会計名及び科目 | 空港整備特別会計(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(空港整備勘定)) | |
(項)空港等維持運営費 | ||
部局等 | 2地方航空局、4航空交通管制部、9空港事務所 | |
契約名 | 平成19年度福島空港他4官署航空交通管制機器等保守請負等15契約 | |
契約の概要 | 国土交通省が設置及び管理をしている航空交通管制機器等の保守業務を行うもの | |
契約金額 | 15億7096万円 | |
契約 | 平成19年4月 一般競争契約 | |
保守業務費の積算額 | 15億8965万余円 | (平成19年度) |
低減できた保守業務費の積算額 | 3480万円 | (平成19年度) |
国土交通省は、航空保安業務の一環として、航空機の安全運航及び定時運行を図るなどのために、航空保安無線施設及び管制施設で使用する機器等(以下「航空交通管制機器等」という。)の設置及び管理を行っている。このうち航空交通管制機器等の管理の経緯についてみると、従来は国の職員である航空管制技術官が自ら航空交通管制機器等の保守業務を実施していたが、中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)において、「航空交通管制に用いる機器の整備等について、民間の能力を活用すること」と規定されたことから、平成13年度からは一般競争入札により保守業務の一部を民間に請け負わせること(以下、このような請負を「保守請負」という。)にして、その対象となる施設を段階的に拡大させている。
そして、国土交通省は、同省航空局制定の「航空交通管制機器等保守請負共通仕様書」等により保守請負を実施させており、その実施に当たっては、請負人が、保守技術者を航空交通管制機器等の所定の運用時間中に、空港、航空交通管制部及び航空路監視レーダー事務所(以下、これらを合わせて「空港等」という。)に常駐又は巡回をさせて、航空交通管制機器等の通常時の定期保守、障害発生時の緊急保守等を行っている。
国土交通省は、保守請負に係る予定価格の積算を、同省航空局制定の「航空交通管制機器等保守請負積算要領(暫定)」(以下「積算要領」という。)に基づき行うこととしている。積算要領によると、上記予定価格の基礎となる積算価格の構成は下図のとおりとなっていて、このうち直接業務費は、保守技術者の年間の延べ作業人数に同省が毎年度定める保守技術者の労務単価(以下「労務単価」という。)を乗ずるなどして人件費を算出して、これに直接経費を加算して算出することとなっている。そして、保守業務費は、当該直接業務費に諸経費を加算して積算することとなっている。
図 積算価格の構成
保守業務費の積算に当たっては、その大半を人件費が占めていることから、労務単価を適切に設定することが重要である。そこで、経済性等の観点から、国土交通省が設定した労務単価は、保守請負の実態及び地域の実情に基づく適切なものとなっているかなどに着眼して検査を行った。
19年度に、保守請負を実施した41空港等(常駐保守31空港等(注1) 、巡回保守10空港等(注2) )に係る15契約、契約額計15億7096万余円を対象として、2地方航空局、4航空交通管制部及び9空港事務所(注3) において、積算内訳書等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、上記の15契約における保守業務費の積算額は計15億8965万余円となっていた。そして、当該保守業務費の積算で適用していた19年度の労務単価は、以下のような経緯によって設定されたものとなっていた。
保守請負を開始以降、財団法人航空保安施設信頼性センター(以下「信頼性センター」という。)1者のみが保守請負を実施していた。そして、国土交通省は、13、14両年度における労務単価を空港ごとに設定していたが、信頼性センターの賃金支払状況を14年12月に調査(以下「実態調査」という。)したところ、信頼性センターは勤務地による賃金差を設けずに賃金を全国一律としていたことから、15年度からの労務単価を全国一律のものとしていた。
その後、国土交通省は、19年1月に、前回と同様の実態調査を行い、この調査結果による賃金が同種の作業に比べて適正な水準にあるかを検証するために、これを刊行物である積算参考資料に掲載されている「通信工事技術者賃金実態調査」(以下「賃金調査」という。)の監督・主任の賃金の全国平均額(以下「平均額」という。)と比較したところ、実態調査の結果は適正な水準にあるとしていた。
しかし、次のことなどから、労務単価は、全国一律に設定するのではなく、各地域の賃金実態に基づき設定する必要があると認められた。
ア 国土交通省は、14年12月における実態調査の結果に基づき、信頼性センターの賃金支払状況に合わせて労務単価を15年度から全国一律としていたが、保守請負は一般競争入札により請負人を選定することから、信頼性センターの賃金支払状況に合わせて労務単価を設定していることは適切ではないこと
イ 国土交通省は、17年度まで保守請負を地方航空局ごと及び航空交通管制部ごとに契約していたが、18年度から保守請負のより一層の競争性を確保するために、保守業務の拠点となる空港(以下「拠点空港」という。)ごとに契約していることから、労務単価を全国一律に設定するのではなく、空港等が設置されている地域ごとの労務単価を使用すべきであること
したがって、保守請負を拠点空港ごとに契約することになったのに、労務単価を全国一律に設定していて、これを地域ごとに設定していない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
保守請負を実施している空港等のうち、9空港等(注4) は賃金調査の平均額より賃金が高い三大都市圏(首都圏、中京圏、近畿圏)に設置されているが、残りの32空港等(注5) は賃金調査の平均額より賃金が低い地域に設置されている。したがって、19年度の労務単価を空港等が設置されている地域ごとの単価で修正計算すると、三大都市圏以外の地域に設置されている32空港等に係る保守業務費については、積算額が低減することになり、三大都市圏に設置されている9空港等に係る積算額の増額分を考慮しても、本件保守業務費を計約3480万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、拠点空港ごとに保守請負を契約しているのに、地域ごとに設定した労務単価を使用し保守業務費を積算するための配慮が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、20年9月に積算要領を改正して、地域別の労務単価を設定して、同年10月以降に積算する保守請負から適用する処置を講じた。