確実に登録されて、道路管理DBSが効率的、効果的に運用されるよう次のような処置を講じた。
ア 電気通信設備について、道路管理DBSに登録する対象を明確にして、道路管理DBSに確実に登録することとした。
イ 電気通信設備の整備に当たり、基本データ作成の対象となる電気通信設備を特記仕様書等に明記することにより、基本データの作成を確実に行うこととした。
ウ データ更新業務の実施に当たり、データ更新業務担当部局が、業務の対象となる電気通信設備について、その整備状況等の情報を確実に把握できるよう、データ更新業務担当部局と電気通信設備担当部局等との間で緊密に連絡調整を行うこととした。